特集 消費者(患者)の声/ニーズの吸収
アメリカ医療における医療消費者運動
上原 鳴夫
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1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座国際保健学分野
pp.580-587
発行日 2000年7月1日
Published Date 2000/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903847
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ものごとは不均等に発展するので,あるところでは当てはまることも別のところではまだそうなっていないことも多い.しかし大きな流れで見れば着実にある方向に,時差こそあれ,向かっているものがある.医療についてみれば「患者本位の医療へ」がまさにそのようなものとしてある.20年前に当惑と不快で迎えられた「インフォームドコンセント」は今では当たり前のことになった.「医療の質」や「病院サービスの質」は患者のニーズや満足を抜きにしては語れなくなっている.こういった流れの源流はアメリカにあった.日本でこのような変化が受け入れられるようになったのはつい最近のことだが,今では世界の医療がその価値観を共有しつつあることを考えれば,現代医療が必要としたものであることは疑いない.
「患者本位の医療」が大きな潮流になったのには様々な理由があるが,特に重要なのは,技術革新に伴って「医療」の実態が大きく様変わりしたことと,健康と医療に主体的にかかわろうとする市民社会の活動があったことだろう.例えば,患者の権利運動,(消費者運動の一環としての)医療消費者運動,その他の様々な市民ボランティア活動などが,医療に患者と市民の声を持ち込むことに貢献してきた.これらの運動はテーマや目標は異なるが,いずれも「オートノミー(自律性)の尊重」と「医療における情報開示」を実現しようとした点で共通していた.
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