医療従事者のための医療倫理学入門
7.パターナリズム—医師—患者関係の観点から
大西 基喜
1
,
浅井 篤
2
,
永田 志津子
1
,
新保 卓郎
1
,
福井 次矢
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
2京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻
pp.622-625
発行日 2000年7月1日
Published Date 2000/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903859
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〔ケース〕
Pさんは日本人を夫に持つ24歳の外国人女性である.2年前に来日し,日本語はほとんど話せない.近医にて初出産時HIV陽性と判明,内服治療開始するも外来通院を中断した.その半年後,頭痛,嘔吐などで受診し,脳に多発性病巣を生じたトキソプラズマ脳症で入院した.自国語しか話せないため電話通訳(NGO)で,病名告知を含め対話した.治療で全身状態が改善し,病棟内歩行も可能になった.主治医は医療費や環境などから,その後の治療は出身国が適切と考えた.主に夫と相談し乳児は在日中の実妹夫婦に託すこととし,本人の承諾を得て退院,帰国とした.本国では外来通院となった.その4か月後,驚くべきことに,かなり悪い全身状態で突然外来を受診した.医師側は今までの努力を考え動転した.彼女はなぜ日本に戻ったのか? 何が問題だったのだろうか?
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