診断と治療 109巻7号 (2021年7月発行)

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特集　増えている大人の消化管アレルギー

食物アレルギー　食物アレルギーの病型、疫学、症状海老澤　元宏 109巻7号 , 2021年7月 , pp.892-897

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＜Headline＞1 食物アレルギーで最も多く認められるのは即時型症状を呈するIgE依存性食物アレルギーで全年齢において認められるが、乳児期を中心に鶏卵･牛乳･小麦などが最も多く発症する。2 消化管アレルギーとその関連疾患として小児期には新生児･乳児食物蛋白誘発胃腸症、その中でも特にFPEISが新生児期･乳児期に多く認められる。3 成人期には好酸球性食道炎などの好酸球性消化管疾患や職業性、化粧品関連、遅発性IgE依存性食物アレルギーの納豆アレルギー･獣肉アレルギーなど認められる。

食物アレルギー　食物アレルギーの機序藤澤　隆夫 109巻7号 , 2021年7月 , pp.899-905

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＜Headline＞1 食物は生体にとって異物(抗原)であるが、最大の免疫臓器である腸管関連リンパ組織は継続的にこれを取り込みながら、抗原特異的制御性T細胞を産生して、生体に不利益な反応を起こさない。これを経口免疫寛容という。2 食物アレルギーとは経口免疫寛容が破綻した状態である。3 経口免疫寛容の破綻には多様なメカニズムがあるが、炎症を起こした皮膚からの抗原侵入による皮膚感作、経口免疫寛容の誘導に重要な役割を果たす腸管細菌叢の乱れ(dysbiosis)が原因として注目されている。

食物アレルギー　アレルギー検査猪又　直子 109巻7号 , 2021年7月 , pp.907-912

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＜Headline＞1 IgE介在型食物アレルギーを診断するための検査には、特異的IgE抗体測定検査、皮膚プリックテスト、負荷試験などがある。2 小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断では、ω-5グリアジン特異的IgE抗体測定検査や二次的要因(運動やアスピリン前投与)を組み合わせた負荷試験が有用である。3 口腔アレルギー症候群では、抗原の脆弱性から、標準化した抗原液を用いた検査は偽陰性になることがある。そのため、食物そのものを用いたプリックテストが診断に有用である。4 豆乳による口腔アレルギー症候群はアナフィラキシーに進展するリスクが高いにもかかわらず、大豆特異的IgE抗体測定検査が陰性になることがある。診断には大豆コンポーネントであるGly m 4特異的IgE抗体測定検査が役に立つ。

食物アレルギー　食物アレルギーの治療と対処法福冨　友馬 109巻7号 , 2021年7月 , pp.913-918

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＜Headline＞1 食物アレルギーは、その発症メカニズムに関して多様性を示す。その治療や対処方法も臨床亜型により大きく異なっている。2 対処方法として、どの臨床亜型に関しても共通するのは、原因食物を交差反応性まで考慮して回避するように指導することである。回避の厳格さは、病態や患者の重症度により異なる。3 経皮感作や経粘膜感作により食物アレルギーが発症した事例に関しては、発症の原因となったアレルゲン曝露が継続すると食物アレルギー病態は増悪し、原因となったアレルゲン曝露を回避すれば病態も改善することが多い。

食物アレルギー　食物依存性運動誘発アナフィラキシー森田　栄伸 109巻7号 , 2021年7月 , pp.919-922

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＜Headline＞1 食後の運動や食前の非ステロイド性抗炎症薬の投与などがアレルギー症状を誘発する。2 運動や非ステロイド性抗炎症薬によるアレルギー症状の誘発には消化管からの未消化アレルゲンの吸収促進がかかわっている。3 消化管上皮の透過性亢進にはアラキドン酸代謝の抑制によるタイトジャンクションの修復抑制がかかわっている。

食物アレルギー　口腔アレルギー症候群中村　陽一 109巻7号 , 2021年7月 , pp.923-927

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＜Headline＞1 口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS)は、口唇･口腔･咽頭粘膜における即時型アレルギー症状の一病型であり、一般に軽症だが、時にアナフィラキシーをきたすこともある。2 OASは花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)の病態により発症するものが多い。3 PFASは、感作経路と症状発現部位が異なる食物アレルギー(クラス2食物アレルギー)に分類されるが、OASはクラス1･クラス2アレルギーいずれの機序によっても生じる。4 PFASの主な原因は、タンパクであるBet v 1ホモログとプロフィリンは一般的に消化酵素や熱によって変性または分解されるため、通常は全身反応が生じにくい。5 OASの治療と管理は、他の食物アレルギーと同様に｢原因食物の除去｣が基本であり、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の継続的な内服によりある程度の症状緩和は期待できる。

食物アレルギー　その他の成人にみられる食物アレルギー矢上　晶子 109巻7号 , 2021年7月 , pp.929-933

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＜Headline＞1 小児期に食物アレルギーの既往のない症例でも成人になり突然食物アレルギーを発症することがある。2 交差反応性に基づいたり、経皮、経粘膜感作により発症する食物アレルギーがあり、発症機序や誘発される症状は多彩である。3 抗原解析の進歩により、より詳細に原因物質(抗原)を特定することが可能となっている。

食物アレルギー　新生児･乳児食物蛋白誘発胃腸症山田　佳之 109巻7号 , 2021年7月 , pp.935-940

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＜Headline＞1 新生児･乳児食物蛋白誘発胃腸症にはfood-protein induced enterocolitis syndrome(FPIES)、food-protein induced allergic proctocolitis(FPIAP)、food-protein induced enteropathy(FPE)が含まれる。2 日本の新生児･乳児での新生児･乳児食物蛋白誘発胃腸症は欧米のものと臨床像が異なる点があり、国内のガイドラインも公開されている。また国際的な認知も深まった。3 新しいFPIESの国際的なガイドラインではacuteとchronicなど新たな分類や基準が追加された。

食物アレルギー　セリアック病穗苅　量太 , 東山　正明 109巻7号 , 2021年7月 , pp.941-944

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＜Headline＞1 セリアック病(CD)は欧米ではcommon diseaseである。2 有症状者は一部といわれ、潜在的CDが多数存在するといわれる。3 グルテン除去食が有効なことが多いが、難治性の症例も存在する。4 HLAが発症に関連するため、日本人ではまれと考えられているが、欧米でも急速に増加しており将来的にこのまままれな疾患かどうかはわからない。5 過敏性腸症候群(IBS)などの機能性疾患と診断されている疾患にCDが含まれていることが指摘されている。

好酸球性消化管疾患　好酸球性消化管疾患の分類と機序木下　芳一 , 有吉　隆佑 , 藤垣　誠二 109巻7号 , 2021年7月 , pp.945-950

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＜Headline＞1 好酸球性消化管疾患(EGIDs)は病変の部位によって好酸球性食道炎(EoE)と好酸球性胃腸炎(EGE)に分類される。2 EGEはEoEに比べて患者数は少ないが全身の反応を伴う重症例が多い。3 EoEはTh2型の免疫反応を起こしやすいヒトの透過性が亢進した食道粘膜に食物や空中の抗原が侵入し、IL-5、IL-13、eotaxin3、TGFβ、periostin等を過剰産生することが発症に重要であると考えられる。4 EGEの発症機序はEoEと類似していると考えられるが明らかとはなっていない。

好酸球性消化管疾患　好酸球性食道炎北村　寛之 , 田中　史生 , 藤原　靖弘 109巻7号 , 2021年7月 , pp.951-955

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＜Headline＞1 好酸球性食道炎は食物のつまり感や嚥下困難などの食道機能障害に起因する症状があり、上皮内好酸球が高倍率視野で15個以上浸潤している慢性アレルギー疾患である。2 内視鏡所見では浮腫、輪状溝、白斑、縦走溝、狭窄などがみられ、それらの所見は食道上皮内の炎症所見と相関している。3 約半数以上でプロトンポンプ阻害薬もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカーが奏功し、治療の第一選択薬となっている。これらが奏功しない場合の多くの症例はステロイド嚥下療法が有効である。

好酸球性消化管疾患　好酸球性胃腸炎沖本　英子 , 石村　典久 , 石原　俊治 109巻7号 , 2021年7月 , pp.957-963

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＜Headline＞1 好酸球性胃腸炎は、寄生虫感染症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など消化管への好酸球浸潤の原因となる疾患が存在しないにもかかわらず、消化管粘膜に多くの好酸球浸潤を伴う炎症が生じることで消化管の機能障害や器質的変化をきたし、腹痛や下痢などの症状を生じる疾患である。2 Th2型の過剰免疫応答が関与した慢性のアレルギー性疾患の1つと考えられている。3 ステロイドが有効であることが多いが、副作用や減量による再燃が問題となる症例も多く、安全性の高い治療法の確立が望まれる。

好酸球性消化管疾患　好酸球性食道炎･好酸球性胃腸炎の鑑別疾患高橋　壮 , 飯島　克則 109巻7号 , 2021年7月 , pp.965-971

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＜Headline＞1 好酸球性消化管疾患は食事などによるアレルギー反応によって消化管粘膜に好酸球が浸潤し様々な症状をきたす疾患である。2 好酸球性消化管疾患は非特異的な症状や内視鏡所見が多く、診断にあたっては他疾患の除外が重要である。3 診断には生検組織中の好酸球浸潤が重要視されているが、好酸球性消化管疾患以外にも生検組織中に好酸球浸潤をきたす疾患は多く、好酸球浸潤のみをもって単純に好酸球性消化管疾患と診断することはできない。

消化管アレルギーに合併しやすいアレルギー疾患　気管支喘息内田　義孝 , 永田　真 109巻7号 , 2021年7月 , pp.973-977

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＜Headline＞1 気管支喘息は特異的IgE抗体が検出されるアトピー型と、検出されない非アトピー型に大別される。2 喘息と消化管アレルギーとの関連は不明な点が多いが、食物アレルギーには感作アレルゲンが関与し得る。3 アナフィラキシー例ではアドレナリン自己注射、また症例によりアレルゲン免疫療法を考慮する。

消化管アレルギーに合併しやすいアレルギー疾患　好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎上條　篤 , 田中　光一 109巻7号 , 2021年7月 , pp.979-983

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＜Headline＞1 好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は慢性副鼻腔炎のフェノタイプの1つであり、JESRECスコアによって診断され、中等症･重症および好酸球性中耳炎(EOM)合併例は指定難病となっている。2 EOMは非常に粘稠な鼓室貯留液を特徴とする疾患であり、その9割に気管支喘息が、7～8割にECRSが合併する。ANCA関連血管炎性中耳炎との鑑別に留意する。3 ECRS･EOMと好酸球性消化管疾患(EGIDs)との関連については必ずしも明らかになっていない。それぞれの合併率などは今後の検討課題である。

消化管アレルギーに合併しやすいアレルギー疾患　アトピー性皮膚炎井川　健 109巻7号 , 2021年7月 , pp.985-989

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＜Headline＞1 アトピー性皮膚炎(AD)においては、Th2型免疫反応にシフトした状態で起こる、いわゆるtype 2炎症の重要性に注目が集まっている。実際、type 2炎症をターゲットにした生物学的製剤が治療適応となり、良好な治療効果を発揮している。2 かつて経消化管の経路で抗原の感作が起こると考えられていた食物アレルギーであるが、近年では、抗原の感作において重要な経路は経皮感作であると考えられるようになった。3 食物アレルギーにおいては、抗原の経皮感作と消化管を介する経口免疫寛容のバランスが重要とする知見が多数報告されており、消化管アレルギーと慢性の皮膚炎症疾患であるADとの関係性に注目する必要がある。

消化管アレルギーに対する抗体製剤治療長瀬　洋之 109巻7号 , 2021年7月 , pp.991-996

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＜Headline＞1 好酸球性食道炎に対して、好酸球活性化を抑制するIL-5標的治療は、食道への好酸球浸潤は抑制するが、有意な症状改善が得られていない。2 一方、好酸球性食道炎に対して、IL-13抗体やIL-13とIL-4の双方を阻害するIL-4受容体α抗体であるデュピルマブの有効性が最近報告され、症状改善効果も示された。デュピルマブの第III相試験が進行中である。3 好酸球性胃腸炎･十二指腸炎に対して、好酸球を除去し、マスト細胞の活性化を抑制するSiglec-8抗体の有用性が、他のアレルギー疾患に先駆けて報告された。第III相試験が進行中である。4 食物アレルギーに対する経口免疫療法に、抗IgE抗体であるオマリズマブ投与を併用することで、摂取量を安全に増やし、脱感作率が高められることが報告された。第III相試験が進行中である。

好酸球関連消化管疾患と食道運動異常症の境界について　好酸球性食道筋炎(eosinophilic esophageal myositis) 佐藤　裕樹 , 高橋　一也 , 寺井　崇二 109巻7号 , 2021年7月 , pp.997-1000

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＜Headline＞1 好酸球性食道炎は食道粘膜に好酸球浸潤を認めることで診断されるアレルギー関連消化管疾患である。2 一方で、好酸球性胃腸炎は好酸球が浸潤する層により粘膜型･筋層型･漿膜型に分類される。3 食道筋層への内視鏡アプローチが可能となり、食道筋層に好酸球浸潤をきたす食道運動異常症(好酸球性食道筋炎)の存在が示唆される。

連載

心電図は1枚の窓(第2回)　失神発作を主訴にして受診した46歳男性篠原　徹二 , 村川　裕二 109巻7号 , 2021年7月 , pp.881-882,1001-1003

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注目の新薬　シルガード^🄬9(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン) 宮城　悦子 , 助川　明子 , 水島　大一 109巻7号 , 2021年7月 , pp.1005-1009

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医療裁判の現場から(第18回)　看護師により気管切開カニューレから痰の吸引を受けた際に容態が急変し遷延性意識障害となったことについて損害賠償請求が認められた事例鵜澤　亜紀子 109巻7号 , 2021年7月 , pp.1011-1016

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診断と治療
109巻7号
(2021年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0370-999X 診断と治療社

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