このセッシヨンの第Ⅰ席では,東京医大の花房先生が,色覚検査の際の視標を従来のものより大きくした場合の検査結渠を報告した。指標を大きくすると,色盲では均等巾が短縮する例がみられた。これに,大庭先生(鹿児島大)が均等巾の変化することの意味について質問した。第2席は,京大の北岡先生が,網膜の色素上皮細胞が桿体外節を貧食する因子として,MPAが関係するであろうと報告した。これに,斎藤先生(札幌医大),玉井先生(東北大)がロドプシンとの関係などについて質問した。第3席では,慈恵医大の郡司先生が最終閾値到達時間が60分以下の場合には,暗順応曲線が視標の人きさによって変化することから空間的寄せ集め機構が存在するであろうと報告した。これに,大庭先生(鹿児島大),玉井先生(東北大),阿部先生(愛媛大)がこの現象は神経性のものか,錐体と桿体とのインターアクションの有無等について質問した。第4席および第5席の札幌医人の大黒先生および斉藤先生は,視興奮伝達の初期過程に唄要な役割を持っGTP結合蛋白質トランスデューシンを分類してその作用を究明した。第6席は,慈恵医人の北原先生が強い白色光を長期間照射された後,青錐体の感度が低下した例を報告した。これに、太田先生(東京医大),市川先生(名占屋市立人)らが自覚するものか,そのオリジン等を質問した。第7席は滋賀医大の佐々本先生が,網膜内に豊富に含まれているタウリンが光を遮断して飼育しラットでは減少していることを示し,タウリンが光刺激受容系に関与しているのではないかと報告した。これに,北岡先生(京大)が,暗黒で飼育した場合に全身的に正常な発育が保証されるかとの質問をした。第8席は,鹿児島大の内匠先生がレクチンを用いて,視細胞外節の複合糖質の分布を検討した。第9席は,京大の本田先生が,網膜剥離の視細胞とMUIIer細胞の機能を特異酵素の活性を測定することで検討した。6カ月以後でも視細胞の機能はある程度存在するという。これに,玉井先生ら(東北大)は硝子体手術の影響,坪井先生(阪大)は可逆性かどうかを質問した。第10席は,阪大の坪井先生がイヌの色素上皮 脈絡膜を用いて,色素上皮の水輸送を究明した。これに対して,上野先生(京大)は,この結果では吸引方向のみに水が輸送されているが,この意味についての質問があった。第11席の広島大の加登本先生および第12席の京大の喜多先生が渦静脈を結紮したときの,網膜下液の吸収時間を測定した。これに,座長の雨宮先生(京大)は組織学的にどうなっているかを質問した。第13席は,東大の小谷野先生が,色素上皮—脈絡膜のFluorescein等の移送を膜電位の測定で検討した。これに坪井先生(阪大),玉井先生(東北大)がFluores-ceinの濃度と移送の関係などについて質問をした。第14席は,大阪市大の森脇先生が,色素上皮の貧食能は網膜裂孔の部分で上昇していることを,ラテックスの取り込みを指標として観察した。第15席は,高岡市の飛見先生が,網膜下液の成分について報告した。
このセッションでは,本年は組織学的,生理学的な発表よりも,生化学的,酵素化学的な発表が多かった。いずれにせよ,網膜剥離も従来のように治療方法一点張りでなく,基礎的な研究が主流を占めてきたことを感じた。