検査と技術 48巻1号 (2020年1月)

病気のはなし

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Point

●インフルエンザの診断に重要なのは流行歴や臨床症状であり,必ずしも全例に検査を行う必要はない.

●わが国で広く行われているキットによるインフルエンザ迅速診断は感度の問題があり,その特性を理解したうえで行うことが重要で,ルーチンに施行するべきではない.

●インフルエンザ関連肺炎が疑われる場合は,血液検査など各種検査を考慮する.特にインフルエンザ後二次性肺炎では肺炎球菌,インフルエンザ桿菌に加え,黄色ブドウ球菌を起因菌として想起すべきであり,特にMRSAが問題となる.

●インフルエンザ後二次性肺炎を考える際に,喀痰のグラム染色は起因菌の推定および抗菌薬選択に有用であるため,積極的に行うべきである.

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Point

●検査の意義や評価のポイントを理解したうえで,検査結果を説明する.

●検査結果の説明を行う際には,数値だけではなく,できるだけ理解しやすいように結果の視覚化(グラフや表など)をする.

●多職種間で患者情報の共有化(多職種連携)を行い,患者も参加した形のチーム全体としての糖尿病療養指導を行う.

技術講座 その他

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Point

●検体を採取する医療従事者が正しい検査前工程を順守するために,検体ラベルの印字を簡潔でわかりやすいものとすることが肝要です.

●検体検査結果はネットワーク経由でリアルタイムに診療科に送信されるので,偽高値・偽低値を検出する臨床検査情報システム(LIS)の役割は大きいものとなっています.

●医療従事者と情報システムを開発する企業との間で知識を共有するために,医療情報技師の資格は有用であるといえます.

●医療の変化に応じた情報システムの導入・維持のために,検査技術と情報処理技術との両方に長けた臨床検査技師の必要性がますます高くなっています.

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Point

●がんゲノム医療において,病理部門が担う大きな役割の1つは,質の高いホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織ブロックを作製することです.

●がん遺伝子パネル検査におけるプレアナリシス段階,特に固定前プロセスにおいては,診療科の理解と協力が不可欠です.

●検体検査の精度を確保するためには,責任者の配置・各種標準作業書・日誌の作成・精度管理などが求められます.

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Point

●超音波エラストグラフィによる肝硬度測定は非侵襲的な肝線維化評価法である.

●せん断波エラストグラフィ(SWE)測定にはコツがありテクニカルエラーでのバラつきや偽高値も存在するため,精度の高い検査には技術の研さんが必要である.

●エラストグラフィは良好な肝硬変診断能を有しており,今後増加する抗ウイルス治療後の経過観察や脂肪性肝疾患の線維化評価にも有用である.

●線維化以外でも炎症やうっ血,胆道内圧上昇などで肝硬度は上昇するため注意が必要である.

トピックス

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はじめに

 自己免疫性水疱症は,表皮角化細胞(ケラチノサイト)の細胞膜や表皮基底膜部に存在する蛋白に対する自己抗体によって,皮膚や粘膜に水疱やびらんなどの皮膚症状を呈する疾患群です.角化細胞の細胞膜に存在する蛋白に対する自己抗体によって表皮内に水疱が形成される“天疱瘡群”と,表皮基底膜部に存在する蛋白に対する自己抗体によって表皮下に水疱が形成される“類天疱瘡群”の2群に分けられます(表1).また,IgG自己抗体が検出される疾患と,IgA自己抗体が検出される疾患があります(表1).頻度として,水疱性類天疱瘡が最も高く,次いで尋常性天疱瘡や落葉状天疱瘡が高いとされています.天疱瘡群のほとんどの亜型と,水疱性類天疱瘡,粘膜類天疱瘡,後天性表皮水疱症は,中等症以上の場合は厚生労働省の指定難病に含まれます.

 診断には,臨床症状に加え,病理組織学的検査と自己抗体の検出が必要です1,2).典型的な症例では診断が容易ですが,非典型的な症例では一般的な検査で自己抗体が検出されないことがあり,しばしば診断が困難です.そこで本稿では,自己免疫性水疱症の診断のために行われる検査法について解説します.

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抗菌薬適正使用と臨床検査技師

 2016年に薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)アクションプランが打ち出され,AMR対策の1つとして抗菌薬適正使用が求められている.2018年4月には抗菌薬適正使用支援加算が新たに設定され,抗菌薬適正使用への機運は高まっている.また,抗菌薬適正使用支援加算では臨床検査技師の要件に「微生物検査にかかわる」という文言が加わる1)など,抗菌薬適正使用における臨床微生物検査技師の働きへの期待が伺える.本稿では,抗菌薬適正使用支援戦略の1つであるSR(selective reporting)について解説する.

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はじめに

 病院機能を評価する第三者機関はいくつかある.公益財団法人日本医療機能評価機構や米国の病院機能評価機構である医療施設認定合同機構(Joint Commission:JC),国際的な審査を行う国際病院評価機構(Joint Commission International:JCI)などあるが,いずれも審査機関を認定する“医療の質に関する国際学会(International Society for Quality in Health Care:ISQua)”により認定された審査機関である.JCIは基準を設けて審査をすると同時に,医療サービスの質・安全性・効率性の向上を支援する目的に,国際的認証プログラムやアセスメントツールの提供も行う.2019年8月17日時点で,世界72カ国で1,090の病院が認証を取得し1),日本では28病院が取得している.しかしアジアでは中国103,タイ67,インドネシア31,韓国24,シンガポール21,マレーシア13,台湾13,フィリピン5,ベトナム4,香港1施設が認定されており,必ずしも日本が多いとはいえない.当院は当時,国際支援室を作るなど外国籍患者を受け入れる環境整備を始めたばかりであり,JCI受審と同時期に“外国人患者受入れ医療機関認証制度(Japan Medical Service Accreditation for International Patients:JMIP)”受審など,医療グローバル化に対応し,より厳しい国際的な客観的視点からの審査にチャレンジすることを通して,当院自体の医療の質を向上させたいと考えていた.2015年12月に初回認証を,2018年12月に2回目の認証を受けた.筆者は医療の質の改善および患者の安全(quality improvement and patient safety:QPS)リーダーという立場で審査にかかわった.本稿では,その経験からJCI審査を通して学んだことを述べてみたい.

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がんゲノム医療とがんゲノム医療中核拠点病院

 厚生労働省によると,2017年のわが国におけるがんによる死亡者数は373,334人(男性220,398人,女性152,936人)1)であり,がん罹患数は年々増加している.

 ヒトゲノム解析計画では,2013年に1人分の全ゲノムが解析された.ゲノム研究が進むにつれて,がん発生に“遺伝子変異”がかかわっていることが明らかになった.現在,コンパニオン診断を含め,特定の遺伝子変異をターゲットとした治療薬剤が開発され,治療に使用されている.がん発生の原因となっている遺伝子変異は,患者ごとにプロファイルが異なるため,患者ごとに効果が期待できる薬剤も異なる.“がんゲノム医療”は,がん患者の遺伝子変異を調べ,治療薬剤やエントリー可能な治験情報を探索,提供するものであり,がん領域の“個別化医療”といえる.しかし,個人特定に直結するゲノム情報は厳重に取扱う必要があり,技術やシステムなどの環境が整備された施設にて,がんゲノム医療を行うことが求められた.この医療を提供する施設として,2018年2月に厚生労働省は11施設の“がんゲノム医療中核拠点病院”(以下,中核拠点病院)と,100施設の“がんゲノム医療連携病院”(以下,連携病院)を指定した.中核拠点病院は,表1に挙げた役割を担うことが求められている.

過去問deセルフチェック!

貧血
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 日常診療において,末梢血のヘモグロビン濃度が低下する貧血の患者に遭遇する機会は極めて多く,また,国家試験にも頻出しています(今回の問題は全て2019年の問題です).貧血の診療においては,その原因を確定することが何より重要ですが,これは通常の血算と生化学スクリーニング検査だけでほぼ推察可能である場合が多いです.赤血球恒数,特に平均赤血球容積(mean corpuscular volume:MCV)に注目することが重要です(表1).MCV(単位はfL)は赤血球の大きさを表す指標であり,ヘマトクリット(hematocrit:Ht)(%)÷赤血球数(104)×1,000で計算できますが,通常は自動血球計数器により算出されます.

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はじめに

 悪性リンパ腫をはじめとするリンパ系腫瘍の診断は,病理組織学的検査やフローサイトメトリーを中心に行われるが,反応性病変との鑑別が困難なケースがある.また,針生検や内視鏡下生検などの微量検体においては,細胞が少ないため正確な診断に苦慮することがある.免疫関連遺伝子再構成検査は,B細胞およびT細胞のクロナリティを証明する検査であり,確定診断および極少数の腫瘍細胞の検出に有力な情報を提供する.

 検査法としてサザンブロット(Southern blot)法とPCR(polymerase chain reaction)法があり,本稿では両法の原理およびメリット・デメリットを紹介し,その使い分けについて解説する.

疾患と検査値の推移

ギラン・バレー症候群 川邉 清一
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Point

●ギラン・バレー症候群(GBS)は自己免疫性に末梢神経が障害される疾患である.

●さまざまな感染症後に発症することが多い.

●髄鞘が障害される脱髄型と軸索が障害される軸索型がある.

●診断には脳脊髄液検査,末梢神経伝導検査,血液中の抗ガングリオシド抗体の検出などが必要である.

●重症例では呼吸機能検査,血液ガス検査,血液生化学検査,血清IgG検査などが行われる.

連載 帰ってきた やなさん。・6

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 恐る恐る振り返ると……女の人が立ってる〜! はっ……他の宿泊者だった.その女性は,「ちょうど一年前にも来ました.そのときは,写真に光の玉が写り込んだのに,今日は全く写らないのよ」と話しかけてきた.いや,いやいや……めちゃくちゃ写り込みましたよ! 怖くなるくらい!と思いつつ,心臓の鼓動が激しくなった.「へぇ……外でも……写りませんでしたか?」と,軽く質問ジャブをした柳田……すると,「全然!外でも何も写らないのよ」との返事.えー! めちゃくちゃ写ってたよ! 私のカメラにはバキバキに写り込んだよ,光の玉がー!と思いつつ,「あはあは……」と引きつる柳田.恐怖! そんな恐怖を和らげるために柳田は,口を開いた.「あの……さっきから,紙風船が動くんです……気のせいですかねぇ.はは」と.すると,女性が突然……「ねぇ.遊ぼうよ……」と呟き始めた.出たー! この人もヒトじゃない? ヒトに見えるけどヒトじゃないのか!?とブルブルしていると,また紙風船が揺れ始めた.どうやら,この女性は座敷わらしに話しかけているようだった.

 女性が「ねえ.もっと揺らして…….もっと大きく揺らしてよ……」と囁くと,それに応えるかのように,1つの紙風船が激しく揺れ始めた.ぎゃー! 未知との遭遇ぅー! もう,目の前の光景と状況が整理しきれない柳田.会話しとるんか.この人,座敷わらしと会話しとるんか! もう,どっちも怖いぃ! 白目を向きそうになっている私に,女性は「(座敷わらしが)……いるわね」と.いる! いるいる! 私の目の前に座敷わらしと,もう1人……座敷わらしと会話しているアナタという妖怪がいますとも!

連載 生理検査のアーチファクト・31

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こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1aの右耳の気導聴力検査の結果は125〜8,000Hzまで全ての周波数で正常である.左耳の結果は125〜8,000Hzまで55〜65dBと聴力閾値レベルの上昇がみられ,聴力の程度は中等度の難聴である.マスキングノイズレベル(気導)は,右・左耳とも全ての周波数で0dBである.

 図1bの右耳の気導聴力検査の結果は125〜8,000Hzまで全ての周波数で正常である.左耳の結果は125〜8,000Hzまで70〜110dBとスケールアウト(オージオメータの最大出力でも検査音の聴取ができない)で,聴力の程度は高度の難聴である.マスキングノイズレベル(気導)は,右耳は全ての周波数で0dB,左耳は40〜65dBである.図1a,bは同じ人のオージオグラムである.ではどちらが正しいのか.

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Q 糖尿病性末梢神経障害で,なぜ神経伝導検査のF波検査が重要なのですか?

A 糖尿病性末梢神経障害の神経生理検査所見は腓腹神経の感覚神経活動電位(sensory nerve action potential:SNAP)振幅の低下,F波最小潜時の延長とされています.そのため,これらの検査を簡便に行えるF波検査(F-study)は非常に有用であると考えます.

臨床検査のピットフォール

細菌の自然耐性 口広 智一
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はじめに

■自然耐性とは

 細菌感染症の治療には抗菌薬が使用されており,その治療上の有効性を知るための検査として薬剤感受性試験が実施されている.抗菌薬ディスクやプレートを用いて,一定濃度の抗菌薬存在下における菌の発育状況を観察し,菌に対する薬剤感受性を判定するものである.細菌の中には,生まれつき特定の抗菌薬に耐性を示す菌種が存在し,それは“自然耐性”と呼ばれている.内因性耐性とも呼ばれ,先天的に耐性機構を持ち合わせているため,その抗菌薬は効果があるはずがないことから,そもそもその菌種にその薬剤の感受性試験を実施する必要はない.

ワンポイントアドバイス

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はじめに

 尿蛋白試験紙法では,種々の影響により偽反応が起こる.そのため,確認方法として,定量法や簡易的に多くの施設で用いられているスルホサリチル酸(sulfosalicylic acid:SSA)法が利用されている.通常,尿蛋白試験紙法と比較して,SSA法は感度が高く多くの蛋白と反応するが,時に結果が逆転することがある.

 本稿では,尿蛋白試験紙法とSSA法の原理,方法,特長,注意点についてまとめたうえで,尿蛋白試験紙法とSSA法の使い分けについて解説する.

ラボクイズ

微生物検査 今井 和花

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目次

『臨床検査』1月号のお知らせ

あとがき・次号予告 谷口 智也
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 新年あけましておめでとうございます.今年も「検査と技術」をご愛読のほど,よろしくお願いします.そして,いよいよ東京2020オリンピック・パラリンピック開催年となりました.思えばここまでくるのに,数々のプレゼン・選考および開催地決定後にも長い道のりがありました.

 さて,新年早々唐突ですが,100年前の1920年(大正9年),日本で何があったでしょうか.ちょうどこの年に,第1回の箱根駅伝が開催されていました.現在では正月の駅伝大会として親しまれていますが,当時は2月に行われていたようで,参加校もわずか4校だったそうです.現在の常連大学でも,選手を10人そろえられず,参加を断念する学校が多かったようです.そして,この年の4月からはベルギーのアントワープで夏季オリンピックが行われています.この大会で日本人のスポーツ選手としては,史上初めて銀メダル(男子テニス)を獲得し,日本は合計2個のメダルを受賞しています.その後,1964年の東京オリンピックではメダル29個を,先の大会2016年リオデジャネイロでは41個ものメダルを取り,日本のスポーツ界は確実に進歩・成長をしてきました.大正9年からちょうど100年後にあたる令和2年,いったいいくつのメダルを獲得するのでしょうか,楽しみです.

基本情報

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検査と技術
48巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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