連載 帰ってきた やなさん。・6
座敷わらしのお宿とやなさん。(後編)
柳田 絵美衣
1
1慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
pp.68
発行日 2020年1月1日
Published Date 2020/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207867
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恐る恐る振り返ると……女の人が立ってる〜! はっ……他の宿泊者だった.その女性は,「ちょうど一年前にも来ました.そのときは,写真に光の玉が写り込んだのに,今日は全く写らないのよ」と話しかけてきた.いや,いやいや……めちゃくちゃ写り込みましたよ! 怖くなるくらい!と思いつつ,心臓の鼓動が激しくなった.「へぇ……外でも……写りませんでしたか?」と,軽く質問ジャブをした柳田……すると,「全然!外でも何も写らないのよ」との返事.えー! めちゃくちゃ写ってたよ! 私のカメラにはバキバキに写り込んだよ,光の玉がー!と思いつつ,「あはあは……」と引きつる柳田.恐怖! そんな恐怖を和らげるために柳田は,口を開いた.「あの……さっきから,紙風船が動くんです……気のせいですかねぇ.はは」と.すると,女性が突然……「ねぇ.遊ぼうよ……」と呟き始めた.出たー! この人もヒトじゃない? ヒトに見えるけどヒトじゃないのか!?とブルブルしていると,また紙風船が揺れ始めた.どうやら,この女性は座敷わらしに話しかけているようだった.
女性が「ねえ.もっと揺らして…….もっと大きく揺らしてよ……」と囁くと,それに応えるかのように,1つの紙風船が激しく揺れ始めた.ぎゃー! 未知との遭遇ぅー! もう,目の前の光景と状況が整理しきれない柳田.会話しとるんか.この人,座敷わらしと会話しとるんか! もう,どっちも怖いぃ! 白目を向きそうになっている私に,女性は「(座敷わらしが)……いるわね」と.いる! いるいる! 私の目の前に座敷わらしと,もう1人……座敷わらしと会話しているアナタという妖怪がいますとも!
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