検査と技術 46巻2号 (2018年2月)

病気のはなし

細菌性髄膜炎 星野 直
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Point

●細菌性髄膜炎は,菌血症を介して発症する侵襲性細菌感染症であり,死亡例を5%程度,後遺症を15%程度認める重篤な細菌感染症である.

●インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン,肺炎球菌結合型ワクチンの普及により,細菌性髄膜炎を中心とした小児侵襲性細菌感染症の疫学は大きく変化した.

●乳児細菌性髄膜炎は,非典型的症状で発症することがあり,診断に際し注意が必要である.

●初期治療では,想定される原因菌や薬剤耐性を考慮した強力な抗菌薬療法を行う.抗菌薬の併用を要することも少なくない.

技術講座 輸血

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Point

●クリニカルパスは手術など一連の医療行為を標準化し時系列順に表示して,診療の実施記録や患者説明に用いるもので,医療の標準化,情報共有,インフォームド・コンセントだけでなく,実施した医療行為の評価や医療の質の向上のためにも有用である.

●クリニカルパスを自己血輸血療法の質の向上に用いるためには,適切なアウトカムを設定しそのバリアンス分析を行うことが重要である.

●自己血輸血におけるクリニカルパスのアウトカムは患者中心の輸血医療(PBM)の実現であると捉えることができる.

●現在使用されているクリニカルパスは,自己血輸血療法のうち自己血貯血に特化したものが多いが,将来的には自己血輸血の実施や輸血効果の評価,輸血後の適正な在庫管理まで含んだ,診療科・職種横断型の統合電子パスの開発が望ましい.

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はじめに

 末梢血液や腫瘍検体を用いた抗原特異的T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)の検出には,tetramerを用いた検討が普及してきている.tetramerを用いたCTLの動態に関する臨床報告は,CMV(cytomegalovirus)を中心としたウイルス感染に関するものが多い.ウイルス抗原特異的CTLの検出は比較的容易であるが,腫瘍抗原特異的CTLは末梢血中には0.1%以下しか存在しないことが多く,臨床的指標にするためには解析方法の工夫が必要である.本稿では,自験例を中心に,tetramerを用いた腫瘍抗原特異的CTLの解析方法を解説する.

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はじめに

 尿中に出現するヘモジデリン顆粒は血管内溶血を反映する検査として,簡便かつ経済的に検査可能である.血管内溶血をきたす代表的疾患として自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)が知られているが,稀少疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)においても尿中にヘモジデリン顆粒が多数検出される.本稿ではPNHの病態について解説し,尿中ヘモジデリン顆粒測定における診断時,また治療開始後の有用性について述べる.

過去問deセルフチェック!

微生物検査
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 特殊な栄養素が必要な細菌もしくはある特定の細菌を選択的に発育させるための培地は頻出で,毎年のように出題されている.主な培地名,特記すべき主成分,選択物質,対象となる菌(属名あるいは菌種名)を表1にまとめたので,培地と菌の組み合わせを整理しておきたい.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・24

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[前号(1月号)より続く]

仲間の力

 山藤:先生のお話や書籍には本当に共感するところが多いです.最近では先生の書かれた本『実践・脳を活かす幸福学 無意識の力を伸ばす8つの講義』(講談社,2017年9月刊)を読ませていただいて,幸せになるために,まず「自分を知る」というところと,そこから入る「世界を知る」という2つのステップにとても共感しました.ここには,実は自分を知るところでつまずいている人が多いとあります.僕も同感でして,どのような自分であるか,どのような自分になりたいかを,これまでのこの対談に出ていただいた智慧の賢人たちの言葉や,そこからの気づきによって考えてもらえたらと思って,この連載をやってきました.そして,連載の第1回目に,僕が書いた「医療人としての感性を高める〜「感じる」を「信じる」,そして「考える」〜ということ」(本誌44巻1号)の中で,臨床検査技師を取り巻く「世界のシステム」という図を掲載しています(62頁).臨床検査技師のいまの教育は,臨床検査技師としてのスキルを高めていくことに終始しがちであります.しかし,臨床検査技師という枠の外には医療人という大きな枠があり,その外には社会という人間のシステムがあって,その外には世界(宇宙)がある,という価値観で外の世界とつながっていくと,より豊かな臨床検査技師になって戻ってくることができる,ということを言いたくてこの図を作ったんです.

 前野:はい,その通りですね.似ていますね.

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入職後からの経歴,研究に対する壁について

 初めにせんえつながら私の経歴を紹介させていただきたい(図1).私は,2002年3月に東邦大学理学部生物分子科学科を卒業後,同年4月,東京大学医学部附属病院(以下,東大病院)検査部に入職した.同じ東邦大学を卒業され,東大病院検査部に入職した諸先輩方が,病院で働きながら研究し,学位を取得していることを知っていたため,私も入職直後から日常業務に加えて研究をするという意識を常にもって働いていた.ところが当時,東大病院検査部は予想に反して,それほど研究が活発に行われておらず,学位取得のための研究テーマを見つけることがなかなか困難であった.テーマ探しに悪戦苦闘していた頃,山梨大学より矢冨裕先生(現・東大病院検査部長)が検査部副部長として東大病院に移られた.矢冨先生は,研究する技師を探しておられたため,研究テーマを必死に探していた私にとってはまさに渡りに船であった.おかげで,矢冨先生から研究テーマ,さらには研究指導もいただき,入職2年目(2003年10月)より,東邦大学大学院理学研究科の博士前期(修士)課程に社会人大学院生として入学,2008年3月に博士号(理学)を取得することができた.

 ほかの多くの病院検査部でもそうであるように,東大病院検査部でも日常業務終了後,自己研さんのために研究を行う臨床検査技師は少数派であった.したがって,周りの先輩技師からの逆風がなかったわけではない.しかしながら,当時,矢冨先生や戸塚実技師長,直属の上司であった大久保滋夫副技師長(現・文京学院大学教授)の理解が得られていたこと,また,夜22時頃まで研究した後は,決まっていつもの定食屋に一緒に行く研究仲間もいたことから,幸いにも研究を苦痛に感じたことは全くなかった.また,当たり前のことだが,臨床検査技師は日常業務がメインである.したがって,研究も人一倍行ったが,日常業務に関連する仕事(業務改善,ISO,システム更新,実習生の教育など)も人一倍行った.次第に,日常検査に関して先輩方に頼まれることも増え,日常検査において貢献できるようになってくると,より多くの方から研究に対する理解が得られるように変わっていったと記憶している.

連載 生理検査のアーチファクト・12

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こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1の□で囲んだ波形,図2の全体,特に前頭部・側頭部にみられる波形はなんでしょうか? 図1は71歳の女性の脳波で,□で囲んだ波形は唾液を飲み込んだときの筋電図である.飲み込みの具合によって振幅や持続時間が変わってくる.左は軽く飲み込み,右は強く長く飲み込んだときの筋電図である.図2は16歳の女性の脳波で,全体に筋電図が混入しているが,特に前頭部は目を強く閉じたことによる混入,側頭部は歯を嚙みしめたことによる混入である.同じ筋電図でも被検者の状態によって異なって出現する.

 初心者にとって区別しにくいアーチファクトは,交流の混入である.図3は在胎週数34週4日の男児の脳波である.新生児の集中治療室で保育器に入っており,周囲には人工呼吸器やシリンジ点滴が5本ほどついているなかでの記録で,周辺機器の交流が混入している.ACフィルターをかけてもまだ交流の混入がある.ACフィルターをかけた状態のみを見た場合,振幅も低く筋電図と区別できない場合が多々ある.そういう場合はペーパー速度を変えてみると鑑別は容易である.筋電図では不規則な周波数の連続であり,交流混入は規則正しい正弦波形(sine wave)を示す1)(図4).

臨床検査のピットフォール

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はじめに

 頸動脈超音波検査は,動脈硬化のスクリーニングや脳血管障害の診療において欠かせない検査である.しかしながら,検査するにあたり自覚症状や身体所見などを把握しておかないと病態を見逃してしまうことがある.今回は,自覚症状から病態を確認できた症例を提示解説する.

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はじめに

 がんの早期診断のためには,簡便で精度の高いスクリーニング検査が必要である.なかでも血液検査は有望なスクリーニング検査の1つであり,前立腺がんにおけるPSA(prostate specific antigen)などは臨床現場でその威力を発揮している.一方,膵がんを代表とする難治がんにおいては,有効なスクリーニング検査がなく,CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)などの腫瘍マーカーも一定の効果は上げているものの,スクリーニング検査としては不十分である.近年,複数のがんにおいて血漿中遊離アミノ酸(plasma free amino acid:PFAA)濃度が特徴的な変動を示すことが報告されており1,2),それを応用したがんスクリーニング検査が開発されている.

Laboratory Practice 〈一般〉

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はじめに

 近年,多くの施設で尿中有形成分分析装置が導入されており,尿沈渣検査の省力化・迅速化に寄与している.尿中有形成分分析装置にはフローサイトメトリー(flow cytometry:FCM)方式と画像撮像方式の2つの原理が存在しており,施設により使い分けがなされている.本稿では各社より発売されている尿中有形成分分析装置の原理を簡単に説明し,望ましい運用方法について述べる.

Q&A 読者質問箱

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Q HLAの表記法について教えてください.

A ヒト第6染色体短腕上には,主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)と呼ばれる移植の成否や免疫応答にかかわる重要な遺伝子群が存在しています.ヒトのMHCは,ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と呼ばれており,クラスⅠに属する抗原(A,B,C)とクラスⅡに属する抗原(DR,DP,DQ)に分類されますが,それぞれの遺伝子座ごとに著しい多型性が認められます.臓器および造血幹細胞移植に際して,ドナーとレシピエント間のHLA型の不一致が拒絶反応を誘導することや,輸血や妊娠時などにはしばしばHLAに対して抗体を産生することが知られています.そのため,HLA検査は,臓器・造血幹細胞移植や血小板輸血においてドナーとレシピエント間の適合性を判定するのに必須の検査となっています.また,HLA型は,多種の自己免疫疾患と強い相関を示し,各種疾患の発症機序解明などにおいてもその検査は重要な意義をもちます.

ラボクイズ

血液検査 井本 清美

1月号の解答と解説 山田 景土

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『臨床検査』2月号のお知らせ

あとがき・次号予告 矢冨 裕
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 いま,2017年の年末にこのあとがきを書いております.本号がお手元に届くのは2018年に入ってからですが,読者の皆さまにおかれましては順調に新年のスタートダッシュを切られていることをお祈りしております.

 臨床検査が発展の一途をたどっていること,本誌でもご紹介できていると思いますが,どんなに新しい先進的検査が導入されても,その検査結果が信頼できないものであれば,意味がありません.検査の品質・精度を確保することの重要性は論をまちませんが,これまでのわが国の法令上では,検体検査の結果の質を担保する事項については十分な基準が定められておらず,例えば,臨床検査の質を担保するための法律(CLIA法)にのっとり臨床検査が実施されている米国などの諸外国と比べても不十分と言わざるを得ない状況でした.そうしたところに,先進的検査の代表ともいうべき,ゲノム医療の実用化を支える遺伝子関連検査の精度の確保などの必要性にかかわる議論がきっかけとなり,検体検査の品質・精度の確保を盛り込んだ医療法等の一部を改正する法律が2017年6月7日に成立しました.この法律は公布後1年6カ月後に施行されることになっており,2017年から2018年にかけて,厚生労働省の検討会において,具体的な基準が議論されています.臨床検査に携わる者にとっては当たり前である検査の品質・精度を保つことの重要性を具現化する方向で進むことを祈るばかりです.

基本情報

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検査と技術
46巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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