検査と技術 46巻1号 (2018年1月)

病気のはなし

急性骨髄性白血病 竹下 明裕
  • 文献概要を表示

Point

●白血病は血液の癌である.

●正常な赤血球,白血球,血小板が減少する.

●各血球減少に起因する多彩な症状を呈する.

●染色体,遺伝子変異により予後が異なる.

●治療の主体は化学療法で特異的な分子異常を伴う例には分子標的療法による.

  • 文献概要を表示

Point

●神経伝導検査(NCS)において,検査対象となる神経の走行やその支配などの解剖学的な構造をできるだけ正確に把握しておくことは,障害の部位や範囲の鑑別,臨床症状の判別において重要である.

●運動神経伝導検査(MCS)や感覚神経伝導検査(SCS)の原理や電気生理学的特徴を正しく理解することは,検査技術とともに検査の精度や信頼性を確保するうえで必要となる.

●潜時,振幅,持続時間の計測は,活動電位の評価の基本であり,それぞれの臨床的解釈を理解しておくことは,臨床診断,疾患の鑑別や重症度の客観的評価として重要である.

  • 文献概要を表示

Point

●唾液腺腫瘍において腺房細胞癌(ACC)の発生率は2〜3%とまれである.

●細胞形態が多彩であり,多形腺腫など良性疾患と見誤ることが多い.

●細胞形と増殖パターンの組み合わせが多彩性を生んでいる.

●正常細胞像,組織像を理解し,ACCの細胞形態を個々に理解することが適正な診断の鍵となる.

トピックス

腎臓の再生 藤本 俊成 , 横尾 隆
  • 文献概要を表示

はじめに

 腎臓には糸球体,近位尿細管,ヘンレ(Henle)のループ,遠位尿細管,集合管から構成される最小機能単位であるネフロンが約100万個存在し,複雑に配置されている.さらには間質,脈管,神経など多種多様な構成要素が三次元的に秩序だって成り立ち,おのおのが互いに協調することで,血液からの老廃物や余分な水分を濾過し,尿として排泄している.また,腎臓は内分泌臓器でもあり,エリスロポエチンやビタミンDなどのホルモン調節により体内の恒常性を維持している.腎臓のそれら機能が失われ末期腎不全に至った場合,機能代替のため一生涯の透析治療が生命を維持していくうえで必要となる.透析治療から離脱するには,移植治療が唯一の方法であるが,移植臓器不足は深刻で,現行の治療法だけでは限界を迎えている.そのため“再生医療”に大きな期待が寄せられている.自己の細胞からもう一度新たな腎臓を再構築することが可能となれば,透析・移植治療に代わる真に究極の治療法となる.

 人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)はその発見以後,再生医療の重要なツールとなっている.iPS細胞は体細胞から人工的に作られた多能性幹細胞であり,体内の種々の細胞・組織に分化する能力を有している.iPS細胞から網膜色素上皮シート,心筋シートなどが作製可能となっており,次々とこれらの組織再生による臨床応用が実施・計画される一方で,腎臓領域における臨床応用はあらゆる臓器のなかで最も遅れをとっている.これはひとえに,腎臓の形態学的・機能的複雑性による.単一組織のみの再生とは異なり,複雑な形態・機能をもった腎臓を再生することは非常に至難の業であると考えられている.このようななか,近年になって腎臓再生に有用な方法がいくつか報告されてきている.本稿では,①組織工学を用いた方法,②幹細胞(iPS細胞など)を用いた方法に大別して概説したいと思う.

  • 文献概要を表示

はじめに

 末期腎不全の予備軍である慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,心血管系疾患(cardiovascular disease:CVD)の危険因子でもある.CKDは,尿所見の異常または腎機能の低下が3カ月以上続く状態と定義される.CKDの多くは,以下の理由でポドサイト障害による糸球体硬化により生じると考えられている1)

①CKD増悪因子である蛋白尿はポドサイト障害と関連している

②多くの糸球体疾患および動物モデルにポドサイト障害が存在している

 本稿では,ポドサイト障害の最近のトピックスについて,われわれの報告と,最近注目されている非対称性ジメチルアルギニン(asymmetric dimethylarginine:ADMA)を中心に記す.

過去問deセルフチェック!

心電図検査
  • 文献概要を表示

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
  • 文献概要を表示

 運動負荷心電図検査を実施する直前には,必ず被験者に問診を行い,既往症,現病症,検査結果などをチェックする必要がある.そのうえで,運動負荷心電図検査の禁忌事項への該当の有無を確認してから検査を開始しなければならない.

 運動負荷心電図検査の実施を見合わせる条件としては,いかなる場合でも実施してはいけない絶対禁忌がある.絶対禁忌の疾患には,①急性心筋梗塞や不安定狭心症,②急性肺塞栓(肺梗塞),③急性心筋炎や急性心膜炎,④急性大動脈解離や重篤な血管病変,⑤有症状の高度大動脈弁狭窄,⑥急性心不全や重症心不全,⑦血行動態的に重症な不整脈などがある.これらのうち,①〜④は主な症状が胸痛である.問題のうち,30分以上前からの胸痛の持続は,これらの疾患である可能性があるため,運動負荷心電図検査は見合わせなければならない.

疾患と検査値の推移

サルコイドーシス 四十坊 典晴
  • 文献概要を表示

Point

●サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患である.自覚症状がなく胸部単純X線写真で異常を指摘される場合と,眼症状,呼吸器症状,不整脈などの循環器症状からサルコイドーシスが疑われる場合がある.

●胸部単純X線写真上両側肺門縦隔リンパ節腫脹(BHL)が特徴的で,サルコイドーシスでは血清アンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE),血清可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R),血清リゾチーム上昇があり,診断基準に採用されている.

●自然軽快する症例から多臓器病変を認め,進行する症例まである.軽快した場合ACEなどの血清マーカーは低下する.進行し,治療が必要な場合はステロイドが第一選択となる.治療効果がある場合もACEなどの血清マーカーは低下する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 “研究”と一言で表現してもその内容はさまざまですが,1つの疑問や問題に対して,論理的に考え,時に実験的な検証をして解決することが全ての“研究”活動に共通するものであると私は考えています.

 臨床検査技師の現場はすなわち各検査室であり,そこで発生する日常業務上の問題や課題,あるいは大小さまざまな疑問は,その場で業務に従事するわれわれ臨床検査技師が解決しなければなりません.時に,日常業務の延長線上にある小さな実験や検討は研究として認識されていないこともあるかもしれませんが,冒頭で申し上げたフローで構成される問題提起から論理的解決までのプロセスを満たしているものは,大小にかかわらず十分に研究活動に値すると思います.すなわち研究というものは,われわれにとって非常に身近なものです.

 しかし,その1つのテーマを広げ,深く掘り下げるためには,ある種のトレーニングが必要です.また,レベルの高い研究を遂行することや,その研究活動の継続にあたっては,十分な“専門性”が必要です.この専門性は,主に“学術的な知識”だけではなく“専門分野における経験”によって構成されると考えます.一方で,経験だけがあってもそれだけでは研究活動を遂行することは困難で,教科書レベルの知識から専門書レベルの知識,さらには専門学会へ参加して最新の知見を得るなどして豊富なデータをもっておく必要があります.そして,どのように研究を行うかについては,他者からのアドバイスや指導も必要になります.

 さて本稿では,“専門性を活かした現場研究への展開”というテーマに沿って,いかに専門性をもち研究を遂行するか,自身のこれまでの経験を交えてご紹介します.甚だ恐縮ではありますが,いま研究を行っている方々や,これから研究にチャレンジしようと考えている方々にとって,少しでも参考になればと思います.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・23

  • 文献概要を表示

 山藤:今回の対談は,慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授である前野隆司先生にお願いいたしました.先生は「幸福学」の日本の第一人者としても著名な先生であります.先生どうぞよろしくお願いいたします.

 前野:よろしくお願いします.第一人者といっても,私が独自に作った学問でもありますので…,ビリも私…(笑).NHKがたまたま第一人者と取り上げてくれたので,そういう肩書になっていますが.

連載 生理検査のアーチファクト・11

  • 文献概要を表示

脳波検査のアーチファクトとは

 脳波検査をするにあたり重要なことは,正しい電極装着,正しい記録(賦活も含めて),突発波であるか,アーチファクトであるかの鑑別である.ただ記録するだけでは,正確な記録とはいえない.脳波波形を判読できる技量をつけるのも重要である.まずは典型的な波形やアーチファクトを覚えること,症例波形を数多く見ることで経験的に正常脳波と異常脳波を覚えることに尽きると思う.今月号からは,5回にわたり,脳波検査のアーチファクトについて紹介する.

 脳波のアーチファクトとは,脳波以外の全ての雑音またはノイズをいう.アーチファクトは,大きく分けて3つに分類できる.表1に示すように生体現象によるもの,環境に起因するもの,脳波計に起因するものである.脳波は非常に微小な電位であり,脳波記録には脳波以外から発生する電位が混入しやすいため,最小限の混入にとどめる必要がある.また,アーチファクトなのか脳波であるのか見極める目も必要になってくる.

臨床医からの質問に答える

  • 文献概要を表示

MIC値は“読んで”はいけない

 最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)値について,臨床医から問い合わせがきた場合は要注意である.なぜならMIC値についてほとんどの臨床医は正しく理解していないからである.臨床医が最も理解していないことは何か? それは“自分がMIC値を見てもほとんど意味がない”ということである.

 臨床医は微生物検査結果をなんのために見ているだろうか.ほとんどの臨床医はこう答えるだろう.“抗菌薬を選びたいから”と.微生物検査の結果をもって抗菌薬選択を考える行為自体には問題はない.問題があるのは,検査結果に載っているMIC値を見て抗菌薬を選ぼうとすることである.多くの医師は最低限の知識として“MIC値は微生物の発育を抑制する最小限の濃度である”ということは理解している.しかし,多くの医師はMIC値の測定方法,およびその解釈についてはきちんと教わったことがないため,その最低限の知識を元にして“発育を阻止できる最低限の濃度なので,その濃度が低いほうが効果が高い”という勝手な論理展開をしている.そのため,微生物検査の報告にずらっと並んでいるMIC値を眺めて,“同じ感性(susceptible:S)ならば,一番低い数値を示している薬剤が当該の微生物に対して最も効果のある薬剤である”と考えて抗菌薬を選ぶこともあるのだ!

ワンポイントアドバイス

  • 文献概要を表示

はじめに

 微生物検査に従事するにあたり,菌名の表記方法について正確に理解しておかなければならない.微生物の分類,命名,表記に関しては国際原核生物命名規約(International Code of Nomenclature Prokaryotes:ICNP)に基づき国際的な決定事項が詳細に定められている1).そのなかから細菌の表記方法を中心にポイントを述べる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 プロトロンビン時間(prothrombin time:PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)などの凝固検査は,出血性疾患および血栓性疾患のスクリーニング検査やワルファリンおよびヘパリンなどの抗凝固療法のモニタリング検査として頻用されている.致死性疾患の診断根拠となる場合も少なくなく,臨床に直結する検査であるが,その検体の採取方法や取り扱いの不備などに対して非常に敏感な検査である.

 凝固検査に影響を与える要因としては,採血手技や凝固検体の取り扱いなど人為的・技術的なものが多い(表1)1).特に,抗凝固剤として用いられるクエン酸ナトリウム液と採取された血液の比率(混合比)が適切でなかった場合は,誤った測定結果を診療室に送ることになる.通常,採取された全血液量が少ないと,サンプル中の抗凝固剤の混合比が高くなり凝固時間は延長する.同様に,多血症患者において,通常の抗凝固剤の混合比ではサンプル中に含まれる血漿量が少なくなり,相対的に抗凝固剤の濃度が高くなるので凝固時間は延長しやすい.適切な凝固検査を行うためには,患者ヘマトクリット(hematocrit:Ht)値にも留意することが大切で,必要に応じてHt値による抗凝固剤の補正が重要となる.

 本稿では,Ht値による凝固検査の補正方法とその重要性について述べたい.

ラボクイズ

微生物検査 山田 景土

  • 文献概要を表示

検査技師が出合って良かったと思える一冊

 本書の書評を書くにあたり,評者は『臨床検査技師のための血算の診かた』というタイトルに興味を抱きました.なぜかというと,臨床検査技師(以下,検査技師とします)であれば,誰もが口にすることをためらってしまう,“診断”の“診”という文字が使われていたからです.まず,タイトルに惹かれて読み進めました.読み終えた今,期待以上の本であったと感じています.

 この本は,著者が医師向けに書かれた『誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方』(医学書院,2011年)の姉妹本ですが,血算データを病態診断につなげていくというスタイルは同じです.症例数は医師向けの本よりは少ない35症例ですが,血液検査に携わる検査技師が遭遇するだろう血液疾患はほぼ網羅されています.血算データから病態診断までがQ&A方式で導かれており,血液検査に携わる検査技師の指導書として,また自己学習書としてぴったりな本です.検査技師は1日に数百という検体を扱うので,血算の時系列を全て確認することは困難ですが,この本では「血算を時系列で診る」という医師の視点を学ぶことができます.評者が検査技師になった頃は紙カルテだったので,患者さんの状態や投薬情報などを得ることは大変なことで,同じ検査室で測定している他の検査結果さえすぐに知ることが難しい時代でした.今は電子化されているので,検査技師でも,患者情報も血算の時系列も簡単に見ることができます.そういう意味からも,この本は時代にマッチしています.

--------------------

『臨床検査』1月号のお知らせ

あとがき・次号予告 大楠 清文
  • 文献概要を表示

 読者の皆さま,新年あけましておめでとうございます.本年も『検査と技術』をご愛読賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.

 2017年を振り返ってみますと,喜ばしいニュースとして,中学・高校の6年間陸上競技をやっていた私にとっては,8月に開催された世界陸上男子リレーで日本が銅メダルを獲得,さらに9月には桐生祥秀選手が日本人初の9秒台を公式に記録したことをまずは挙げたいと思います.その他,皇族眞子さまのご婚約,将棋では14歳中学生の藤井四段フィーバーで連日のメディア特集,対局時の昼飯にも注目が集まりました.“感染症ネタ”では,腸管出血性大腸菌O157によるポテトサラダ事件,アニサキスによる食中毒はバラエティー番組で取り上げられ,一躍社会的な関心を集めました.梅毒患者の急増は由々しき問題です.その他,7月には南米原産の毒アリ“ヒアリ”が国内で初めて確認され,東京ほか国内各地でのヒアリ騒ぎが報道されました.“ヒアリ”を見ると“ヒヤリ・ハット”を思い出すのは私だけではないと思います(新年早々すべっています!).

基本情報

03012611.46.1.jpg
検査と技術
46巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月18日~3月24日
)