検査と技術 20巻10号 (1992年9月)

病気のはなし

筋炎 川井 充
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はじめに

 「筋炎」は骨格筋の炎症を示す言葉で,ウイルスや細菌,寄生虫などが骨格筋に直接感染して引き起こされたもの,すなわち「感染性ミオパシー」と,原因不明の自己免疫性疾患として現れるもの,すなわち「特発性炎症性ミオパシー」の2つに大きく分けられる.通常,神経内科領域で(狭い意味での)「筋炎」あるいは「多発性筋炎」,「皮膚筋炎」といった場合,後者を指す.本稿は主として後者について解説するものである.

 初めに典型的な症例を呈示してから詳しい解説に移りたい.

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サマリー

 薬剤感受性試験における判定基準とは,各方法において得られる測定値を臨床効果に置き換えてどのように解釈するかということである.希釈法では臨床効果を反映するMIC値(MICブレークポイント)を意味し,この値は当然共通したものでなくてはならない.

 一方,ディスク拡散法はあくまで定性的な方法であるため,希釈法によるMICブレークポイントを反映する阻止円直径を判定基準とすべきである.しかし本邦において,標準化されたMICブレークポイントの設定は残念ながらまだ行われていない.ここではMICブレークポイントの設定方法を中心に,他国の方法も参考にしながら説明した.

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サマリー

 アレルギーという言葉は,日常生活でも広くいろいろな意味で用いられている.しかし,この言葉は医学の領域でも古い歴史を持っており,その時代その時代ごとに,当時の医学レベルに応じて概念が多少変化してきている.

 「アレルギーのための検査法」を執筆するに当たって,このアレルギーの概念の変遷についてまず述べた.これは,いろいろなアレルギーのための検査法がこのような歴史的背景を多かれ少なかれ負っているからである.

技術講座 血清

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サマリー

 不規則抗体の検出法として生理食塩液法,ブロメライン法(酵素法),クームス法などがある.ブロメライン法は操作が簡単で,日本人に多いRh系の抗E抗体をよく検出することなどから,緊急度の高い検査に用いられている.しかしブロメラインの品質管理を十分に行わなければ,抗体検出感度や再現性の良い結果が得られず,時には不規則抗体を見落とす危険性もある.

 本稿では,ブロメラインの品質管理法として蛋白質分解活性を指標とした至適濃度の決定法を中心に紹介し,一段法と二段法の相違点や非特異凝集反応などについて述べた.

技術講座 免疫

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サマリー

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子のcDNA断片5-1-1がイムノスクリーニングによって得られ,そしてこの断片を手がかりにHCVの全長cDNAが得られ,HCV遺伝子解析の進展と並行して,この元のcDNA断片を含むc1OO領域の酵母で発現された。これにより,この発現蛋白c1OO-3抗体検出の系が開発された.このアッセイの結果,HCVが世界中のほとんどの輸血後および散発性の非A非B型肝炎の原因ウイルスであることが判明し,現在の臨床検査の1つとして貴重な存在である.

技術講座 生理

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サマリー

 超音波検査のうち,出発点を泌尿器系としてアプローチ法,装置について述べ,腎臓,尿管,膀胱,前立腺,陰嚢,副腎の各臓器に現れる特徴的な超音波所見,また主訴に応じた観察部位について説明した.

技術講座 一般

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サマリー

 関節液結晶検査をルーチン検査として結晶を同定していると,判定に困難をきたすことがある.例えば,痛風のときにみられる尿酸ナトリウム結晶では,白血球に鋭く突き刺さった痛々しい針状結晶ばかりではなく棒状の結晶もある.このような場合は,偏光性によって判定することになる.関節軟骨石灰化症(偽痛風)のときに同定されるピロリン酸カルシウム結晶は,はっきりした偏光性を示す結晶ばかりではなく,偏光の弱い結晶や偏光のない結晶もある.また発作時ではステロイド結晶と間違えやすいことがある.今回は,このような結晶の鑑別のポイントについて述べた.

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はじめに

 染色体in situハイブリダイゼーション(ISH)法は,クローン化されたDNA断片を染色体DNAとハイブリダイズし,雑種形成部をシグナルとして染色体の形態とともに顕微鏡下で検出する手法である.ISHの導入は,染色体解析に分子レベルの裏づけを持たせたものといえ,ゲノム解析の中でも重要な手法となっている.特にプローブをビオチンなどの非RI化合物で標識し,シグナルを蛍光物質で検出するfluorescent insituハイブリダイゼーション(FISH)法が開発されたことで,染色体マッピングのみならず,染色体ペインティングや間期核でのクロマチン構造の解析にも利用されつつある1)

 本稿では,実際にわれわれが行っているFISH法の実際の手順を解説し,染色体ペインティングをはじめ,いくつかの応用例を示す.

生体のメカニズム ホルモン・9

性ホルモン—男性ホルモン 簑和田 滋
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はじめに

 男性ホルモン(androgen)はC19 ステロイドの総称であり,精巣から分泌されるテストステロン(testosterone;T)はその代表である.性の分化や性成熟,精子形成,性行動の遂行などに重要な役割を果たしており,標的器官において活性型のジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone;DHT)に変換されて,その生物活性を発揮する.このほか,デヒドロエピアンドロステロン,アンドロステンジオン,アンドロスタンジオール,アンドロステロンなどの生物活性の弱い副腎性アンドロジェンが存在する(図1).ここではテストステロンを中心として,その分泌調節機構や生理作用,代謝などについて示す.また分泌障害を伴う疾患についても簡単に述べ,臨床との関連性についても紹介する.

検査データを考える

好酸球増多症 高橋 隆幸 , 中村 紀士子
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はじめに

 好酸球増多を伴う疾患の数は非常に多く,臨床の場で好酸球増多に接した場合,正しい診断を下し,その原因を解明するのは必ずしも容易ではない.一方,好酸球造血に関与するサイトカインや造血前駆細胞の研究は着実に進展しており,この方面から好酸球増多症を新しい視点でとらえることも可能になってきている.したがって,好酸球増多を伴う多数の病態について,可能な限り,サイトカインとの関連で解説していく.

講座 英語論文を読む・21

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 目的:血中ブドウ糖の分布範囲にわたっての基礎心肺機能の適性と全死因との関連性を決定する.

 研究設計と方法:8,715名の男性(平均年齢42歳)で平均8.2年(範囲1〜15年)の予測調査データを解析した.心肺機能の適性はトレッドミル負荷における最大運動量によって評価した.臨床的に血管疾患の所見を有する者や運動負荷時に年齢から推定した最大心拍数の85%に達しなかった者は解析から除外した.

検査ファイル

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 PAP-Iは,ヒト胎盤から分離精製された抗血液凝固作用を持つ蛋白質なので,placental anticoagulantprotein(PAP)と名づけられた1).PAP-Iの分子量は約36kdで319個のアミノ酸からできており,約70個のアミノ酸残基から成る4つの繰り返し構造を持っている.その一次構造は,抗炎症性蛋白質として注目されているlipocortin-IとIIに分子全領域にわたって高い相同性(〜50%)を有し,PAPがlipocortin/annexin族であることを示している.われわれは,その後,よく似た蛋白質を3種類胎盤より分離しており,それぞれ,PAP-II,III,IVと呼んでいる2).PAP-Iは,これらの中で一番多く含まれており,1つの胎盤から約30mgを得ることができる.この蛋白質は,多くの研究者によって精製されており,カルホバインディンI3),PP44)などと名づけられているが,呼び名をalmexinVと統一することになった.

 PAP-I/annexin Vの抗凝固作用は,次のとおりである.

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 特定の抗原に対する免疫低応答性を,免疫抑制性(サプレッサー)T細胞の誘導を介して,優性形質として支配する遺伝子である.

 AraneoとKappら1)は,アミノ酸ポリマーをある系統のマウスに免疫した後に,メチル化ウシ血清アルブミンなどのキャリア蛋白と結合させたアミノ酸ポリマーで免疫しても,後者に対する免疫応答が観察されないことを報告した.このようなマウスでは,アミノ酸ポリマーに特異的な免疫応答を抑制するCD8抑制性T細胞が検出される.このIs遺伝子はマウスのMHCクラスII領域にマップされており,免疫抑制を単純優性形質として発現し,抑制性T細胞は抗原および自己のMHC分子を識別する能力があると報告されている.

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 近年,通常型乳癌の多くは,触診および種々の画像診断でかなりの診断能が得られている.しかし,乳癌治療成績の向上のためには,いかに触知不能乳癌(無腫瘤性乳癌:To乳癌)の発見を効率よく行うかが重要課題となっている.このようなTo乳癌は,乳頭血性分泌が重要な所見である.また,このような乳頭異常分泌症例に対する最近までの診断法として,乳管造影と分泌液塗抹細胞診が実施されていたが,前者は質的診断に関しては無力であり,後者は感度の点で問題があった.

 1985年稲治らは,乳癌で産生されたCEAの大部分が血中ではなく,乳管内に放出されるという特性に着目し,乳癌の早期診断の可能性について検討を行った.そして,免疫組織学的検索により乳癌に特異性の高いモノクローナル抗体(CM010;持田製薬)の選定を行い,乳癌での乳頭分泌中CEA値を測定し,良性疾患と比較して高値をとることおよび分泌液中CEAが組織におけるCEA産生能をよく反映していることを見いだした.この発見を機に,簡易化を目的としたキット(MS-1002)の開発が進められ,1987年に乳頭分泌液中CEA研究会が発足され,その評価が行われた.結果は,乳頭異常分泌を伴ったTo乳癌(30例)における乳頭分泌液中CEA測定の感度は73%であり,同一症例に対するマンモグラフィー9%,乳管造影39%,細胞診29%に比較して高い検出率であった.

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 保存期間中に起こる赤血球機能低下の原因は赤血球内の代謝物アデノシン3リン酸(ATP)や2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)が保存期間中に減少するためである.

 ホスホエノールピルビン酸(phosphoenolpyruvicacid;PEP)は生体内で最も高エネルギーの解糖系中間産物であり,例外的に細胞膜を透過する2).赤血球浮遊液にPEPを加えるとPEPは赤血球内へ透過し代謝され,ATPと2,3-DPGを産生する.PEP透過の至適条件は赤血球保存の至適条件に似ているので,PEPを含む赤血球保存液で赤血球を保存すると,保存6週間目の赤血球でも,新鮮血にほぼ相当する酸素運搬機能を持つようになる.

ラボクイズ

問題/腹部エコー

8月号の解答と解説

明日の検査技師に望む

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 私は内科医として27年間母校に勤務し,同じ大学の検査部に移って3年経つ.したがって検査部のスタッフとしては,まだ修業時代といえそうで,皆に助けられている毎日である.ただ年齢だけは一番上であるので,私たちの検査部における若い世代の検査技師諸君に期待する2,3の事項なら書けるかもしれない,そう思って筆をとったしだいである.

 第一に,臨床サイドとの接点をなるべく持っていただきたいと思う.各職域における幅広い交流を持って,自らの立場を再認識し,医療スタッフとしての重要な役割を演じてほしいのである.一例を挙げよう.群馬県には糖尿病グメス(Gunma Medical Staffの略)の会(会長:安部 純医師)なる組織がある.医師,看護婦,栄養士,薬剤師などに混じって,臨床検査技師も参加し,日本糖尿病協会群馬県支部の構成メンバーにもなって,ホットな勉強会が続いている.本誌4月号の島健二教授の言われた「チーム医療の担い手」という意味からも,医療スタッフとしての臨床検査技師の役割は検査室内部に限られたものではない.糖尿病患者教育にも寄与していただきたいのである.事実,群馬県糖尿病協会主催の糖尿病セミナーでは毎回検査技師の代表も講師を務めている.医療の中で,私たちは何をなすべきか,何ができるかを,絶えず考え,模索する技師になろう.社会的ニーズは多様化し,絶えず変革する宿命を持っており,私たちはそのリズムに乗ることも,また必要な時代なのである.

けんさアラカルト

検査の保険点数 関口 進
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 1992年4月1日から健保点数の改訂が行われ,臨床検査項目でも「検査の適正化」という名の下に点数のカット,一部については多少の増加が認められた.一般的に今度の改訂は手技がいまだに用手に頼るものが多少の点数の増加,機械で多量の検体を処理できるものは減少の傾向にあった.

 では検査点数はどのようにして決まるのかを説明しよう.新しい検査項目に関しては,1963年にMoss協議に関連した新項目導入のルールによってD1,D2,D3の区分ができた.D1は新しい項目で方法も新しいもの,D2は項目はすでに健保で認められているが検査方法が新しいもの,D3は項目も方法もすでに認められているもの(いわゆるゾロ製品)となっている.

トピックス

無痛性心筋虚血(SMI) 藤原 秀臣
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はじめに

 心筋虚血は,狭心症や心筋梗塞の最も基本的な病態であり,主に冠動脈狭窄により心筋の血流が障害された状態である.一般に心筋が虚血に陥ると胸痛(狭心痛)を自覚するが,心筋虚血の他覚的所見を呈しているにもかかわらず,狭心痛あるいはそれに準ずる症状をまったく伴わない状態がしばしば認められる.これが,近年,無症候性心筋虚血(silent myocardial ischemia;SMI)として注目されている病態である.この概念は必ずしも新しい概念ではないが,最近の目覚ましい診断技術の進歩により,心筋虚血そのものや心筋血流を間接的に証明することが可能となったため,SMIの存在や臨床的意義が脚光を浴びてきている.SMIは虚血性心疾患の治療や予後と密接な関連を有しているとされており,基礎および臨床各分野での研究が盛んである.

レーザ顕微鏡 高松 哲郎
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 試料を一様に照明するこれまでの光学顕微鏡は,結像した画像のコントラストが低いため微細な三次元構造,特に光軸に沿った位置関係を判断しづらいことがあった.特に細胞が重なり合った場合や,厚切り切片では,もはや詳細な観察は不可能となる.この問題を解決できるのが,これまでのいかなる光学顕微鏡で達成されたより飛躍的に浅い焦点深度を持ち,また解像力もAbbeの理論で規定されたより倍近く改善されたレーザ顕微鏡である1).このレーザ顕微鏡は,切片を作製せずに細胞や組織の断層像が撮れるため,生きた細胞や組織にも応用が可能であること,光学的断層像はゆがみが非常に少ないため,そのまま立体再構築に使用できることなどの理由から,医学・生物系の研究者に大きなインパクトを与えている.

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はじめに

 最近の循環器学の分野では画像医学の方面で急速な進歩が認められており,特に循環器検査では,昔からあるレントゲン写真に加えて,ラジオアイソトープの画像,X線や核磁気共鳴法によるコンピュータ断層像,超音波による断層像など多彩な画像が利用されるようになった.このような種々の検査により得られた多量の医用画像情報を処理して,二次元的,三次元的な情報を抽出表示することが可能である.

 そこで,本稿では,循環器疾患によく用いられている超音波画像を取り上げ,主として画像処理による三次元的形態表示について述べる.

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 鍍銀標本で光顕的に黒く染色される細線維は好銀線維(argyrophilic fiber)と呼ばれ,淡褐色に染まる膠原線維とは区別される.PAS染色では好銀線維は糖蛋白質を伴うため陽性に染色される.好銀線維は,線維が互いに分岐吻合して網状に連なり存在することから,細網線維(reticular fber)あるいは格子線維(latticefiber)とも呼ばれる(図1).

 好銀線維は胎生期に最も早期に出現する線維で,主に線維芽細胞によって形成される.好銀線維は肝,リンパ節,脾臓,骨髄などの網内系臓器に豊富に分布し,組織の骨格を作る線維として重要である.好銀線維は結合織以外の組織にも存在し,例えば内皮細胞の基底膜の細網板(reticular lamina)(図2)を形成し,下方の結合織と連なる.好銀線維は脂肪細胞,平滑筋細胞,横紋筋細胞などの細胞間の間質にも形成され,かごのようにこれらの細胞を包む.

けんさ質問箱

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 糖尿病患者では,心電図でQTcが延長するという文献を読んだことがあるのですが,ほんとうでしょうか.成書に当たってみましたが,特に書かれたものはありませんでした.

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 ライト染色の緩衝液はpH6.4〜6.8となっていますが,6.4で行うべきか,6.8で行うべきか悩んでおります.成書によってまちまちです.pHによる血液像の見えかたの違いを教えてください.また緩衝液は使用時に10倍に希釈しますが,なぜ希釈しなくてよい緩衝液を初めから作らないのでしょうか.

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 心エコーにおいて,心膜液貯留は,どれくらいあれば有意ととれるのでしょうか.若くて心臓の動きのいい人には少量認めることがあります.また,肋間によっても見える量が違います.

今月の表紙

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 造血実質の容積比(cellularity)は,高形成,正形成,低形成と3段階に分けられる.Weibelの多目的テスト板でpoint counting法を用いて計測することもできるが,煩雑である.画像解析装置では簡単に計測できる.

 左下の図はほぼ正常な成人の骨髄生検標本である.HE染色(説明のため400倍)で白く抜けた部分は脂肪細胞である.左上の図のように脂肪細胞を緑色に変換し,計測するとその面積は77.141μm2で,全画面の面積は157.51μm2であり,造血実質の面積比はほぼ1:1となり,正形成の骨髄と判定できる.もっと弱拡大の画面で同様にce11ularityを計測できる.

基本情報

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検査と技術
20巻10号 (1992年9月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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