検査ファイル
乳頭分泌液中CEAの測定
西口 隆偉
1
,
高塚 雄一
2
1国立大阪病院臨床検査科
2国立大阪病院外科
pp.834
発行日 1992年9月1日
Published Date 1992/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901274
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近年,通常型乳癌の多くは,触診および種々の画像診断でかなりの診断能が得られている.しかし,乳癌治療成績の向上のためには,いかに触知不能乳癌(無腫瘤性乳癌:To乳癌)の発見を効率よく行うかが重要課題となっている.このようなTo乳癌は,乳頭血性分泌が重要な所見である.また,このような乳頭異常分泌症例に対する最近までの診断法として,乳管造影と分泌液塗抹細胞診が実施されていたが,前者は質的診断に関しては無力であり,後者は感度の点で問題があった.
1985年稲治らは,乳癌で産生されたCEAの大部分が血中ではなく,乳管内に放出されるという特性に着目し,乳癌の早期診断の可能性について検討を行った.そして,免疫組織学的検索により乳癌に特異性の高いモノクローナル抗体(CM010;持田製薬)の選定を行い,乳癌での乳頭分泌中CEA値を測定し,良性疾患と比較して高値をとることおよび分泌液中CEAが組織におけるCEA産生能をよく反映していることを見いだした.この発見を機に,簡易化を目的としたキット(MS-1002)の開発が進められ,1987年に乳頭分泌液中CEA研究会が発足され,その評価が行われた.結果は,乳頭異常分泌を伴ったTo乳癌(30例)における乳頭分泌液中CEA測定の感度は73%であり,同一症例に対するマンモグラフィー9%,乳管造影39%,細胞診29%に比較して高い検出率であった.
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