日本看護科学会誌 36巻1号 (2016年12月)

  • 文献概要を表示

要旨

目的:アメリカ合衆国の看護研究の特徴と研究倫理審査体制に関する情報より,わが国の看護研究の倫理審査体制のあり方を考察する.

方法:アメリカ合衆国の看護研究の特徴に関する文献検討と看護学部のある総合大学の研究者からの研究倫理審査体制に関する情報収集.

結果:①看護研究は,研究と質向上,根拠に基づく実践,プログラム評価に分類.②審査は,審査免除,迅速審査,通常審査の3種類.③通常審査はIRBで審査し,迅速審査は小規模な審査委員会で審査することや,審査の振り分けや研究者が相談できる人材の設置等,整備された研究倫理審査体制.④質向上,根拠に基づく実践,プログラム評価という看護研究の多くは,迅速審査の対象.

考察:看護研究の特徴を踏まえて,看護研究の方法,対象及び内容に応じて審査を分類し行うことの必要性とスムーズな審査のための組織的な審査体制の整備と人材育成の重要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:本研究は,患者教育の変遷を,看護基礎教育と臨床現場の実践という2つの視座から検討し,戦後70年の看護の発展を明らかにした.

方法:Rankeの実証史学を踏襲した歴史学の手法を用いた文献研究である.対象とした史資料を,一次資料,二次資料,三次資料に分類した.分類した史資料の史料批判を行いながら,それぞれの史資料を照らし合わせ患者教育が発展していく一連の連関を分析し論証した.

結果:1960〜70年代から生活習慣病の増加や高齢化の進展によって指定規則が改正され,看護基礎教育における患者教育の学習基盤が整えられた.それに伴い,個別的な対象者理解と分析的な視点に基づいた学習が行われた.1980年代から人権意識の高まりに伴い,臨床現場の実践では,患者の意思決定を尊重する援助が行われた.また,新自由主義政策の導入によって,患者の能力へのかかわりが求められた.

結論:患者教育は,政治や経済の発展に即しながら,看護基礎教育や臨床現場の実践を変革させてきた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:両立支援的組織文化が,妻/母親役割を担う看護職における職務満足度,組織コミットメント及び職業継続意思に及ぼす影響を検討すること.

方法:869名の看護職を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.なお,分析対象者は妻/母親役割がある女性看護職とした.質問項目には,個人属性,両立支援的組織文化尺度看護師版,職務満足度,組織コミットメント,職業継続意思を用いた.

結果:766名(88%)より回答を得た.このうち,分析対象者である妻/母親役割のある女性看護職は335人だった.階層的重回帰分析の結果,(1)両立支援的組織文化は職務満足度を媒介し,職業継続意思を有意に強めていた.(2)両立支援的組織文化は組織コミットメントを媒介し,職業継続意思を有意に強めていた.

結論:両立支援的組織文化は,妻/母親役割を担う看護職の職務満足度及び組織コミットメントを高め,さらに職業継続意思も強めていた.よって,両立支援的組織文化の醸成は看護職の人材定着に寄与することが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:母親の養育システムの発達に母親の被養育体験(PBI)及び内的作業モデル(IWM)がどう影響しているかを明らかにし,養育者としての発達を促す支援のための基礎資料を得る.

方法:産後1か月時からの継続調査に同意の得られた母親を対象に自記式質問紙調査を実施し,本論文では産後12か月,18か月,2〜3年時に有効回答の得られた150名を分析対象とした.調査内容は,属性,養育システムの発達(愛着−養育バランス),PBI,IWMである.

結果:愛着−養育バランスは3つの時期間で相関がみられた.12か月時の愛着−養育バランスはPBIと,18か月時の愛着−養育バランスはIWMと相関がみられ,PBIとIWMも相関がみられた.共分散構造分析ではPBIはIWMに影響し,養育システムの発達に影響していた.PBIから養育システムの発達への直接的な影響はなかった.

結論:PBIはIWMを介して2〜3年時の養育システムの発達に影響しており,母親の被養育体験の認知を変容することが養育者としての発達を促す支援に繋がる可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:新人看護職が支援者とともに臨床体験のリフレクションを複数回経験したことによる新たな学びや発見したことと新人看護職が認識した効果的なリフレクション支援を明らかにする.

方法:複数回の臨床体験のリフレクションを実施している2施設で,新人看護職の時にリフレクション支援を受けた7名に面接を実施し,質的記述的分析を行った.

結果:複数回のリフレクション支援による新人看護職の新たな学びや発見は,【見えなかった自己の弱みへの気づき】【自分が大切にしていることへの気づき】【対話によって具体的な行動に気づける】などの5つであった.新人看護職が認知するリフレクション支援は,【新人看護職個々を尊重した対応】【新人看護職の行動の承認】などの効果的な支援と【一方的な助言】【新人看護職の状況を理解しない断定的な指導】などの非効果的な支援であった.

結論:複数回のリフレクションを支援者と行うことによって,新人看護職と支援者のお互いの理解が深まることによって,新人看護職個々を尊重した支援が得られたことが示された.その結果,単回のリフレクションよりもより気づきが促進され,新人看護職の自己理解や実践につながる思考が促進されることが明らかになった.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:老年期うつ病者のレジリエンスについて,当事者が経験した病いと回復のストーリーの中から解釈することである.

方法:うつ病と診断され,精神科治療を受けている高齢者5名を対象に,参加観察および非構造的面接を行い,Riessmanのナラティヴ研究法に基づいて分析した.

結果:研究参加者の病いと回復のストーリーを解釈した結果,老年期うつ病者のレジリエンスとして「人生で獲得してきた能力や日常性がよみがえることで生まれる力」「家族からの何気ない気遣いの中で家族との絆を感じる力」「慣れ親しんだ地域との一体感を再確認する力」「罪悪感と折り合い自らの人生を肯定的に統合する力」「孤独の価値を見出す力」「いのちのつながりの中で次世代のいのちを慈しみ希望をたくす力」の6つのテーマが導き出された.

結論:本研究で導き出された6つのレジリエンスには,いずれも長年のその人の人生や生活世界が密接に関連していることが考えられた.看護師は老いや死に対する価値観や人間観をもつ中で,老年期うつ病者とともに在ることや対話することを通して,そこに存在するその人の人生に裏打ちされた力に着目することが重要であろう.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:介護支援専門員が高齢者の健康生活を確認できる,高齢者のウェルネス型健康生活チェック表を作成し,その内容妥当性を検討した.

方法:看護師資格を有する介護支援専門員19名を対象に,デルファイ法を用いて「高齢者のウェルネス型健康生活チェック表(案)」の領域および項目への質問紙調査を実施した.9領域66項目を各々「1:まったく適さない」から「9:非常に適切である」の9段階で評価してもらい,そのコメントをふまえて研究者間で修正した.

結果:調査の有効回答率は94.7%であった.デルファイ3回目では項目の平均スコア範囲は6.7〜7.9で,全項目が「適切」以上であった.コメントを基に領域と項目の表現を話し合った結果,9領域55項目で収束した.

結論:介護支援専門員の合意により「高齢者のウェルネス型健康生活チェック表」は,介護支援専門員が高齢者の健康生活を確認でき,些細な変化を知ることで適切な支援を提供し,介護予防に役立てられることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:地域で生活する精神障がい者が自分にとって調子のいい状態を獲得するプロセスを明らかにする.

方法:地域活動支援センターに通所する精神障がい者12名に半構成的インタビューを行った.分析は修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いた.

結果:地域で生活する精神障がい者は,「喪失と辛苦」から出発し,『試行錯誤』と『取捨選択』を繰り返す経験を自らの糧として『自分のよりどころ』とし,『自分での手当て』を行い『平坦な暮らし』をすることで自分にとって調子のいい状態を維持していた.このプロセスは,病気をコントロールし生活を主体的に送る力を取り戻す【主導権の再獲得】であった.

結論:本プロセスを促進するために精神疾患に伴う認知機能障害を考慮した支援の必要性が示唆された.また,支援者によるつなぐという支援技術の詳細を明らかにする必要がある.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:炎症性腸疾患患者の生物学的治療選択に関する意思決定プロセスを明らかにする.

方法:Grounded theory approachを用いて,寛解期にある炎症性腸疾患患者20名に半構造化面接を行い,継続比較分析を行った.

結果:分析の結果,炎症性腸疾患患者の生物学的治療選択に関する意思決定プロセスとして【症状軽減を狙った賭けに出るか否か】というコアカテゴリーが抽出された.これは《症状による生活への支障》,《治療の選択・決定に臨む姿勢》,《情報・経験の模索》,《天秤にかける》,《決断》という5つの段階から構成された.《天秤にかける》段階で患者は,『病状の重大性』,『普通の生活への希求』と,『副作用・効果減弱への恐怖』,『後戻りできない』,『最後の切り札』とを比較衡量し,《決断》に至っていた.

結論:患者が生物学的治療に伴う利害にどのように重きを置くかによって,治療選択の決断が異なることが明らかになった.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:病棟看護師の移動介助動作時腰痛の発症率を明らかにし,移動介助動作の頻度・移動補助具の適正使用の実態,および,それらと移動介助動作時の腰痛発症との関連を明らかにした.

方法:移動介助動作の多い病棟に勤務する看護師に対し,自記式質問紙調査を行った.

結果:18施設の看護師534名より回答を得た.移動介助動作時の腰痛発症は,動作時の「半分以上」・「いつも」の合計で,「ベッド上体位変換」が最も多く43.9%,次いで「ベッド上水平移動」33.4%であった.移動介助動作の頻度で最も多かったのは「ベッド上体位変換」,次いで「ベッド上水平移動」であった.全ての動作頻度と動作時腰痛の発生頻度は弱い正の相関を示した.使用経験の多かった移動補助具はスライダーで,次いでスライドボード,スライドシートであった.移動補助具の適正使用は,概ね腰痛発症の頻度と関連せず,「ベッド⇔ストレッチャー」時のスライダーのみ,動作時腰痛発生頻度の多さと関連した.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:生体高分子の褥瘡創部アセスメントへの活用を目指し,褥瘡の浸出液中のmatrix metalloprotease-9(MMP-9)およびbone morphogenetic protein-6(BMP-6)の検出量と,褥瘡創部のDESIGN-Rの各項目の評価との関連を明らかにする.

方法:褥瘡創面から非侵襲的に採取した,創傷液内MMP-9とBMP-6のタンパク質検出量とDESIGN-Rの各項目の評価得点間の相関および,差について検討した.

結果:MMP-9の量と創底の深さ,滲出液,肉芽組織の項目,BMP-6の量と創縁のポケットの項目で相関を認め,重症度別比較では,創底部の深さの項目及び創縁部のポケットの項目はそれぞれの生体分子の検出量による軽度・重度の判断が可能であることが示唆された.

結論:MMP-9およびBMP-6は褥瘡創部の状態を客観的に判断するために有効な高分子マーカーであり,DESIGN-Rの評価および重症度を客観的にアセスメントするツールとしても活用が可能である.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:がん患者の抑うつ状態を改善するためのケア・パッケージを用いた精神看護専門看護師による介入の効果を検討する.

方法:造血器腫瘍あるいは肺がんの診断を受け,化学療法目的で入院した患者を対象とした.うつ尺度(PHQ-9)によるスクリーニングで軽度から中等度の抑うつ状態にある対象者を介入群(n = 34)と対照群(n = 37)の2群に無作為に割り付けた.介入群には1回30分以上,週2回,合計4回の個別面接を実施し,対照群には心理教育パンフレットを手渡して,介入/観察前後の2時点で無作為化比較試験による評価を行った.

結果:二元配置分散分析の結果,両群とも有意にPHQ-9得点が改善した.加えて介入と時間の交互作用が認められ,介入群の改善度が大きいことが示された.

結論:ケア・パッケージを用いた精神看護専門看護師による介入は,がん患者の抑うつ状態の改善度を高めると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:中堅前期看護師の自己イメージ評価表を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである.

対象と方法:臨床経験3年以上20歳代看護師1,458名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.項目分析,因子分析を用いた構成概念妥当性の検討により評価表を構築し,内的整合性,併存妥当性の検討を行った.

結果:分析対象は569名であった.分析の結果,16項目5因子構造【疲れている私】【孤独な私】【迷っている私】【未熟な私】【頑張っている私】の「中堅前期看護師の自己イメージ評価表」が完成した.評価表全体のCronbach's α係数は.872,下位因子の係数は.544 から.816 であり内的整合性が得られた.併存妥当性は自尊感情尺度(Self-Esteem Scale)と有意な正の相関,抑うつ自己評価尺度(CES-D)と有意な負の相関が認められた.

結論:信頼性と妥当性が確保された16項目5因子構造の中堅前期看護師の自己イメージ評価表を作成できた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:看護観が自己の体験を通して発展するまでの看護師の思考のプロセスを明らかにすること.

方法:看護実践経験5年以上で,看護部長から看護観が確立していると判断された看護師を対象に半構造化面接を実施し,得られたデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析した.

結果:17名の面接から8カテゴリーが生成された.看護観の発展には〈自己の看護が揺らぐ体験に直面〉をした看護師が〈体験との向き合い〉により〈自己の看護の考え方の広がり〉を得て〈めざす看護の定まり〉がなされる【看護観形成過程】と,その実現に向け〈看護ケア方法の探索〉をして〈めざす看護を意識した看護ケアの実践〉を行い〈看護ケアの承認による看護への自信〉を得る過程を繰り返し〈体験の積み上げによる看護観の確立〉に至る【看護観確立過程】があった.

結論:体験により内的に形成された看護観を意識した看護ケアの実践の積み重ねで看護観が発展していくことが示された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:外来通院をしている高齢糖尿病患者がインスリン自己注射手技を正確に実施することに影響する要因を明らかにする.

方法:65歳以上の在宅にてインスリン自己注射を行っている糖尿病患者に対し,正確な自己注射手技に影響すると考えられる15の要因を独立変数,正確な自己注射手技の可否を従属変数として,ロジスティック回帰分析を行った.

結果:対象者は105名で,平均年齢は74.0±5.4歳であった.ロジスティック回帰分析の結果,正確な自己注射手技に関連していたのは,改訂長谷川式簡易認知評価スケールで評価した認知機能が高いこと(オッズ比1.16,95%信頼区間1.01〜1.33),看護師を中心とした医療従事者の支援があること(オッズ比6.35,95%信頼区間1.43〜28.28)であった.

結論:認知機能の低下があると,正確なインスリン自己注射手技が困難となる.しかし,看護師を中心とした医療従事者のサポートがあると正確な自己注射手技が実施できる可能性が高まることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:短時間勤務看護師との協働意識尺度を開発することである.

方法:多様な雇用・勤務形態及び働きやすい職場作りに着手している病院について,病床数と設置主体を指標に機縁法とホームページ検索により選出した東海・近畿地方8病院の一般病棟で,短時間勤務看護師と協働しているフルタイム勤務看護師を対象とした.項目分析,確認的因子分析を用いた構成概念妥当性の検討により尺度を構築し,信頼性,基準関連妥当性を検討した.

結果:全48項目に回答した390人を対象とし分析した結果,〈差異化意識〉〈おかげ様意識〉〈しわ寄せ意識〉〈お互い様意識〉の4因子26項目構造となり,許容できるモデル適合度が示された.本尺度と松本ら(1999)による職務満足尺度,「協働に対する同意性」との間に関連をみとめ,基準関連妥当性を確認した.Cronbachのα係数(0.678〜0.915)により,概ね内的整合性も確認できた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:臥床生活以前のパーキンソン病療養者の配偶者(以下,配偶者)が体験する困難を明らかにすることである.

方法:10名の配偶者に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.

結果:配偶者は,【捉えどころのない難病に動揺し】ながらも,【揺れ動く症状と向き合おうと努めて】いった.そして,【夫婦で培ってきた歴史があるから今の生活を大切にしたい】と願うが,やがて【捉えきれない症状に翻弄されて】いった.また,【一足先に老いていくかのような療養者との生活を心配して】おり,【症状に翻弄される夫婦を誰かに支えて欲しい】と願っていた.

結論:本研究の配偶者は,変動する運動症状の他,発症早期より出現する非運動症状にも翻弄されていた.そのため,発症早期より専門職の役割を伝え,症状を捉えた配偶者の工夫や努力を評価し,捉えにくい症状ゆえ生じやすい夫婦の齟齬に気づいて関わることの必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:低出生体重児を育てる母親に対する保健師の支援の意図を記述する.

方法:保健師9名に半構造的インタビューを実施し,保健師の支援の意図を質的記述的に分析した.

結果:低出生体重児を育てる母親に対する保健師の支援の意図は,【母親が脆弱な子という思いに捉われず,その子らしさを大切にできる】,【母親が育児にすべてを捧げずに,生活の中に自然に組み込める】,【母親が地域を安心した居場所とし,継続した育児ができる】であり,保健師は,これらを意図した支援を相互に関連させながら,母親が育児をしやすい状態にしていた.

考察:保健師は,母親の脆弱な子という思いを意識しながら複合的な視点で支援していた.そして,母親の子どもの見方を広げること,生活になじむ育児方法をつくりだすこと,育児をしやすい環境をつくりだすことを意図した支援を行っていた.これらは,保健師の低出生体重児の母親支援の特徴を明らかにしたものであり,今後,低出生体重児を育てる母親支援の指標として活用できる可能性があると考える.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:回復期リハビリテーション病棟に勤務する看護師の多職種連携実践能力に関連する要因を明らかにすることである.

方法:回復期リハビリテーション病棟に勤務する看護師539名を対象に,《インタープロフェッショナルワーク実践能力評価尺度(CICS29)》を用いて質問紙調査を実施した.単変量解析で有意な関連又は差がみられた変数について,カテゴリカル回帰分析を行った.

結果:《CICS29》の合計得点と関連がみられたのは,「臨床経験年数」,「役職」,「現任教育の専門職連携教育(IPE)」,「上司のサポート」,「同僚のサポート」,「日常の情報共有」,「院外のコミュニケーション」の7つの変数であり,分散の40.3%が説明された.

結論:看護師の多職種連携実践能力を高めるためには,継続的なIPEが有効であり,同職種間のサポートが提供し合える環境,また多職種とのタイムリーなディスカッションやインフォーマルなコミュニケーションの機会が必要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:特発性肺線維症(IPF)患者が,呼吸困難感と共に生きる体験を記述することである.

方法:歩行時にボルグスケール1以上の呼吸困難感が出現しており,自由意思により同意が得られた対象者14名に半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析した.

結果:7カテゴリが抽出された.特発性肺線維症患者が呼吸困難感と共に生きる体験は,【身体の変化への戸惑い】,【膨らんでいく無力感】,【呼吸困難感と生きるための生活変容】,【労作時に生じる呼吸困難感と酸素で楽になる身体との葛藤】,【他者と協調できずに断つ交流】,【家族や友人に見守られる生活】,【体験がもたらす意味への思索】であった.

結論:特発性肺線維症患者は,呼吸困難感や在宅酸素療法のスティグマのために生活活動範囲を縮小させ,生じる葛藤に対処しながら,呼吸困難感との生活に適応するため人生観を変容し,病いがもたらす意味を思索していた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:ベナーのケアリング理論を理論的前提として,糖尿病患者の身体に根ざした知性に働きかける看護実践に関する理論枠組みを新たに構築する.

方法:糖尿病患者を対象とした質的研究論文を一次資料として用いたメタ統合を行った.分析は解釈的現象学の手法を用い,研究者間でのグループ・ディスカッションを通してテクストに埋め込まれている意味を解釈し,ケアの基盤となる意味の共通性を明らかにした.

結果:7つの論文のメタ統合の結果,順序性を持った4つのケア〈あいまいな体験に輪郭を与えるケア〉〈身体の理解を深めるケア〉〈身体への信頼感を取り戻すケア〉〈新しい対処法を身につけるケア〉が明らかになり,これらを統合して「糖尿病患者へのエンボディメントケア」と命名した.

結論:糖尿病患者へのエンボディメントケアは,身体に根ざした知性を持った存在である患者が安らぐことに向かい,身体が寛ぐことで日常生活を取り戻し,自立へと向かうことを支援する看護実践の新たな理論的枠組みとしてまとまった.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:本研究の目的は,日本語版自傷行為に対する反感の態度尺度(SHAS-J)の信頼性と妥当性を検討することであった.

方法:全国の救命救急センターに勤務する看護師764名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し,302名(39.5%)の有効回答を分析対象とした.質問紙は,対象者の基本情報,SHAS-J,看護師の感情労働尺度,共感的コーピング尺度を用いた.分析は,探索的因子分析,確認的因子分析,相関分析を行った.

結果:探索的因子分析の結果,SHAS-Jは4因子から構成されていた.4因子は「共感的実践力の低さ」,「ケアの反感」,「積極的理解の欠如」,「権利と責任に関する無知」であった.4因子についてCronbach α係数は0.83〜0.54であった.併存妥当性の基準とした共感的コーピング尺度および看護師の感情労働尺度とは有意な相関が認められた.

結論:SHAS-Jは,Cronbach α係数により信頼性が概ね確認された.また,共感的コーピング尺度や看護師の感情労働尺度との関連により妥当性が概ね確認された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:「医療従事者の倫理的感受性」の概念分析を行い,定義を明らかにすることである.

方法:Rodgersの概念分析アプローチ法を用いた.データ収集には5つのデータベースPubMed,CINAHL Plus with Full Text,PsycINFO,医学中央雑誌web版,CiNii Articlesを使用した.検索用語は「ethical sensitivity」,「moral sensitivity」,「倫理的感受性」とし,計47件の論文を分析対象とした.

結果:属性として5カテゴリー【倫理的状況に反応して感情が表れる】,【対象者中心の医療における自己の役割への責任感】【倫理的問題に気づく能力】【倫理的問題を明確にする能力】【倫理的問題に立ち向かう能力】を抽出した.先行要件には2カテゴリー,帰結には3カテゴリーを抽出した.

結論:医療従事者の倫理的感受性は,倫理的問題の解決において意味をもち,問題を抽出するだけでなく立ち向かおうとすることを含む総合的な能力であった.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:乳がん患者の受診遅延の概念分析を行い,受診遅延の定義を明確にすることを目的とする.

方法:Rogersの概念分析法を用いた.データ収集にはPubMed,MEDLINE,CINAHL,医学中央雑誌のデータベースを使用し,検索用語は「breast cancer」「help seeking behavior」「delay」,ならびに「乳がん」「受診遅延」とした.さらに,患者の語りのデータベースDIPEX Japanを加え,計30件を分析対象とした.

結果:概念の属性として「時間」「意思決定プロセス」の2カテゴリー,先行要件として「個人因子」「医療環境」「社会文化」の3カテゴリー,帰結として「生存率の低下」「治療に伴う医療者・患者への負担」の2カテゴリーを抽出した.分析の結果,乳がん患者の受診遅延を「主観的時間を含む受診に至るまでの意思決定プロセスにおいて客観的時間が延長した結果,治療に伴う医療者・患者負担や生存率等に悪影響を及ぼす現象」と定義した.

結論:乳がん患者の受診遅延の定義は,医療者のみならず患者の視点を含めた看護援助の構築に有用である.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:近年増加する就労妊婦に特化した支援を実現するには,就労妊婦としての特徴や就労妊婦ならではの心情に着目した知見が必要である.本概念分析の目的は「就労妊婦の罪悪感」の概念を明らかにし,今後の研究や就労妊婦に対する看護支援への示唆を得ることである.

方法:分析は,Walkerらによる概念分析の手順に沿って行った.罪悪感の一般的な捉え方,心理学,精神医学・精神分析学,看護学における用法の分析の結果,9つの罪悪感の定義属性を抽出した.分析結果を就労妊婦の経験・実態・否定的感情,働く母親の罪悪感という観点から文献検討した内容と統合した.

結果:就労妊婦の罪悪感は,[自己規範に違反した際の否定的感情],[行為の自制をする感情],[利益過剰状態に対する感情]の3概念で構成されていた.

結論:就労妊婦の罪悪感は,就労妊婦に対する理解を深める上で重要な概念であり,妊娠期の心理的健康に影響を及ぼす可能性も考えられる.今後の更なる研究の蓄積,測定用具の開発が求められる.

  • 文献概要を表示

要旨

 がん患者とのEnd-of-life discussionsの概念分析を行い,定義を明確にすることを目的とする.方法はRodgersのアプローチを用い,2000年から2015年の間で45文献を対象に概念分析を行った.結果として,9個の属性として【End-of-life discussionsのタイミングを判断】【終末期の医療・ケアと死に行く過程に関する話し合い】【話し合いを書面化する】【療養の場に関する話し合い】【患者の望みや好みについての話し合い】【家族への知識提供と家族の価値観についての話し合い】【価値観,個別性の尊重】【医療者と患者・家族とのチームで共有する】【信頼関係を築き意思決定を援助】が抽出された.本概念を「がんが進行した状態にある患者に対して,患者の価値観や個別性を尊重しながら,患者と家族と医療者のチームアプローチと個々の信頼関係に基づいて,治療・緩和ケア・療養について話し合うこと」と定義した.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:冷え症改善プログラムを実施した妊婦による,自己管理ツールとして開発したWebアプリケーションの使用評価を分析することである.

方法:対象は,冷え症改善プログラムを実施した妊婦60名である.Webアプリケーションには,レッグウォーマーの着用,エクササイズの実施,足裏のツボ押しの項目があり,対象者は4週間セルフ評価を実施した.データ収集は実施終了後の質問紙調査であり,リッカート尺度で,「1.全く思わない」〜「5.非常に思う」の5段階で評価した.

結果:プログラム実施の継続に役立った:中央値4.0「やや思う」(四分位範囲0.7),自分自身の冷えの状態を認識することができた:中央値4.0(1.0),プログラムを意欲的に実施することができた:中央値4.0(1.0)であった.

結論:妊婦によるWebアプリケーションの使用は,プログラムの継続やセルフケアに役に立ったという意見が多く得られた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:認知症を有する人(以下認知症者とする)を介護する家族介護者を対象にして,家族介護者のパートナーシップを築く力の向上を目指した教育プログラムを全4回で実施し,その効果を検討する.

方法:研究デザインは非ランダム化比較対照試験である.調査を完遂できた介入群22名,比較群21名を対象とした.介入群には,家族介護者のパートナーシップ向上を目指した教育プログラムを受講してもらい,比較群には教育プログラムの重要部分を抜粋した小冊子を配布した.効果を測定する指標として,家族介護者のパートナーシップを築く力,介護負担感と介護肯定感,ソーシャルサポートを,介入前,介入後,介入終了から2ヵ月後に測定した.

結果:介入群の認知症者を対象としたパートナーシップを築く力と介護に対する肯定感は比較群よりも有意に向上した.しかし,専門職者や他の家族員や近隣者とのパートナーシップを築く力と,ソーシャルサポートや介護負担感に介入群と比較群との有意差はみられなかった.

結論:教育プログラムは,家族介護者の認知症者に対するパートナーシップを築く力を向上させ,介護に対する肯定感を高める効果があることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,「看護の教育的関わりモデル(TKモデル)」を活用した学習会・事例検討会による,看護実践に対する看護師自身の認識変化を明らかにすることである.この研究は,アクションリサーチの手法を用いて検討した.

 研究方法は参加型アクションリサーチとして,A病院の看護師を対象に学習会・事例検討会を計11回開催した.学習会・事例検討会における参加看護師の発言内容をその意味の類似性と相違性から質的帰納的に分析した.

 各回の参加者は3〜8名であり,全回参加した看護師は1名であった.看護師の実践に対する認識の変化には,【実践過程から自己の教育的関わりの特徴や意義に気づく】,【患者の言動を通して生活者として患者の人物像を描く】,【チームで実践を進めるための草の根運動にめざめる】という3テーマが見出された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:一般病棟で臨床経験を有する看護師が,初めて緩和ケア病棟に配属された後,2年未満に感じる心理的負担と対処の特徴について明らかにする.

方法:質的記述的研究方法とし,半構成的インタビュー法を用い,得られたデータを質的帰納的に分析した.

結果:7名の緩和ケア病棟看護師の個別分析結果を統合し,4段階の分析過程を経て,心理的負担は8の上位カテゴリーに集約され,心理的負担への対処は9の上位カテゴリーに集約された.

結論:1)緩和ケア病棟看護師が配属後2年未満に感じる心理的負担の特徴は,【自分の経験がゼロになったような無力感と戸惑い】が中核となり,三層に構造化され,この中で,心理的負担は看護経験を重ねる過程で変化していたが,その一方で経験を重ねても抱き続ける心理的負担もあることが明らかになった.2)心理的負担に対して,看護経験を重ねる過程で後ろ向きの対処から前向きな対処へと変化しており,これらの変化に影響を与える要因には,緩和ケア病棟看護師のレジリアンスが関係していると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:助産師が妊婦の性生活に関する健康教育を行うという行動と,その意図について,意図を強化する影響要因,行動への影響要因を明らかにした.

方法:助産師184名に対して,TPBを用いて作成した質問紙調査を行った.調査項目は,属性と,個別・集団の健康教育についての「意図」「行動」「必要性の認識」「ネガティブな気持ち」「助産師からの期待」「対象からの期待」「能力の自信」「妨げとなる環境」である.

結果:個別健康教育では「必要性の認識」と「助産師からの期待」で「意図」を約60%説明し,「助産師からの期待」と「能力の自信」で「行動」を約51%説明した.集団健康教育では「必要性の認識」のみで「意図」を約75%説明し,「意図」と「能力の自信」で「行動」を約42%説明した.

結論:意図は,個別・集団健康教育ともに必要性の認識によって強化されていた.行動は,個別健康教育では助産師からの期待と能力の自信,集団健康養育では意図と能力の自信が影響していた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:事例に対する援助を計画し他学生の前で説明・実施する授業(以下,演示)が,看護技術の学習にどのような効果をもたらしたか明らかにする.

方法:看護系大学2年次生を対象に,シミュレーターを用いた気管内吸引の技術演習の後に演示を行い,各学習後に到達目標に沿って学生が自己評価した.到達目標は,独自に設定した,認知領域,精神運動領域,情意領域で構成された27項目であった.

結果:同意が得られた50名のうち37名の回答を分析した.技術演習後と演示後の到達目標得点を比較すると,全体および3領域の得点は演示後に増加した(P<0.01).

結論:演示は,個人学習,グループワーク,説明・実施および学生相互の質疑応答を通して,既存の知識を引き出し,実施と関連付け,知識・技術・態度の統合を推進する効果があると推察された.また,事例の設定や患者役を設けたことから,患者への配慮や個別性・患者主体の看護の必要性の学びに繋がったと考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:本研究の目的は,看護学生の共感性について検討することであった.

方法:看護学生203名を対象に共感経験尺度改訂版を用いた質問紙調査を行い,若者の対人関係能力低下が唱えられる以前の年代である1995年から2005年の間に報告された先行研究の調査結果と比較して考察を行った.

結果:198名の対象者より回答が得られた.共感経験尺度得点は先行研究の調査結果と同様の得点を示した.共感性の学年差を検討した結果,共感経験尺度得点および共感性の類型は先行研究の調査結果と同様に,学年による有意差は認められなかった.

結論:看護学生の共感性は先行研究の調査結果と同様の傾向であることが示唆された.

基本情報

02875330.36.1.jpg
日本看護科学会誌
36巻1号 (2016年12月)
電子版ISSN:2185-8888 印刷版ISSN:0287-5330 日本看護科学学会

文献閲覧数ランキング(
1月14日~1月20日
)