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1.はじめに
人間は,その人が住む社会の中で,様々な人々に囲まれて生きており,人生においてストレスに遭遇したおりには,その人の支えとなって機能するという考え方からなるソーシャルサポートネットワーク理論が,1970年代後半から,保健医療の分野でも注目されるようになった1~3).看護学においても,アメリカ看護婦協会の看護研究審議会が,1980年代の看護研究の優先課題としてこの問題を提唱した.それを受けるかのように,1980年代の看護研究には,ソーシャルサポートネットワークを変数として扱う看護研究がアメリカではきわめて盛んである.また,ソーシャルサポートに関する国際看護研究会も1985年から発足し,4年毎に学会を開催している.1989年には,韓国のソウルにおいて,アジア圏の看護研究者を多く迎えて,この学会が開催されている.
日本でも,1980年代初期からソーシャルサポートもしくはソーシャルネットワークに対する注目が高まり,様々な分野で検討されるようになった.日本看護科学学会でも,1985年と1987年に研究討論会で取り上げて,その理論や測定用具に関して活発な討論を行ったし,学術集会でも,これを研究変数として取り上げた研究報告が毎年出されさるようになった.
またソーシャルサポートネットワークの現象を測定する質問紙も多く開発され,その信頼性と妥当性が検討されてきた.特に看護界では,カリフォルニア大学サンフランシスコの看護学部の学部長であるJane S. Norbeckとその同僚が開発したNorbeck Social Support Questionnaire(以後NSSQと略す)が4~6),広くもちいられている.これは単にアメリカ合衆国に止まらず,彼女の下で学んだ大学院生が世界に散って,この質問紙を用いてさまざまな分野において看護研究を行っている.従って,この質問紙は,ソーシャルサポートネットワークの国際比較を行う時に有効である.日本でも南が翻訳修正した質問紙があるが,このNSSQの概説とその日本版に関する過程は,医学書院出版の看護研究17巻3号7)に掲載されている.筆者らの研究グループは,これにさらに修正を加え,看護婦の精神の健康とその関連要因に関する研究に用いてきた.この論文は,その研究の過程で明らかになったNSSQ日本版の構成概念妥当性(constructvalidity)について因子分析にもとづく結果を報告するものである.
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