日本看護科学会誌 34巻1号 (2014年12月)

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要旨

 目的:高齢者のうつ病からの回復について,生活世界との関連の中で明らかにすることである.

 方法:うつ病と診断され精神科治療を受けており,寛解または維持期にある65歳以上の高齢者8名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した.

 結果:高齢者は,うつ病の発症から急性期にかけて心身が【生活世界からの疎外や圧迫】を受けており,生活世界の中で自由に生きることができなくなっていた.そのような疎外や圧迫が強くなることによって,【厭世観による死の衝動からの支配】に至っていた.これらの体験は,治療につながるきっかけとなり,精神科治療を受ける中で【生活世界へ帰還するきっかけを実感】することができていた.生活世界への帰還は,うつ病からの寛解を意味していた.うつ病高齢者にとっての生活世界への帰還のあり方は【なじみの人間関係や日常生活に帰還】し,【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】に至ることであった.

 結論:看護師は,高齢者のうつ病からの回復を支援するために,【なじみの人間関係や日常生活への帰還】【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】を重視した環境創りをすることが重要である.

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要旨

 本研究の目的は,児童・思春期精神科病棟に勤務する看護師の看護実践の卓越性とこれまでの看護経験の関連を明らかにすることである.児童・思春期精神科病棟に勤務する看護師を対象に,「看護実践の卓越性自己評価尺度」と看護経験について自記式質問紙調査を実施した.「看護実践の卓越性自己評価尺度」の7下位尺度について,児童・思春期精神科病棟での勤務年数,成人の精神科および一般の小児科での看護経験の有無による差を,分散分析またはt検定を用いて分析した.14病院234名(有効回答率69.6%)を分析対象とした.児童・思春期精神科病棟での勤務年数が長い者は,総得点と6下位尺度で統計的に有意に高い看護実践の卓越性がみられた.成人の精神科での勤務経験を有する看護師は,『医療チームの一員として複数役割の発見と同時進行』のみ統計的に有意に高い卓越性を示した.一般の小児科経験の有無による差は認められなかった.児童・思春期精神科看護は専門性が高く,成人の精神科での臨床経験の一部が活かされるものの,主に当該領域の臨床看護の経験によって看護実践の卓越性が高められると考えられた.

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要旨

 本研究は,地域密着型中規模病院の小児科一般外来における看護師の働きを明らかにすることを目的に,エスノグラフィーの方法を用いて,首都圏のベッドタウンにある病院(約300床)の小児科一般外来で,参与観察,インタビューを行った.研究参加者は小児科外来の11名の女性看護師を中心に,子どもと家族,他の医療職者など,小児科外来に交流する人々であった.その結果,看護師の働きとして,(1)気になる親子を見つけて診察室へつなぐ,(2)診察室での気がかりを補足し,家族の背中を押す,(3)子どもを育てる家族の力を支える,(4)子どもと家族との間を調整する,(5)見過ごしてはいけない親子に関わり,つなぎとめる,の5つのテーマが明らかになった.さまざまな健康レベル,発達段階の子どもと家族がさまざまなニーズを抱えて来院する,混沌とした小児科外来における看護師の働きは,単なる「診療の補助」以上の意味があった.先の展開を読むことが難しい緊張した場で,看護師は常に「アンテナを張って」気になる子どもと家族を見つけ,援助の機会はこの場限りかもしれないことをふまえて,そのとき,その対象に合った個別のアプローチに素早くつなげようとしていた.

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要旨

 目的:本研究は,より良い朝の目覚めを促進する基礎的研究として,異なる睡眠段階で起床を促した後の身体反応の違いについて検討した.

 方法:被験者は15名の健常女性とした.各被験者の実験日は3夜(第一夜,REM期・NREM期起床条件下)とし,起床後にP300と反応時間の測定を行った.また,5名の被験者は正午前にも同様の測定を行った.分析は,起床直後の両条件間の比較と各条件内での起床直後と正午前の比較を行った.

 結果:起床直後のP300潜時では,両起床条件間に有意差が認められた.各条件内での起床直後と正午前の比較では,REM期起床条件下でボタン押し反応時間(音刺激)とジャンプ反応時間に,NREM期起床条件下ではボタン押し反応時間(光刺激)に起床後から正午にかけて有意な短縮が認められた.

 結論:REM睡眠段階で起床を促すと認知や注意がNREM期よりも早く反応することが分かり,その後の身体反応が良く,日中の活動がスムーズになる可能性が示唆された.

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要旨

 目的:看護系大学における研究倫理審査の現状を明らかにし,看護学研究における研究倫理審査体制の在り方を検討する.

 方法:全国の看護系大学で看護学研究倫理審査に精通している専任教員を対象に,郵送による無記名自記式質問紙調査を行った.

 結果:回答があった看護系大学89校(回収率44.5%)のうち,倫理審査委員会が設置されている87校を分析対象とした.看護単科大学と看護学部・学科のみの運営形態では委員の人数が少なく看護学専門家の割合が高かった.倫理審査に関する規程は,ほとんどの大学が整備・公表していた.委員会の予算があるのは46校(52.9%),研究実施過程のチェックシステムがあるのは28校(32.2%),新委員に対する研修があるのは11校(12.6%)であった.迅速審査の制度があるのは50校(57.5%)であった.

 結論:看護学に特化した視点と学際的・多元的な視点を併せ持つ委員構成の実現,迅速審査の適正な導入と予算確保による委員の負担軽減,研究実施過程のモニタリング,倫理的資質の向上,等の課題が明示された.

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要旨

 目的:看護系大学の若手研究者における研究倫理審査の実態,看護研究における利益相反と介入研究の被験者補償に関する実態を明らかにする.

 対象と方法:全国の看護系大学の責任者に,無記名自記式調査票を郵送した.回答者は,責任者が推薦した看護学研究倫理審査に精通した専任教員1名とした.

 結果:回答のあった89校のうち,倫理審査委員会が未設置だった2校を除く87校を分析対象とした.若手研究者の年間研究倫理申請件数は,平均21.9件(SD=38)で,その支援体制は博士課程をもつ大学と倫理委員会が学際的な委員で構成されている大学で充実していた.利益相反規程をもつ大学は,国立大学,博士課程を有する大学,学際的なメンバーで構成されている研究倫理審査委員会のある大学で,介入研究の被験者補償は,博士課程をもつ大学にのみ認められた.

 結論:若手研究者の研究倫理上の課題は,個人の研究背景と現在の研究環境に強く影響を受けているため,組織による支援と,個別的な学習機会を提供する必要がある.利益相反,介入研究の被験者補償も大学の研究環境で異なり,看護系大学が早急に取り組むべき重要課題であることが示唆された.

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要旨

 目的:帝王切開で出産した女性の,妊娠中から産後1か月までの帝王切開に対する心理的プロセスとその影響要因を明らかにし,看護支援への示唆を得ることを目的とした.

 方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い,帝王切開後の女性18名に半構造化面接を行って分析し理論化を試みた.

 結果:女性は帝王切開に対する〈心づもり〉と〈意味づけ〉のプロセスをたどることで,帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕に至る.それらは〈帝王切開の可能性の認識〉をした時点から始まり,〈手術への恐怖〉や〈自然分娩への未練〉は阻害要因,医療者や経験者とのやりとりは促進要因となる.〈意味づけ〉は分娩後にも続く.緊急帝王切開では〈心づもり〉や〈意味づけ〉ができないまま手術に臨む場合があるが,〔納得〕するためには,分娩後に〈意味づけ〉が行われる.

 考察:帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕の理論を軸に,〈心づもり〉と〈意味づけ〉を促すような具体的な看護支援が示唆された.

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要旨

 目的:精神科病院において,初めて看護学実習を受け入れることにより看護職にどのような変化がもたらされるのか,明らかにすることを目的とした.

 対象と方法:実習を受け入れた病棟の看護職4名に個別インタビュー調査を,共に働くコメディカルスタッフ6名にフォーカスグループインタビュー調査を実施し,質的に分析した.また,看護職全員を対象に精神的負担を測定する自己記入式質問紙調査を行い,実習受け入れによる変化を検討した.

 結果:看護職・コメディカルスタッフが共通して感じた変化は【学習量の増加】【接遇の向上】【緊張感の出現】【ケアの積極性】【ケアの工夫と試行】であった.実習病棟に所属する看護職の精神的負担は,実習受け入れ前後で有意な変化は認められなかった.

 結論:精神科病院において初めて看護学実習を受け入れることは,看護職の学習や接遇,ケアの質の向上につながることが示唆され,有意な精神的負担の増強を伴わない可能性が示唆された.

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要旨

 目的:高度看護実践者(以下,高度実践者)による高齢者への糖尿病教育プログラム(以下,教育プログラム)実施の影響要因と工夫について,成人との比較により明らかにすることを研究目的とした.

 方法:2009年9〜10月に無記名自記式調査票による郵送調査を行った.調査では,教育プログラム実施の影響要因はその頻度を4件法で,高度実践者が行っている工夫は自由記載形式で回答を求めた.なお,前者はFisherの直接確率法等の統計的手法により比較・分析をし,後者は記述内容の類似性に沿ってまとめカテゴリー化した.

 結果:有効回答の93票を分析した結果,以下が明らかとなった.①教育プログラム実施の影響要因として高齢者では理解度,家族の事情,糖尿病以外の病気を挙げる割合が成人に比べて有意に高かった.②高度実践者による教育プログラム実施上の工夫として,【その人らしさと生活の質の確保】等の高齢者に特有なカテゴリーが抽出された.

 考察:高度実践者は,豊富な臨床経験の中で高齢者には自立した生活の継続に対する強いニーズがあることを把握できているため,【その人らしさと生活の質の確保】を維持する関わりを意識的に行っているのではないかと考えられた.

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要旨

 本研究は,病棟看護師の終末期患者への在宅療養に向けた退院支援と,その影響要因を解明することを目的とし,病棟に勤務する看護師428名に対して,自記式質問紙調査を実施した.判別分析の結果,病棟看護師の終末期患者への退院支援に最も影響する要因は,看護師の経験年数や退院調整部署との連携の程度ではなく,患者と死について語ることができる程度であることが明らかとなった.患者と死について語ることができる看護師ほど,終末期患者への退院支援を積極的に実施していた.患者と死について語ることができない看護師が大半であることが明らかとなり,終末期患者への退院支援を推進するために,看護師への死に関する教育支援の必要性を考察した.

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要旨

 目的:看護職のワークライフバランス(以下,WLB)とバーンアウトの関連を明らかにする.

 方法:首都圏の一般病院で国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人,会社の設置主体より各1施設選定した5病院に勤務する看護職1,030人を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.調査内容はバーンアウト(日本版MBI-HSS)22項目,属性,看護職のWLB指標調査24項目とした.

 結果:有効回答は798人(有効回答率77.5%)であった.平均年齢は33.8±8.1歳でWLBとバーンアウト総合得点の平均はそれぞれ10.2, 10.9であった.WLB総合得点は,会社が国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人より有意に高かった(p<0.01).階層的重回帰分析を行った結果,実務職種,残業時間,子どもの有無,WLB認識,仕事と仕事以外の切り替え,目的を持って取り組んでいること,相談相手の有無,WLBとの有意な関連が認められた.

 結論:設置主体別では,会社はWLBの実現度が高い可能性が明らかになった.また,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むこと,WLB実現度を上げることによりバーンアウトが予防できる可能性が示唆された.

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要旨

 目的:介護老人福祉施設(以下特養)と介護老人保健施設(以下老健)のアクティビティケア(以下AC)の特徴を把握し,ACの看護職の役割と学習の認識を明らかにすることを目的とした.

 方法:特養255施設と老健135施設の計390施設の看護職にアンケート調査を実施し,有効な回答が得られた特養55部,老健49部の計104部を分析対象とした.

 結果:ACの看護職の担当業務は「健康状態のチェック」と「実施中の観察」が特養,老健ともに8割を占め,「移動の介助」は老健で有意に担当割合が高かった.また,看護基礎教育で学生が学ぶべきと考えるACの教育内容では,「ACの対象である高齢者の心身の理解」を特養,老健の9割の看護職が認識しており,さらに,「ACの目的と看護職の役割」「臨地実習によるACの実践」の2項目で老健の看護職は特養の看護職に比べ有意に教育の必要性を認識している割合が高かった.

 結論:ACの看護職の役割は,健康面のアセスメントが主要であったが,老健では施設機能として,ACの看護職の役割が期待されていた.また,老健の看護職は,ACの看護職の役割や臨地実習での実践を,看護基礎教育で学ぶべき内容として認識している割合が高かった.

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要旨

 目的:訪問看護師における重症心身障害児の遊びの実践に対する認識を明らかにし,訪問看護師の遊びの実践に関する示唆を得る.

 方法:医療的ケアの必要な重症心身障害児の訪問看護で遊びの実践経験がある訪問看護師10名に遊びに対する認識や実践状況について半構成的面接を行った.データは,質的帰納的に分析した.

 結果と結論:訪問看護師は重症心身障害児との遊びを,『訪問看護師と子ども,母親とのつながりづくり』であると認識していた.訪問看護師の【遊びは子どもの全て】であるという思いが遊びの拠り所となっていた.訪問看護師は,子どもの《心と身体に働きかける遊び》と《子どものサインの読み取り》をしながら【遊びの選択と調整】を繰り返していた.訪問看護師は,遊びを通して子どもの自発性を引き出し,子どもが表出するサインの読み取り,さらに母親とのつながり作りに発展させていくことが重要であるといえる.

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要旨

 目的:学童期精神科閉鎖病棟に入院し,他者とうまく距離をとることができない発達障害の学童に対して,看護師がどのようにかかわっているのかを明らかにする.

 方法:Leiningerの民族看護学の研究方法を用い,主に参加観察とインタビューを行った.主要情報提供者は看護師9名,一般情報提供者は学童6名とその家族6名,医療スタッフ5名であった.

 結果:テーマ6つと大テーマ1つが抽出された.看護師は,子どもをありのまま受け止めて,子どもが距離の近さで訴える‘人とかかわりたい’思いを見極めていた.看護師が子どもに適切なかかわり方を教えたり看護師との間で子どもと大人との信頼関係を修復したりすることで子どもの思いに応えると,子どもは他の子どもとの遊びや思いの言語化ができるように変化していた.

 結論:看護師は,子どもの対処方法の体得を支え,子どもの大人への信頼感やアタッチメントを修復することで,子どもの‘人とかかわりたい’思いに応える必要があると示唆された.

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要旨

 目的:ロールレタリングと呼ばれる筆記課題を実施し,看護学生の想像活動に関する特性や記述の多様性による共感性の変容の違いを検討することが本研究の目的である.

 方法:看護学生118名(第一研究)と75名(第二研究)を対象に,架空の患者と看護師との対話を記述する課題を行い,前後に多次元共感性尺度を測定した.想像活動への親和性の高低でH, L群,記述の多様さを基準に多,少群を設けた.

 結果:共感性の合計点や「影響性」因子の低下(H群),他者指向的な情動面の上昇(L群)がみられた.記述が多様であるほど,他者指向的側面が高かった.また記述の少群で「影響性」が低下した.自己指向的な情動面の減少は,記述の幅に関わらずみられた.共感性の認知的側面は変容しなかった.

 考察:共感性の低下は,記述の幅が少ない群の自信喪失やストレス対処の表れ,もしくは現実的な落ち着きとして理解された.ロールレタリングの技法の枠組みは,想像が不得手と思われるL群が,他者の情動を感じやすいように補助的に働く可能性が示唆された.豊かな記述ができなくとも,自他の区別を表す結果はみられることも確認された.

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要旨

 目的:周産期および育児期を通じたDomestic Violence: DV被害女性のDV被害に対する認識の回復過程を明らかにすることを目的とした.

 方法:質的記述的研究デザインを用い,21名のDV被害女性に半構成面接を行った.

 結果:DV被害女性の周産期および育児期を通じたDV被害からの回復過程として,段階1〈家族維持のためにDV被害の認識を意識下におしこめている〉,段階2〈夫への期待が失望に変わりDV被害を認識していく〉,段階3〈アンビバレントな感情を抱えたままDVの関係から抜け出す〉,段階4〈DVの関係から心身ともに出る〉の4つのカテゴリーが抽出され,コアカテゴリーとして《自分らしさを取り戻していくDV被害からの回復過程》が明らかになった.周産期には多くのDV被害女性はDV被害を認識しておらず,気持ちが揺れ動く不安定な状態も存在していた.

 結論:周産期および育児期は家族を維持させなければならないという思いが強く,夫の態度が変わることを期待しやすいためにDV被害を認識できない構造があると考えられる.看護者がDV被害女性の被害からの回復過程を理解し,その人らしくあることを支援するケアはDV被害からの回復を促すことにつながることが示唆された.

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要旨

 目的:急性期医療を担う関東圏の中堅看護師の職場における「自己の存在価値の実感」と「職務エンパワメント」,「個人的達成感」の関連を検討する.

 対象と方法:急性期医療を担う関東圏の病院に勤務する中堅看護師533名を対象に質問紙調査を実施した.「自己の存在価値の実感」はグレッグ(2005)を参考に3因子7項目にて構成し,構成概念妥当性,信頼性を確認した.さらに共分散構造分析にて「自己の存在価値の実感」と「職務エンパワメント」,「個人的達成感」の関連を検討した.

 結果:269名より回答を得た(有効回答率50.5%).共分散構造分析の結果(n=259),「職務エンパワメント」が「個人的達成感」に与える直接的な影響は.10であり,「自己の存在価値の実感」を介した間接的な影響は.21であった.

 結論:「職務エンパワメント」が「個人的達成感」に与える直接的な影響より,「自己の存在価値の実感」を介した間接的な影響の方が大きかった.「自己の存在価値の実感」は急性期医療を担う中堅看護師にポジティブな影響を与える要因として有用であると推察される.

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要旨

 目的:就労後看護師の疲労感軽減に,ヒーリングタッチが有効であるか検討する.

 方法:研究デザインは無作為化比較試験(RCT)である.調査対象は,東京都内のA病院に勤務する,日勤勤務終了直後の常勤看護師76名である.調査方法は,対象者を無作為にヒーリングタッチ群または対照群に分け,両群とも20分間の介入をした.測定項目は,主観的評価として,疲労感(VAS)と疲労にまつわる気分(POMS)を介入前後に測定した.客観的評価として,指尖脈波による自律神経活動(心拍数,HF,LF/HF)を介入前・中・後において測定した.

 結果:1. VASの変化量は,ヒーリングタッチ群の疲労感が有意に軽減した(p<0.01).2. POMSの変化量は,総合的な気分状態を表すTMD得点が,ヒーリングタッチ群は有意に改善していた(p<0.05).3. 自律神経活動では,ヒーリングタッチ群において介入中にHFが有意に上昇し,副交感神経活動が亢進していた(p<0.05).心拍数,LF/HFは変化が見られなかった.

 結論:就労後の看護師がヒーリングタッチにより,疲労感が軽減されることが示唆された.

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要旨

 本研究は,自尊心回復グループ認知行動看護療法プログラムに参加した地域で生活する精神障害者の自己概念の変容過程を明らかにした.対象はプログラム参加者10名であり,半構造面接により過去,現在,未来の流れで自己概念を尋ね,逐語録をM-GTAにより質的帰納的に分析した.その結果,《自己の殻からの心の孵化》をコアカテゴリーとする8カテゴリーが抽出された.発症後に知覚されていた【渦の中での停まり】【価値のない自分】は,【理解者による緊張緩和】を経て,【生活習慣への自負】【人に煩わされない感覚】へと変化していた.そして【新生した自分】の実感が,現在の【充実した生の体感】を導き,未来の自己に向かい【理想像の描写】を見出していた.発症後の否定的な自己概念は,理解者との出会いを契機に肯定的に変容していたことから,同じ体験を有する当事者や疾患を解する人々による安心できる雰囲気のなかで,ありのままの自己を語り,受け入れられる場の必要性が示された.

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要約

 目的:本研究は看護職者の役割移行に関する文献を探究し,役割移行という概念の特徴を識別し定義することを目的とする.

 方法:研究方法にはRodgersの概念分析アプローチ法を用いた.データ収集にはCINAHL Plus with Full Text,MEDLINE,医中誌Webなど9つのデータベースを使用し,検索用語は「role transition」「nurse」「役割移行」とした.最終的に適切と判断された40文献を対象に分析を行った.

 結果:属性として7カテゴリ;【新たな領域で活動することへの意味づけ】【新たな行動様式を獲得するための取り組み】【新たな活動への期待と成功の希求】【職業的アイデンティティの模索】【情緒的反応】【困難との直面】【時間の枠組み】,先行要件として7カテゴリ,帰結として4カテゴリが抽出された.

 結論:看護職者の役割移行とは,看護専門職としての発達を志向する看護職者が,新たな領域での活動に意味を見出し,一定期間の活動継続を経て新たな行動様式を獲得していく過程であると定義された.

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要旨

 目的:看護学以外の学問領域で学士号を取得した後に看護基礎教育課程で学ぶ学生(学士号を持つ学生)の看護教育機関選択における影響要素を明らかにする.

 方法:学士および社会人入試制度を実施する大学(13校),養成所(16校),および無作為に抽出した准看護師養成所(10校)に対し,調査票1255通を配布した.606通(48.7%)が回収され,学士号を持つ学生275名,持たない学生301名による576通を有効回答とした.

 結果:学士号の有無による比較の結果,学士号を持つ看護学生の看護基礎教育機関選択に影響する要素は,「自宅から通えること」,「入試方法」であり,「自宅から通えること」は社会人経験の有無に影響を受けていた.学士号の有無に関わらず,「学費が安いこと」は大きな影響要素であった.

 結論:学士号を持つ看護学生の教育機関選択に,入試方法が大きく影響していた.彼らの看護学への参入を促進するためには,入試制度の工夫や修学支援が得られることが望ましい.

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要旨

 目的:小児がん治療中の患児に対する身体活動介入の効果を,メタ分析によって検討した.

 方法:発行されているレビュー論文4編の内容検討,および2009年以降の文献検索の二段階で抽出した計823編のうち,採択基準をすべて満たした6編の文献をメタ分析の対象とした.解析方法は,各結果指標を概念化し,その概念の効果量(Hedges' g)および95%信頼区間(CI)を算出した.

 結果:小児がん患児に対する身体活動介入による各結果指標への影響は,QOL【g=0.17, 95%CI=−0.48 to 0.57】,がんに伴う倦怠感【g=0.25, 95%CI=−0.16 to 0.67】,ヘモグロビン値【g=0.11, 95%CI=−0.32 to 0.75】,睡眠【g=0.22, 95%CI=−0.32 to 0.47】,活動性【g=0.14, 95%CI=−0.95 to 1.23】,足関節可動域【g=0.47, 95%CI=−0.32 to 0.75】,体重【g=0.16, 95%CI=−0.76 to 1.07】およびBMI【g=−0.12, 95%CI=−1.04 to 0.80】であった.

 結論:小児がん患児に対する身体活動介入の効果は,対照群と比較して大差がなかった.本研究の対象文献数が少なく,介入内容や結果指標のばらつきの大きいことが介入効果に影響した可能性があり,今後は小児がん患児における身体活動の研究を集積していくことが必要である.

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要旨

 目的:ソーシャル・サポートの質や量の少なさから怒りを喚起し攻撃行動に至る心理過程とその関連要因のモデルを仮定し,検証することを目的に,精神科看護師に対して質問紙調査を行った.

 方法:怒りの表出過程とその関連要因との関連について因果モデルを作成し,構造方程式(パス図)を描き,共分散構造分析を実施した.因果モデルの検証には,モデル適合度指標を使用した.なお,質問紙は,ソーシャル・サポートやストレス,共感性など9種類の質問紙を使用した.

 結果と結論:分析対象1,001名(最終有効回答率=70.0%)の回答を分析した結果,最も「あてはまりの良いモデル」は,GFI=0.94, AGFI=0.91, CFI=0.92, RMSEA=0.063であった.さらに,【ソーシャル・サポートが(少)ない→ストレス(人間関係および職場環境のストレス,仕事内容のストレス)が増加→怒り心理反応を喚起→攻撃行動】という過程が明らかになると同時に,その過程に影響を与える要因が示された.また,対象の看護師の男女比は1:3であり,男女間における多母集団同時分析によって性差についての検討も行った.その結果,一部の相関関係(共感性⇔仕事のストレス間,など)で性差がみられることが明らかになった.

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要旨

 目的:多重問題を抱える頭頸部がん患者の退院後1年以上経過した生活体験を明らかにする.

 方法:治療(手術療法,化学放射線療法)を終え退院後1年以上経過した外来通院中の頭頸部がん患者のうち,研究参加への同意が得られた11名に対してインタビューガイド(生活の中での不自由な点と,その乗り越え方など)に基づく半構造化面接を行った.データ分析は質的帰納的に行った.

 結果:多重問題を抱える頭頸部がん患者の退院後の生活体験として,【食べやすく調整して動ける体を保つ】【苦痛を耐えしのぎ,体を守る】【意思や経験を今在る自分が伝える】【苦しくても支えがあるからできることをする】【生きている今を普通に過ごす】の5個のカテゴリーが抽出された.

 結論:頭頸部がん患者は,自分の思うように生きることを願っているが,意思を表出できにくい状況にある.看護師は患者が手さぐりで自分に合う方法を見つけ出す状況を真摯に受け止め,患者が意思を十分に表出できて,納得した行動をとれるように,支援する姿勢を持ち続けてケアすることの重要性が改めて認識された.

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 本研究の目的は,女性人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:以下THA)患者が主観的に評価する歩容に影響する要因とその影響の強さを明らかにすることである.THA術前と術後の女性患者112名に調査を実施し,歩容を目的変数,各影響要因を説明変数として,ステップワイズ重回帰分析にて検討した.その結果,THA患者が主観的に評価する歩容に影響する要因は,疼痛(β=0.420),脚長差(β=−0.271),歩行能力(β=0.240),自尊感情(β=0.131)の4項目が認められ,これらの変数で分散の57.9%が説明された.したがって,THA患者の主観に沿ったリハビリテーションの動機付けや,回復意欲向上への看護介入として,患者が主観的に評価する歩容を理解するために,疼痛,脚長差,歩行能力,自尊感情をアセスメントする必要性が示唆された.

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 目的:特定保健指導における未利用の理由の構造を明らかにすることである.

 方法:A町の特定保健指導の未利用者10人を対象とし,未利用の理由に関連する3点を質問項目として半構造化面接を行い,KJ法を用いて質的に分析した.

 結果:特定保健指導における未利用の理由の構造は,【“私という領域”がある】【私には“良好な健康”より大切な生きがいがある】【私に限定せずに必要な人への活動を望む】という3つの要素から構成されていた.各要素の関係性として,【“私という領域”がある】は健康観に基づく自己決定の権利を示し,他の要素の基盤となり支持していた.さらに,各要素には,現在の身体状態を健康と捉える健康観が根底にあり,相互に影響することで未利用の理由が強化される関係にあることが示された.

 結論:未利用の解決には,未利用者の健康観を考慮した支援を行うことの重要性が示唆された.

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要旨

 目的:BMIを指標とした実践に即した筋注時の針の刺入深度を明らかにすることである.

 方法:18歳以上の553名(男性259名,女性294名)を対象とし,身長,体重,三角筋部と中殿筋部の皮下組織厚,および三角筋厚を測定した.BMIと皮下組織厚の関連を明らかにし,また筋厚を参考にし,筋注に必要な実際的な針刺入深度を明らかにした.

 結果:三角筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.04×BMI−0.25,女性0.04×BMI−0.17と表せた.ただし,BMI<18.5の対象者の場合三角筋厚が薄いため,骨膜を損傷する恐れがあった.したがって,針の刺入深度は,18.5≦BMI<30.0で1.5cm,BMI≧30.0で2.0cmとするのが適切と考えられた.中殿筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.05×BMI−0.38,女性0.05×BMI−0.03と表せた.ただし,皮下組織厚の厚さからBMI≧30.0では皮下投与になる可能性があった.したがって,針の刺入深度は,BMI<18.5では1.5cm,18.5≦BMI<30.0では2.0cmとするのが適切と考えられた.

 結論:BMIを指標とした実際的な筋注における針の刺入深度は,三角筋部では18.5≦BMI<30.0は1.5cm,BMI≧30.0は2.0cm,中殿筋部ではBMI<18.5は1.5cm,18.5≦BMI<30.0は2.0cmが適切と考えられた.

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要旨

 目的:高齢者自身が実施したフットケアによる足部の形態・機能および立位・歩行能力の変化を検討し,介護予防の視点からフットケアの有効性を検証した.

 方法:生きがいデイサービスを利用している高齢者にフットケアの指導的介入を実施し,介入の1週間前,6週間後,介入終了後に足部の実態・機能,立位・歩行能力を測定し,変化の比較を行った.

 結果:研究対象者は7人の在宅高齢者であった.フットケアによる手段的ADLおよび転倒不安感には変化はなかったが,自己効力感は若干の向上がみられた.足部の変調は,循環状態や筋疲労に関する項目が改善した.足部の皮膚異常も改善や消失がみられた.感覚機能では右の踵部以外の測定部位で有意に向上し(p<0.05),循環機能も有意に向上した(p<0.05).立位・歩行能力も期間全般にわたり有意に向上した(p<0.05).

 結論:高齢者によるフットケアは,足部の機能およびADLの維持に不可欠な立位・歩行能力を向上させ,介護予防として意義がある可能性が示唆された.

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要旨

 研究目的:本研究では,4か月児健康診査のデータベースの分析から,母親の喫煙が児の出生時の身体計測値(体重,身長,頭囲,胸囲)ならびに出生後の発育にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした.

 方法:本研究で用いたデータベースは,4か月児健康診査を受診した児の健診データのうち,個人情報を全て除外し,連結不可能匿名化したデータファイルを用いた.統計解析には,母親の喫煙と児の身体計測値を重回帰分析等を用いて分析した.

 結果:3494人の単胎児のデータを分析対象とした.妊娠中に喫煙をしていた母親は全体の2.9%であった.妊娠中の母親の喫煙は,他の要因の影響を調整しても,出生体重,出生身長,出生頭囲と有意な関連が認められた.さらに,4か月児健康診査時の身長および頭囲においても関連が認められ,喫煙していた母親から出生した児は,喫煙していなかった母親から出生した児よりも有意に身長および頭囲が小さく,他の要因を調整しても有意であった.

 結論:妊娠中の母親の喫煙は,出生時の身体計測値のみならず,4か月児健康診査時の身長や頭囲にも影響していることが明らかとなり,禁煙支援のための対策をさらに強化する必要性が示された.

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要旨

 目的:新卒看護師が職業継続意思を獲得するプロセスを明らかにする.

 方法:新卒看護師6名を研究協力者とし,半構成的面接で得たデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した.

 結果:新卒看護師は,看護技術や勤務形態に適応し,先輩看護師や患者からの評価や患者への意識の変化により,【できる実感】を獲得していた.そして,看護師としての自己実現を目指す段階へと移行し,【理想の看護師像へのアプローチ】を進めていた.また,看護師を職業として選択したことの意識化や気分転換により,【仕事として割り切る】ことでストレスを軽減していた.さらに,周囲の人々の支えや,看護師の職業的長所を見出すことで,【意欲の再構成】を行って職業継続意思を獲得するプロセスを支えていた.

 結論:新卒看護師が職業継続意思を獲得するプロセスを進めるためには,看護師としての基盤の獲得をスムーズに行うこと,また看護師を職業としてとらえることが有効であることが示唆された.

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要旨

 目的:変形性膝関節症患者(以下,膝OA患者とする)に特化したセルフケア能力を評価できる指標を開発することである.

 方法:一次性膝OA患者を対象とした.項目分析,確証的因子分析を用いた構成概念妥当性の検討により尺度を構築し,信頼性,基準関連妥当性の検討を行った.

 結果:分析対象は386名であった.分析の結果,5因子20項目モデルが構築された(GFI=0.927, AGFI=0.907, CFI=0.919, RMSEA=0.045).「自己の病気および状況に関心を持ち把握する力」「療養法を遵守し継続していく力」「関節への負担軽減のために生活の仕方を調整する力」「病状悪化予防のために能動的に情報・方略を取り入れていく力」「有効な支援を希求し活用する力」の各因子4項目から成る「膝OA患者のセルフケア能力尺度」が作成された.尺度のCronbach'sは0.813で,外的基準とも有意な関連性が認められた.

 結論:尺度の構成概念妥当性および基準関連妥当性,信頼性が確認され,開発した尺度は膝OA患者のセルフケア能力を適切に測定できる可能性が示唆された.

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要旨

 目的:集中治療室に緊急入室した意識障害のある患者の家族に対し,エキスパートナースの直観は,その家族への援助にどのように影響しているのかを明らかにする.

 方法:集中治療室のエキスパートナース6名を対象に半構造化面接を行った.Bergsonの直観を前提とし,直観を示す言葉,それに関連した思考や行為を抽出し,それぞれを質的記述的に分析した.また,場面全体を時系列に直し,直観から捉えた家族援助への影響を分析した.

 結果:エキスパートナースの直観は家族の状況を瞬時に捉えていたことが明らかになった.その直観は,無意識に家族の目や口元などから家族の心情を推論していた.エキスパートナースは直観により家族の不安定な状況や気持ちの変化などを認識しており,それに応じて観察や声かけなどの援助を行っていた.また,家族と出会った最初の直観と,以降の思考,行為がつながっていた.

 結論:エキスパートナースは直観により動的な家族の内面を捉え,その解釈を踏まえながらより確かな援助へと導いており,思考と援助が連関していると考えられる.

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要旨

 目的:日本語版“Managing Uncertainty in Illness Scale-Family Member form:MUIS-FM”(MUIS-FM-J)の信頼性および妥当性を検討する.

 方法:脳神経疾患で入院中の患者の家族204名を対象に調査を行った.調査用紙は,MUIS-FM-J,新版STAI状態-特性不安尺度(STAI),対象者の基本属性と家族の病気に関する認識で構成した.併存的妥当性はMUIS-FM-JとSTAIの状態不安との相関関係により確認した.構成概念妥当性は,主にMUIS-FM-Jの因子構造により確認し,対象者の病気に関する認識の違いによるMUIS-FM-Jの得点の差を算出して弁別性を確認した.

 結果:MUIS-FM-Jは原版同様の1因子構造で,Cronbachのα係数は0.91であった.MUIS-FM-J得点は,STAIの特性不安得点との相関係数がr=0.34,状態不安得点との相関係数がr=0.66と正の相関を示した.MUIS-FM-Jは,疾患の種類,発症後の日数,意識レベルや生活動作,現状の予測などにおいて有意な得点の差を認めた.

 結論:内的整合性および併存的妥当性,構成概念妥当性の結果から,本尺度は信頼性と妥当性を有すると判断した.

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 目的:在宅精神障害者の家族介護者が持つSOC(把握可能感,処理可能感,有意味感)を明らかにする.

 方法:在宅精神障害者の家族介護者24名に半構成的面接を実施し,質的記述的分析を行った.

 結果・結論:家族介護者にとって【家族員の精神疾患発病】は,家族介護者の人生において辛い体験として位置づけられていた.家族介護者の処理可能感は,時間経過の中で【試行錯誤】を繰り返し,【他者からの支援】を受けながら患者への関わり方や生活に対する【気持ちの持ち方】は変化し,【患者と向き合う力】を見出した.把握可能感は,まず患者の病気を【精神疾患と把握する】ことから始まり,【状況の予測・理解の難しさ】の中で,【生活の見通し】のなさを感じている家族介護者が複数いた.また,有意味感は,これまでの生活や介護に【意義や価値の獲得】を行う一方で,【生活や介護への不全感】を感じている者がおり,介護を継続していく力として介護への【使命感】が大きいと考えられた.

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 目的:自閉症スペクトラム障害のある児とともに生活するきょうだいが,生活を構築する過程と様相を明らかにすることを目的とする.

 方法:研究方法には,Grounded Theory Approachに基づく継続比較分析法を用いた.

 結果:対象者は,12歳から22歳までのきょうだい10名であった.きょうだいが生活を構築する過程には,『まもるための他者への働きかけ』『同胞の世界との距離を保った付き合い』『自身の存在に対するゆらぎ』『親を気遣う』『同胞を切り離せない将来の生活への思考』という概念が存在し,《まもり》という概念を抽出した.

 考察:きょうだいは,周囲の人々に対し『まもるための他者への働きかけ』を行いながら,家庭では『同胞の世界との距離を保った付き合い』と『親を気遣う』状況を継続させ,その間に『自身の存在に対するゆらぎ』によって発達し,『同胞を切り離せない将来の生活への思考』を進めるという,生活と存在の《まもり》によって生活を構築していく.

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 目的:植込み型除細動器(ICD)を移植した患者にとって,その後の生活に見通しが立たないことは生活上の困難事のひとつとされているが,実際にどのような生活を送っているかについては不明な点が多い.本研究の目的は,壮年期患者の退院後の生活において,その行動や認識が持つ意味に着目し,ICDとともに生きるプロセスを明らかにすることである.

 方法:研究協力者8名に対して半構造化面接を行い,得られた逐語録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した.

 結果:18の概念で構成される6つのカテゴリー〈関係性構築の必要性に気づく〉,〈他者と再び関係性をつくる〉,〈ICDに対する見方を変える〉,〈自分流のガイドラインづくり〉,〈ICDが日常化する〉,〈改めて気を引き締める〉と,1つのコアカテゴリー【自分と他者および自分とICDとの関係性の構築】が抽出された.

 結論:患者は他者やICDとの関係性を構築・再構築する過程を通して,ICDと生活をともにしていくことが明らかになった.

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 目的:保健師がプリセプターの役割を担うことによる認識の変化を明らかにすることを目的とした.

 方法:保健師9名に半構成的面接を実施し,プリセプターの気づきについて質的記述的に分析した.

 結果:プリセプターの認識の変化には【保健師としての意識変容】と【組織の一員としての意識変容】の2つの局面があった.【保健師としての意識変容】は,《新人を育てる役割に向き合う必要性に気づく》こと,そして,《新人の成長に合わせて育てる必要性に気づく》,《新人を育てることが自分自身の成長につながることに気づく》こと等であり,さらには《新人から学び,自身の制限枠を超える必要性に気づく》ことであった.【組織の一員としての意識変容】は,《組織と関わることの必要性に気づく》こと,そして,《スタッフと育ち合うことの重要性に気づく》,《組織における保健師の役割を再認識し合う重要性に気づく》こと等であり,さらには,《組織の一員として組織の改善に関わる必要性に気づく》ことであった.

 結論:保健師がプリセプターを担うことは,【保健師としての意識変容】と,【組織の一員としての意識変容】の2つの変容的学習をもたらしていた.

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 目的:CNSにおける職務上の自律性に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.

 方法:CNS認定者545名を対象にして質問紙調査を実施した.質問紙は,CNS自律性測定尺度と職位,看護専門分野,仕事に対する自信や意欲,満足感,キャリア意識,職場の人間関係,サポート認知を尋ねる項目で構成した.分析には,t検定,偏相関,重回帰分析を用いた.

 結果:回答者212名(38.9%),有効回答205名(96.7%).“他職種間調整・管理運営相談能力”は,スタッフよりも主任・係長以上,急性・重症看護よりもがん看護と精神看護,サポート認知低得点群よりも高得点群の方が高かった.“クリティカルケア・総合判断能力”は,精神看護よりもがん看護,慢性疾患看護,急性・重症看護の方が高かった.また,職務経験年数の多さにかかわらず自信,意欲,満足感,キャリア意識,職場の人間関係が関連性を示した.中でも自信や意欲,職場の人間関係は,CNS自律性下位尺度項目のすべてに強い影響力を持っていた.

 結論:CNSの自律性形成には,専門性を発揮するための職務上の地位,良好な人間関係とサポートが得られる職場環境,仕事に対する自信や意欲に配慮する必要性が示唆された.

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要旨

 目的:前頭葉損傷に伴う自発性低下は,近年,標準意欲評価法(Clinical Assessment for Spontaneity, CAS)が開発され,客観的評価が試みられる.本研究では,CASの5つの尺度の中でも,特に看護師が評価に関わる可能性が高い日常生活行動の意欲評価スケール(以下CAS3)に着目し,看護師と家族の両者の評価について相違点や一致内容を検討することを目的とした.

 方法:前頭葉損傷患者の家族,看護師各39名が,患者の自発性を評価した.自発性の測定にはCAS3を用いた.

 結果:看護師と家族の評価結果はCAS3の合計得点において,類似した回答結果を示した.しかし,洗面,入浴,服薬,挨拶,会話,趣味では,回答が異なる傾向を認めた.

 結論:看護師と家族間の日常生活行動における自発性低下の評価が異なる要因には,観察機会の差があると推測された.評価の妥当性を高めるためには,看護師と家族両者の評価を検討する必要があることが示唆された.

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要旨

 目的:認知機能低下傾向にある地域在住高齢者を対象として行った懐メロを用いた回想法の効果を明らかにする.

 方法:懐メロを用いた回想法は,A村健康福祉センターで2012年9月〜翌年3月まで1回/月,2時間/回,全6回(2月除く)を実施した.対象者は,地域在住高齢者で認知機能低下,閉じこもり傾向と判定された11人(平均年齢82.9歳,SD±6.3)とした.評価は,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),Mini-Mental State Examination(MMSE),主観的健康感VAS(以下,主観的健康感尺度とする)などを用い,前後差についてウィルコクソンの符号付順位和検定で分析を行った.

 結果:HDS-Rと主観的健康感尺度は,セッション前より後の値が有意(p<0.05)に高かった.HDS-RとMMSEについては,下位項目のうち遅延再生の項目のみ,セッション前より後の値が有意(p<0.05)に高かった.

 結論:懐メロを用いた回想法は近時記憶能力と主観的健康感の改善に有効であることが示唆された.

基本情報

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日本看護科学会誌
34巻1号 (2014年12月)
電子版ISSN:2185-8888 印刷版ISSN:0287-5330 日本看護科学学会

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