看護教育 27巻1号 (1986年1月)

特集 チーム医療とPOS—第7回POS研究会報告

特集にあたって 柴田 進
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 POS研究会も回を重ねること7回となり,年ごとに会員の皆様のPOSに対する関心が高まり,日常診療の上にも活用されて成果を上げておられることに深く敬意を表します.

 しかし,他方では病院内での実施にあたって問題点が生じ,それの解決に鋭意努力されておられることも事実であります.

Ⅰ.特別講演

POS入門 日野原 重明
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 小さな会で発足したこのPOS研究会が,7回目にすばらしいエネルギーを持って第8回に向かおうとしています,私は今日の皆さんのお顔を見て,日本の医療はこれからは本当に充実した方向にいくのではないかという確信を持ちます.

 ナースに比べると医師の数は少数ですが,よくこれだけの医師の方が参加されたと思っています.このような会合は,日本の医療界では非常に例外的ではないかと思います.何かわくわくするような緊張をも感じます.

Ⅱ.ワークショップ—チーム医療とPOS

オリエンテーション 岩﨑 榮
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 ワークショップ(workshop)は,英和辞書では‘仕事場,作業場’とあり,‘教育’における“研究集会”(講義式を改め,参加者に自主的に活動させる方式の講習会)を意味すると解説されている.新しい教育手法を意味するもので,いわば従来の十年一日のような講義形式に変わるものとして登場し,自己学習意欲を高めるための手法として開発されたものである.

 世界保健機構(WHO)では,保健医療者の教育のために,この手法による学習形式を導入し,これまでにない素晴らしい教育効果がもたらされるとして,この手法を世界に普及させたのであるが,保健医療問題の解決手法としてはすぐれている.

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 このワークショップは主にPOS初心者を対象として,従来から用いられている診療記録をみて,これからのチーム医療を実施していく上でどこに問題があるかということに気づき,さらにPOS導入のきっかけを作ることを目的として企画された.参加は23人と,他のグループに比べて少人数であったが,本来のワークショップができたと思う.

 参加者を2グループに分けて,それぞれのグループで司会者・記録係を決めて,全員の話し合いのなかから資料の診療記録の問題点を列挙し,その改善策を考えた.

POSの初歩的解説 羽白 清
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 第7回POS研究会のワークショップ‘POSの初歩的解説’には280名を越える申し込みがあり,当日は階段教室があふれるばかりの盛況であった.小グループに分かれて行う作業は不可能のため,あらかじめ演習問題を用意し各自設問に取り組んでもらう一方で,随時,質疑・討論を行いながらワークショップを進めた.POSの理解を深め,実践への意欲を高めることが目的であるが,POSの出発点に立っている大多数の参加者のために,オーソドックスなPOSの紹介に努めた.

 ワークショップは,日本大学の岡安教授と川崎医科大学の渡辺先生のご指導とご援助を得て有意義に進行したが,以下に当日のテキストに用いた14の設問を提示してPOSの解説を加える.

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 ‘POSの実際’というテーマで開かれたワークショップの会場には,約350名の,主としてナースの方々が参加された.ワークショップに先だって行われたオリエンテーションでは,‘ワークショップとは,全員が参加して作業をする場である’との説明があったが,いかんせん参加者が大勢のため進行方法を変更せざるをえなかった.

 このセッションを担当したのは,滋賀医科大学の内科医師・中木高夫氏と筆者である.参加者の大多数がナースであるということで,サブタイトルとして‘看護にいかすPOS’をつけ加えた.

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 退院時サマリーのワークショップは,約90名の出席者で行われた.この出席者の大多数は,ナースである.

 退院時サマリーのワークショップのタスクフォースは,森忠三・林茂が担当した.

POS教育の問題点 山下 徹
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予想を上回る問題点が浮き彫りに

 このワークショップには71名の参加申し込みがあったが,それ以上の方が出席されていたようだ.日野原重明・柴田進の両先生をアドバイザーにお願いして,岩崎栄先生の司会による自由討論形式で熱気あふれる論議が進められた.

 その結果,予想を上回る問題点が浮き彫りにされた.

総合討論 岩﨑 榮
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 第7回のPOS研究会は900名以上の参集のもと,看護婦・保健婦で8割を占める中,医師・栄養士・薬剤師・MSW・病歴士・技師・事務・学生と多種類の職種の参加がみられた.このことからしても,もう診療録というものが,医師や看護婦だけの独占すべきものではなく,患者を中心としたすべてのヘルス従事者が共有するものであるという認識が高まったことを意味する.

 さて,POSへの認識・理解が進められてきたわけであるが,それが必ずしも実践につながらないところに,この研究会としての大きな悩みがある.なぜ実践とならないのだろうか.

Ⅲ.特別講演

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はじめに

 近畿大学医学部は昭和49年4月に設立され,付属病院は昭和51年5月に開院した.我々は開院時以来,問題指向性医療体制(POS)を全病院をあげて診療の理念とし,これを完全実施することに努力してきた.ここに機会を与えられたので我々の実情を述べ,過去を反省し,将来の発展を期したいと考える.

Ⅳ.教育講演

医療情報処理とPOS 森 忠三
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 POSは医療と医学教育における革新のための新しいシステムである.このPOSは,コンピュータによる医療情報処理システムの面でも新しい考え方を提供している.ここでは,筆者の開発したPOSマトリックス方式とコンピュータについて述べる.

Ⅴ.パネルディスカッション—医療チームによるPOS実践上の問題点

司会にあたって 柴田 進
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 わが国にPOSが紹介されて10余年の歳月が流れましたが,その間にPOS研究会の果たした役割は高く評価されており,POSの啓蒙と普及に大きく貢献してまいりました.

 POSは本来,チーム医療を支えていく柱ともなるべきものであります.しかし,わが国におけるPOSの普及の現状をみますと,各医療職種別に実践の努力がなされ,一応の定着と成功をおさめてまいりましたが,医療職種間の連携にはいまだ若干の円滑さを欠くきらいがあります.

看護の立場から 岩井 郁子
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 限られた経験のなかで,看護の立場からPOS実践上の問題を述べてみたいと思います.問題は沢山あると思いますが,大きく分類すると2つに分けることができるでしょう.その1つは,新しく導入する際に生じる問題であり,もう1つは実施するなかで生じる問題です.

栄養士の立場から 寺本 房子
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はじめに

 医療技術の進歩に伴い専門分化が進む中で,これら専門医師と看護婦・栄養上らがチームを作り,患者のケアを行う病院が増加しつつある.

 このような背景のもとに,川崎医科大学附属病院栄養部では,昭和52年からチーム医療へ参加を始め,POSを取り入れてきた.そして昭和56年4月から,プライマリ・ケア部門として総合診療部がスタートし,栄養士も昭和58年5月よりその医療チームの一員として参加するようになり,栄養士のPOS導入が本格的になった.

医師の立場から 羽白 清
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はじめに

 POSはチーム医療を具現する理想的なシステムと思われるが,POS研究会の参加者を見ても分かるように,ナースの熱意に比して一般に医師の関心は低いようである.

 POSの実践に際しての問題点はいろいろあり,POSの生半可な理解に基づく形式的な導入の面もあるが,実際に運用に当たる人と組織の問題が大いに関係する.中でもイニシアチブを取るべき医師の意識と関心の度合いに問題が多いと思われる.

医師の立場から 林 茂
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POSは,いま……

 POS研究会も7回を数えるようになった.川崎医科大学の講堂を埋め尽くした大聴衆の熱気が,POSを,さらには,よりよい看護・医療を求める人々が飛躍的に増加していることを如実に表していた.しかし,残念なのは参加者の大部分が看護婦さんで,出席している医師のほとんどは顔なじみの人たちばかりだったことである.この事実は,まだ医師の多くはPOSに背中を向けているということを示している.

 POSが導入された当時,かなりのスピードで方方の施設に広まっていった.しかし,一時その勢いが落ちた時期もあった.POSは医師と看護婦が協力してやらなければ意味がない.看護婦だけではできないというのが1つの大きな理由だったと思う.

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 プライマリ・ケアとは従来の医師中心の医療を排して,患者中心の医療に立ち返ること,そして,包括的なケアをすることを意味しており,そのためにはチームを組んで診療に当たることが最も望ましいと考えられる.その際,注意しなければならないことは,チーム構成員が各自の立場のみから患者を診るのではなく,患者中心の立場から包括的に眺めることである.この目標を達成するには,チームミーティングや診療録はたいへん重要な役割を果たすと考えられる.

 川崎医科大学においては,プライマリ・ケア教育の場として総合診療部が4年前に設立され,医師・看護婦・栄養士・医療秘書・事務員からなるチームを組んで診療に取り組んできた.そして,チームミーティングを毎週行い,また,診療録の在り方に関する検討も行ってきた.

討論とまとめ 柴田 進 , 上田 智
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 ‘POSをチーム医療の中でどのように機能させるか’というテーマで,医療チームの各職種の方々にPOS実践上の問題点を提起していただきました.

 POSは本来,患者の問題点(悩み)をどのように解決したかの過程を明らかにして診療の質的向上を目ざすものです.したがって問題解決の過程で各医療職種の方々が専門技術を駆使してチーム診療の成果をあげられるための新しいシステムであるともいえましょう.

基本情報

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看護教育
27巻1号 (1986年1月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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