保健婦雑誌 28巻3号 (1972年3月)

特集 私たちの団結をはばむもの

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 "とにかく保健婦は団結しなくてはだめよ。だって,いまの社会は健康を阻害する因子がものすごいじゃない。たとえば,政治にしたって,経済にしたって,人間なんてディスポーザブルなものと思っているでしょう。使えなくなればポイと捨てて,替わりはいくらでもある,といった調子でしょ。巨大な力で押し寄せてこられたら,たまんないわよね。保健婦って調子いいとこあるから,おだてられるとホイホイと動いちゃうところがあるけど,考えてみると,支配している側にうまく利用されているってわけ。そうじゃなくて,ほんとうは住民といっしょにな塚て,健康をはばむものに立ち向かっていかなきゃうそだし,そのためには保健婦どうしも,あっち向いたりこっち向いたりしちゃだめよね。技術的な問題にしたって………。

 ある保健婦さんのおしゃべりから,この特集は組まれたのです。 

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 胸の不満は数々あれど………

 現在の保健婦活動に対する不満を数えあげたら限りがない。

 まず,地域住民が健康を確保するに必要な活動のうち保健婦が何ほどのこともできない,という不満である。しかし国や公共団体の活動は保健婦活動だけに専念していない。国が保健婦活動に総力をあげ,税金の大きな部分を保健婦活動に注ぎ込めば,保健婦活動に関する限りでは住民を満足させることもできようが,他の分野で不満が蓄積することは避けられまい。現在の国の力や国民の税負担能力,そして社会機構ではあらゆる分野が不満だらけである。そして保健婦活動を真っ先に充実させねばならないということも,必ずしも全国民の賛成するところではなさそうである。

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 住民の権利意識は

 現在公害を中心とした住民運動が各地で展開されつつある。これは個人の意識だけではどうにもならず,行政に頼っていては解決しないと,住民自身が立ち上がったのである。むしろ行政にあるわれわれが,被害住民の意識に対応した姿勢がないとき,住民はわれわれに対する不信を表わし,われわれの怠慢を批判するであろう。従来の行政のように,住民の参加の少ない,お役所まかせではだめだという住民の危機意識の表われでもある。

 戦後の高度経済成長下に生み出された公害は,生活環境を破壊しつつあり,住民はいやがうえにも生活の場に目を向けざるをえなくなっている。したがって従来行政のとってきた官僚的な体制のもとではなく,住民意識がかつてないほどに目ざめているときにこそ,この潜在的な力を基底にして,人間的な生活環境作りの最後のくい止めを住民とともに行なうべきであると思う。

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 昼すぎ,机に向かって仕事をしていると,「玉造地区担当の保健婦さん,電話に出てください。」という業務の人の声が聞こえてきた。

 「もしもし,担当保健婦ですが,ご要件は?」

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 はじめに

 ときどき耳にすることだが,"保健婦たそがれ論","保健所に保健婦は必要か","都会に保健婦は必要か""保健所保健婦と市町村保健婦の違い"など,私たちを外から見る目はなんとひややかなことであろう。

 実際に働いている私たちは忙しいし,もっと保健婦をふやしてほしい,もっと受持人口を減らしてほしい,と願っているのに………。そして保健婦本来の仕事がしたいと願っているのに………。"それでは保健婦本来の仕事とはどんな仕事ですか"と問いかけられたとき,私たちは即答できるだろうか。日ごろの私たちの仕事をふり返って考えてみたいと思う。

グラフ

母と子
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母性は,すべての児童がすこやかに生まれかつ,育てられる基盤であることにかんがみ,尊重され,かつ,保護されなければならない。(母子保健法第2条)

 乳児及び幼児は,心身ともに健全な人として成長してゆくために,その健康が保持され,かつ,増進されなければならない。(母子保健法第3条)

資料 健康管理論 序論4

健康管理論の学際性 田中 恒男
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 健康管理論を支える諸科学

 健康管理という表現の是非は別として,健康を擁護するためのしくみ,操作operationは,特定の技術の独占するものでないことは,いままでの記述に明らかである。とどのつまり健康にかかわりをもつあらゆる諸技術の総体として,健康管理が成立することになる。この意味で,過去約十年の間に健康管理という行為の体系は,大きく変化したと考えてよい。このための方法について,かつて勝沼はヘルス-アドミニストレーションヘルス-エデュケーションヘルス-サービスの三つの柱を主張した

 これらの用語をあえて仮名書きにしたのは,それなりに意味がある。たとえば,ヘルスーアドミニストレーションhealth administrationとは,保健・医療を社会に展開していくための制度的,管理運営的操作のいっさいをいう。したがって,これを単純にパブリック-ヘルスーアドミニストレーションPublic health-administration,すなわち衛生行政と訳すことは誤解を生む一因だからである。同様にヘルス-エデュケーションを衛生教育と訳して,事業と感違いされることも本旨をゆがめ,ヘルス-サービスもサービスという用語が日本的意味合いにおいて誤解される危険があるために,ここではあえて仮名書きとしたものである。

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 はじめに

 最近は,就労しながら治療する患者が多い。そのなかには,短期間で治癒してもよいはずの患者が,治療を中断したり放置して勤務し,難治や重症へ進行させ,長期間の療養に身を投じなければならない場合をしばしば経験する。

 そこで,今回このような就労治療患者のなかから一事例をとりあげ,効果的な保健指導を行なうことを目的として,保健婦が家庭訪問指導を行なわなくても,患者自身は自発的治療態度が身につき,医師連絡程度でも治療状況が把握できることを目標に,継続訪問を行ないながら検討したものを報告する。

仕事と人生

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 私は宿命感にそれほど抵抗を感じない一人です。それは少なからず陰険なにおいのすることばですし,停滞したなかでのわめきでもあり,決して啓発的なものでないことは認めております。しかしながら偶然なのか,努力の結果生じたものであるのかという際,やはり人それぞれの考え方で解釈していくでありましょうし,またそれは第三者の介入する場ではないと思われます。

 私が英語に興味をもち始めたのは中学校に入学してから半年ぐらい後でした。外国の生活,習慣に興味があり,それを知ろうとして,アメリカ人との文通を選んだことからだったのです。それが高校,大学を通じ,私の"英語熱"を保持する原動力となったような気がします。そして現在に至る13年間というお金では買えない貴重な時間は,私の英語エネルギーの源そのものなのです。

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 新島は安政8年10月1日,安永の大噴火の際に海底の大爆発があり,海底の隆起によってできた島である。したがって,この島は錦江湾の海底基盤である火山灰軽石からできており,島の上部は海底の表面に蓄積された貝殻や微生物の残骸におおわれている。

 新島は沈みゆく島として知られているが,脆弱な火山灰軽石でできているこの島は,打ち寄せる波浪に洗われて日々その形を小さくしている。

実態をさぐる

看護教育制度
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 看護新カリキュラムが実施されて4年。昨年には保健婦教育の改訂も行なわれた。今春,保健婦学校を卒業した学生の多くは,新カリキュラム4年の落とし子である。

Medical Topies

腸重積症 嶋田 和正
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 腸重積症の危険

 小児科外来へ7〜8か月ぐらいの乳児を連れて来たお母さんが,「この子は今朝からときどきギャーッと泣いて,ミルクを吐いてしまうんです。ひとしきり泣いて一応は泣きやむんですが,どこか痛いらしくて,それに便に赤いものがまざっているんですが……」と訴えたとする。その際小児科医として真先に思い出すべき病気は赤痢でも消化不良症でもなく,腸重積症だといわれている。なぜなら赤痢や消化不良症なら抗生物質投与や補液などの一般療法をすれば,急に生命に対する危険はない一方,腸重積症だったら特別の治療をしない限り,1〜2日のうちに致命的な結末になる確率がきわめて高いからである。かつて赤痢とか疫痢とかで死亡したといわれた小児のうちあるものはこの腸重積症であったのでは,という極端な意見を唱えている人もあるほどである。

 腸重積症は急性に経過する病気であるうえ,予防として確実な方法がないので,保健婦として直接対応する機会は少ないかもしれないが,小児の恐るべき病気の一つとして,おおよその知識を心得ていることが必要であろう。

ニュース診断

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 患者にシワ寄せはたまらない

 ここに小さなチラシがある。去る4月上旬のある日,新宿駅前で看護婦さんらしい人が数人で配っていたものだ(私は前々号で書いたとおり,この種のミニコミをとても大事にする。世のため,わが身のためになることが多いから。このチラシもそうだった)。なんと書いてあるか——。

 "みなさんの協力でよい医療を!"というメインタイトルの下に"私たち医療労働者は春闘で大幅賃上げ,増員,夜勤制限,健康保険改悪を中心に戦っている。いまの政府の方針や経営者の回答では,どうしてもストにはいらざるをえません。都民のみなさんのご支援を"とある。そしてその下には<人手をふやし夜勤をへらし良い医療を>などの要求がかかげてある。裏にはK病院の看護婦の勤務表と,人員不足の深刻な状況が要領よく述べてある。

基本情報

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保健婦雑誌
28巻3号 (1972年3月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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