Medical Topies
腸重積症
嶋田 和正
1
1都立母子保健院
pp.76-78
発行日 1972年3月10日
Published Date 1972/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205052
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腸重積症の危険
小児科外来へ7〜8か月ぐらいの乳児を連れて来たお母さんが,「この子は今朝からときどきギャーッと泣いて,ミルクを吐いてしまうんです。ひとしきり泣いて一応は泣きやむんですが,どこか痛いらしくて,それに便に赤いものがまざっているんですが……」と訴えたとする。その際小児科医として真先に思い出すべき病気は赤痢でも消化不良症でもなく,腸重積症だといわれている。なぜなら赤痢や消化不良症なら抗生物質投与や補液などの一般療法をすれば,急に生命に対する危険はない一方,腸重積症だったら特別の治療をしない限り,1〜2日のうちに致命的な結末になる確率がきわめて高いからである。かつて赤痢とか疫痢とかで死亡したといわれた小児のうちあるものはこの腸重積症であったのでは,という極端な意見を唱えている人もあるほどである。
腸重積症は急性に経過する病気であるうえ,予防として確実な方法がないので,保健婦として直接対応する機会は少ないかもしれないが,小児の恐るべき病気の一つとして,おおよその知識を心得ていることが必要であろう。
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