助産婦雑誌 56巻12号 (2002年12月)

特集 子ども虐待防止支援ネットワーキング

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はじめに

 子どもの虐待に対処する中核機関と専門職は児童相談所と児童福祉司です。しかし地域で虐待を受けた子どもと虐待する養育者の生活を援助するには,地域の医療,保健,福祉と教育に関わる多くの機関と専門職,そして地域の民生委員や児童委員などとの連携と協力が必要です。本稿では専門職の1つである助産師の役割と子どもへの虐待に関する地域のネットワークについて,東京都三鷹市を例に考えてみたいと思います2)

 まず,虐待の定義と対応について解説しておきます。

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はじめに

 子どもの虐待は,現在大きな社会問題となっています。女性が,妊娠・出産・分娩と,子どもとの関係を作っていく始まりの時に深く関わっている助産師が,虐待予防のために果たす役割は,大きいのではないかと思います。

 現在,筆者らは,助産師として総合周産期母子医療センターのGrowing Care Unit(以下GCU)で,主に成長・回復期にあるハイリスク新生児と家族のケアに携っています。

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はじめに

 総合周産期母子医療センターをもつ大学病院で医療ソーシャルワーカー(以下MSWとする)として勤務するなか,これまで多くの妊産婦やその家族と出会い,助産師の方々と共にその出産前後の環境の整備に向けて,かかわってきた。これは,当院の助産師が患者の抱える生活上の問題にも目を向け,その問題に対する援助の必要性を感じ,MSWと共にその問題に取り組もうとしてきたことの現われでもあるように思う。後述するように患者(妊産婦)を支援するネットワークは関係する各部署の緊密な連携のうえに成り立つといえる。その意味でも,助産師が発見した問題点をMSWへとつなげ,妊産婦を支援していくという視点をもつことは,ネットワークを構築し活用していくうえで重要なものであると感じている。

 MSWは患者の抱える生活上の問題を解決に導くことを主な働きとしている。患者は経済的な問題,夫婦間・家族間の問題,育児不安や養育困難に対する危惧など,多種多様の悩みを抱えながら療養生活を送っている。そして,その問題は単独ではなく相互に絡み合っていることが多い。したがって,MSWとして介入を依頼されても,MSWだけで解決できる問題は少なく,短い入院期間に院内関係者のみがかかわって解消するような問題であることも稀である。複雑に絡み合った問題に対して解決の糸口を見い出すには,多くの職種・多くの機関がチームを組んで援助を行ない,患者の退院後の生活につなげていくことが重要となるケースがそのほとんどであると言える。そのためにも,各機関・各職種の機能と役割の理解が必要となってくる,と筆者は考えている。

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はじめに

 クライエントの生活支援にとって関係機関のネットワークはなくてはならないものである。それは,ソーシャルワークにとっても,意味のあるものだと思う半面,その調整には難しさや,ある意味での“煩わしさ”があることも否めない。ネットワークにおけるカンファレンスでの時間的拘束や,意見の調整がエネルギーの消耗につながる。意見の調整がなぜ必要となるか。それぞれの機関の持つ役割・目的の違いにより,問題の捉え方や危機感,援助方法に差異が生じるためではないだろうか。ただ,この差異があるからこそ,問題を多面的に捉えられ,問題への介入方法や援助自体に幅ができてくるということも事実である。関係機関との間で形成するネットワークの有効性とは何であるのだろうか,そしてまた,患者(以下,クライエントとする)にとっての,援助者側にとっての,有効性とは何なのであろうか。両者ともに,個々のケースによって変化してくると考えている。

 本稿では,ネットワークの中で医療機関が果たすべき役割を明らかにし,その役割を基に医療ソーシャルワーカー(以下,MSWとする)がどのようにネットワークを捉え,医療機関での援助に活かしていったか。また,ネットワークに対してのMSWの働きかけが,クライエントにどのような意味を持ったのかを,筆者が助産師らとともに虐待防止に向けてかかわった周産期の事例から検討していきたい。

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三鷹市の子ども家庭支援ネットワーク

 三鷹市は都心から15キロ圏に位置し,都立井の頭公園,国立天文台,国際基督教大学,野川や玉川上水など,都市部にあって水と緑に囲まれた,人口約17万人の住宅都市です。古くからのコミュニティーが残る一方で流動人口も多く,都市化や核家族化の進行,生活スタイルの変化により市民の多くは地域・近隣との関係が希薄になっています。この地区でも他地域と同様,お母さん,お父さん方は,孤立感や子育て不安,育児への負担感を抱えながら子育てをしていると言えます。

 そうしたなか,三鷹市では1996年に「三鷹市児童青少年総合施策」を策定。翌97年には,子どもと家庭に関する地域の身近な相談機能や,地域の子育て関係機関の連絡調整機能などを担う目的で「三鷹市子ども家庭支援センターすくすくひろば」を開設し,ここを拠点として子育て支援に当たってきました。支援センターでは,親子で自由に遊べる子育てひろば事業や緊急一時保育,ショートステイ事業などを行ないながら,さまざまな相談援助活動をしてきています。今年4月には,市の最重点プロジェクト「子ども・子育て支援プロジェクト」の一環として,0歳から18歳未満の子育て支援の拠点施設として2か所目となる「三鷹市子ども家庭支援センターのびのびひろば」をスタートさせ,相談援助機能を強化したところです。

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 虐待防止には早期発見と適切な介入が大切です。そのために地域と病院に求められる取り組みについて保健師として地域保健の視点から述べていきたいと思います。

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児童相談所の役割とは

 児童虐待の問題が新聞等のマスコミで取り上げられたことで,児童相談所の知名度が上がりました。

 報道される内容は,児童相談所がかかわっていながら,なぜ虐待による死亡事件が防げなかったのか,児童相談所は何をやっているのだ等の批判的なものが多く,子どもを守る児童相談所の役割が果たされていないことへの否定的なものがほとんどです。これらの報道に接すると児童相談所職員としてどの様な相談を受け,どの様な対応をしたのかが大変気になります。児童相談所の動きが悪いために起こったのか,親が拒否的で児童相談所のかかわりに手間取ってしまったのか……。いろいろと想定してしまいます。

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 本誌 本日は,お集まりいただきまして,ありがとうございました。この座談会では,子どもへの虐待を防止するためのネットワークのなかで,助産師がどういった役割を担うべきか,助産師同士がもっと連携を密にしていくには,何が必要なのかを考えてみたいと思います。今日は病院・地域(開業)・行政で,ご活躍中の3人の助産師さんにお越しいただきました。まずは,それぞれのお立場と虐待に対する取り組みやお考えなど,簡単にお話しいただきたいと思います。

特別寄稿

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 1,000人中17人の妊産婦が出産中,あるいは出産後に死亡し,1歳未満の乳児は1,000人中151人が死亡してしまう。また,出生した子どものうち4分の1が,6歳の誕生日を迎えることなくこの世を去る。

 アフガニスタンの母子の現状について,昨年の12月頃,この信じがたい数字が報道されました。私は報道が伝える数字を目の当たりにし,驚きを禁じえませんでした。

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 56巻10号では本研究の調査方法とともに,「妊娠期のケアとその責任範囲」「分娩期のケアとその責任範囲」の領域で,日本の助産師が「日本の助産婦が持つべき実践能力と責任範囲」1)に述べられている事項について,その必要性と実践能力をどのように認識しているかを報告した。引き続き,本号では「産褥期の母子のケアとその責任範囲」「家族ケアとその責任範囲」「地域母子保健におけるケアとその責任範囲」の領域(資料)について結果と考察を述べる。

 調査方法は10号に述べたとおりである。10号をご参照いただきたい。

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“Setting the record straight”事実をまっすぐ捉えよう

 見出しに掲げた“Settillg the record straight”は,乳児期の母子愛着関係の重要性を,実際の母親の育児行動の観察から示した著書『親と子のきずなはどうつくられるのか』(BONDING-Buildingthe Foundations of Secure Attachment andIndependence. 邦訳/医学書院刊)で有名なKlaus(新生児科医)が学術誌にのせた論文のタイトルである。Klausはなぜ,このような表題を使ったのだろうか。

 KlausはKennelらとともに,イギリスのBowlbyが提唱した母子の愛着理論を,実際の新生児医療の場で確認したことで有名である。Bowlbyは,第2次大戦後の戦争孤児の発達を調査し,乳児は少数の特定の養育者のそばにいようとする本能的な行動をとり,それが満たされないと発達に障害が生じることを見出した。そしてそうした乳児の生得的な行動を「愛着行動」と呼んだ。Bowlbyの理論は,当時新しい学問として急速に発展してきた動物行動学や,実験心理学を理論的な支えとしていた。動物行動学では,Lorenzによる,鳥のひなが孵化して初めて見たものを養育者(母親)とみなすインプリンティング理論が,愛着理論を説明するとされ,実験心理学では,サルの乳児を針金でできた代理母と一緒に飼育したハーローの実験が,愛着行動を説明する絶好のモデルとされた。ハーローの実験では,子ザルは哺乳ビンをくくりつけた代理母より,柔らかな布で覆われた代理母に抱きつく行動がみられたのである。しかし,こうした知見には大きな理論的制限があった。それは,それらが人ではなく動物に見られた行動であったからだ。

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 「私が学生の頃,看護学校の校長がいつも言っていたことは,『国際的なナースになりなさい。そして,老後といえどもボランティアとして市民に力を貸すような人間になりなさい』ということでした。困っているときは,お互いに助け合うし,支え合う。看護者というのはそういう人種なのかもしれませんね」。

 自然に囲まれた開放的な雰囲気の助産院「ベビーヘルシー美蕾」で,院長の瀬井房子さんは,戦いで疲弊したアフガニスタンにわたり,助産院を開設するにいたった理由をそんなふうに語ってくれた。

連載 誕生の詩—滝沢助産院物語・11(最終回)

ここから 川野 裕子
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おぼえてる このこえをしっている このにおいゆれていた 母の海

だきしめて だいていたいそばにいたい はなれたくない

連載 とらうべ

ガザの悲しみ 小田切 拓
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 「なぜ,本当のことが伝えられないのだろう?」常々感じていた疑問の答えを探すため,パレスチナ人自治区・ガザの取材を始めた。現在は,テレビディレクターをしていた経験を生かし,難民キャンプの日常を撮影している。

 ガザは,沖縄によく似ている。イスラエルによって土地を奪われたパレスチナ人が暮らす自治区の内部には,あちこちにイスラエル軍の拠点がある。そこから連日,パレスチナ側へ攻撃が加えられているのだ。本来,危険の芽などほとんど存在しないはずのパレスチナ入居住区で,惨劇が繰り返される構図のなかに,意図的に作り上げらた“紛争”が見え隠れする。無機質な数字や当局発表の引用では伝えきれない痛みが,ガザには溢れている。

連載 生殖補助医療—“技術”がもたらした現実と未来・4

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はじめに

 生殖補助医療の発展は,かつては望むべくもなかった人びとにも子どものいる人生を実現させてきました。医療者への感謝の手紙をしたため,「わが児」の写真を同封してくる人も多いと聞きます。そのような面が生殖補助医療の“光”とするならば,私が相談の場で向き合っている当事者の苦しみは,いわばその“影”の一面といえるでしょう。

 私はいま「東京都不妊ホットライン」における相談のほか,独自に開いている心理カウンセリングに携っています。そこを訪れる人のほとんどは,長年の通院にもかかわらず,結果を得られずにいる女性たちです。うつ状態やパニック症状が見られることも多く,カウンセリングの場から見た不妊の現状は深刻なものがあります。

連載 りれー随筆・216

支えられて 高野 味鈴
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 私は15年間助産師として勤務していた総合病院を8年前退職し,現在は産科婦人科の有床診療所に勤務している。自分の時間がもてるのは1日のうちでも限られ,家庭と仕事の両立に限界を感じながらも,多くの人に支えられて仕事を続けている。

連載 英国助産婦学生日記・23

ルブナ 日方 圭子
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 夏の終わり,病院のロビーで,6か月前に母子室にいた親子に再会した。バングラデシュ出身の20歳そこそこの小柄な母親ルブナとぷくぷくとした赤ちゃん。まん丸の目がルブナそっくりだ。「私を覚えてるの?」とルブナがおおきな目で覗き込んでくる。もちろん! 印象強かったから。

今月のニュース診断

がん患者の性 斎藤 有紀子
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幸せな性とは

 2002年8月,『がん患者の〈幸せな性〉』という本が出版された。99年にアメリカで刊行された同書の邦訳である(アメリカがん協会編,高橋都・針間克己訳,春秋社)。

 読者は,第1章「正常な性生活とは何だろう?」で,まず,「あなたとあなたのパートナーにとっての『正常』とは,2人が共に楽しむことのできるすべてのことです」というこの本の基本姿勢を知ることになる。続いて,がんになってセックスへの興味を失う人もいるが,それは不思議なことではないこと,一方で,「いい年をして」セックスへの関心を持ち続けていることも恥すかしがる必要はないこと,など,さまざまな読者が,この本を安心して手にとることのできる導入となっている。

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基本情報

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助産婦雑誌
56巻12号 (2002年12月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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