特集 子ども虐待防止支援ネットワーキング
養育支援に見るソーシャルワークにおけるネットワークの有効性と課題—事例検討を通して考える
加藤 雅江
1
1杏林大学医学部付属病院
pp.991-995
発行日 2002年12月25日
Published Date 2002/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902999
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はじめに
クライエントの生活支援にとって関係機関のネットワークはなくてはならないものである。それは,ソーシャルワークにとっても,意味のあるものだと思う半面,その調整には難しさや,ある意味での“煩わしさ”があることも否めない。ネットワークにおけるカンファレンスでの時間的拘束や,意見の調整がエネルギーの消耗につながる。意見の調整がなぜ必要となるか。それぞれの機関の持つ役割・目的の違いにより,問題の捉え方や危機感,援助方法に差異が生じるためではないだろうか。ただ,この差異があるからこそ,問題を多面的に捉えられ,問題への介入方法や援助自体に幅ができてくるということも事実である。関係機関との間で形成するネットワークの有効性とは何であるのだろうか,そしてまた,患者(以下,クライエントとする)にとっての,援助者側にとっての,有効性とは何なのであろうか。両者ともに,個々のケースによって変化してくると考えている。
本稿では,ネットワークの中で医療機関が果たすべき役割を明らかにし,その役割を基に医療ソーシャルワーカー(以下,MSWとする)がどのようにネットワークを捉え,医療機関での援助に活かしていったか。また,ネットワークに対してのMSWの働きかけが,クライエントにどのような意味を持ったのかを,筆者が助産師らとともに虐待防止に向けてかかわった周産期の事例から検討していきたい。
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