特集 子ども虐待防止支援ネットワーキング
医療分野におけるソーシャルワークとその活用のすすめ
名古屋 恵美子
1
1杏林大学医学部付属病院
pp.986-990
発行日 2002年12月25日
Published Date 2002/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902998
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
総合周産期母子医療センターをもつ大学病院で医療ソーシャルワーカー(以下MSWとする)として勤務するなか,これまで多くの妊産婦やその家族と出会い,助産師の方々と共にその出産前後の環境の整備に向けて,かかわってきた。これは,当院の助産師が患者の抱える生活上の問題にも目を向け,その問題に対する援助の必要性を感じ,MSWと共にその問題に取り組もうとしてきたことの現われでもあるように思う。後述するように患者(妊産婦)を支援するネットワークは関係する各部署の緊密な連携のうえに成り立つといえる。その意味でも,助産師が発見した問題点をMSWへとつなげ,妊産婦を支援していくという視点をもつことは,ネットワークを構築し活用していくうえで重要なものであると感じている。
MSWは患者の抱える生活上の問題を解決に導くことを主な働きとしている。患者は経済的な問題,夫婦間・家族間の問題,育児不安や養育困難に対する危惧など,多種多様の悩みを抱えながら療養生活を送っている。そして,その問題は単独ではなく相互に絡み合っていることが多い。したがって,MSWとして介入を依頼されても,MSWだけで解決できる問題は少なく,短い入院期間に院内関係者のみがかかわって解消するような問題であることも稀である。複雑に絡み合った問題に対して解決の糸口を見い出すには,多くの職種・多くの機関がチームを組んで援助を行ない,患者の退院後の生活につなげていくことが重要となるケースがそのほとんどであると言える。そのためにも,各機関・各職種の機能と役割の理解が必要となってくる,と筆者は考えている。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.