助産婦雑誌 21巻2号 (1967年2月)

特集 昭和41年度関連学会から

母性衛生学会発表

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はじめに

 産褥期には褥婦の関心は自分自身より,主として新生児に向けられるため,分娩に伴う精神的緊張やいろいろの障害から,母体自身快復途上にあるという自覚がうすれがちであります.それとともに私ども母子の保健管理に当たる者も褥婦の取扱いについて積極性を欠き,それが母性保健管理上の一つの盲点になっているように思われます.

 産褥体操は分娩後の復古を早め,褥婦に精神的身体的に気持よい毎日を送らせ,食欲を増進させ乳汁分泌を促進し,分娩後の疲れた筋肉や内臓の働きを活動的にし,その上全身の均勢を整え,産褥時に起こりやすい肥りすぎを防ぐことなどのために有用とされ,欧米では産褥看護の重要な一手段として広く実施されており,褥婦の保健管理を充実させるための合理的な一方法と考えられます.

助産婦研究会発表

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1.調査目的

 母子衛生対策の中でも,未熟児対策は大きな問題である.未熟児出生防止には極力つとめるべきはもちろんであるが,またその哺育にあたっても完全を期す努力が必要である.これに関連し,私たちは未熟児哺育環境,とくに哺育温度について検討した.

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I.はじめに

 近年わが国においてABO式血液型不適合による新生児溶血性疾患(旧称:胎児赤芽球症)が物議をかもしていることは否定できない.すべての疾病について一般患者が無知であることはもっとも好ましくないが,さりとて今日のABO式不適合新生児溶血性疾患のようにやや誇大に宣伝されともすれば過剰の恐怖心を抱かせるような事態もまた好ましくない.

 ABO式血液型といえば医療関係者以外の一般人にも衆知のものであり,その検査は通常の医療施設において容易に施行可能なものであるため,その夫婦間不適合の有無を知ることは容易である.ことに後述(Ⅲ)する通り本血型の夫婦間あるいは母児間不適合の頻度はRh因子の場合に比べて大きいにもかかわらず,その新生児溶血性疾患を催起させる能力,いいかえると一定数の不適合組合せについて実際に本症が発生する頻度を比較してみると,ABO式不適合ではRh不適合に比しはるかに小さい.すなわち不適合の存在が本症児の出生に直結する確率がABO式では非常に少ないわけである.したがって一般患者に対してはともすれば単にABO式組合せの不適合が存在するという現象のみをもって"新生児溶血性疾患児出生の危険性が大きい"との恐怖心を与え,極端には患者に挙児をためらわしめるにいたるという結果を招くおそれがある.

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 乳児栄養のなかでも人工栄養については,使用する乳が人乳と異質なものであるために,乳の組成や栄養法についての研究が各分野で行なわれている.そして,人工栄養の目標とするところは,乳の組成を人乳に近似させることと,添加物を必要としない同一濃度の乳を,月令にとらわれることなく,欲しがるだけ与える自律授乳(または自己調節栄養法Selfdemand feeding)の確立であろうと思われる.

 しかし,現在ではなお,人乳と人工乳との間に質的な差異があるために,月令別の乳の濃度や哺乳量などが問題となっている.すなわち,乳児の消化管での消化吸収,肝機能,腎機能の生理などにおいて,人工乳と人乳との間に相違が認められているからである.

日本不妊学会から

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Ⅰ.はじめに

 わが国では人口問題対策として受胎調節の必要が認められ,すでに10数年が経過しているが,その普及は十分ではなく,大部分は人工妊娠中絶その他に頼っている現状である.われわれ産婦人科医もその必要性を十分に認めており,コンドーム法,ベツサリー,ゼリー,スポンジ,荻野式,基礎体温法,それらの組合せおよび子宮内リングと種々なる方法をすすめてきたが,避妊失敗例や副作用もかなり報告されており,十分なる効果をあげることができなかった.しかし確実で,簡単,副作用がなく,中止すれば直ちに妊娠し,また安価な避妊法があれば受胎調節法としては最も理想的なものであろう.そこでわれわれは経口避妊に着目し,今日まで多数の症例に実施して,ほぼ満足すべき効果をあげているので,それについて述べてみたい.

 経口避妊薬は最近脚光をあびているが,この方法は昔から考えられ試みられていたものである.一例をあげると米国ではインデヤンの避妊法として知られている「むらさき」という植物が用いられ,カルカッタでは「えんどう豆」より抽出したハイドロキノンの一種が,また「燐酸ヘスペリジン」が中共では「おたまじゃくし」日本とスイスでは着床抑制剤と考えられる物質,あるいは各種ホルモン剤が経口避妊薬として用いられてきた.しかしこれらはいずれも確実性がなく学問的裏づけのないもの,まだ研究中のもの,副作用の強いもの,高価なものなど種々の理由のため実用に供されないものが多かった.

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昭和40年11月から2カ月間,南米の日本人移住地の保健衛生調査団として,外務省から島田信宏先生(慶応大学医学部産婦人科・聖母病院産婦人科)が,アルゼンチン,パラグアイ,ホリビア,ブラジル各国を訪れてこられた.今回の調査目的は「南米移住地の母子衛生」で,産科と小児科領域中心にできるだけ多くの移住地をまわられた.広大な南米大陸にポツンポツンと点在する日本人移住地には,ようやく母子衛生の芽が芽生えつつあり移住者が一番求めているのは,妊娠,分娩,育児について教えてくれる助産婦であり,保健婦であった.

巻頭随想

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 わたしは結核一本の臨床医として40年をすごしてきた.いまでこそ,結核はなおる病気になったといわれるけど,昔の結核は入院すれば半分以上が死んでいったのだから,まことに隔世の感がある.昔といってもけっして大昔の話ではない.終戦後だってそうだったのである.そんなわけだから,わたしは,生きることはあきらめ,死をまっているような患者さんを,治療というよりは,みまもるといった方が正しいような役目を負ってきたわけで,いわば死の医療に従事する医者だったのである.

 死の医療などという文字は,本誌をひもとくほどの方々には,およそ耳なれない,なじめない,みるのもいやな言葉であろう.また言葉そのものに矛盾を感じられるだろう.なぜなら,医療とは病気をなおす仕事で,その失敗が死であり,いいかえれば,死ぬような場に医療の意味がないとでもいうのが,医療というもののごくふつうな考え方であろう.

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 昨年4月開かれた"助産婦教育研究会"(勝島喜美会長)主催のシンポジウム「望まれる助産婦像」は会員諸姉に大きな反響をよびました。1年近く経たいま,本誌はその時間的経過のなかで改めて討議内容全容をご紹介し,読者諸姉に問題発展の足がためにしていただこうと考えます。2月,3月にわたる連載にご期待ください。

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はじめに

 新生児保育について,看護要員が現状では足りないということはだれでもが痛感していることですが,1人の助産婦,看護婦で何人の新生児を保育するのが適当であるかということになると,だれも適確な答を出すことはむずかしい.これを裏付ける資料も適切なものがほとんどなかった.

 この最も大きな問題点は,新生児保育はどのようにすべきだという規準がない.しかも,現状では,これにかけている経費もまちまちで,保育要員もまちまちである.

連載 新生児のみかた--新生児訪問指導のコツ・32

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嘔吐:

 嘔吐もゆるがせのできない大切な症状です.日常みていますと,一般に新生児は嘔吐しやすいものです.ことに未熟児は正常(生理的)でもしばしば嘔吐することがあります.この嘔吐が頻繁であったり,長期間続く場合には注意が必要です.

連載 母と子の試聴室

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 お母様方にも小さな子供たちにとっても,もっとも愛好される音楽は,小曲とか小品とかいわれる種類の音楽ではないでしょうか.

 これらの音楽は,交響曲や奏鳴曲,あるいはオペラといった種類の音楽とはちがって,構造も小さく,演奏時間も短かく,たいてい歌曲形式でつくられたもので,感傷的なものが多いのですが,たいへんすばらしい曲がたくさんあります.

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 次男を無事安産してやっと6週間目を今,迎えたところです.長男は4歳,元気に育っています.二児の場合を通じて,妊娠中は,何一つ薬剤を口にしませんでした.ふだんは戯れに飲むこともあったビタミン剤さえ,期間中は中止しました.しかし自然の食物はよく食べました.肉,魚野菜,嫌いなものなしでおまけに大食,夏はビールもよく飲みましたしウイスキー,日本酒もふだんと変らずやりました.

インターホン

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 助産婦学生として,早半年が過ぎ今までの半生を無性に振返ってみたくなる今頃である."助産婦"なんだか,まだピンとこない.時々,友だちから"どうして助産婦になんかなるの?"と聞かれるが,私の答はいつも簡単で"私の性に合っているんだもの"といとも自慢そうにいって入学したものだった.しかし助産婦業務,教育概要を実際にやってみて,思ったより甘いものでなく,基礎的な知識を学んでいる現在,これらのことが強く感じられてきた.それと同時に,この大変な仕事をあまりにも自分の職種の中にとじこもりすぎていて面白くないと思う…….

 このことは,1カ月前当地のM保健所に実習をした時に痛感した事柄である.保健所の業務を短期間に見学しただけでも,随分広範な範囲でしかも高度な知識を要求されているし,大変だと思った.がどうだろう保健婦にしても助産婦にしても同じ教育期間を経て,なんら特別変わった職種とも考えなれない.助産婦にしても産科学をはじめ,小児科,公衆衛生,心理学,医療社会学等々の教育は受けているはずなのに,これらを果たして有効に利用されているだろうか.一般の人たちに助産婦の仕事は何か問うと必ず,お産にたずさわる人物としか思ってくれないが,私は現在の助産婦の働く場所(立場)をもう一度考える必要があると思う.

らいぶらりい

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 わたしたちがまだ幼年だったころお婆さんや,やさしいお母さんのひざのうえで,花さか爺や,こぶとり爺さんのおはなしを聞かされたなつかしい想い出があります.そしてだれでもが,好奇心と期待でいっぱいになった心を今でも忘れることはできません.

 この3冊の本には,これまでどこかで聞いた物語や,どこかで読んだ話が,かなり相違して書かれていることに気づきます.よく考えてみますと,今昔物語とか,宇治拾遺物語とか,木下順二氏の絵姿女房などが思い出されるでしょう.これらの物語は,みんな,この本に書かれているような昔話を題材として創作された物語なのです.

現代のカルテ

日本語の乱れ 野口 肇
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 ここ数年,戦後に制定された当用漢字と現代かなづかいを中心に,国語,国字問題が火をふいています.つまり一部の学者や作家たちからはじまり,その同調者が意外にふえていることです.だから文部省の国語審議会がわれ,再編成されたが,もうこの審議会のワクをこえて,はてしない泥沼論争が展開しているのです.したがって教科書出版社や関係教師たちがとまどっているのが現状です.さらにすすんで公用字語からふつうの市民の手紙にいたるまで,この混乱は波及するのは必至です.おろそかにできない根本的な「国民文化」そして「文教政策」のカナメです.

 この当用漢字と現代かなづかいへの反対論は,人によっていくらか結論はちがうが,ひとくちにいえば,漢字をもっとふやして日本語をかたかなにし,かなづかいは現代でなく戦前の旧かなづかいにあらためよ,同時にいまの送りがなを至急に改善する必要がある,と主張するものです.わたしたちが先祖からうけついできたうつくしい日本語を台なしにする「語犯」どもが目下の教育を官僚的に支配している,というわけ.この考えかたの底にあるのはむかしふうの音便主議にかえせというのです.

基本情報

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助産婦雑誌
21巻2号 (1967年2月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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