特集 昭和41年度関連学会から
新生児学会発表
ABO式不適合新生児溶血性疾患に関する正しい評価—とくに発生頻度について
白川 光一
1
1九大医学部産婦人科
pp.18-24
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203341
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I.はじめに
近年わが国においてABO式血液型不適合による新生児溶血性疾患(旧称:胎児赤芽球症)が物議をかもしていることは否定できない.すべての疾病について一般患者が無知であることはもっとも好ましくないが,さりとて今日のABO式不適合新生児溶血性疾患のようにやや誇大に宣伝されともすれば過剰の恐怖心を抱かせるような事態もまた好ましくない.
ABO式血液型といえば医療関係者以外の一般人にも衆知のものであり,その検査は通常の医療施設において容易に施行可能なものであるため,その夫婦間不適合の有無を知ることは容易である.ことに後述(Ⅲ)する通り本血型の夫婦間あるいは母児間不適合の頻度はRh因子の場合に比べて大きいにもかかわらず,その新生児溶血性疾患を催起させる能力,いいかえると一定数の不適合組合せについて実際に本症が発生する頻度を比較してみると,ABO式不適合ではRh不適合に比しはるかに小さい.すなわち不適合の存在が本症児の出生に直結する確率がABO式では非常に少ないわけである.したがって一般患者に対してはともすれば単にABO式組合せの不適合が存在するという現象のみをもって"新生児溶血性疾患児出生の危険性が大きい"との恐怖心を与え,極端には患者に挙児をためらわしめるにいたるという結果を招くおそれがある.
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