特集 昭和41年度関連学会から
日本不妊学会から
経口避妊薬について
藤生 太郎
1
,
松崎 日出夫
1
1山口大学医学部
pp.29-34
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203344
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Ⅰ.はじめに
わが国では人口問題対策として受胎調節の必要が認められ,すでに10数年が経過しているが,その普及は十分ではなく,大部分は人工妊娠中絶その他に頼っている現状である.われわれ産婦人科医もその必要性を十分に認めており,コンドーム法,ベツサリー,ゼリー,スポンジ,荻野式,基礎体温法,それらの組合せおよび子宮内リングと種々なる方法をすすめてきたが,避妊失敗例や副作用もかなり報告されており,十分なる効果をあげることができなかった.しかし確実で,簡単,副作用がなく,中止すれば直ちに妊娠し,また安価な避妊法があれば受胎調節法としては最も理想的なものであろう.そこでわれわれは経口避妊に着目し,今日まで多数の症例に実施して,ほぼ満足すべき効果をあげているので,それについて述べてみたい.
経口避妊薬は最近脚光をあびているが,この方法は昔から考えられ試みられていたものである.一例をあげると米国ではインデヤンの避妊法として知られている「むらさき」という植物が用いられ,カルカッタでは「えんどう豆」より抽出したハイドロキノンの一種が,また「燐酸ヘスペリジン」が中共では「おたまじゃくし」日本とスイスでは着床抑制剤と考えられる物質,あるいは各種ホルモン剤が経口避妊薬として用いられてきた.しかしこれらはいずれも確実性がなく学問的裏づけのないもの,まだ研究中のもの,副作用の強いもの,高価なものなど種々の理由のため実用に供されないものが多かった.
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