小児科 64巻8号 (2023年8月発行)

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特集　不登校

１．不登校の入り口でできること -――小児科医にできる早期対応村上　佳津美 64巻8号 , 2023年8月 , pp.772-777

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不登校は早期の段階では，身体症状を繰り返し訴え，小児科外来を受診している．よってその段階で，一般小児科医が適切な対処を取れば不登校を未然に防ぐことができる可能性がある．その対処法は，心理的な専門治療は必要なく訴えている症状に対して丁寧に向き合って治療することである．それにより，症状が消失し，不登校にならない場合も少なくないが，症状消失したにもかかわらず不登校傾向が続く場合には，背景因子を検討し専門医，専門機関との連携を検討する．不登校は今後も増加していく可能性があり，その対策には一般小児科医は重要な役割を果たす必要がある．

２．最低限見逃してはいけない疾患・合併疾患の知識永光　信一郎 64巻8号 , 2023年8月 , pp.778-783

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一般小児科外来に，繰り返す頭痛/腹痛や，朝起きられないことを主訴に受診する子どもたちのなかに不登校を呈する子どもたちがいる．多くの症例では環境要因，家庭要因，個人要因が複合的に関与して不登校状態を呈する．一方で，背景にあるかもしれない見逃してはならない疾患として，睡眠障害，境界域知能・限局性学習症，神経発達症，起立性調節障害，感覚過敏，小児神経疾患，精神疾患などがある．これら疾患の合併は必ずしも初診では気づかれず，半年以上の診療経過のなかで気づくこともある．不登校の診療のおいては，多面的に情報を収集し，多軸的に診断を行っていくことが必要である．

３．不登校の子どものメンタルヘルス市橋　佳世子 64巻8号 , 2023年8月 , pp.784-789

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不登校の数は年々増加傾向にある．不登校では初期に頭痛や腹痛など身体症状をしばしば認めるため，小児科を受診することも多いが，不登校の背景にはさまざまな身体疾患や精神疾患が含まれており対応に苦慮することも多い．自閉スペクトラム症など神経発達症を有する子どもの不登校では環境調整が有効である．うつ病や不安障害などの精神疾患が疑われる場合には精神科への紹介を検討する．緊急を要する場合には，紹介先と連携し速やかに受診につなげる必要がある．いずれの場合も，保護者と子どもの焦りを取り除き家族間の衝突を緩和することが改善の後押しとなるため，外来では気持ちに寄り添う対応が肝要である．

４．不登校と起立性調節障害 -――日米の対応の違い永井　章 64巻8号 , 2023年8月 , pp.790-793

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起立性調節障害は立ちくらみ，朝起き不良・午前中の体調不良を呈するなどの機能性身体疾患である．わが国ではガイドラインも整備され認知度は高い疾患であるが，米国ではわが国の起立性調節障害と同一のものは存在せず，またわが国とは違って不登校と併せて議論・認識されることはないのが実情である．身体的評価/診断面で，わが国では起立性調節障害を起立直後性低血圧，体位性頻脈症候群などを起立性調節障害のサブタイプとしてとらえているのに対して，米国では失神をきたし得る病態としての起立不耐症の概念はあるが，疾患としては体位性頻脈症症候群がメインであり，起立性直後性低血圧は認識されていない．また社会的には，米国では不登校が問題になりにくい背景もある．わが国では不登校を呈し得る朝起き不良・午前中の体調不良を呈することが多い患者を対象としながら客観的生物学的評価法を確立し，包括的に診療を行うということで発展してきた経緯による特徴といえよう．

５．不登校は何科で診るべきか武井　智昭 64巻8号 , 2023年8月 , pp.795-799

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小学生・中学生の不登校は新型コロナウイルス感染症流行に伴い，近年は増加傾向である．不登校の診療が可能である小児科医療機関は少なく，その理由として身体疾患のみならず精神科的な対応を要することもあるからである．不登校の身体症状合併症として起立性調節障害が多いが，心疾患・神経疾患・内分泌疾患などの検索が必要である．前述のストレス反応では説明できないうつ病，双極性障害，統合失調症などの精神疾患，自閉スペクトラム症などの発達障害が疑われ精査加療を要する場合もある．不登校の初期対応は，心理面，社会的背景を多角的な対応が可能である小児科医が望ましい．

７．不登校外来こと始め -――不登校外来開設における2年間の取り組み中川　良 , 加藤　有子 64巻8号 , 2023年8月 , pp.800-804

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出生数の低下とは裏腹に，不登校の子どもたちは過去最大に増えている．全国どの地域においても受け皿となる専門病院は十分ではない．不登校にかかわると，あらゆる不定愁訴にめぐり合うだろう．今まで発達障害や不登校にかかわったことがなくとも，小児科医であった経験は併存するに違いない身体的な問題点の解決に必ず役に立つ．その訴えが胸痛であれば，これまでの小児循環器の修練が役に立つだろう．地域差も重要な要素である，小児医療＝地域医療であると考えているが，とくに不登校外来にはこれがあてはまるだろう．地域の特性，住民の特性を理解したうえでサポートできる地域の小児科医が診察をしていくのがよいだろう．

［連載］　実例でわかる臨床研究入門

第3回　From the scratchのススメ川口　敦 64巻8号 , 2023年8月 , pp.806-812

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今回は「研究の進め方」についてお話ししたいと思います．

［連載］　最近の外国業績より

呼吸器日本医科大学小児科学教室 64巻8号 , 2023年8月 , pp.858-861

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背　景　COVID-19のパンデミック以降，多くの国で鼻と口を覆うマスクをすることが子どもたちにも義務づけられた．しかし，マスクによる感染予防効果はほぼないという報告も複数ある．また，マスクをすることで頭痛やいらだち，集中困難などの有害事象を起こすという研究や，1,000ppmの二酸化炭素に短時間曝露されると集中力の低下をきたすという研究があり，マスクをすることで吸気中のCO₂が上昇するかどうかが重要な問題となっている．筆者らは，マスクを着用した小児における吸気のCO₂の平均を測定したいと考えた．

綜説

抗インフルエンザ薬の基礎と使い方佐藤　晶論 64巻8号 , 2023年8月 , pp.813-823

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現在，投与可能な抗インフルエンザ薬には4種類のノイラミニダーゼ（NA）阻害薬とキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビルマルボキシルがある．NA阻害薬投与により有熱時間の短縮や合併症の抑制が期待できる．しかし，各NA阻害薬の薬理学的背景の相違が臨床効果の相違にも反映されるため，各NA阻害薬の特徴を考慮し最善の薬剤を選択する必要がある．また，バロキサビルマルボキシルについては，NA阻害薬と比較して，投与直後の優れたウイルス量抑制効果が期待できるが，臨床効果についての優劣性は示されていない．さらに，小児のA型感染例に対しバロキサビルマルボキシルを投与すると，薬剤投与後に薬剤低感受性ウイルスが高率に検出されるため，現状では積極的な投与は推奨されない．

未診断疾患イニシアチブ（IRUD）事業の現状と今後の課題鈴木　寿人 64巻8号 , 2023年8月 , pp.824-829

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近年の遺伝子解析技術の進歩によって，数多くの遺伝性疾患が確立されるようになった．多くは非常にまれな疾患であり，診療した経験のある臨床医も少なく，症状から診断に至ることは困難になっている．未診断疾患イニシアチブ（IRUD）は，二次病院・三次病院で精査の後も診断がつけられない患者を対象に網羅的遺伝子解析を実施し，診断への糸口を見つけ出す研究である．2015年より開始され，参加した未診断疾患患者の40％で診断のきっかけが得られるようになった．また，研究的要素として，30以上の新規遺伝性疾患が確立されている．本稿では，IRUDでの成果を紹介するとともに，参加前に検討してほしい検査，診断後のフォローアップのお願いについて記載する．

社会小児科学

小児科領域の医療訴訟統計桑原　博道 , 西岡　宏晃 64巻8号 , 2023年8月 , pp.830-837

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公の資料をみるに，小児科は医療訴訟になりにくい．診療科別の訴訟件数や医師1,000名あたりの医療訴訟件数を指標としてみても，小児科は少ない．小児医療裁判例の抽出を試みた結果，1歳以下（19事例中6）や死亡例（19事例中8）が多い．病院より診療所が少ない（19事例中2）．請求認容例は多くはない．傾向として，経過が急激な症例や小児虫垂炎は訴訟になりやすい．結果が重篤な場合にこそ，憶測での説明は控えたい．また，転送義務違反や説明義務違反が争点となりやすい．説明や転送の経過の記録化が大切である．高額の賠償に備えて保険を見直すことも有用である．以上の医療訴訟対策を頭の片隅におきつつ日常診療に専心していただきたい．

トピックス

出生前診断の現状と問題点山本　俊至 64巻8号 , 2023年8月 , pp.838-844

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出生前診断を取り巻く現状が大きく変化してきている．その変化をもたらした大きな要因として新型出生前診断（NIPT）の普及が挙げられる．妊婦の希望に対し，NIPT実施施設の受け入れが追い付かず，非認証施設が跋扈し，なかには十分な情報提供もなく，適切な遺伝カウンセリングやフォローアップ体制もない施設もあり，トラブルの原因となっている．新たな運営委員会によるシステムでは出生前コンサルト小児科医の関与が必須となったことで，小児科医には染色体異数性をもって生まれきた子どもたちの命の尊厳を守り，その家族に寄り添うことが求められている．染色体異数性のある児は中絶されるのがあたり前という風潮が広まらないよう誠意をもって対応する必要がある．

小児専門施設に入院したパラインフルエンザ3型陽性症例の臨床検討藤垣　有里 , 樋口　徹 , 小川　英輝 , 伊藤　健太 64巻8号 , 2023年8月 , pp.845-848

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背景：ヒトパラインフルエンザウイルス3型（hPIV3）は下気道感染を引き起こすことが知られているが，わが国でのhPIV3感染症の臨床経過の報告は少ない．方法：2021年5月～12月にあいち小児保健医療総合センターに入院した15歳未満のhPIV3陽性症例を対象とし，電子診療録を用いて後方視的に記述した．結果：対象は39例（男児56％）で，月齢の中央値28か月，症状は発熱（67％），咳嗽（63％），けいれん（33％），SpO₂ 90％未満の酸素化不良は（18％）だった．結論：hPIV3は上下気道感染症のみならず熱性けいれんの原因になり得るウイルスである．とくに熱性けいれんが多いわが国においては，欧米と比較してhPIV3感染によるけいれんの入院が多い可能性がある．

オピニオン

小児科かつアレルギー専門医の4診療形態より考察した総合アレルギー診療のあり方岡部　貴裕 , 梅野　英輔 , 増本　夏子 , 西間　三馨 64巻8号 , 2023年8月 , pp.849-856

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日本小児科学会かつ日本アレルギー学会の専門医資格を持つ医師の異なる4診療形態をとる近隣代表施設を実態調査することにより，日本アレルギー学会がめざす総合アレルギー医に，われわれ小児科専門医かつアレルギー専門医がどの程度寄与することができるか，総合アレルギー診療のあり方について一考察を行った．

本調査では，アレルギー主要疾患である食物アレルギー・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎（花粉症を含む）を十分診療しており，また一般小児科年齢を超えた患者も診療しており，日本小児科学会かつ日本アレルギー学会専門医は総合アレルギー診療を提供できるという一つの可能性が示された．

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目次 64巻8号 , 2023年8月 , pp.768-769

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著者プロフィール 64巻8号 , 2023年8月 , pp.770-770

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読者アンケート 64巻8号 , 2023年8月 , pp.812-812

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投稿規定 64巻8号 , 2023年8月 , pp.862-863

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バックナンバー 64巻8号 , 2023年8月 , pp.864-864

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次号予告 64巻8号 , 2023年8月 , pp.865-865

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編集後記 64巻8号 , 2023年8月 , pp.866-866

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基本情報

小児科
64巻8号
(2023年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0037-4121 金原出版

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