小児科 61巻12号 (2020年11月)

特集 小児科医のための 呼吸器診療のポイント

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小児の呼吸器疾患を診断および治療していくにあたって,呼吸機能検査で評価を行うことは必要不可欠である.しかし,小児では手技の難しさや検査への協力の得られにくさといった問題で,年齢別に施行可能な検査は限られてくる.患者一人ひとりの疾患に対し,何を評価したいのかを判断し,そのために必要な検査を選択して実施することが重要である.そのうえで,積極的に検査を実施し医療者が習熟していくことが,より適切な診断・治療へとつながっていくであろう.本稿では各検査についての小児特有の特徴をふまえ,検査におけるポイントや注意点について概説する.

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小児の呼吸理学療法(RPT)の目標は,呼吸障害のために生じた日常生活制限を改善し,成長・発達を進めていくことである.肺・胸郭のコンプライアンスが高い小児はRPTの効果が期待できる反面,RPTにより呼吸状態を悪化させる危険もあり,換気力学的観点から小児の特徴を熟知しておく必要がある.RPTの効果を高めるには体位管理と気道クリアランスの機序を知ることが大事である.RPTの実践では,「① 十分に吸えるか,② 吐けるか,③ 有効な咳になるか」を念頭に呼吸のアセスメントを行う.そして呼吸障害を規定する3病態(5因子)を鑑別し,病期と病変部位を評価して有効なRPTを実施する.エビデンスの少ない分野であるが,有効例を整理していくことが重要である.

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多種多様の原因によって「気道狭窄」をもたらすが,「気道狭窄」は病態であって診断名ではない.同じ病態,疾患であっても診断および治療に至る道筋は,登山のようにいくつものルートがあり,道筋を明確に立てることによって検証が可能となる.闇夜の鉄砲のように“とりあえずの検査“は,かえって診断と治療を遅らせることにもなる.気道狭窄は呼吸窮迫から呼吸不全に至る主因にも増悪因子にもなる.そのため「気道狭窄」の病態の評価を単に「上気道狭窄」「下気道狭窄」に分けて検討するだけではなく,できる限り多角的アプローチをすることが,病態評価から診断,そして治療方針決定に至るプロセスを柔軟かつ的確に進めるためには重要である.

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小児の呼吸器に関連した疾患を診断・分類するにあたり,問診や身体所見に加え,呼吸機能検査による評価は重要である.しかし,成人では一般的な検査であるスパイロメトリーや気道過敏性検査は小児では困難であることが多い.一方で,小児の呼吸器疾患の原因は多種多様であるため,気道炎症や気流制限,気道過敏性の存在や程度について,生理学的検査から間接的,直接的に評価することが重要である.本稿では主に気管支喘息の評価において,客観的評価の1つとなる気道過敏性検査について紹介する.

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医療技術の進歩に伴い,高度な医療的ケアを必要とする在宅移行児が増加している.厚生労働省では,NICU等,入院児の在宅移行促進体制の整備とともに,医療的ケア児の支援について医療的ケアコーディネーター養成事業等の施策を進めている.しかし,在宅用人工呼吸器を装着している患児に対する社会資源は十分とはいえない現状がある.在宅用人工呼吸器を装着している患児の在宅におけるケアが実施可能な施設の増加,在宅移行後に社会資源の利活用を調整する役割の医療的ケアコーディネーターの増加,特別支援学校に家族が終日付き添いをしなくてもよい体制の普及が望まれる.

6.医療的ケア児の嚥下評価 木下 憲治
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医療的ケア児の嚥下評価では,画像検査として嚥下のほぼ全過程を連続的に評価できる嚥下造影検査(VF)が広く活用されている.VFは,形態学的・機能的異常,誤嚥・残留の有無・量を明らかにする「診断のための検査」と,安全な摂食条件をみつける「治療のための検査」という2つの目的がある1).具体的には,検査食(固形食・液体)での誤嚥の有無・量,誤嚥物の深達度および誤嚥の際の咳反射・咳嗽の有無を評価するとともに,誤嚥を減少・消失させる姿勢・食物形態・一口量・ペーシングの調整を行う.検査の限界をふまえ,臨床的所見・経過,検査結果を総合的に判断し,嚥下障害の程度(軽度:経口摂取主体〜最重度:経管栄養のみ)を判定する.

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筆者がウイルスによる中枢神経障害の研究を開始した1970年代半ば,麻疹脳炎,風疹脳炎などが大半を占めていた.その後1990年代以降,インフルエンザや突発性発疹,ウイルス性胃腸炎などに伴う重篤な脳障害に注目が集まり,ウイルスが増殖する部位とは遠く離れた臓器(中枢神経)が,ウイルスの増殖なく障害される「急性脳症」の概念が確立していった.インフルエンザ脳症の研究は,「子どもたちに何が起きているのか」を探る中から,治療法を模索していった歴史でもある.本稿にはそのまとめを記載した.未知の重篤な病態に対する時,病態解明を通じて治療法を模索することの重要性は,新型コロナウイルス感染症でも同様と思われる.

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乳幼児突然死症候群(SIDS)の病態について,SIDS症例で睡眠中の覚醒反応との関連について検討した.SIDS症例では皮質覚醒が減少しているのに対し,皮質下覚醒は増加しているという特徴が認められた.リスク因子とされているうつぶせ寝では皮質覚醒,皮質下覚醒ともに減少していた.これに対して母親の喫煙では児の皮質覚醒が減少,皮質下覚醒が増加しており,SIDS症例と同様の特徴が認められた.SIDSは年齢的因子に素因的因子(児の脆弱性),環境的因子が関与して発症することが示唆されており,母親の喫煙は児の素因的因子,うつぶせ寝は環境的因子となり得ると考えられた.発症予防のためには素因的因子,環境的因子の対策を考慮する必要がある.

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周期性嘔吐症候群の特徴は数日間の嘔吐発作を周期的にくり返すこと,間欠期は正常であること,数年の経過により自然治癒することである.日本では自家中毒,周期性ACTH-ADH分泌過剰症ともよばれている.診断の決め手となる検査はなく,臨床経過と嘔吐発作の特徴および器質的疾患の否定後に診断される.治療は嘔吐発作時の治療と予防治療に分けられる.問題点としては疾患概念が浸透していないためか,診断されていない症例や,診断されていても適切な治療を受けていない症例が存在する.自然軽快することの多い予後良好な疾患である.しかし,重症例では,まれに成人期まで症状の残る症例や,片頭痛に移行する症例がある.

運動器検診の実際 岡田 慶太
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2016年4月より小・中・高校生に対する運動器検診が開始された.これは,運動不足による体力の衰退と過度な運動による運動器障害をきたす児童の二極化がみられることが発端となり,これまでの側弯症検診に加え,四肢の診察項目が追加された.まず,事前に保護者が保健調査票を記入することで子どもの運動器に関心をもち,これまで気づかなかった些細なことでも拾いあげることを目的とする.検診は学校医が行い,限られた時間のなかで定められた項目を診察する.そして,疾病や異常がみつかれば専門機関へと紹介する.始まって5年になるが徐々に浸透しつつあり,将来のロコモ予防への第一歩として期待されている.

小児保健

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東京都目黒区の保育園で2018年に細菌性赤痢の集団感染が発生し,診療にかかわった.日本での年間患者数は多くはないものの,2000年以降も乳幼児施設での集団感染報告が散見されている.起因菌はSigella sonneiが検出されたが感染経路は不明で,食中毒による感染も否定的であった.保育園児,職員および家族から36名が感染し2名の入院があり,いずれも重症化しなかったが,感染拡大により保育園は休園措置をとらざるを得なくなり,感染終息に約1か月半を要した.本稿では,今日なお乳幼児施設を中心に,ときに経験する細菌性赤痢の集団発生について考察を行った.

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中耳炎・気管支炎・肺炎を反復する児の免疫学的背景を調べる目的で,6か月間で“易感染性”の定義を満たした15例をさらに6か月間観察した.IgG2低下(80mg/dL未満)5例,好中球減少(500/μL未満)3例,どちらもなし7例であった.IgG2低下の1例で静注型免疫グロブリン(IVIG)を,好中球減少の1例で顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を補充した.一方,IgG2低下の3例でIgG2の自然増がみられた.IgG2低下群はどちらもなし群にくらべて観察期間中の入院回数が多く,入院ありのオッズ比が高かった.感染制御に難渋するIgG2低下例に対しては,まず1か月間観察したのちIVIG投与を考えるのが妥当と思われた.

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ロタウイルスは急性胃腸炎を引き起こすウイルスで,とくに乳幼児において重症化を引き起こす.ロタウイルスの感染力はきわめて強く,衛生状態がよい先進国においてもロタウイルスの感染防止はきわめて難しい.ロタウイルス感染症予防に対してはワクチンが非常に有効な手段であるとして,世界的でワクチン導入が進められている.日本では,2006年にロタウイルスワクチンとして5価経口弱毒ヒトロタウイルスワクチン(ロタテック®:RV5)および経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(ロタリックス®:RV1)が任意接種となって以降,ワクチン導入前後でロタウイルス胃腸炎(rotavirus gastroenteritis:RVGE)入院症例数の減少が明らかとなっている.今回,4兄弟全員がRV1を2回接種後にもかかわらず2人がRVGEを発症し,入院を要した兄弟症例を経験したので報告する.

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環状紅斑と発熱を呈した新生児ループスの1男児例を経験した.母体膠原病・自己抗体は小児の健康に影響を及ぼす可能性があり,すべての臨床医は注意深く診療にあたる必要がある.

[連載] 最近の外国業績より

消化器 日本医科大学小児科学教室
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背 景 幼少期の腸内細菌叢の確立は免疫発達と経口免疫寛容の誘導の面で重要だが,どの細菌叢が疾病の発病予防または促進するか,幼少期の検便を用いた研究は少ない.幼少期における細菌叢の多様性や変化と遺伝的背景・周産期経過・環境・生活習慣・食生活等の関連性やアトピー性皮膚炎(AD)・喘息の発症リスクを検討した.

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小児科
61巻12号 (2020年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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