臨床皮膚科 53巻12号 (1999年11月)

カラーアトラス

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 患者 71歳,男性

 初診 1995年9月1日

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 青森県立中央病院皮膚科22年間における内臓癌の皮膚転移29例について統計的,病理組織学的観察を行った.原発巣としては肺癌7例,乳癌7例,胃癌5例,転移部位は胸部に11例,腹部8例,頭部5例と続いた.臨床的には単発で結節状の皮疹が14例と最も多くみられた.皮膚転移まで要した期間は平均26.5か月であり,皮膚転移が先行したのは3例,皮膚転移から死亡までは平均6.6か月であった.転移部位の組織像は腺癌27例,扁平上皮癌2例であった.さらに詳細な組織学的検討では,組織学的結節形成は24例,表皮への近接像は20例(そのうち表皮への侵入像は2例),脈管侵襲像は11例にみられた.また,11例中8例で転移巣が原発巣の病理組織学的形態を保持していた.その中で,胃癌の1例では転移巣が原発巣に比べて低分化であり,肺癌の1例では逆に転移巣が高分化であった.

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 最近5年半の間に経験した手指のカンジダ症18例を臨床的に検討した.受診月は6月が4例で最も多かった.年齢は4歳から80歳で,40代と60代が4例で最も多く,性別は女性17例,男性1例であった.カンジダ症の既往は9例でみられ,5例は手指間カンジダ症であった.部位は右手2指が7例で最も多かった.絆創膏は14例(数日〜数か月間)で使用されていた.臨床的に角化型,膿疱型,膿疱角化型がみられた.糖尿病の合併は1例のみで,ステロイドの内服は3例,外用は2例で行われていた.抗真菌剤の外用1〜4週間でほとんどの例が軽快した.本症と手掌の角質増殖型皮膚カンジダ症およびカンジダ性手掌角化症は別の病態と考えられた.

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 58歳男性のスポロトリコーシスの症例を報告した.臨床像は右手背にびらんを伴う紅色小結節を呈し,病理組織像は,真皮中層の壊死部位を中心にmixed cell granulomaの像がみられた.分離菌はSporothrix schenckiiと同定された.治療はイトラコナゾール内服1日50mgより開始し,100mgに増量したが,右手背から前腕部にかけて,数個の皮下結節が飛び石状に並んで生じてきたため,懐炉による温熱療法を併用したが,皮疹はさらに右上腕にまで多発した.患者は他院で十二指腸潰瘍と診断されて,塩酸ラニチジンを併用していたことが判明したため,塩酸ラニチジンはそのままにイトラコナゾールを1日150mgに増量したところ,徐々に手背および上肢の皮疹は消失した.初期の治療が無効であった理由としてH2ブロッカーの併用によってイトラコナゾールが抗真菌剤としての治療濃度域に達していなかったと考えられた.

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 52歳,男性.糖尿病性腎症にて入院中,紅皮症を発症しシクロスポリン内服による治療を開始した.治療1年目頃より頭部,顔面,腰背部,臀部に自覚症状を伴わない丘疹から母指頭大結節を認めた.皮膚生検では真皮全層にかけて巨細胞を伴った肉芽腫性変化が散見され,周囲に明るい空隙を伴った大小の球形菌要素が多数みられた.サブロー培地で3日目で白色調のコロニーを形成し,墨汁法による直接検鏡では英膜を有する菌体が確認された.先行する内臓病変は確認されないため本症を限局性皮膚クリプトコックス症と診断した.日常生活上,鳩との接触はない.治療はフルコナゾールを経口投与し約4か月で皮疹はほぼ消退した.

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 55歳,女性.7年前にクロマイ軟膏®による接触皮膚炎の既往あり.薬剤性肝障害にて入院加療中,子宮筋腫の疑いにて産婦人科を受診した.同日夕方,両臀部より粟粒大の鮮紅色丘疹が集蔟する紅斑局面が出現し,徐々に全身に拡大した.臨床症状,治療経過より薬疹を疑い,使用薬剤の中止にて皮膚症状の改善をみた.使用薬剤のパッチテスト,スクラッチテストを施行したが陽性所見は得られなかった.経過中,産婦人科再診時に同様の紅斑が出現し,受診時の処置を検討したところ,いずれもクロマイ腟錠®使用後に症状が出現したことが判明した.パッチテストにて腟錠,原末ともに陽性,リンパ球刺激試験陽性を示したため,クロマイ腟錠®によるsvstemic contact dermatitisと診断した.

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 24歳,女性の日光蕁麻疹の1例を報告した.作用波長は400〜500nmの可視領域に,抑制波長は550nm以上の領域に存在した.患者血清試験管内照射試験は陰性であった.フマル酸エメダスチン(レミカット®)の内服により,自覚症状が改善し,光線誘発試験にて膨疹は抑制された.塩酸ホモクロルシクリジン(ホモクロミン®),テルフェナジン(トリルダン®)は無効であった.フマル酸エメダスチンのもつサブスタンスPへの薬理作用が本症例での有効性に関与している可能性が考えられた.

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 60歳,女性.抗セントロメア抗体陽性の汎発型斑状強皮症の1例を報告した.前胸部と腹部にくるみ大前後の表面紅褐色調で光沢を有する硬化局面を5か所,下腹部には帯状を呈する大型の硬化局面を1か所認め,臨床像および病理組織像より本症と診断した.臨床検査所見で,抗セントロメア抗体が陽性であったが,抗Scl−70抗体は陰性であった.限局性強皮症においては種々の免疫異常が報告されているが,抗セントロメア抗体陽性例は稀である.本抗体はCREST症候群を含むlimited cutaneous typeの全身性強皮症に比較的特異性が高いとされているが,自験例では,全身性強皮症を示唆する皮膚症状,内臓病変は認められなかった.

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 10歳,女児.初診6か月前よりRaynaud症状出現.当科初診時皮膚硬化は認めなかった.抗核抗体陽性,抗Scl−70抗体陽性より全身性強皮症の初期例と診断した.内臓諸検査で異常を認めず,血管拡張薬投与で経過観察としたが,2か月後に指尖部の虫喰い状瘢痕と手指の皮膚硬化が出現.左前腕の皮膚生検にて真皮全層に膠原線維の膨化増生を認めた.プレドニゾロン(PSL)10mg/日投与開始後,皮膚硬化等の症状はほぼ消失し,PSL 5mg/日で経過観察中である.

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 生後2か月男児および1か月女児の新生児エリテマトーデス2例を報告した.生後2〜3週後から環状の紅斑が出現.抗SS-A抗体が陽性.心伝導系障害は認められなかった.無治療で生後5か月までに皮膚症状は消退し,抗SS-A抗体も陰性化した.母親はいずれも抗SS-A,抗SS-B抗体陽性で,それぞれ無症候性Sjögren症候群および亜急性皮膚エリテマトーデスであった.母親のHLA検査でDR 4抗原が両者に共通し,症例1のクラスII抗原ハプロタイプでDQB103020303が認められた.日本人で心伝導系障害と強い相関があると報告されたハプロタイプDQB10602は認められなかった.今後,母親のHLAクラスII抗原ハプロタイプ検査で患児の予後診断が可能となることが期待される.

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 症例:51歳,男性・発疹が左こめかみ,舌,咽喉頭に長期間限局した尋常性天疱瘡を報告した.4年来の左こめかみの外傷が治らないため生検したところ,病理組織学的に表皮基底層1層を残し,びらん,棘融解細胞を認めた.また10年前から,舌に隆起性病変,咽喉頭粘膜にびらんを生じていた.後口蓋弓粘膜病変部では,蛍光抗体直接法にて上皮細胞間にIgGの沈着を認めた.蛍光抗体間接法は陰性であった.皮疹はデルモベート軟膏®の外用にて消失した.粘膜疹は,プレドニン®20mg/日の投与により改善をみた.長期間(1年以上)限局する尋常性天疱瘡に関して本邦報告例12例につき考察を加えた.

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 67歳,女性,IgA(λ)型M蛋白血症を伴った角層下膿疱症を報告した.ステロイド剤の外用により治療を開始したが効果なくジアフェニルスルホン(最大75mg/日)内服を追加した.しかし膿疱の新生を抑えることはできず,シクロスポリン(最大5.7mg/kg/日)の内服に変更した.紅斑の軽減効果は認められたものの膿疱の新生を完全に抑制するには至らなかった.しかしプレドニゾロン(最大25mg/日)の併用により皮疹は軽快を呈した.自験例ではプレドニゾロンが最も有効であった.

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 66歳,女性.両側卵巣摘出術後に卵胞・黄体ホルモン剤の投与を受け,約3か月後より腹部,大腿に落屑性皮疹が多発した.毛孔一致性の黒褐色点を中心に類円形葉状鱗屑を付着した皮疹を認め,組織像で毛嚢の嚢状拡張と角質増殖を示したことより,鱗状毛嚢性角化症と診断した.本症は55歳以上での発症は極めて稀であり,60歳代の報告例はない.自験例は本来の好発年齢から大きく逸脱し,卵胞・黄体ホルモン剤の投与中に皮疹が出現していることより,これらの女性ホルモンの関与を疑い,本症の病因について若干の考察を行った.

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 Plasma cell dyscrasiaを基礎疾患とする全身性アミロイドーシスの66歳男性患者に出現したbullous amyloidosisを報告した.皮膚症状としては初めは限局した部位における色素沈着のみであったが,色素沈着は徐々に増強し,その中に紅斑,紫斑さらに水疱,血疱が出現するようになった.皮膚症状発現から2年近く経過して病変部皮膚へのアミロイド沈着が証明された.本例では全身的ステロイド投与が水疱形成を著明に抑制したことから,水疱形成機序として免疫学的反応が関与している可能性を推測させた.

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 91歳,女性.数年前から左耳介後部の皮膚に黒褐色丘疹性局面が存在した.組織学的に,腫瘍は表皮と連続性で,表皮と平行に下方に増殖しプレート状を呈し,多くの部位で表皮と連続していた.腫瘍胞巣は,グリコーゲンを含有する有棘細胞様の細胞と,棚状に配列する基底細胞様の細胞から構成され,腫瘍胞巣内には毛包様構造が存在していた.また腫瘍部の真皮乳頭層にアミロイド沈着を認めた.

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 17歳,男性.幼少時より内眼角部から鼻翼部にかけて対称性に半米粒大の丘疹が出現した.父,姉,兄にも同症があるため精査目的に当科を受診した.病理組織検査では真皮上層から中層にかけて均一な異型性のない基底細胞様細胞の腫瘍塊を認め,臨床症状をふまえて多発性丘疹状毛包上皮腫と診断した.自然消退傾向が家族全員に認められ,アポトーシスの有無をTUNEL法を用い調べたところ陽性細胞を認めた.自然消退傾向を示す多発性丘疹状毛包上皮腫の報告はなく,またその経過にアポトーシスの関与が示唆されたので報告する.

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 特異な臨床像を呈したeccrine poromaの4例を報告した.症例1は足関節の懸垂性腫瘍,症例2は踵の黒色調を呈した結節,症例3は手背の血管拡張性肉芽腫様外観を呈した結節,症例4は耳前部の表面平滑な淡紅色結節として認められた.組織学的に症例1〜3はPinkus型,症例4はWinkelmann-McLeod型と診断した.このような多彩な臨床像を呈する要因について若干の考按を加えた.

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 0歳男児の仙骨部に生じたadnexal polypof neonatal skinの1例を報告した.本症の好発部位は乳量近傍であり,仙骨部の報告例は今までにない.本邦,外国合わせた報告例を文献的に検討した.

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 症例1;78歳,女性.約10年前に右示指末節背側に結節が出現した.18×18mm,被覆皮膚と癒着し下床と可動性を伴う弾性硬の多房性結節を認めた.症例2;39歳,男性.約6か月前に右第3趾末節背側に結節が出現した.13×11mm,被覆皮膚および下床と癒着し,爪変形を伴う弾性硬の皮下結節を認めた.症例1は,組織学的に周囲に線維性の被膜を伴う分葉状の腫瘍で,組織球様細胞を主体とし多核巨細胞が散在していた.症例2は上記所見に加えて核分裂像を認めた.なお,本疾患の過去17年間の皮膚科領域での本邦報告例についてその臨床像を検討し若干の考按を加えた.

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 71歳,女性の上背部に生じた小結節.組織学的に真皮中層から皮下組織にかけ境界明瞭な一部線維性被膜を有するひょうたん形の結節を認めた.結節は紡錘形細胞の神経束に類似した束状増殖と膠原線維の増殖からなり,周囲結合織と結節の間に裂隙の形成をみた.紡錘形細胞は錯走し一部は核の柵状配列を示しS100蛋白陽性であった.また,ニューロフィラメント陽性の神経軸索を多数認めた.EMA染色は被膜および神経束周囲の一部に陽性を示した.本症をpalisaded en—capsulated neuroma(solitary circumscribed neuroma)と診断し,近縁疾患との鑑別ならびに発症要因について若干の考察を加え報告する.

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 症例は26歳,女性.背部に小児手拳大,常色,弾性軟の皮下腫瘤を認め脂肪腫と診断した.切除術施行し,病理組織学的にはmalignant peripheral nerve sheath tumor(以下MPNST)と診断した.von Recklinghausen病(以下R病)はない.これまで悪性神経鞘腫,悪性神経線維腫,神経線維肉腫等の名称で呼ばれていたものは,1992年に改訂されたWHO分類においてMPNSTという用語に統一された.R病にMPNSTの合併する頻度は約1%,自験例のように非合併例はきわめてまれであり0.034%にすぎない.R病非合併のMPNSTは多くは肺に血行転移し,10年生存率35.2%の予後不良の悪性腫瘍である.

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 91歳,女性,沖縄県出身在住.右拇指球に一部に鱗屑を付着した辺縁不整,境界明瞭な紅斑・びらん局面あり.皮膚生検にてBowen病と診断し,腫瘍摘出術ならびに局所皮弁による修復を行った.放射線や砒素の曝露歴はなく,ヒト乳頭腫ウイルスも陰性.手掌に単発したBowen病は肉芽腫との臨床的鑑別が困難である.

連載

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159

図は皮膚腫瘍の電子顕微鏡写真である〔上:6,000倍,下(部分拡大):32,000倍〕.診断は次のどれか.

A:顆粒細胞腫

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新しい本のシリーズ,最新HMO情報,若者言葉について

 今回は新しい本のシリーズから話を始めましょう.以前にこちらで今人気のある“Complete Idiots”や“For Dummies”シリーズについてお話ししたと思いますが,最近新たに“Ten Minute Guide To…”というのが出ました.読者に少しでも難しいものを分かりやすくしようとするのは判りますが,“Ten Minute Guide To Neurosurgery”というのはいただけませんね.しかしそのうちにそういう時が来るかもしれませんよ.それと,以前に国の文化や習慣によって週末や新年が違うことについてお話ししましたが,最近これをビッグビジネスにした人が現れました.Mr.Spraosはこれらの情報を売って成功していますが,果たして誰にこのような情報が必要なのでしょうか.答えは銀行や金融業界の人たちで,契約やローンの作成にとても重要になってくるわけでして,休日が挟まることで返済期日が前後し,それによって何億という利息が動くわけです.この情報が必要な方は現在一般公開されていますので次のサイトを調べて下さい.http://financialcalendar.com/です.ここにはこれから先31年の休日の情報が入っています.

 さてここでもっと深刻な話をしましょう.HMO保険制度は医療界においてゴジラのような存在で,特に患者や医師にとって不都合なものでした.しかし最近ではこれも少しずつですが変わりつつあります.ここアメリカでは州法と国家法が共存しており,それに伴いいろいろの訴訟の裁判権(司法権)も複雑に関与しております.ちょっと判りにくいと思いますが,実際のところ私たちにとっても判りにくいものです.アメリカの上院議会において共和党と民主党の両党ともに患者や医師にもう少し有利な権限を与えようとしたのですが,共和党は我々よりも大企業である保険会社のほうへの利益を考えたようです.しかしながらいろいろの州では独自の見解をもって州法を改正しており,ここカリフォルニアでは患者がHMOを訴えることができるという法案を成立しました.これは訴訟権を与えたばかりでなく,HMOにその裁判にかかった費用の肩代わりを求める要項も含まれております.費用と言えどもこれは何億にも達するわけですから,保険会社にとって大きな損失になり得るわけです.

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 68歳,男性.12年前より下口唇にびらんが出現するようになった.当時の生検にて悪性像はなく,他院で治療されていたが,完治しなかった.1998年に再生検したところ有棘細胞癌を認めた.下口唇全層切除を行い,皮膚側は伸展皮弁で,赤唇部は舌弁を用いて再建した,術後整容的,機能的に経過良好である.

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目次

はじめに 1057

タクロリムス軟膏使用ガイダンス 1057

基本情報

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臨床皮膚科
53巻12号 (1999年11月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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