臨床皮膚科 52巻8号 (1998年7月)

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患者 77歳,男性

初診 1995年9月25日

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 過去10年間に広島大学皮膚科で入院加療した成人の皮膚筋炎患者10例中,4例に悪性腫瘍の合併が認められた.その内訳は,56歳男性の精上皮腫,78歳男性の悪性胸腺腫,76歳男性のVirchowリンパ節への原発不明の転移性悪性腫瘍,59歳女性の上咽頭癌であった.これらはいずれも比較的まれな腫瘍で,皮膚筋炎発症後の全身検索によって発見された.また臨床症状として,4例すべてに嚥下困難の訴えがあったが,悪性腫瘍を合併しない6例では嚥下困難を認めなかった.皮膚筋炎においては,まれな腫瘍の合併の可能性も念頭に贋いて,全身検索と経過の観察を行う必要があり,また嚥下困難は悪性腫瘍の合併を示唆する所見として,着目すべきであると考えられた.

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 1987〜1996年の10年間に旭川医科大学皮膚科を初診した円形脱毛症患者292名を対象に統計的検討を行った.頻度は新来患者の約2%で,臨床型分類では通常型(単発型,多発型)が253例(86.6%),全頭型が12例(4.1%),汎発型が23例(7.9%),ophiasis型が4例(1.4%)であった.合併症,背景因子を重視したIkedaの臨床型分類ではcommon type 189例(64.7%),atopictype 57列(19,5%),prehypertensive type 29例(9.9%),combined type 17例(5.8%)であった.予後の把握に関してはIkedaの分類が有意義と思われた.甲状腺機能検査(T3, T4, TSH)は重症型の30例に施行し,6例(20%)に異常値が認められた.低頻度ながら甲状腺疾患,尋常性白斑,大動脈炎症候群,慢性関節リウマチ,重症筋無力症,潰瘍性大腸炎などの合併もみられ,病因としての自己免疫異常説を支持する結果となった.

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 37歳男性(症例1),57歳男性(症例2)のスナノミ症を2例経験した.共にスナノミの生息域への渡航後にスナノミ症に特徴的な中央黒点を有する小指頭大白色結節を足趾に認めた.治療は,虫体を摘出した.中南米,アフリカなどへの海外旅行の機会が増えるに伴い,この種の輸入熱帯病の増加が考えられ,今後考慮におくべき疾患と考えられた.

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 55歳,女性.1991年慢性骨髄性白血病発症,1992年インターフェロンα,1995年hydroxyurea(ハイドレア®)を開始した.1996年両側足背外側部と右アキレス腱部に有痛性皮膚潰瘍と全足趾爪甲にびまん性黒色色素沈着が出現してきた.病理組織では表皮は萎縮し,空胞状の変性した部分を認めた.真皮乳頭層には浮腫があった.血管炎の所見は認めなかった.投与中止にて症状は軽減した.本症例をハイドレア®長期投与による皮膚潰瘍と爪甲黒色色素沈着と診断した.本邦において,本剤は1992年に発売開始されたため,本症例のような報告は少なく,今後増加してくると予想される.

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 76歳男性のコレステロール結晶塞栓症の1例を報告した.心筋梗塞の経過観察のため冠動脈造影を受けた数日後より足部に皮斑が認められ,徐々に腎不全,足趾の壊疽が生じ,皮膚生検で脂肪層の血管にコレステロール結晶による塞栓が認められ本症と診断された.壊疽は保存的治療に抵抗性で,両第5趾の切断を余儀なくされたが,腎不全は,血液透析の適応には至らず徐々に回復した.最近10年間の本邦報告例の中では比較的軽症例と思われた.

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 潰瘍性大腸炎に合併した結節性紅斑の2例を報告した.症例1:45歳,女性.20年前から潰瘍性大腸炎にて加療中.1996年7月,下痢が出現するとともに下肢に拇指頭大から鶏卵大までの有痛性紅斑が出現した.病理組織学的に皮下脂肪織の分葉中隔,脂肪細胞間に細胞浸潤を認め,結節性紅斑と診断した.プレドニゾロン内服で皮疹は速やかに消退した.症例2:71歳,女性.9年前から潰瘍性大腸炎にて加療中.1996年8月,血便,関節痛,ぶどう膜炎が出現するとともに下肢に拇指頭大から鶏卵大まで有痛性紅斑が出現した.病理組織学的に皮下脂肪織の分葉中隔,脂肪細胞間に細胞浸潤を認め結節性紅斑と診断した.サラゾピリンの増量,安静にて紅斑は消退した.本邦皮膚科領域からの報告例をまとめ,若干の考察を加えた.

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 IgA腎症を呈し,ステロイドバルス療法により蛋自尿が減少したSchönlein-Henoch紫斑病の成人例を報告した.患者47歳,女性.初診平成7年1月11日.初診の約1週間前に四肢に自覚症状を伴わない紅色皮疹が出現した.両側下腿に粟粒大から小豆大の点状出血,紫斑が播種性に認められた.組織学的に真皮上層から中層の血管周囲に好中球,単核球より成る細胞浸潤,核破砕片を認め,血管周囲にIgA沈着を認めた.抗ヒスタミン剤内服にて皮疹消退.しかし,1月26日再び同様皮疹が出現した,3.8g/日の蛋白尿を認め,検尿で潜血(+++).腎牛検の結果lgA腎症の診断に至った.ステロイドパルス療法を計4回施行し,蛋白尿が1日0.5g以下になった時点で退院した.成人のSchönlein-Henoch紫斑病に合併したlgA腎症は予後不良のことが多く,早期にステロイドパルス療法を行うことは有効と考えられた.

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 26歳,女性のWeber-Christian病の1例を報告した.39℃台の発熱と躯幹,四肢の多発性紅斑,皮下結節で発症.病理組織学的に皮下脂肪織炎を認め,検査所見は白血球減少,抗核抗体弱陽性などの膠原病類似症状,およびGOT,GPT,LDHの上昇,血沈充進,ツ反陰性を示した.また腹部CTでは腹水と軽度の肝脾腫を認めた.プレドニゾロン30mg/日で治療を開始したところ,発熱,皮疹ともに軽快したため以後漸減.しかしその後再発し,プレドニゾロン大量療法,パルス療法およびシクロホスファミド併用療法に反応を示さなかった.本症例のように白血球減少を伴うものは予後不良と考えられ,早期診断とステロイド治療を開始し,投与量の増減により再発をいかに抑制するかが重要と考えられた.

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 直腸癌に合併,かつ腎疾患でステロイド全身投与中に発症した壊疽性膿皮症の1例を報告した.われわれの調べた限り,直腸癌または腎不全に合併した壊疽性膿皮症の報告はこれまで国内外ともに見当たらず,稀な症例と思われた.自験例はステロイド外用療法のみで治癒し,ステロイド全身投与の危険性のある合併症を持った症例には,ステロイド外用療法も考慮すべき治療法と思われた.

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 38歳,女性.16歳より黄色結節が出現し22歳より高脂血症があるが無治療.家族歴に高脂血症あり.37歳頃より黄色結節が多発し,一部を外科的に切除した.総コレステロール,β—リポ蛋白,LDLは高値を示した.家族性II a型高コレステロール血症と診断し高脂血症の治療を開始したが,2か月で中断し,40歳で心筋梗塞のため死亡した.家族性II型高コレステロール血症と冠動脈疾患の合併症について検討を加えた.

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 68歳,男性.幼少時よりのアトピー性皮膚炎にて加療中,顔面の下眼瞼より頬部にかけてびまん性の黄色腫が対称性に出現した.血液検査では,総コレステロール,中性脂肪,リボ蛋白,アポリポ蛋白等に異常は認められず,本症例は正脂血性の限局性扁平黄色腫と考えられた.治療として,ステロイド外用の中止と日光暴露を避けるように指示を行ったところ消退傾向を示した.本症の発症機序として,増悪,緩解を繰り返す慢性炎症反応に加え,長期のステロイド外用,更に日光暴露が主要な因子となっているのではないかと考えた.

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 44歳,男性.亀頭部に小豆大の多発性潰瘍を認めた.ツ反強陽性で,陰茎結核疹が疑われたが,初診時生検組織は非特異的肉芽腫反応であり,他疾患群との鑑別を要した.経過中,小結節,潰瘍,瘢痕が混在する特徴的臨床像を認めるとともに,2度目の生検組織では定型的乾酪壊死像が見られた.

Granulomatous rosaceaの1例 冨澤 幸生
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 49歳,女性.半年前から誘因なく悪化した顔面に対称性に分布する扁平丘疹と紅斑局面.ほてり,痒みは軽微で,外用剤の使用歴はない.組織学的に真皮上層から中層にかけてepithelioid cell granulomaを認め,その毛嚢との連続や毛嚢上皮の破壊は確認できない.眼病変,呼吸器病変はなく,ステロイド外用とミノマイシン®内服で軽快した.自験例をgranulomatous rosaceaと診断したが,本疾患がrosaceaのvariantに属するかどうかは,rosaceaの病因が多元的である可能性があり,その判断には慎重な姿勢が必要と考える.本疾患におけるgranuloma形成には免疫学的機序が強く働いていると推測する.

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 61歳,男性の足底に多発したangiolym—phoid hyperplasia with eosinophiliaの1例を報告した.組織学的に真皮下層に腫大した血管内皮細胞からなる毛細血管の増殖と,少数のリンパ球,好酸球の浸潤を認めた.表在リンパ節の腫脹はなく,末梢血中の好酸球数,IgE値も正常であった.ステロイド外用剤は無効で,7か月後には自然消退傾向を示した.本症と木村病およびhis—tiocytoid hemangiomaの関連について考察した.

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 69歳,女性.初診の約10年前より,頭頸部にゴム乳首様の腫瘤が多発し,次第に全身性に増加,拡大した.初診時より汎血球減少を認めていたが,経過観察中にさらに貧血が進行し,精査の結果,肝臓内に巨大血腫を確認した.病理組織学的には,真皮中層から下層にかけての血管の増生ならびに拡張を認めた.明らかな消化管病変は確認されなかったが,特徴的な臨床所見および肝病変より,同症候群であると考えられた.

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 49歳,男性の胃癌を合併したmulti—centric reticulohistiocytosis(MR)の1例を報告した.手指,肘関節痛とともに手指,耳甲介,口腔粘膜に紅色結節が多発し,3か月後に頸部リンパ節腫脹,全身倦怠感,体重減少,微熱などが急速に出現した.皮膚の結節の組織像は,スリガラス様の胞体をもつ組織球様細胞,多核巨細胞の密な増殖であり,MRと診断した.さらに精査の結果,胃癌および胃癌のリンパ節転移で,stage IVと診断された.胃癌に対して化学療法(FEPAF療法)を行い,リンパ節は著明に縮小したが,呼吸不全のため他界した.化学療法の前後で皮膚の結節に変化はなかった.自験例を含めMRの一部では,paraneoplastic syndromeとしての性格をもつものがあると考えた.

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 海綿状血管腫の一亜型であるsinusoidal—hemangiomaを本邦で初めて報告する.患者:75歳,女性.初診の3年前,右腋窩部に無痛性の皮下結節が出現した.2cm大の境界明瞭な,青く透見できる軟らかい皮下結節で,触れると分葉していることがわかる.病理組織像は,皮下組織,一部真皮深層に,血液を充満した,拡張した多数の血管が集合し,薄い血管壁を融合させて一塊となっている部分と,一つ一つの血管がばらばらに増殖している部分とがある.これらの血管は通常の海綿状血管腫と異なり,すべて薄い壁の血管から構成されている.

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 Trichogenic tumorはhair germが間質の誘導により,毛嚢の様々な未分化型を示す一連の良性腫瘍で,1976年,Headingtonにより提唱された.しかし元々数が少なく,十分な解析が不可能のため,その独立性には疑問もある.今回,82歳男性頭部で,一部で汗器官への分化を疑う以外,ほぼ典型的と思われるtrichogenic trichoblas—tomaを経験した.この症例を組織学的にtri—chogenic fibromaまたはsolitarytrichoepithe—liomaと診断可能の,48歳女性の鼻翼に生じたC型母斑に似た腫瘍と比較検討した.これら2症例はいずれもbasaloid ce11が,正常毛嚢のcatagen期に見られるtrum-truck状の細い細胞索やprimary germinative budを形成し,fibro—blastに富む間質を持つfibroepithelial tumorであった.自験例と文献を検討した結果,trichoge—nic tumorとtrichoepitheliomaとは極めて近縁もしくは同一の腫瘍と考え,SlaterやAckermanらの意見に賛成したい.

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 63歳,女性の左頬粘膜に出現したoral—florid papillomatosisに対して炭酸ガスレーザー焼灼を行い著効した症例を経験した.これまで,この疾患に対しては凍結療法,電気凝固術,メソトレキセートやエトレチナート内服などさまざまな治療が試みられているが,その再発しやすさや,化学療法剤の全身投与の適応などの点で決め手となるような治療法が確立されていない.炭酸ガスレーザーによる焼灼術は,化学療法剤使用の必要がなく,凍結療法や電気凝固術に比し焼灼の範囲・深さの調節が容易で再発が少ないという点で,単純切除できないような大きさのoral florid—papillomatosisには有効であると考える.

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 70歳,女性.初診約5年前より,上口唇に小結節が出現し,漸次増大してきたため来院した.初診時,上口唇遊離縁に辺縁が堤防状に隆起し,中央が潰瘍化した結節が認められた.外科的に切除したが,切除標本の病理組織像では,粘液産生細胞,扁平上皮様細胞,中間細胞から構成される上皮性腫瘍細胞塊を認め,mucoepidermoid—carcinomaと診断した.本腫瘍は主に唾液腺に発生する腫瘍で多くは耳下腺,顎下腺,口蓋にみられる.このため皮膚科領域で経験することは少ないが,本症例のように口唇の小唾液腺に発生することも稀にあり,口唇腫瘍の鑑別診断の一つとして挙げられるべきものと考えられた.

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 症例:62歳,男性.初診時,右鼠径部に圧痛を伴う,径1.2cm大,弾性やや硬,境界明瞭な皮下腫瘤を認めた.表面皮膚には特に変化は認められなかった.病理組織学的に表皮とは連続性を認めない腫瘍塊を真皮中層から脂肪織にわたって認めた.腫瘍は多数の胞巣よりなり,それぞれの胞巣は基底細胞様細胞よりなる充実巣内に多数の大小の管腔を形成し,いわゆる節状を呈していた.これらの管腔を形成する細胞はCEA,EMA陽性を示し,本症例をadenoid cystic car—cinomaと診断した.耳鼻科領域および内臓の精査を行うも特に原発巣と思われる所見は得られず皮膚原発と考えた.皮膚に原発するadenoid cvstic—carcinomaは比較的稀で,若干の考察を加えここに報告した.

連載

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 127 正しいものはどれか.

  ①真菌はPAS反応陽性で赤色に染色される.

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HMO保険の現状,お薦めの語源学書

 アメリカにおけるHMOの現状はまるで振子かバネの上で揺らぐ重りのようです.Managed care,別名HMOが誕生した当初は,保険会社と政治家たちはこぞって充実した医療内容および医療費の節減を口にしたものですが,最近では多くのHMOに加入している被保険者たちが専門医の所へ自由にまたは必要なときに行けないことにいらだちを覚えており,ここに至って二大政党派もHMOの保険会社を告発し,「専門医へ自由に行ける患者の権利を確立できる法律を設定しよう」をうたい文句に選挙戦を繰り広げております.実際のところ国民は政府による国民皆保険制度の導入よりも,患者に必要な正当な治療の認定を拒否するHMO保険会社を訴えるための法律の確立のほうを望んでおります,これは少々複雑な状況にあるのですが,現在の国の法律ではHMOを訴えることができません.そして患者からの不満に対して,保険会社側の言い分は,ぜひ必要と思われる治療を自由にやって下さい.ただしその治療をしてもしなくても医療機関への支払い額は同じですというものです.したがって患者側は十分な治療を受けるためには保険の掛け金を増やさざるをえないということになります.国民はこの状況を完全には把握できていないようです.まだまだしばらくはこのようなアンバランスな状況が続くと思われますが,もちろん何か変わり次第すぐにお知らせします.

基本情報

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臨床皮膚科
52巻8号 (1998年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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