臨床皮膚科 50巻2号 (1996年2月)

カラーアトラス

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患者 80歳,女

初診 1993年4月28日

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 34歳女性の鼠径部,21歳男性の耳垂部,23歳男性の頭頂部に漿液性内容物を有する嚢腫が出現し,病理組織学的には中心部に壁構成細胞を認めない空隙を伴った炎症性肉芽腫であった3例を報告した.いずれの症例も基礎疾患として,毛包脂腺部の慢性炎症性疾患(follicular occlusion triad)が認められたことより,これら嚢腫形成の病態に密接に関係していることが示唆された.近年,同様な特徴をもつ頭部の腫瘤に対しpseudo—cyst of scalpなる名称が提唱されているが,これらと同様の腫瘤が頭部以外にも認められたことより,1つの疾患群としてまとめたほうが良いと考え,皮膚偽嚢腫性肉芽腫(pseudocystic granu—loma of skin)という名称を提唱し,その発生機序を考按した.

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 左前腕伸側に生じたepithelioid sarcomaの1例を報告した.症例は50歳,女性.9ヵ月前より小結節が出現し,掻破により中心部が徐々に潰瘍化した.病変を切除し,組織学的に検討すると,上皮細胞様と線維芽細胞様の腫瘍細胞の混在がみられ,一部の上皮様細胞は結節を形成し,その中心部では壊死が認められた.術後約1ヵ月で局所再発し,拡大切除ならびに左腋窩リンパ節郭清,化学療法,放射線療法を施行した.その後3年5ヵ月の間再発を認めない.本症は皮膚科領域からの報告は未だ少なく,四肢,特に手関節より末梢に生じた難治性潰瘍の発生をみた場合には本症を念頭におき,時期を逸することなく適切な治療がなされるべきと考える.

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 76歳,男性.家庭用殺虫剤を大量使用後に,顔面,四肢などの日光露光部位に浸潤性紅斑および苔癬性局面が出現した.皮疹部は病理組織学的に苔癬型組織反応を示し,浸潤リンパ球はCD8陽性細胞が優位で,多くのランゲルハンス細胞も表皮,真皮上層に認められた.殺虫剤中の成分の光貼布試験ではサリチル酸フェニルが陽性所見を示した.殺虫剤の使用を中止した後,3年間にわたつて光線過敏の症状は持続した.

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 症例は31歳,女性.1993年1月末頃より両前腕に貨幣大までの淡紅色非隆起性紅斑が出現,全身に拡大した.同時に39℃の熱発,金身倦怠感,全身のリンパ節腫脹,筋肉痛および関節痛が出現したため近医内科を受診し入院した.肝機能等の検査値異常,臨床症状より成人Still病が疑われ,プレドニゾロン,アザチオプリン内服による治療が開始された.治療開始後より,臨床症状,検査値異常は改善していたが,2月末頃より両膝蓋部より急速に拡大する毛孔性紅色丘疹,紅斑角化性局面が出現したため,当科を受診した.皮膚生検により毛孔性角栓,基底層の液状変性,真皮血管周囲性炎症細胞浸潤を認め,毛孔性紅色粃糠疹と診断した.エトレチナート内服治療によく反応し約2ヵ月後には寛解した.

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 11歳,女児.感冒様症状の1週間後に下肢より瘙痒性の毛孔性角化性丘疹が生じ,上肢,両肩甲部に拡大した.組織学的には角質増生,毛孔拡大および角栓形成を認め,毛孔性紅色粃糠疹と診断した.臨床検査の結果,血清IgGおよびIgAの低下を認めた.本症例の発症機序に低ガンマグロブリン血症などの免疫不全状態が関与している可能性が考えられた.

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 19歳,未婚女性.4ヵ月前から全身性の激しい瘙痒および躯幹,上肢の多毛が出現した.また約10kgの体重減少を認めた.臨床検査の結果,血清エストラジオールの低下および軽度の甲状腺機能低下を示したが,下垂体性や卵巣性の内分泌異常は認められなかった.無月経および摂食行動の異常が存在し,精神科医の診察の結果,神経性食思不振症と診断,精神療法により体重の回復とともに瘙痒感も自制できる範囲に改善した.皮膚瘙痒症は,神経性食思不振症の重要な皮膚合併症の一つであると考えた.

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 9歳,女児.初診の1年前に気づく.右上腕伸側単発の境界不明瞭で白く陥凹する斑,毛細血管が透見される.病理組織で病変の主体は脂肪組織,小葉構造は保たれているが小さく,好酸性に染まるヒアリン物質の中に小型で明瞭な核をもつ脂肪細胞がある.胎生期の脂肪組織に似る.毛細血管は著しく拡張し赤血球が充満している.以上よりlocalized idiopathic lipoatrophy,involutional typeと診断した.本例は国内3例目で稀な疾患である.病因は不明だが,上腕伸側に好発することから,血管の奇形があり,そこに慢性の外力が加わり血流障害が生じ,脂肪組織の萎縮をきたしたと推論した.

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 44歳,男性に見られた第2期顕症梅毒の1例を報告した.初診の4ヵ月前より亀頭部に潰瘍があり,徐々に排尿困難を伴うようになった.その後顔面,体幹に自覚症状のない紅色皮疹が出現し,発熱,咽頭痛,全身倦怠感,体重減少を伴うようになった.初診時,梅毒血清反応はガラス板法128倍,TPHA 163,840倍と高値であった.臨床的には,硬性下疳,無痛性横痃,梅毒性アンギーナ,ほぼ全身性で散在性の丘疹性梅毒疹,梅毒性乾癬,顔面には結節性梅毒疹,頭部には梅毒性フランベジア,後頸部には梅毒性膿瘡と多彩な皮疹がみられた.病理組織学的に,真皮全層にリンパ球,形質細胞を主体とした稠密な細胞浸潤を認めた.治療はペニシリンG筋注後,バイシリンG内服投与を行い,皮疹は色素沈着を残し治癒,梅毒血清反応抗体値も漸次低下した.

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 68歳,女性.56歳時,口腔内にびらんが,背部に小水疱が出現し,組織学的に尋常性天疱瘡と診断され,ステロイド内服と金製剤筋注で軽快した.約1年前より顔面,体幹に紅斑とびらんが出現したが,粘膜病変は軽度であった.組織学的に顆粒層下に水疱がみられ,蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgGの沈着がみられた.免疫プロット法で患者血清は150kD表皮蛋白と反応した.以上より尋常性天疱瘡から落葉状天疱瘡に移行した症例と考えた.

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 症例1は65歳,男性.1993年1月頃から顔面,胸背部および両上肢に紅斑が出現した.脂漏性湿疹と診断し,加療をしていたところ弛緩性水疱が出現.病理組織像は角層下水疱を認め,免疫蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGとC3が沈着していた.症例2は57歳,女性.重症の糖尿病を合併.1994年8月頃から躯幹および両上肢に紅斑,弛緩性水疱と糜爛が出現した.病理組織像は顆粒層直下の表皮内水疱と棘融解細胞を認め,免疫蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGとC3が沈着していた.症例1は皮疹が軽度であったこと,症例2は重症の糖尿病を合併していたことから,ともにステロイドの内服は行わず,外用療法のみを行ったところ,2例とも皮疹は速やかに軽快した.紅斑性天疱瘡では,ステロイド外用療法単独でも効果が期待でき,簡便で,かつ重篤な副作用も生じないことから,試みられるべき療法の一つと考えられた.

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 小脳梗塞を合併した全身性エリテマトーデス(SLE)の1例を報告した.28歳,女性.24歳時SLEと診断され,ステロイドホルモンにて加療していたが,SLE診断の5年後,嘔気,嘔吐,眩暈のため歩行不可となり入院.頭部CT,MRIにて小脳梗塞と診断.SLEの脳血管障害では,小脳梗塞を来す例は稀であり,梅毒血清反応の生物学的疑陽性,ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体がいずれも陰性で,SLE自体の血管炎による小脳梗塞と考えられた.

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 67歳,男性.水疱,びらん,難治性潰瘍など多彩な皮膚症状と急速に進行する筋症状を呈した皮膚筋炎の患者に対し,パルス療法を含めた副腎皮質ホルモン剤の投与を行った.一時的に効果を認めたが漸減中,症状の増悪を認めたため,シクロスポリンを併用し,症状の軽快を認め,副腎皮質ホルモン剤の減量が可能となった.経過中,間質性肺炎を合併したが,致命的とはならずに軽快,内臓悪性腫瘍の合併も現在のところ認められていない.水疱形成を伴う皮膚筋炎と本症におけるシクロスポリンによる治療について若干の考察を加えた.

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 63歳,女性.10数年前から両手指の腫脹が出現し,その後,Raynaud症状も出現するようになった.舌小帯の短縮,仮面様顔貌,全身の皮膚の硬化等は認められず,皮膚掻痒感,黄色腫,黄疸も認められなかった.検査所見上,抗セントロメア抗体5120倍,抗ミトコンドリア抗体320倍,アルカリフォスファターゼ高値を示し,下肢のX線所見にて右膝蓋骨上の皮膚に石灰化を認めた.組織学的に真皮中〜下層の膠原線維の肥厚,硬化像を呈した.肝生検で慢性非化膿性破壊性胆管炎の像を認め,原発性胆汁性肝硬変を合併した不全型CREST症候群と考えた.若干の文献的考察を加え報告する.

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 57歳男性の活動性結核病巣に生じた狼瘡癌の1例を報告した.約30年前に顔面に浸潤性紅斑が出現.3ヵ月前より両耳介周囲,前額部に鳩卵大から手拳大までの浸潤を触れる隆起性暗紅色斑が出現.左耳垂は潰瘍化し腫瘤を形成.紅斑部では,Langhans型巨細胞を含む類上皮細胞肉芽腫の像を認める.潰瘍腫瘤部は有棘細胞癌に合致し,免疫染色法でケラチン,ビメンチン共に陽性所見を呈した.腫瘤部よりの抗酸菌属のZiehl-Neelsen法,培養,PCR法はすべて陰性.RFPとINHの2者併用療法と左耳介軟骨を含む拡大切除術,分層植皮術を行った.

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 72歳,女性.1988年に乳癌の手術.初診約1年前より,右前胸部に紅斑出現.徐々に拡大してきたため当科を受診.病理組織学的には明らかな管腔形成像はなく,膠原線維束に取り囲まれるように充実性あるいは索状に大型の核とエオジン好性の細胞質を有する腫瘍細胞が増殖していた.電顕的には,腫瘍細胞の核には切れ込みがみられ,偏在していた.細胞質には大小多数の空胞が認められ,巨大な自己貪食空胞も認められた.ミトコンドリアや粗面小胞体などの細胞小器官の発育は比較的良好であった.細胞表面には微絨毛が認められた.病理組織学的には,ductal carcinomaのscirrhous typeであったが,電顕的には,むしろmucinous carcinomaあるいはlobular carci-nomaの特徴を有し,興味ある所見と思われた.

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 64歳,男性.幼児期から左鼻背に黒褐色丘疹があり,初診の3ヵ月前より出血を繰り返し増大.左鼻背に8×8mmの皮面より突出した暗紫紅色ドーム状の結節を認め,中央部は痂皮を付着し,keratoacanthoma様の外観を呈していた.病理組織学的には皮面より突出したドーム状の腫瘤内に表皮直下から真皮網状層まで異型性の強い腫瘍細胞が塊状に増殖し,その底部に沿ってすり鉢状に母斑細胞の胞巣を認めた.免疫組織化学的に,HMB-45は腫瘍細胞に陽性を示し,真皮内母斑細胞には陰性,S-100蛋白は両者ともに陽性を示した.以上の所見より,色素性母斑上に生じた結節型悪性黒色腫と診断し,全身検索で転移を認めなかったためstage IIとして,鼻部拡大手術後に有茎皮弁術を施行した.

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 48歳,女性.約10年前に右乳頭部に約5mmの黒色色素斑が出現した.徐々に拡大していたが,初診の数ヵ月前から急速に拡大した.初診時,右乳頭部から乳輪にかけて1.5×1.0cm,境界明瞭な黒色色素斑が存在した.病理組織像から,悪性黒色腫と診断し,拡大切除術と化学療法を行った.その後4年間良好な経過であったが,初診の4年10ヵ月後に異常胸部陰影を指摘され,外科で肺腫瘍切除を受け,悪性黒色腫の転移病巣が判明した.乳輪および乳頭部の悪性黒色腫は非常に稀であり,治療と経過を報告し,若干の文献的考察を加えた.

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 巨大皮膚潰瘍を呈し,血球貪食症候群を合併した皮膚Ki-1リンパ腫の1例を報告した.42歳,男性.初診の約2ヵ月前より軽微な外傷を契機に右胸部に難治性潰瘍が出現した.組織学的には大型の多形性に富む異型リンパ球と,血球貧食を示す組織球様の細胞を認めた.異型リンパ球はUCHL-1,Ki-1に9割以上陽性であった.リンパ節腫脹,肝脾腫大なく,骨髄に異型細胞を認めなかった.血清中のEpstein-Barrウイルス抗体価の上昇がみられ,皮膚組織よりのT胞受容体β鎖遺伝子の再構成が認められた.

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 腎細胞癌を合併した皮膚B細胞性リンパ腫を報告した.66歳,男性.頭部,顔面の腫瘤を主訴として来院.組織学的,免疫組織学的にdiffuse large, B-cell typeと診断,リンパ腫の病期診断の過程中,CT像にて左腎の孤立性腫瘤が発見された.他にリンパ腫の浸潤像を認めない点から,左腎原発の腎癌と診断し,皮膚腫瘤に対しては電子線照射療法を,腎癌に対しては左腎摘出術を施行した(組織学的に腎細胞癌,組織学的悪性度1).後療法としてリンパ腫にはCHOP療法を,腎癌にはインターフェロンα療法を行い,良好な結果を得た.

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 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を皮膚表面から検出したセザリー症候群3症例に3%酢酸ワセリンの外用を試みた.MRSAは3%酢酸ワセリンの外用によりそれぞれ55,30,27日で消失し,明らかな除菌効果を示した.3症例とも菌陰性化とともに皮疹の改善を認めた.黄色ブドウ球菌はスーパー抗原としての性格を有する外毒素を産生し,これが腫瘍性T細胞の活性化とあわせて皮疹の悪化を導く可能性がある.3%酢酸ワセリンの外用はこうした流れを阻止し,皮疹の改善に役立つものと推論した.

連載

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 図1左は,21歳,白人女性,頭部の臨床像である.頭髪は全体に疎であるが,脱毛斑はなく,個々の毛髪が短い状態である.図1右は採取した頭髪の走査電顕像である.

 69 この疾患の診断として,正しいものはどれか.

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 の使用について

 日本語の中には訳するに当たってその状況で大きく意味が変わってしまうものが幾つかあります.“大変”もその中の一つですが,これは実に訳するのが“大変”難しいものです.私が“The patient developed disease X, which was the most extreme variant of the disease Y”を読んだとき,何かを変えなければならないと感じ,“extreme”を“severe”と変えました.もちろん両方とも“大変”という意味ですが,ここが大変難しい訳ですね.

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 糖尿病性浮腫性硬化症に対し低周波置針療法を行い,自覚症状を含め臨床的にも組織学的にも改善が見られた1例を報告する.患者は46歳の男性で約10年前より糖尿病の治療を受けていたが,コントロール不良であった.約5年前より,背部の突っ張り感と硬化を自覚していたが,未治療のまま放置していた.パルスジェネレータを用いて週5回,計15回の針治療を行ったところ,良好な治療効果を得た.今回施行した方法は手技が簡単であり副作用もなく,本症の有効な治療法と思われた.

基本情報

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臨床皮膚科
50巻2号 (1996年2月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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