臨床皮膚科 36巻8号 (1982年8月)

図譜・478

Secondary Syphilis 木村 恭一 , 藤田 甫
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患者 43歳,独身男子

初診 昭和55年5月14日

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 Lick-dermatitisの2例を経験したので報告する.第1例は精神的因子が誘因となり舌舐め行為が皮疹発生に先行したものであり.唾液による貼布試験陽性であった.第2例は口囲の湿疹様変化が先行し,乾操を和らげるため舌舐め行為の癖がついたものと思われた.本症には,舌舐め行為に精神的因子が背景として存在するtypeとすでに口囲に乾燥など何らかの原因を認めるtypeとがあると考え,文献的考察を加えた.

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 58歳,男子.免疫血清学的にも種々の所見を有した関節リウマチ患者に,皮内型リウマチ結節を多数生じ.特異な潰瘍性変化が認められた.これは真皮結合織の強い滲出性反応に基づく壊死によるものであったが,血管炎の所見は見られなかった.皮内結節の出没は,リウマチ炎症の活動性をよく示すパラメータと思われた.

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 63歳,男.四肢と臀部に数mmから約2cm径の膨疹から出血斑へと変る皮疹があり,高度の蛋白尿を合併した.皮疹の生検はアレルギー性血管炎の像を示し,また血管壁へのIgAとC3の沈着を示した.腎生検はメサンギウム増殖型腎炎の像を示し,また腎のメサンギウム領域へのIgA,IgG,Clq,C3,フィブリノーゲンの沈着を示した.しかし,抗核抗体,抗DNA抗体および低補体血症は認められなかった.これらの所見から本症例は,アナフィラクトイド紫斑の範疇に属するものと考えられた.

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 71歳,女性.70歳でレイノー現象を初発症状として,急激に汎発性の皮膚硬化,肺線維症をきたした全身性進行性硬化症(以下PSS)例であり,入院時は心臓,腎臓への侵襲は認められなかった.しかし入院3ヵ月後,急速に心膜炎を惹起し心不全を併発すると共に,さらにその1ヵ月後,血圧の急激な上昇をきたして腎不全に陥った.腎病理組織は悪性高血圧の組織像を呈した.この症例を中心として,心不全から腎不全への移行過程.および腎不全を併発する可能性の高いPSSの特徴について考察を加えた.

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 Erosive pustular dermatosis of the scalpは1979年Pyeらにより提唱された新しい疾患で,高齢女性の頭部に限局した慢性の膿疱・結痂・びらん性局面を呈し,後に瘢痕性脱毛を残す.著者らは本邦にて初例と思われる49歳女性例を経験したので報告した.初診の1年半前より頭部に小膿疱を混じた結痂びらん性汚穢な局面が出現し,その後指趾爪変形,躯幹の乾癬様皮疹を認めたため来院した.臨床検査にて免疫グロブリン増加,ツ反疑陽性,ブドウ球菌トキソイド皮内反応強陽性など若干の免疫異常を示唆する所見を得たが,組織学的には非特異的な慢性炎症像のみをみた.本症の詳細は今後の症例の集積を待つが,非感染性膿疱症に分類されるべき疾患と考えた.

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 骨髄腫を伴った全身性アミロイドーシスの2例の皮膚病変について報告した.

症例1は63歳男性.手掌と肛門周囲に光沢のある小豆大までの多数の黄色丘疹と出血斑を認めた.丘疹は組織化学的に真皮のほぼ全層にアミロイド沈着を認め,抗λ鎖抗体の螢光も陽性であった.

症例2は46歳男性.鼻周囲や殿部に色素沈着を伴う散在性丘疹を認めた.アミロイド特殊染色陽性,抗κ鎖抗体螢光を認めた.

2症例の皮膚病変におけるDACM染色(SH基染色)はSH基・SS結合ともアミロイド部で陰性であった.皮膚アミロイド沈着の由来について皮膚限局性アミロイトーシスと比較検討した.

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 両下腿伸側に多発性腫瘤形成を認める59歳,男性のPretibial myxedemaの1例を報告した.本症例は他にもバチ状指,多汗,眼球突出が軽度認められた.甲状腺機能は正常であったが,LATSは強陽性を示した.組織所見は典型的で,真皮全層にピアルロン酸を主体とする酸性粘液多糖類の高度の沈着をみた.皮疹はプロピオン酸クロベタゾールクリームのODTにて著明に軽快した.本例では治療としてhyaluronidaseの局注を行っていないにも拘らず,患者血清中にhyaluronidase inhibitorの存在を示唆する所見を得た.本inhibitorは抗ヒトガンマグロブリン抗血清にて阻害されなかったことから,LATSとは別のものと考えられた.

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 52歳,家婦.約10年前より左腰部に無自覚性皮疹あり,徐々に拡大してきた.初診時,2.1cm×3.0cmほぼ楕円形.境界明瞭な赤褐色調扁平隆起性局面を認める.組織学的に肥厚した麦皮内に周囲正常有棘細胞と明確に境された腫瘍細胞巣が多発してみられ,基底層近くには管腔構造が存在する.さらに,これら管腔構造が真皮内へ連続性に増殖を示す部分,表皮と不連続に真内に増殖を示す部分がみられる.腫瘍細胞巣はPAS染色.succinic dehydrogenase,phosphorylase,acid phosphataseにて陽性を示す.上記管腔構造には電顕所見上2つの型がある.

本症例を典型的HSとすることはできないが,poroma腫瘍の発生病理を考える上で興味深いと考えここに報告し,若干の考えを述べた.

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 感冒様症状にて治療中,急速に,全身倦怠感,食思不振,高熱,全身の皮疹,全身リンパ節腫脹が発現したIBL-like T cell lymphomaの1例を報告した.

山形県出身の47歳男性で,貧血,多クローン性高ガンマグロプリン血症,直接クームステスト偽陽性が認められた.頸部リンパ節および腋窩部リンパ節の生検組織標本と,生検組織の膜性状の検索よりIBL-like T ccll lymphomaと考えた.VEPA療法にて治療開始するが,寛解再燃をくりかえし,入院23ヵ月後に間質性肺炎にて死亡した.剖検時肺組織の培養にてAspergillus fumigatusが同定された.経過中数回にわたり,Co-trimoxazoleおよびJosamycineによる急激な症状の増悪が認められた.

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 胸神経領域の帯状疱疹と髄膜炎とがほぼ同時期に発症した42歳,男子例を経験し,脳脊髄液中の各種ウイルスの抗体価の推移を検討した.初診時,血清では4倍以下,髄液では1倍以下であったVZVに対するCF抗体価は,第2および第4病週ではそれぞれ,128倍,2倍と上昇したとの結果をえ,髄膜炎の発症機序を該当神経節からのVZVの髄膜への直接侵襲によるものと考えた.わが国における帯状疱疹脳炎・髄膜炎の臨床的特微は以下の如くである.1)神経症状は皮疹の出現に相前後して1週以内に発症する.2)皮疹の重症度とは相関しない.3)皮疹の罹患部位は脳神経領域と脊髄神経領域とは半々である.4)重篤な基礎疾患を有する例はむしろ少ない.5)生命に対する予後は良好である.6)約60%は完治,その他は後遺症を残した.

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 広島市民病院皮膚科における昭和29年7月より同55年12月までの26年6ヵ月間の帯状疱疹例につき統計的観察を行った.この間の患者は2,051例で,同期間の新患総数123,488名(男:49,370,女174,118)の1.66%に相当した.男:女は912名:1,139名,年齢は50〜60歳代,次いで20歳代に多く,頻度では高齢者に多発傾向を認めた.左右別は,1041:990で左側に多く,部位別では躯幹に最も多く,頭・顔・頸部,下肢・殿・陰部,上肢の順となった.季節的には4月と9月にやや多く,基礎疾患または合併症としては高血圧,糖尿病,癌,妊娠,肝疾患,肺結核などが多く,膠原病,悪性リンパ腫は比較的少なかった.再発は17例(0.83%)に認め,ステロイド使用中のものは24例あった.気象との関係については,湿度低く,気温はむしろ高く,気温の極の差の大なる月に多発する傾向がみられた.

連載 皮膚病理の電顕・14

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汗管腫

図37 汗管腫を電顕のレベルでみると,この腫瘍が分泌腺の構造を持たず,むしろ導管の構造を有することがわかる.すなわち管腔(Lumen)を取囲む上皮は分泌顆粒や糖原を含む大型で"juicy"な腺細胞1)ではなく,扁平で内容に乏しく,核(N)のみが目立つ細胞であることがわかる.一般に外界に向かって開口する分泌腺の導管部は同様の構造を示す.たとえばアポクリン腺とエクリン腺の導管部を微細構造によって区別することは困難である.H&E染色で好エオジン性に染まりPAS染色陽性を示した僧腔内の物質は多数の小胞よりなるが(*),この拡大では無数の点にみえる,壁細胞の管腔面こは多数の微絨毛(v)が分化しているが,この拡大では明瞭でない.導管の外側を密な膠原線維束(C)が取囲む.これが光顕による観察で硝子様にみえた間質に相当する.その中に分断された弾力線維の断片(E)が散在する.壁細胞の周囲に沿って多数の黒点(矢印)としてみえるのがデスモゾームである.これらの点より多少大きい黒点(矢尻)が細胞質中にみられるが,これらは角硝子質(kcratohyalin)顆粒である,すなわち,これらの壁細胞は角化の傾向を示している.細胞質内には多数のリゾゾーム(Ly)も混在している.角化の傾向を有し,多数のリゾゾームを持つ細胞は人体ではエクリン汗腺の麦皮内導管部しかないので1),これらの所見を綜合すると,汗管腫がエクリン汗腺の炎皮内導管部に類似した分化を示すことがわかる.また,このように正常器官の微細構造を知っていると,腫瘍を構成する細胞の特徴と比較することにより,その腫瘤の分化の方向,ひいては組織由来を決定することができる.悪性腫瘍のように分化の程度の低いものでも大体の予想は可能であり,例えば皮膚転移腫瘍の原発臓器を推定することができる場合がある.×2,750

編集室だより

雑誌名の省略について
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 最近,引用文献に掲載ざれる雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviatlons」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

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 いつものように日皮会誌の臨時増刊号としてとどいた第81回日本皮膚科学会学術大会抄録集の分厚さがまず印象に残った.シンポジウム3,特別講演4,教育講演28,グループディスカッション15,その他学術展示,Art Exhibitまで加えて8会場を使っての盛り沢山のプログラムである.特に教育講演の数が多く,公募演題をテーマ別にグループディスカッションとしてまとめ,招待講演を含めてまとまりのあるものにすることは最近の学会の傾向をふまえて,内容の充実をはかっているものと思われた.この豊富な内容を3日間(事実上は2日間)という限られた会期内に盛り込まなければならないわけであるから,多数の会場に分かれることになる.プログラムを眺めながら先ず私自身の発表と,私が共同発表者として関与している演題の発表の時間帯にマークをつけて行くと,重なってしまう部分と,10分ほどの間隔で会場を変わらなければいけない時間帯が生じて来た.特別講演と教育講演など拝聴しておきたいものが重なり合って,何とももったいないという感じがした.従って,これから紹介するのは私自身の見聞することの出来た学会の極く一部分であって,めくらが象に触れているようなものであることをおことわりしておく.

 会場の東京プリンスホテルの周辺は桜の化が満開で,ホテルの正面にかかげられた「第81回日本皮膚科学会総会・学術大会,The 81st AnnualMeeting of Japancse DermatologicalAssociation」と書かれた看板の落着いたうぐいす色の文字がよく調和していた.

基本情報

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臨床皮膚科
36巻8号 (1982年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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