眼科 60巻5号 (2018年5月)

特集 IgG4関連疾患を整理する!

序論 後藤 浩
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「IgG4関連疾患」という病名を眼科領域でも耳にするようになって久しい。この疾患にみられる眼病変を今日では「IgG4関連眼疾患」と呼ぶが,少々誤解を恐れずに本疾患をひと言で説明すると,「以前から我々が認識していた両側涙腺と唾液腺が対称性に腫大するミクリッツ病こそが,IgG4関連眼疾患」ということになる。すなわち,「ミクリッツ病の患者さんの血清中のIgG4は異常高値を示し,かつ涙腺や唾液腺の生検組織にはIgG4を産生する形質細胞の浸潤がみられる」のである(Yamamoto M et al:Rheumatology 44, 2005)。その後,数多くの症例の蓄積により,本症は涙腺以外にもさまざまな眼病変をきたすことが知られるようになり,今日に至っている。

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血清中の免疫グロブロリンのひとつであるIgGにはIgG1からIgG4の4つのサブクラスがあるが,そのうちIgG4は全IgG量の4%程度を占めるに過ぎない。IgG4関連疾患とは,このIgG4を産生する形質細胞が全身のさまざまな臓器に浸潤することによって腫瘤の形成や組織の肥厚をきたす原因不明の疾患である。

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眼領域はIgG4関連疾患の好発部位であり,そのなかでも涙腺を侵す頻度が最も高い。しかし,涙腺のみに限局する症例は少なく,眼領域の神経,筋組織,結合組織などさまざまな組織,臓器にも病変を形成する。しかしながら,我々は結膜に病変を形成したIgG4関連眼疾患は経験がない1)。

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IgG4関連疾患(IgG4-related disease)では血清IgG4が上昇し,全身のさまざまな臓器にIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う病変がみられる(図1)。眼領域もその好発部位であり,涙腺をはじめとした眼病変はIgG4関連眼疾患(IgG4-related ophthalmic disease)との病名が提唱され,その診断基準も2015年に公表された1)。しかし,眼病変のみならず全身の諸臓器において,いまだにIgG4関連疾患の診断に関する議論は絶えない。目下(2018年現在),欧米も含めたIgG4関連疾患国際会議(International Symposium on IgG4-related disease)での重要な議論のひとつはIgG4関連疾患とその疑似疾患(mimicker)との鑑別であり,眼病変においても同様の議論がある。本稿ではそのような観点も含めてIgG4関連眼疾患の臨床像を概観した。

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IgG4関連疾患と三叉神経腫大との関連について,最初に報告したのはWatanabeら1)である。信州大放射線科のグループである彼らは,2011年にIgG4関連疾患の代表的病態である自己免疫性膵炎の患者11例のうち5例にMRIで眼窩下神経の腫大(定義は垂直径が5mmを超えたもの)があったことを報告したのである。また彼らは第2枝上顎神経の枝である眼窩下神経以外にも,三叉神経の第1枝眼神経の枝,前頭神経と第3枝下顎神経の枝の下歯槽神経の腫大が認められた症例があったことを記載している。期せずして筆者も同時期に3例連続して眼窩下神経腫大所見を有するIgG4関連眼疾患の症例を経験し,三叉神経腫大がIgG4関連疾患に特有の所見なのではないかと考えるに至った。

5 IgG4と視神経症 毛塚 剛司
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IgG4関連眼疾患は,涙腺,三叉神経,外眼筋などに腫大や過形成が起きてその部位の機能障害を起こす1)。また,病理組織学的にIgG4の沈着が認められることが特徴である1)。視神経症はIgG4関連眼疾患において「まれに」みられる所見であるが,視機能,それも視力や視野にダイレクトに障害を起こすため,必ず注意しなければならない。当項目では,IgG4関連眼疾患における視神経症の位置づけと鑑別診断について述べ,臨床症例を提示して解説を行う。

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IgG4関連疾患は,高IgG4血症と腫大した罹患臓器への著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を呈する,全身性・慢性炎症性疾患である1)。IgG4関連疾患のなかの涙腺・唾液腺病変は,以前はミクリッツ(Mikulicz)病2)と呼ばれていたが,今世紀に入り,わが国でIgG4関連疾患として疾患概念が確立された3)。その認知度が高まるにつれ,医療機関を受診する患者も増加傾向にある。さらに2015年には厚生労働省によってIgG4関連疾患は「指定難病」にも認定され,重症例に対しては医療助成が受けられるようになった。このため医療現場では,適切なIgG4関連疾患の診断と治療が求められるようになった。ここで本稿では,IgG4関連疾患の治療に重点を置き,私たちが構築し進めているSapporo Medical University and related institutes database for investigation and best treatments of IgG4-related disease(SMART)レジストリー4)のデータをもとにその現状と問題点を概説したい。

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ぶどう膜炎は,さまざまな自己免疫疾患や感染症の一症状,あるいは薬物や毒物による副作用として起こる場合もあれば,特発性に眼炎症として起こる場合もある(表1)。しかし,ぶどう膜炎やこれに随伴する全身疾患は,しばしば診断および専門医への紹介が遅れ,眼構造に不可逆的な損傷を与えることがある1)2)。

緑内障感受性遺伝子 間渕 文彦
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緑内障発症,進行のリスクファクターとして,臨床的には高眼圧,近視などが挙げられるが,これら発症メカニズムについてはいまだ不明な点が多いのが現状である。他,リスクファクターとして緑内障家族歴があり,遺伝要因または生活習慣や嗜好が類似しているといった環境要因によって発症している可能性があるわけであるが,これまで疫学調査も含め,明らかな環境要因の報告はなく,少なくとも緑内障発症には遺伝要因が関与していると考えられる。

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フェムトセカンドレーザー(FSレーザー)を用いた白内障手術(Femtosecond Laser-Assisted Cataract Surgery:FLACS)は良好な再現性や精確性が得られるとして,欧米のみならず国内においても多くの施設に普及しつつある。

機器・薬剤紹介

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米国では,1990年にバルベルト緑内障インプラント(BGI, Abbott Medical Optics)が登場して以降,ロングチューブシャント手術の件数は年々増加し,2003年に7,788件であったのが,2012年には12,021件と報告されている1)。一方,手術既往例あるいは外傷例に対する線維柱帯切除術の件数は,2003年に11,018件であったのが,2012年には5,723件と減少している1)。これは,難治性緑内障に対するロングチューブシャント手術の良好な報告が蓄積され,その適応が広がったことによるところが大きい。一方本邦では,米国に大きく遅れ,2012年になってインプラント手術が認可され,BGIに次いで,2014年にはアーメド緑内障バルブ(AGV, JFCセールスプラン)の使用が可能となり緑内障手術治療の選択肢が広がった。本稿では,BGIの原理,適応,手術手技と管理,成績などについて解説する。

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A2.オッズ比もハザード比もともにリスクの指標です。研究では何らかの「アウトカム」を設定し,群間の比較,関連の有無や強さを評価します。アウトカムには臨床的な事象,イベントの保有状況,発症の有無や検査値などの種類があります。リスクの指標はアウトカムの種類によって,また,研究デザインや集めた情報に応じて使い分けます。オッズ比やハザード比はイベントの有無というアウトカムに対する多変量解析でしばしば使用されます。研究デザインに沿って適切にオッズ比やハザード比,あるいはそれ以外のリスクの評価指標を選択し,解釈する必要があります。

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目的

下眼瞼内反症に起因した巨大角膜アミロイドーシスの摘出にあたり,前眼部光干渉断層計(OCT)での観察が有用であったので報告する。

症例

68歳女性。近医より右眼の“角膜腫瘤”によって愛媛大学に紹介受診となる。約20年間にわたり右眼の異物感,羞明,流涙などの症状があった。初診時視力は右眼0.2(n.c.)と低下しており,眼圧は右14mmHg。右高度結膜充血,眼脂を認め,角膜には瞳孔領から下方にかけて約6×9mmの巨大な白色隆起物を認めた。隆起物は硬質で可動性に乏しく,角膜下方輪部より多数の新生血管侵入を認め,同部位では下眼瞼内反症により睫毛が角膜に接触していた。これらの臨床所見から,眼瞼内反症に続発した角膜アミロイドーシスと診断した。前眼部OCTでは角膜ボウマン(Bowman)膜の断裂と実質浅層に及ぶ占拠性病変が確認されたため,角膜表層切除術とJones変法内反症手術を同時に行った。切除病変のCongo red染色は陽性であった。術後の眼瞼内反矯正は良好で,1週間後に角膜上皮は修復し,術後1か月の矯正視力は0.8まで回復した。前眼部OCTで角膜実質浅層の淡い混濁と菲薄化を認めるものの乱視は術前より著明に改善された。

結論

長期にわたる眼瞼内反,睫毛刺激により角膜アミロイドーシスが巨大化し腫瘤性病変を呈した。角膜表層切除と眼瞼内反症同時手術によって視機能は回復し,前眼部OCTは病変範囲の把握や術式の選択,および術後のフォローに有用であった。

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目的

糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)に対するトリアムシノロンアセトニド後部テノン嚢下投与(sub-Tenon triamcinolone acetonide injection:STTA)後に眼圧が上昇し,緑内障手術を要した2例を報告する。

症例

症例1は57歳,男性。右眼のDMEに対し1回の後部STTAを施行した3か月後,右眼圧が52mmHgに上昇した。薬物療法を行うも十分な眼圧下降を得られなかったため,投与後21か月で右眼に線維柱帯切除術を施行した。症例2は59歳,男性。右眼の再発を繰り返すDMEに対し,計6回後部STTAを施行した。初回の後部STTA後から15~37mmHgの眼圧推移を認めていたが薬物療法でコントロール可能であった。6回目の後部STTA後,右眼圧が42mmHgと上昇し,薬物療法では眼圧コントロールが困難となったため最終投与から半年後に右線維柱帯切開術を施行した。

結論

後部STTAはその施行回数,投与後の期間にかかわらず,著明な眼圧上昇をきたすことがある。後部STTA施行後は長期にわたる継続的な眼圧の経過観察が必要である。

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目的

神経線維腫症1型(NF1)では虹彩結節だけでなく走査型レーザー検眼鏡(SLO)の赤外光(IR)による眼底観察で高輝度の斑状病変がみられ,同部位の光干渉断層計(OCT)所見から脈絡膜深層の高反射組織の存在が示されている。今回我々はswept source(SS)-OCTのen face画像を用いてNF1の脈絡膜所見を観察した。

対象

全身的にNF1と診断された6例12眼(男性1例,女性5例,平均44歳)。全例において虹彩結節の有無について確認のうえ,散瞳後HRA(Heidelberg社)のIRモード(30°)およびSS-OCT(DRI OCT,トプコン社)の黄斑部3D scan(12×9mm)モードで撮影した。取得したOCT画像から網膜色素上皮レベルで平坦化したen face画像を再構築し,IR画像と比較した。

結果

虹彩結節は12眼中8眼(67%)で確認され,IR画像では12眼中11眼(92%)で眼底後極部に高輝度斑状病巣が観察できた。En face画像ではIR画像で異常がみられなかった1眼を除いた11眼(92%)において脈絡膜中層~深層にかけてIR画像の高輝度部位すべてに一致した斑状の高反射が確認された。

結論

En face画像はSLOのIR画像と同じく高頻度に眼底後極部の斑状病変が観察可能であった。またその高反射の深さ情報から,NF1の眼底病変が脈絡膜中層から深層に局在していることが示された。NF1におけるen face OCT画像は病変の有無および局在の同定に有用である。

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編集後記

基本情報

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眼科
60巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0016-4488 金原出版

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