綜説
眼内悪性リンパ腫の診断と治療
武田 篤信
1
1国立病院機構九州医療センター眼科(福岡市)
キーワード:
眼内悪性リンパ腫
,
網膜硝子体リンパ腫
,
硝子体混濁
,
網膜下浸潤
Keyword:
眼内悪性リンパ腫
,
網膜硝子体リンパ腫
,
硝子体混濁
,
網膜下浸潤
pp.601-606
発行日 2019年6月5日
Published Date 2019/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001207
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眼内悪性リンパ腫は,症状と所見などの病像がぶどう膜炎と類似する,いわゆる「仮面症候群」と呼ばれるものの代表疾患のひとつである。眼内悪性リンパ腫は一般的には眼原発のものと中枢神経系(CNS)からの浸潤とがあり,中枢神経系原発悪性リンパ腫の一亜型と考えられている。中枢神経系以外の臓器原発,いわゆる転移性の頻度は約10%である。我々が一般に眼内悪性リンパ腫として呼んでいるものは,網膜硝子体悪性リンパ腫(vitreoretinal lymphoma:VRL)と呼ばれることもある。眼原発の眼内悪性リンパ腫の診断は難しく,症状出現から診断がつくまでには中枢神経系原発あるいは転移性の眼内悪性リンパ腫よりも時間がかかる1)。そのため,原因不明のぶどう膜炎として診断され,長期間にわたるステロイド全身投与に反応しない場合には眼内悪性リンパ腫を鑑別診断に挙げる必要がある。しかし,近年では,診断技術の進歩や情報の共有により眼内悪性リンパ腫の早期診断も可能になってきている。眼内悪性リンパ腫の治療は眼病変については眼局所治療でコントロール可能である。しかし,眼内悪性リンパ腫の5年生存率は約60%である1)。生命予後に直結するのは中枢神経系リンパ腫(CNSリンパ腫)であり,約60~90%の症例で数年以内に発症する2)。CNSリンパ腫を伴わない場合でも眼局所療法に加え,CNSリンパ腫発症予防目的で全身化学療法単独,または全身化学療法後に放射線療法を行う施設もある。
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