症例報告
クマ外傷による眼球破裂の2例
酒井 大典
1
,
菅野 幸紀
1
,
小島 彰
1
,
森 隆史
1
,
古田 実
1
,
石龍 鉄樹
1
1福島県立医科大学眼科学講座
キーワード:
クマ外傷
,
眼球破裂
,
眼球穿孔
Keyword:
クマ外傷
,
眼球破裂
,
眼球穿孔
pp.1377-1383
発行日 2020年11月5日
Published Date 2020/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001923
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クマによる顔面外傷に伴い眼球損傷をきたした2症例を報告する。
症例1:26歳男性。ツキノワグマに襲われ顔面を損傷し,当院へ搬送となった。顔面皮膚の損傷と,CTより眼窩外壁骨折を認めた。眼科的には左眼上眼瞼裂傷と結膜下出血,前房出血,硝子体出血がみられ,視力は光覚弁であった。眼窩部CTにより左眼球破裂が疑われたため,同日全身麻酔下に手術を施行した。上直筋付着部後方に上眼瞼裂傷と一致する強膜裂傷を認めたことから,クマの爪による強膜穿孔と考えられた。眼瞼縫合と強膜縫合を施行し,手術を終了した。術後硝子体出血,強膜裂傷部への硝子体嵌頓を認め,第12病日に白内障手術と硝子体手術を施行した。受傷1年半後の矯正視力は1.0であった。
症例2:65歳男性。犬と散歩中にクマ(種不明)に襲われて右眼を受傷し,当院へ搬送となった。多発する顔面皮膚の裂傷を認めた。右眼は前房出血,結膜下出血を認め,光覚は確認できなかった。眼窩部CTにより眼球破裂が疑われたため,同日全身麻酔下に手術を施行した。外直筋付着部下端の後方から上直筋鼻側にかけて8時-2時の円周方向に強膜裂傷を認めたことから,極めて強い鈍的外力による眼球破裂と考えられた。強膜縫合を施行したが,後日網膜剥離を認めたため,第7病日と第65病日に硝子体手術を施行した。7か月後の視力は手動弁であった。
クマ外傷に伴い眼球損傷をきたした2例を経験した。爪による眼球穿孔と考えられた例は,視力予後が良好であった。一般にクマ外傷による眼球破裂は重篤であるが,損傷の機転によっては予後が良好な症例もあり,可及的に整復を目指すべきである。
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