臨床放射線 63巻9号 (2018年9月発行)

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特集　核医学の放射線治療への新規応用

はじめに神宮　啓一 , 山本　哲哉 63巻9号 , 2018年9月 , pp.959-959

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2017年秋に横浜市立大学放射線医学の井上登美夫先生を大会長として第57回日本核医学会学術集会が横浜で開催された。その中で，「核医学の放射線治療への新規応用」と題してシンポジウムが行われた。FDG-PETが臨床の現場で普及して10年以上経過し，FDG-PETは癌診療において欠かせない診断モダリティとして認知されているが，放射線治療においても様々な形で応用されている。

PETの放射線治療への応用―特に頭頸部癌に関して安田　耕一 63巻9号 , 2018年9月 , pp.961-967

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一連の癌治療において，正確に癌の状態を把握して適切な介入を行うことは重要である。放射線治療においては，様々な画像検査を基に適応を判断し，治療計画を立て実際の治療を行い，その後の経過観察を行う。CTやMRIなどから解剖学的情報を得ることは当然重要だが，機能情報を得られるpositron emission tomography（PET）も現在重要な役割を果たしており，将来の発展性が期待されている。Troostらによるreview^1）では，PETの放射線治療における役割が主に5つ述べられている。今回これを参考に，現在筆者が専門に治療している頭頸部癌を例に出し，放射線治療におけるPETの役割，応用について検討する。

FDG-PET/CTを用いた放射線治療の予後予測高橋　紀善 , 梅澤　玲 , 高浪　健太郎 , 山本　貴也 , 武田　一也 , 松下　晴雄 , 石川　陽二郎 , 片桐　佑 , 神宮　啓一 63巻9号 , 2018年9月 , pp.969-978

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¹⁸F fluorodeoxyglucose positron emission tomography/computed tomography（FDG-PET/CT）は様々な悪性腫瘍の病期診断・再発・転移の診断において重要な検査と位置づけられている。非小細胞性肺癌において，computed tomography（CT）だけでなく，FDG-PET/CTを施行したほうがリンパ節転移の検出に優れており^1），また食道癌においてはPET検査を施行したほうが遠隔転移の検出において優れていると報告されている^2）。また，病期診断だけではなくFDG-PET/CTにおけるmaximum standard uptake value（SUV_max）を用いて様々な治療の予後予測を行う研究がこれまでいくつも施行されてきたが，報告によってまちまちな結果であり，議論となっているところである。

ホウ素中性子捕捉療法（BNCT）におけるFBPA-PETの役割髙井　良尋 63巻9号 , 2018年9月 , pp.979-987

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ホウ素中性子捕捉療法（boron neutron capture therapy：BNCT）は，従来の放射線治療とはまったく異なる機序を利用した放射線治療で，ホウ素と熱中性子との核反応で生成する粒子線を利用した治療である。したがって，癌細胞がホウ素を十分に取り込んでいなければ効果は期待できないが，癌組織がどの程度ホウ素化合物（ボロノフェニールアラニン，boronophenylalanine：BPA）を取り込むかは¹⁸F-FBPA-PET（FBPA-PET）で調べることが可能である。しかしながら，PETで得られる画像情報はmacroscopicなものであるため，SUV（standardized uptake value）が同じでもBPAの細胞内微視的分布に生物効果が影響を受けると考えられるBNCTでは，FBPA-PETの取り込みの程度をもってBNCTの適応選択や治療効果を予測することはそう単純なことではない。まったく取り込みがなければ当然のことながら適応にはならないが，取り込みが高いものがより有効であるとは限らない。すなわち，FBPA-PETの使用はBNCT適応症の選択に関しては必要条件であってそれで十分ではないと思われる。取り込みがあってもほとんど効果がないこともあれば，SUVが正常組織とほぼ同等でも有効症例がある可能性がある。本稿では，BNCTの原理，線量付与，BNCT線量評価のための特別な概念である薬剤生物学的効果比（compound biological effectiveness：CBE），CBEの定義から推論されるFBPA-PETの意味するところなどに関して説明する。

α線放出核種による癌治療の進歩と放射線治療の中の位置づけ織内　昇 , 菅原　茂耕 , 赤谷　憲一 63巻9号 , 2018年9月 , pp.989-994

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核医学治療は，放射性医薬品を体内に投与して病巣に集積させ，集積した局所で放出される放射線により治療を行うものである。RI内用療法，内照射療法など，いくつかの呼称があるが，欧米ではtargeted radionuclide therapyが一般的であり，標的RI治療という呼び方が治療法をよく反映している。

総説

乳房専用PETを使用した乳癌の画像診断―現状と展望則武　睦未 , 尾川　松義 , 菅江　貞亨 , 金田　朋洋 , 成井　一隆 , 田辺　美樹子 , 山中　正二 , 片山　敦 , 石川　孝 , 大橋　健一 , 井上　登美夫 63巻9号 , 2018年9月 , pp.995-1007

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我が国では，乳癌罹患数は増加の一途をたどっており，2016年では女性の癌罹患の第一位であった。一方で画像診断や化学療法および分子標的治療薬などの治療の進歩もめざましく，早期癌の予後が極めてよいのはさることながら，進行癌であっても適切な診断・治療により劇的な予後の改善が望めるようになってきた。

診療

骨吸収抑制剤関連顎骨壊死/薬剤関連顎骨壊死のMRI所見に関する検討馬場　亮 , 尾尻　博也 , 池田　耕士 , 山内　英臣 , 荻野　展広 , 瀬戸　由貴 , 山添　真治 , 小橋　由紋子 , 最上　拓児 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1009-1014

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薬剤関連顎骨壊死（medication-related osteonecrosis of the jaw：MRONJ）は，ビスフォスフォネート関連顎骨壊死（bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw：BRONJ）や抗RANKL抗体製剤デノスマブ関連顎骨壊死（denosumab-related osteonecrosis of the jaw：DRONJ），血管新生阻害薬による顎骨壊死を含む総称として米国顎顔面外科学会（American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons：AAOMS）が提唱している名称である^1）。日本の顎骨壊死検討委員会ポジショニングペーパーでの（血管新生阻害薬を含まない）骨吸収抑制剤関連顎骨壊死（antiresorptive agent-related osteonecrosis of the jaw：ARONJ）に相当する^2）。本研究ではARONJ/MRONJのMRI所見の特徴，MRI所見とビスフォスフォネートの投与経路，ビスフォスフォネートの期間，ARONJ/MRONJの臨床病期との関係に関する検討を行う。

MR画像誘導放射線治療の初期報告稲葉　浩二 , 井垣　浩 , 西岡　史絵 , 岡本　裕之 , 三浦　悠記 , 逆井　達也 , 柏原　大朗 , 大熊　加惠 , 村上　直也 , 中山　優子 , 阿部　容久 , 伊丹　純 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1015-1020

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2017年，当院に我が国で初めてのMR画像誘導放射線治療が導入された。この装置の特徴は治療中にリアルタイムでターゲットや正常組織を観察できること，照射ごとにMR撮影を行い，位置照合が行えること，ターゲットや正常組織の線量を把握しながら，必要に応じて治療計画の再作成（on line adaptive radiation therapy）ができることが挙げられる。本稿では，初期経験についてまとめ，その有用性について検討した結果を報告する。

症例

広範な梗塞を伴った多形腺腫の1例糸山　昌宏 , 角南　俊也 , 亀井　僚太郎 , 平峯　慶子 , 舛本　博史 , 松浦　隆志 , 玉江　昭裕 , 本下　潤一 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1021-1025

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多形腺腫は唾液腺腫瘍で最も頻度が高く，通常緩徐に増大する充実性腫瘍であり，多彩な組織像を呈するが，広範な梗塞を伴うことはまれである。今回我々は，右耳前部腫脹を主訴に発見され，経過中に増大と縮小を示し，病理組織像で広範な梗塞後変化を認めた多形腺腫の1例を経験したので報告する。

卵巣原発非妊娠性絨毛癌の1例新井　綾希子 , 山田　恵一郎 , 村井　淳志 , 富家　未来 , 河合　雄一 , 福原　伸彦 , 安藤　良太 , 伊藤　茂樹 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1027-1030

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卵巣原発非妊娠性絨毛癌は非常にまれな腫瘍で，画像所見の報告は少ない。今回，卵巣原発巣や脳転移の画像と病理所見の対比から若干の知見を得られた1例を経験したので報告する。

管状嚢胞腎細胞癌の1例山本　雄太 , 菅原　敬文 , 橋根　勝義 , 寺本　典弘 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1031-1034

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管状嚢胞腎細胞癌（tubulocystic renal cell carcinoma）は，2016年のWHO分類で新たに加えられた腎細胞癌のまれな亜型であり，同疾患における画像所見に関する報告は少ない。今回，管状嚢胞腎細胞癌の1例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する。

FDG-PETにて集積を認めた小腸平滑筋腫の1例奥村　能啓 , 岸　亮太郎 , 土橋　一代 , 兵頭　剛 , 井田　健太郎 , 重西　邦浩 , 宇賀　麻由 , 金澤　右 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1035-1039

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小腸平滑筋腫は消化管間葉系腫瘍（gastrointestinal mesenchymal tumor：GIMT）の6％とまれな腫瘍である^1）。造影CTの報告は散見するが，FDG-PET/CTの報告は少ない^1）。今回，我々はFDG-PET/CTを施行した小腸平滑筋腫の1例を経験したので，若干の文献的考察を加え報告する。

情報

画像診断報告書の既読管理および至急報告書発行のシステム構築について―画像診断報告書を正しく利用するために黒﨑　敦子 , 大沢　文子 , 竹内　均 , 宇津木　康之 , 早乙女　幹朗 , 加藤　修一郎 , 清水　隆夫 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1041-1044

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近年，画像診断報告書（以後，レポート）の確認をしなかったために患者への不利益が生じている事態が次々と明らかになり，社会的にも大きな問題となっている。

連載

今月の症例北原　均 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1045-1047

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画像所見　図1Aの右足関節側面像には異常所見を認めない。アキレス腱前方の透亮像（Kager fat pad）が明瞭である。図1Bの左足関節側面像では，Kager fat padの領域に，筋肉と同程度の不透過像を認める。この陰影の後縁は直線状で，また陰影内部には脂肪組織によると思われる線状の透亮像がかすかに認められる。

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文献紹介 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1025-1025

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目次 63巻9号 , 2018年9月

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英文目次 63巻9号 , 2018年9月

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次号予告 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1048-1048

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投稿規定 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1053-1053

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編集後記 63巻9号 , 2018年9月 , pp.1054-1054

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基本情報

臨床放射線
63巻9号
(2018年9月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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