Brain and Nerve 脳と神経 52巻9号 (2000年9月)

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はじめに

 高い気圧下で酸素吸入を行うと,単純な物理的拡散の法則に従い血液中の溶解酸素が増加し(図1)7),ヘモグロビンによる酸素運搬がなくとも溶解酸素だけで生命を維持することが可能となる。これを応用したものが高気圧酸素(hyperbaric oxygen:HBO)治療であり,近年様々な疾患の治療に用いられている。HBO治療の作用は,1)血液中の酸素の増加によるもの,2)物理的な圧力による効果の2つに大別される。後者はBoyleの法則に従った気体の圧縮作用であり,これにより空気塞栓や潜水病の治療が行われている。次いで,前者の酸素化による作用を利用して,主としてこれまで脳梗塞の治療がなされてきた。しかし,最近のHBO治療の応用は多岐にわたっており,本稿では脳神経外科領域におけるHBO治療の現状について述べる。

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はじめに

 複雑に進化したヒトの脳形態の理解には,これらが形成されていく発生過程の知識が必要不可欠である。したがって,未熟な脳の発達過程を解析することは,神経系の発生機構を学ぶ恰好の手段であると同時に,神経解剖学の基礎を理解する上で最も合理的な方法と言うことができる。一方,MRI(magnetic resonance im-aging)が呈示する,あたかも解剖書を見るかのように鮮明な画質と任意の断層面は,これまでの画像診断法では困難であった脳の種々の構造の把握を可能にした。中でも中枢神経系奇形の解析がMRIの出現で飛躍的に進歩したことは周知のとおりである。中枢神経系奇形は脳,脊髄の正常な発達が何らかの原因で未熟な状態のまま停止したと考えることができる。したがって,奇形の理解には発生学的知識が必要となる一方で,奇形をとおして中枢神経の発生と発達過程の理解を深めることもできる。本稿では,正常な前脳の発生と発達について解説を加えるとともに,代表的大脳奇形を呈示し,その形態学的特徴の成り立ちについて考察を加えてみたい。

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 1施設で経験した組織診断の明らかな21例(男性9例,女性12例)の中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSML)症例について,その治療上の問題点を検討した。年齢は平均63歳(中央値60歳,38〜81歳),病巣数は単発病巣8例,多発病巣13例であった。全例で放射線治療が行われ,14例で化学療法が施行された。生存期間の中央値は15カ月,平均生存期間は20.5カ月であった。治療上の問題点として,1)画像所見に先行する初発症状がぶどう膜炎を含め多彩であることによる診断・治療開始の遅れ,2)原発部位や照射野内の遠隔部位での再発,髄腔内播種を伴った脊髄転移,あるいは中枢神経系外転移の併発,3)長期生存例においても放射線治療やMTX髄腔内投与に伴う白質脳症の出現,などが明らかとなった。以上の問題点を克服していくことが今後のPCNSML治療成績の向上につながるものと考えられる。

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 急性期脳梗塞51例に低磁場MRI(0.2T)を用いてDWIを撮影し,脳梗塞診断の有用性を検討した。1)急性期脳梗塞51例中46例(90.2%)はDWIで診断可能であったが,TIAの4例と穿通枝梗塞の1例は診断できなかった。2)DWIの描出時間は最短で皮質梗塞が1時間20分,穿通枝梗塞が3時間で,高磁場MRIと遜色がなかった。3)低磁場MRIではline scan法のため,撮影時間が長くかかることが問題であった。

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 出生時頭囲が40cm前後に拡大した水頭症患児6症例において,CT画像から頭蓋内および側脳室容積を計測積分し両者の比率から水頭症病態の評価を試みた。

 出生2.3±2.3日に撮像したCT画像で積分した頭蓋内容積は673.8±46.0 cm3で,側脳室容積は383.0±135.7cm3,頭蓋内容積との比は0.57±0.19であった。頭囲と出生時体重を基準とし,非水頭症患児のコントロール群3症例との比較では,頭蓋内容積として1.97倍強の増加が認められた。画像診断の驚異的進歩をみた今日において,新生児水頭症の出生時評価として数量的検討の異なった側面を見い出したので報告した。

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 上肢優位の位置覚低下が著しいBrown-Séquard症候群(以下BSS)を呈した左上部頸髄梗塞の1例を報告した。症例は79歳男性。左顔面を除く左弛緩性麻痺,第4頸髄レベル以下の右温痛覚低下,左触覚低下,上肢優位の著明な左位置覚,振動覚障害よりBSSと考えた。MRIで左上部頸髄の異常信号を認め画像所見より頸髄梗塞と診断した。病態として,元来上部頸髄の左半側が左椎骨動脈前脊髄枝または一本の根動脈に灌流されていた上に,高度の動脈硬化や,頸椎の変形による血流障害が加わり,虚血が後索,特に楔状束に及んだため特異な臨床症状が出現したと推測した。

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 急性ないし亜急性に進行する運動感覚性多発根神経炎に,帯状絞扼感を伴った神経サルコイドーシスの2症例を報告した。症例1は亜急性な経過で感覚障害が主であり,前斜角筋リンパ節生検にてサルコイドーシスと診断した。症例2は急性な経過で,運動障害,感覚障害がともに顕著であり当初ギラン・バレー症候群が疑われたが,ガリウムシンチによる両肺門,縦隔の異常集積,肺胞洗浄液のCD 4/CD 8比上昇,ツベルクリン反応陰性,血清リゾチーム高値より臨床診断群の診断基準を満たしサルコイドーシスと診断した。多発神経根障害による帯状絞扼感は,神経サルコイドーシスを想起すべき症状である。

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 頭蓋内進展および頸部リンパ節,脊椎に遠隔転移したolfactory neuroblastoma(ONB)の1例を報告した。症例は35歳男性。鼻閉感,鼻出血,頭痛および嘔吐で発症した。MRIでは右側鼻腔内から蝶形骨洞,右前頭蓋底に進展する腫瘤を認めた。手術にて腫瘍を全摘出したが,術後2カ月のMRIで腫瘍の再増大,頸部リンパ節への遠隔転移および脊髄播種を認めた。Cisplatin,etoposideによる化学療法および放射線治療を行い,原発巣,転移巣は縮小し,患者は独歩退院した。外来で化学療法を継続したが,術後15カ月目に原発巣は再増大し,結局,肺炎にて死亡した。ONBの5年生存率は50%前後と良好だが,本例のごとく頭蓋内進展および遠隔転移を伴う例の予後は不良である。手術と放射線療法による局所療法に加え,cisplatinを中心とする化学療法による積極的な全身性のコントロールを組み合わせて治療すべきではないかと考えている。

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 多発性脳内出血とくも膜下出血にて発症した31歳の女性例を報告した。出血1週間前に頭痛が出現し,その時のCTでは異常を認めなかった。入院時の神経学的検査では,軽度の意識障害,うっ血乳頭と軽度の左片麻痺を認めた。CTでは右尾状核頭部,左前頭葉皮質下の脳内出血とびまん性のくも膜下出血を認めた。脳血管撮影や血液検査では異常所見を認めなかった。赤沈,CRP,抗リン脂質抗体は正常範囲内であった。開頭術による血腫除去術を施行した。開頭術1週間後,開頭部位に一致した皮下血腫を認めた。脳血管撮影にて皮膚切開部と離れた位置の右浅側頭動脈に動脈瘤を認めた。この動脈瘤を手術的に切除し,検査した。病理組織学的には偽性動脈瘤であったが,炎症所見は認めなかった。原因として,原発性中枢神経系血管炎が最も疑われたが,確定診断には至らなかった。

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 Myofibromaは頭頸部の皮膚に好発し,頭蓋骨に発生することは極めて稀な疾患である。われわれは,前頭葉を強く圧排進展した巨大頭蓋骨myofibromaの1手術例を経験したので報告する。症例は53歳,女性。左眼球突出にて発症した。神経学的には両耳側下4分の1盲,左眼球突出を認めた。CTでは左前頭蓋底を占める径5cmの腫瘍を認めた。MRIではT1WIでは等信号,T2WIでは内部不均一な高信号,Gd-DTPAでは強く増強された。主要な栄養血管は左中硬膜動脈であった。左前頭側頭開頭にて手術を行い,全摘出した。腫瘍は紡錘形細胞からなり,vimentin,α-SMAに陽性で,myofibroblastの性格を持つことよりmyofibromaと診断された。われわれの渉猟し得た限りでは本症の頭蓋骨原発例は認められず,非常に稀なものと考えられる。

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 急性期頭痛のみを呈し,その12日後にくも膜下出血(SAH)をきたした椎骨脳底動脈解離性動脈瘤(VBA-DA)の1例を報告し,頭痛のみを呈する非出血性のVBA-DAの診断上の注意点について考察した。症例は32歳女性。急激に生じた後頭部痛を主訴に発症の翌日に脳神糸巻外科を受診した。発症時は頭痛以外に症状はなく,それも受診時には極軽度まで改善しており,神経学的にもCTおよび髄液検査上も異常はなく,外来にて経過観察とした。その12日後,VBA-DAからSAHを生じた。本症は発症急性期に唯一頭痛のみを呈する場合があり,その場合の頭痛の特徴は後頭部あるいは後頸部を中心とした激痛である。また,脳梗塞を生じた非出血性のVBA-DAから後日出血をきたした報告もある。上記のような頭痛を訴える場合には,CTや髄液検査で異常がなくても,後にSAHを生じる可能性もあり,VBA-DAを念願においた頭痛の原因検索が必要である。

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 対側損傷により生じた急性硬膜外血腫の稀な1例を報告する。症例は59歳の女性,庭石で足を滑らせ転倒,後頭部を打撲した。受傷時の意識消失はみられなかった。来院時意識は清明で神経学的異常を認めなかった。後頭部に皮下血腫を認めた。髄液漏やBattle's signはみられなかった。頭部単純撮影で後頭骨に線状骨折を認め,CTにて左前頭部に急性硬膜外血腫を認めた。保存的に加療し受傷19日目に元気に独歩退院した。出血機序として,後頭部打撲により生じる頭蓋骨の変形や前頭部の陰圧で頭蓋から硬膜がはがれることや,この剥離に伴い頭蓋-硬膜介在血管が破綻することで硬膜外血腫をきたすことなどが考えられた。

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 症例 男児

 母体は22歳で,経妊(一回目は1年前に自然流産),初産で,妊娠経過中に異常はなかった。在胎37週5日に経膣自然分娩で出生した。出生時,Apgar 8/9点で,身長51.8 cm,体重3,396 g,頭囲34.5 cm,胸囲34 cmであった。生後2日目より発熱し全身の黄疸が出現し,高ビリルビン血症の診断で3生日より光線療法が開始された。

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 症例 68歳,男性

 主訴 意識障害

基本情報

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Brain and Nerve 脳と神経
52巻9号 (2000年9月)
電子版ISSN:2185-405X 印刷版ISSN:0006-8969 医学書院

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