症候群・徴候・18
Pancoast (パンコースト)症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.782
発行日 1974年8月1日
Published Date 1974/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203579
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Pancoast-Tobias症候群とも呼ばれ,肺尖部悪性腫瘍を示唆する症候群で,同側の肩・上肢の頑固な婆痛,Horner症候群,小手筋の萎縮などを主症状とする。すなわち,肺尖部の肋骨椎骨洞に生じた悪性腫瘍により,その直上にある腕神経叢の一部が圧迫刺激され,C8—D1(2)の神経幹が障害されると共に,下頸神経節,星状神経節の障害も伴なう。強い疼痛が肩,腋窩,上肢の後内側から指にかけてみられ,これはしばしば早期症状であるとともに,また終始みられる症状である。痛みは極度に強く,耐え難く,発作性に増強するのがみられる。同時に他覚的知覚障害がC8—D2領域にみられ,小手筋や手屈筋群が麻痺し,これに伴ってしばしば小手筋の萎縮がみられ,指屈曲反射が消失する。Horner症候群も症状の出揃ろう初めからしばしばみられる。又同側の顔面,頸部,肩胸部の発汗障害を伴なうことがある。これらの症状のtopogra—phy (分布)はKlumpke-Dejerineの下部腕神経叢症候群のそれと殆んど異なるところはないがKlumpke—Dejerineのそれは病変部位を示す症候群であるのに対し,Pancoast症候群は疼痛の激しさ,症状の急速な進行という特徴から,肺尖部悪性腫瘍の存在を示すものとしての意義を有する。レントゲン写真上は腫瘍陰影と共に該部の肋骨,椎体の骨破壊像がみられる。
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