特集 省察的実践者を育む─ショーンからの提起とともに
『省察的実践者の教育』を読み解く
柳沢 昌一
1
1福井大学大学院 教育学研究科教職開発専攻
pp.978-987
発行日 2017年12月25日
Published Date 2017/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200877
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変動する社会における専門職教育の危機と改革の方向定位としての省察的実践
1983年のThe Reflective Practitioner(『省察的実践者の教育』,2007)においてショーンは,1960年代後半以降高まりつづける社会的な批判をふまえ,新たな専門職のあり方を探究していく。確立された知識・方法・スキルを大学において学び,厳密に実践に適用するという伝統的な専門職観にとどまる限り,変動する社会的現実のなかで求められる力,不断に流動化・複雑化する実践状況において働く専門職の実践力への問いは進まない。実践のなかで,状況をとらえ返し新たなフレームとアプローチを構成しつつ状況に働きかけていく力,〈行為の中の省察〉を核心とする実践的力量が求められることを提起し,実践のなかでの専門職の省察の展開をたどり,その構造とそれを抑止する組織のあり方を分析したうえで,実践力形成を支える専門職大学院の組織のあり方を展望していく。
続く1987年のEducating the Reflective Practitioner(『省察的実践者の教育』,2017)においてショーンは,実践力形成のプロセスを多様な分野の実習の事例をとおして探り,実践をとおした学び〈省察的実習reflective practicum〉を軸とする専門職教育のカリキュラム・組織総体の改革構想を提起していく。
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