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書評 わかりやすい省察的実践―実践・学び・研究をつなぐために
安酸 史子
1
1日本赤十字北海道看護大学
pp.66-67
発行日 2024年2月25日
Published Date 2024/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202205
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省察的実践を可視化し、研究につなげるための必読書
看護職は対人関係専門職である。著者の三輪建二氏は、教育に関心をもつ多くの看護師が手に取ってきたであろうドナルド・A・ショーンの『省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考』(鳳書房、2007)の監訳者であるとともに、看護師の大学院生を指導してきた実績があり、本書のなかには多くの看護師や看護教師の事例が登場してくる。
私は看護師経験よりも看護教師経験が長いが、看護教師としての省察的実践をどのように看護研究につなげるかについては困難さを感じてきた。本書は、タイトルにあるようにわかりやすくていねいに「省察的実践」と「省察的実践を研究にすること」について解説されていて、省察的実践を研究につなげることに困難を感じている研究者にとっては待望の書である。大学院の学修で直面する「厳密性」と、自分がかかわる実践に即した「適切性」をめぐる対立と葛藤については、看護学の大学院教育をしている立場では、極めて日常的な葛藤である。本書の第1部では、省察的実践者であり、成人学習者である対人関係専門職のありようについて理論的にかつわかりやすく解説をしてくれる。実践と学術との橋渡しには高い「壁」があるとしたうえで、第2部では省察的実践者として実践・臨床の視点に立った省察的な記録・レポート・論文をまとめることについて詳細に検討している。そして第3部では、実践と研究をつなぐ指導について具体例を引用しながら解説してある。
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