特集 身の回わりの衛生
第II部 健康なくらし
食品の健康危害
柳沢 文徳
1
1東京医科歯科大学
pp.49-53
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203563
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はじめに
いまの食生活が健康なくらしかたとして妥当であるかどうか,栄養面から,昭和39年度国民生活白書を読んでみても,満足されるものではない.また,環境衛生面から食生活をみても,都市およびその周辺において,台所,調理室の改善は近代化になりつつあって,みたところは改善されたが,食物それ自体はどうであろうか.健康障害の発生をみても食中毒は毎年4万人,赤痢8万人という状況で,その変動はきわめて少ない.添加物関係でも法違反の使用状況は増加し,許可された添加物自体でも毒性,発ガン性という疑問をもった物質があり,タール色素のうち赤色色素1号と101号が本年禁止されたにすぎない.近年自然食の運動の展開が盛んになってきたのも,こういう不自然な添加物の乱用に対する抵抗の結果のあらわれでもあると考えられる,油断のできない食物または食生活といえるわけである.食品衛生面の健康危害防止は個人衛生では始まらず,行政的な取締りに依存せざるをえない現状である.しかし,官僚的な指導取締りは,地域住民の健康を守るのに十分とは考えられぬふしが多く,住民による行政監視が必要なときになっているようにも考えられる.
食物は原則的に毎日3回にわたって摂取しているから,ときに食物に危害物質が存在していても,それにぶつかる確率がたかいわけである.
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