連載 スタッフの倫理的感受性を高める ナースマネジャーがともに考える臨床倫理――臨床看護師が直面する倫理的ジレンマを紐解く・8
善行と無危害:The Duty to Produce Good and Avoid Harm
竹之内 沙弥香
1
,
田村 恵子
2
,
浅井 篤
3
1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻臨床看護学講座
2淀川キリスト教病院
3熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.846-851
発行日 2010年8月10日
Published Date 2010/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101837
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
善行とは
「善行」とは良いことを行なう義務であり1),善行の原則は,医療者が患者の最善の利益を求めて行為することを要求している2)。この原則に基づいた医療として,患者が求めていることよりも医療者が考える「患者の善」を優先すると,現代ではパターナリズムとして批判されることになる。
生命倫理学者のペレグリーノとトマスマによれば,「患者の善」には,①医療上の善,②患者の観点から見た患者本人にとっての善,③社会の一員としての人間にとっての善,④スピリチュアルな存在としての人間にとっての善,などが含まれる。つまり,患者自身の見解を無視することは,患者の自律を侵害することとなるため,「患者の善」に反するのだ3)。看護師がこの原則に基づいたケアを実践する際には,患者にとっての最善の利益を,患者や家族との対話の中からともに探し,ケアに反映できるよう留意されたい。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.