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あとがき
橋口 陽二郞
pp.1176
発行日 2018年9月20日
Published Date 2018/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212175
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巷では外科医を主役としたテレビドラマが大人気の一方,外科医の減少が続いています.不人気の理由は,「仕事がきつい」「訴訟リスクが高い」などさまざまでしょうが,患者さんの意識・態度の変化とともに「やりがいがない」と感じる医師が増えていることも一因かもしれません.外科医が困難な手術に臨む最大の動機は,良い手術をして良い結果を残し,患者さんに喜んでもらいたいということです.ところが,外科手術には常にリスクが伴います.癌の手術であれば,「手術を無事に終了する」「術後に合併症・後遺症を起こさない」「癌が再発しない」という3つの命題を達成しなければ,「完全なる成功」とは言えないわけです.しかし,これを常に達成することは困難です.
この30年間を振り返っても,明らかに術中死や大量出血をきたす手術の頻度は減っており,機能温存手術の普及により合併症,後遺症も減少,癌の治療成績も大きく改善しています.その一方で,「完全なる成功」でなければ満足しないどころか,「何か落ち度があったのでは」と考える患者が増えている結果,外科医の受けるプレッシャーは並大抵ではありません.しかし,(テレビドラマでも明らかなように?)患者さんが最後に頼りにしなければならないのは,結局「腕の良い」外科医です.上手な麻酔医でもなく,的確な診断を下す内科医や放射線科医でもありません.「初心者」から,「腕の良い頼りになる外科医」に成長していくことは,患者さんのためにも自分のためにも重要であるとともに,その過程は他の職種では得られないような充実感と喜びを伴ったものとなるでしょう.
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