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マイナ保険証が迷走している.政府が健康保険証をマイナンバーカードと一体化させ,来年秋に元々の保険証を廃止することを打ち出した.これに対し,任意のはずのマイナンバーカード取得を事実上強制するものとして大きな反発が出ている.さらに保険証の情報との紐づけ時の誤入力などにより,赤の他人の情報が紐づいてしまい,他人の医療費や投薬情報などが閲覧できてしまうなどのトラブルが続出した.そもそも紐づけ作業が追い付いていないようで,折角マイナ保険証にしたにもかかわらず,医療機関のリーダーに反応せず,やむを得ず元の保険証を使う事態も頻発しているようである.医療機関側もオンライン資格確認などでシステムに多額の出費を強いられるため,小規模な医院などで閉院が相次ぎ,保険医療機関の廃業数が過去最多になっているという.このように酷いことだらけの中で唯一マイナ保険証の利点として考えられるのが,顔認証によるなりすまし防止(実際一部の無保険外国人の間で,他人の保険証の使い回しが横行しているらしい)であるが,これも顔写真をプリントしてかぶれば,難なく認証をクリアしてしまうことが実証されてしまった.そもそもマイナンバーカードの取り扱いはくれぐれも慎重にと,わざわざナンバー部分を隠すようなケースが一緒に配布されており,このようなものを通院の度に持ち歩かせるのは,あまりにリスキーではないだろうか? 消えた年金問題然り,新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)然り,役所が慌てて何かを進めようとすると碌なことがない.しかもマイナ保険証については,今までどおり元の保険証を使うというオプションが残されているのだから,それほど慌てて進めなければならない理由もない.医療関係の情報は非常にセンシティブで,漏洩すればその影響は甚大であり,世界中のハッカーが狙っている.大阪急性期・総合医療センターのランサムウェア攻撃も記憶に新しい.まずきちんと時間をかけて,システム欠陥の穴を一つ一つ埋めていくことが必要ではないだろうか?
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