皮膚病診療 39巻6号 (2017年6月)

特集 代謝性疾患と皮膚病

臨床例

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>未治療の糖尿病患者の非クロストリジウム性ガス壊疽(non clostridial gas gangrene、以下NCGG)の1例を報告した。組織の細菌培養からStreptococcus group GおよびEnterococcus faecalis(以下E.faecalis)の混合感染と考えた。下肢の血行が保たれており、左前足部の切断にとどめることができた。独特の腐敗臭および触診にて握雪感の確認をすることで、NCGGを診断し、早期の外科的治療と適切な抗菌薬投与が重要である。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>腹部リンパ浮腫に対する脂肪吸引後に蜂窩織炎を生じた1例を経験した。リンパ浮腫に対する脂肪除去は蜂窩織炎のリスクを低下させるという報告がある一方で、脂肪吸引術の手技自体が蜂窩織炎の単独のリスクファクターとしてあげられている。自験例は脂肪除去から8ヵ月後に生じた蜂窩織炎であり、手技そのものが感染を誘発したとは考えにくく、リンパ浮腫に対して行われた脂肪除去が蜂窩織炎を誘発したと推測された。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>体重156.6kg、BMI 49.0、肥満度122.8%の成人男性にみられた背部の慢性膿皮症について報告した。右鼠径部には化膿性汗腺炎を伴っており、背部の病変との関連について考察した。両腋窩、頸部などに黒色表皮腫を伴っていた。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>コレステリン肉芽腫は、炎症や出血に由来するコレステリン結晶と、それに対する異物反応により形成される肉芽腫性病変である。皮膚コレステリン肉芽腫の原因は外傷などが多いと報告されており、脂質異常症との関連は解明されていない。しかし、自験例では注目すべき合併症として脂質異常症と眼瞼黄色腫を有していた。過去にも同様の症例が報告されており、皮膚コレステリン肉芽腫の一部の症例では、脂質異常症が発症に関与する場合もあると考えた。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>穿孔性皮膚症は、変性した真皮成分が経表皮排泄される皮膚病変の総称で、後天性反応性穿孔性膠原線維症(acquired reactive perforating collagenosis、以下、ARPC)をはじめ、穿孔性毛包炎、Kyrle病、蛇行性穿孔性弾力線維症などが包含される。ARPCは、臨床的に中心陥凹を有する丘疹が認められ、病理組織学的に真皮膠原線維の経表皮排泄の像を呈する疾患である。ARPCは、しばしば糖尿病や慢性腎疾患などに合併する。今回われわれは、2型糖尿病に合併したARPCの1例を経験したので報告する。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>小麦アレルギーに伴うKounis症候群を報告した。本邦からの小麦アレルギーに伴うKounis症候群の報告は2例目であり、本邦の統計上は抗原としては医薬品が多く認められた。動脈硬化性病変を有する患者に発症例が多く、そのような患者において、アナフィラキシーショックを発症した際には、急性心筋梗塞の合併も念頭に、十分な経過観察が必要である。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>低炭水化物(糖質制限)ダイエット中に発症した色素性痒疹の症例を報告した。受診時、血中ケトン体の著明な上昇がみられた。低炭水化物ダイエットでは脂肪が燃焼し、ケトン体が生成され、ケトーシスをきたしやすい。最近の低炭水化物ダイエットの流行もあり、低炭水化物ダイエットに伴う色素性痒疹の患者に留意する必要がある。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>中壮年男性の、後頸部から上背部に生じた浮腫性硬化症の3例を経験した。糖尿病に先行して発症することがあることから75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を行ったところ、いずれの症例も糖尿病との関連が示唆された。先行感染や、ガンマグロブリン値の異常はなかった。浮腫や硬化を生じる物質の検索や、糖尿病による微小循環障害との関係を調べるため、免疫組織学的な検討を行った。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>うっ滞性静脈潰瘍は慢性静脈不全に伴う難治性潰瘍である。自験例は5年間外用治療を行うも上皮化しなかった。画像上、静脈の血行動態に明らかな異常は確認できなかったが、職業柄長時間の下肢下垂があり、さらに肝硬変による多量の腹水貯留や脳出血による左半身麻痺、高度の肥満などで下肢の静脈灌流不全を生じていると判断した。さらに病理組織学的には、真皮内に脈管が増生、蛇行し、膠原線維が増生していることから静脈うっ滞を示唆していた。静脈うっ滞性潰瘍の特徴として創部からの浸出液が多く、解剖学的に下腿下三分の一、とくに足関節周囲に発症しやすいことがあげられる。自験例のような静脈うっ滞性潰瘍では、局所陰圧閉鎖療法が潰瘍のwound bed preparationと植皮の固定に有効であると考える。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>皮下型環状肉芽腫は多くは小児にみられる。成人では女性に多く、背景疾患に糖尿病や高血圧があることが多い。診断には生検が有用であるが、リウマチ結節や皮下型サルコイドーシスと鑑別する必要がある。生検後に残存病変が自然消褪する傾向がある。本症は成人女性に発症した典型的な皮下型環状肉芽腫である。成人の皮下に多発する結節は環状肉芽腫も考慮する必要がある。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>糖尿病患者はさまざまな感染症(真菌感染症、ウイルス感染症、細菌感染症など)に罹患しやすく、しばしばこれらの感染症の重症化や治癒の遷延化がみられる。糖尿病患者は感染症自体がインスリン抵抗性亢進を惹起し、さらなる糖尿病の悪化を招くといった悪循環に陥ることがある。今回われわれは、血糖コントロール不良の糖尿病患者に生じた背部の癰の2例を経験したので報告する。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>糖尿病にclear cell syringomaと浮腫性硬化症を合併したまれな1例を経験した。糖尿病患者で眼周囲に多発する小結節がみられた場合、clear cell syringomaを鑑別疾患として考えるべきである。clear cell syringomaは通常のsyringomaと類似した臨床像を呈するが、病理組織学的に腫瘍細胞がグリコーゲンを多く含むclear cellよりなることから鑑別される。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>2型糖尿病に対し30年以上インスリンの自己注射を継続していた左右下腹部に皮下結節を生じた。つまみやすく痛みがないことから同部位への自己注射を継続し、インスリンがアミロイド変性したインスリンボールとして形成された。インスリンボールへの注射ではインスリンの効果が減弱し、部位を外れると低血糖になったため血糖不良例としていて見過ごされていた。診断確定し適切なインスリン注射指導により、4年後の時点で結節は縮小していた。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>近年まで脛骨前部へのムチンの沈着は脛骨前粘液水腫とほぼ同義として扱われてきた。2006年、私たちは甲状腺機能が正常で、高度の肥満患者の下腿にpitting edemaと局面等の皮疹の真皮にムチンの沈着を認めた3例をchronic obesity lymphoedematous mucinosis(以下、COLM)と命名し、Br J Dermatol誌上に報告した。現在までに10例の症例の集積がある。症例は10年前より2型糖尿病の診断を受けていたが治療を拒否していた。COLM発症の約1年前、足趾の糖尿病性壊疽にて入院加療し、4ヵ月後に上皮化して退院した。患者は食事療法を拒否し、1ヵ月に2kgずつ体重が増加した。退院8ヵ月後、糖尿病性腎症にて緊急搬送された。患者の身長は165cmで退院時65kgだった体重が93kgまで増加していた。両下腿に著しいpitting edemaと不整形局面を認め、真皮上層にムチンの沈着を認めた。報告10症例の臨床症状と病理組織学的所見の検討を行った。

  • 文献概要を表示

<症例のポイント>インスリン注射を反復した部位に生じたlipohypertrophyの1例を経験した。lipohypertrophy/インスリンボール部ではインスリンの吸収が阻害され、血糖コントロール不良の原因となりうる。lipohypertrophyとインスリンボールの鑑別は、血糖コントロールのためにも重要である。内科医と連携して、定期的に注射部位を確認し、注射部位のローテーションを指導することが大切である。

英文抄録

editorial

自然を眺め,哲学する科学 西岡 清

総説

図譜

糖尿病と皮膚病 西山 茂夫

蝶の博物詩

生態24 西山 茂夫

  • 文献概要を表示

壊死性軟部組織感染症(NSTI)と診断した45例(男28例、女17例、32~88歳)について検討した。発症から3日以内の受診が11例である一方、2週間以上経過後の受診は8例であった。合併症は糖尿病が37例、高血圧症が15例、脂質異常症が10例、肝疾患が7例などであった。発症部位は下肢が29例で最も多く、体幹後面も9例にみられた。41例が全身性炎症反応症候群診断基準を満たしていた。重症化リスクを評価するLRINEC scoreを8項目以上満たした高リスク群は21例であった。単独感染が23例、混合感染が22例で、最も多い単独感染はStaphylococus aureus 14例であった。画像検査では、全例に浮腫あるいは脂肪織炎に一致する所見を認め、17例に膿瘍、10例にガス像を認めた。治療は34例に縫縮と植皮を行い、5例は足関節より近位側での患肢切断となった。死亡例はなかった。

  • 文献概要を表示

第80回日本皮膚科学会東部支部学術大会を,浜松市で浜松医科大学皮膚科学教室が担当させていただいた.時は2016年10月29,30日である.会場は,浜松駅に隣接する浜松コンベンションセンターとオークラ浜松アクトシティホテルであった.参加者は約950名で,多くの一般演題を頂戴した.浜松医科大学が担当する東部支部学術大会は,初代教授山田瑞穂先生,二代教授瀧川雅浩先生のときにも開催されており,今回は3回目であった.皮膚科の学会は多々ある.何か今までやられてないことをやりたい,という思いだけがあった.(「はじめに」より)

皮心伝心

診察室の四季

梅雨の晴れ 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第144回 浅井 俊弥

------------

目次

編集後記・次号予告

基本情報

hifuksinryo39-6_cover.jpg
皮膚病診療
39巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)