皮膚病診療 38巻11号 (2016年11月)

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<症例のポイント>歯肉辺縁の難治性のびらんに対し、歯肉生検を行ったところ粘膜上皮細胞の棘融解を認めた。精査の結果、尋常性天疱瘡の診断に至った1例を報告した。プレドニゾロン30mg/日内服にて症状は改善し、治療経過中に皮膚症状の出現はなかった。尋常性天疱瘡の初発症状として口腔粘膜症状が好発することは知られているが、自験例のように歯肉辺縁のびらんから診断に至った症例はまれである。歯肉に難治性のびらんを認めた場合は尋常性天疱瘡を含めた水疱症を念頭に置き精査する必要がある。

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<症例のポイント>手指の角化性小結節は棘融解に加え、基底層の傷害を示唆する所見がみられた。天疱瘡になんらかの基底層の障害が加わって生じた角化性小結節と考えた。

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<症例のポイント>粘膜皮膚型尋常性天疱瘡は、デスモソームを構成するデスモグレインであるDsg1およびDsg3に対する自己抗体に起因する自己免疫性水疱症の一型である。尋常性天疱瘡治療において、ステロイド単剤の治療では奏効が得られず、種々の治療の組み合わせが必要な場合を経験した。今回、ステロイドパルス療法、免疫抑制薬、二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)、免疫グロブリン大量点滴静注療法(IVIG)の併用療法で著明改善をみた粘膜皮膚型尋常性天疱瘡の1例を報告する。

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<症例のポイント>尋常性天疱瘡の小児発症例はまれであり、今回われわれは4歳で発症した尋常性天疱瘡の1例を報告した。高用量ステロイド内服で速やかに症状は改善し、10ヵ月で寛解に至った。年齢を問わず難治性口腔内びらんの鑑別として、尋常性天疱瘡をあげるべきである。

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<症例のポイント>難治性尋常性天疱瘡に対する大量γグロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin;IVIg療法)により好中球減少が生じた1例を報告した。本邦ではIVIg療法による好中球減少症が自験例を含め6例の報告されている。そのうちの2例が尋常性天疱瘡の治療中に生じていた。IVIgによる好中球減少症の病態はいまだ明らかでないが、注意すべき副作用の1つと考え報告した。

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<症例のポイント>自験例は難治な口腔膜病変を有する尋常性天疱瘡である。ステロイドおよび免疫抑制剤内服に加えて、大量ガンマグロブリン(intravenous immunoglobulin、以下、IVIG)療法を併用し病勢コントロールが可能であった。IVIG療法は、病因性抗体価を低下させ、臨床症状を改善させた。自験例のように通常のステロイド量ではコントロールに難渋する、あるいは治療導入期間が長期にわたると予見される重症天疱瘡において、IVIG療法は非常に有用な治療である。高齢、脂質異常症、骨粗鬆症があり、低用量のステロイドから治療を開始したい患者にはIVIGが有効である。

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<症例のポイント>放射線照射部位に一致して再燃した落葉状天疱瘡の1例を報告した。放射線照射後、皮疹の再燃に伴って血中抗デスモグレイン(Dsg)1抗体ELISA値が上昇、局所外用治療により低下した。皮疹が照射部に限局した理由として、放射線照射により表皮細胞間結合の構造が変化する可能性や、正常免疫応答が阻害され無疹部より抗原抗体反応が生じやすくなっている可能性を考えた。局所外用治療で皮疹軽快、抗Dsg1抗体ELISA値が低下した経過から、局所の免疫制御機構が自己抗体産生に関連している可能性が示唆された。自己免疫性水疱症を基礎疾患にもつ患者に放射線療法を施行する場合、症状を再燃させる可能性を留意すべきである。

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<症例のポイント>落葉状天疱瘡の治療経過中に疱疹状天疱瘡の皮疹が出現した症例を報告した。疱疹状天疱瘡では自験例のように抗デスモグレイン1抗体陽性の症例が多いとされるが、抗デスモグレイン(Dsg)3抗体、デスモコリン(Dsc)1、2、3抗体陽性例も報告されている。疱疹状天疱瘡から落葉状天疱瘡に移行した報告はあるが、落葉状天疱瘡から疱疹状天疱瘡に移行する症例の報告はまれである。

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<症例のポイント>不全角化と著明な表皮肥厚を伴った落葉状天疱瘡の1例を報告した。アトピー素因があるため、皮膚へ好酸球が浸潤しやすく、好酸球から放出されるサイトカインにより表皮肥厚をきたした可能性が考えられた。ジアフェニルスルホンの内服のみで症状は軽快した。

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<症例のポイント>臨床症状から尋常性乾癬との鑑別が困難であった紅斑性天疱瘡(pemphigus erythematosus、以下、PE)の1例を経験した。落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus、以下、PF)とPEのいずれと診断するかが問題となった。prednisolone(PSL)0.3mg/kgの内服で皮疹は改善した。

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<症例のポイント>ブシラミンは、関節リウマチの治療薬として日本と韓国で使用されているSH基剤であり、天疱瘡様症状を誘発することがある。ブシラミンを内服中に、躯幹と下肢に浮腫性紅斑と水疱を生じ、疱疹状天疱瘡と診断した1例を経験した。病理組織学的に表皮内水疱と好酸球性海綿状態がみられ、蛍光抗体直接法で表皮細胞膜にIgGが陽性を示した。血清中の抗デスモグレイン(以下、Dsg)1抗体が陽性であったが、抗Dsg3抗体は検出されなかった。ブシラミンを中止後、プレドニゾロンを投与して皮疹は改善し、抗Dsg1抗体も陰性化した。

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<症例のポイント>経過中、口腔や眼瞼周囲を中心とした難治性の多彩な皮疹が出現し、診断確定の契機となった。後天性血友病と自己免疫性水疱症の合併に関しては、本邦では水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、線状IgA天疱瘡、後天性表皮水疱症との合併報告例があるが、腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)との合併報告例はない。

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<症例のポイント>今回われわれは、原因薬剤内服の中止とステロイド外用のみで軽快した疱疹状天疱瘡の1例を経験した。疱疹状天疱瘡は、臨床的に紅斑の辺縁に小水疱が配列し環状を呈し、強いそう痒を伴うこと、病理組織学的に好酸球性海綿状態と表皮内水疱を認めることを特徴とする。疱疹状天疱瘡は、ブシラミンなどのSH基を有する薬剤により誘発されることがある。

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<症例のポイント>間擦部に皮疹を有する増殖性天疱瘡を報告した。初診時および治癒過程の皮膚症状と病理組織像を比較検討し、増殖性は表皮肥厚と真皮浮腫という2つの要素によるものと考えた。増殖性局面の形成に好酸球が重要な役割を果たしている可能性があると思われた。

英文抄録

editorial

温故知新 西岡 清

topics

本邦の疱疹状皮膚炎の現状 大畑 千佳
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疱疹状皮膚炎は痒みの強い小水疱が,慢性再発性に四肢伸側,とくに肘頭や膝蓋に集簇して生じる疾患であり,1884年にLouis Duhringによって初めて報告された.欧米人に多い疾患であり,通常,グルテン過敏性腸症(セリアック病)を合併している.疱疹状皮膚炎の症状はグルテン除去食により著しく改善することが知られているため,グルテン除去食が治療の第一選択となっている.本邦の疱疹状皮膚炎の臨床像は欧米の同症の臨床像とほぼ同様であるが,これまでの本邦報告例を検討したところ,グルテン除去食はほとんど行われていないことが明らかとなった.本稿では本邦の疱疹状皮膚炎を欧米の症例と比較しつつ概説し,最近われわれが報告した新たな知見についても紹介する.なお,本邦では古くよりDuhring(ジューリング)疱疹状皮膚炎という病名が好んで使用されているが,欧米では単に疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis)と記載されることが多い.本稿でもそれに倣い疱疹状皮膚炎を用いる.(「はじめに」より)

蝶の博物詩

生態17 西山 茂夫

治療

天疱瘡治療の現状と将来 山上 淳
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天疱瘡は指定難病であり,難病情報センターによると2014年末時点で日本国内に約6,000人の症例が登録されている.日常診療でみることの少ない疾患ではあるが,多い都道府県では500人以上,少ない県でも30人程度の症例が居住していることから,各地域の基幹病院に勤務する皮膚科医は,天疱瘡の患者に遭遇する可能性があるといえる.従来,天疱瘡の診療の問題点は,担当する医師の知識と経験に依存する部分が大きいことであったが,2010年に天疱瘡診療ガイドラインが発表され,全国共通の基本指針が示されたことは,多くの皮膚科医にとって歓迎すべき大きな進歩であろう.天疱瘡の診療経験が豊富なエキスパート集団によって編集されたガイドラインから学ぶ点は多く,天疱瘡の治療にあたる皮膚科医としては,まずはガイドラインを理解し,ガイドラインに則した治療戦略を立てていくことが重要と考えられる.本稿では,天疱瘡治療の現状の支柱となっているガイドラインの重要なポイントを解説しながら,将来の展望なども交えて述べていきたい.(「はじめに」より)

学会ハイライト

皮心伝心

梅毒の最近の動向 立花 隆夫

診察室の四季

夕紅葉 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第137回 浅井 俊弥
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本欄は,浅井皮膚科クリニックのホームページに連載されている「皮膚科のトリビア」を紹介させていただくものです.学会・研究会などで見聞きしたことをその都度まとめ, 連載されています

鏡検雑感 山路 和彦

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
38巻11号 (2016年11月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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