皮膚病診療 38巻10号 (2016年10月)

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<症例のポイント>自己免疫性水疱症に食道病変を合併することがあるが、食道病変が先行する場合は診断が困難となる。本例は計3回の内視鏡検査にて「食道癌の疑い」とされており、皮膚症状の出現後に診断が確定した。皮膚では表皮下水疱の病理組織像であったが、食道では上皮下水疱に加え棘融解も認められた。蛍光抗体直接法では表皮、食道とも表皮・上皮細胞間と基底膜部にIgGが沈着し、抗デスモグレイン(以下、Dsg)3抗体と抗BP180抗体が陽性であった。以上より、尋常性天疱瘡と水疱性類天疱瘡の合併例と診断した。

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<症例のポイント>初発時の皮疹が頭部に限局しておりBrunsting-Perry型類天疱瘡を思わせたが、体幹および四肢に水疱が拡大し、免疫学的検査にて水疱性類天疱瘡と診断した1例を経験した。BP180のNC16a領域およびBP230に対するELISA法(IgG)ではいずれも陽性であった。また、BP180のC末端およびlinear IgA bullous dermatosis antigen 1(以下、LAD-1)に対する免疫ブロット法においても陽性反応を認め、非典型的な皮疹分布を呈した要因であると考えた。

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<症例のポイント>ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染症が判明し、抗HIV療法開始10年後に水疱性類天疱瘡を発症した。抗HIV療法によりCD4陽性Tリンパ球(以下、CD4T細胞)数を維持する必要がある一方で、水疱症を生じる自己反応性CD4T細胞を抑制するために、免疫抑制をかけざるを得ず、相反する両者のバランスをとることに難渋している。今後、抗HIV療法による寿命の延長によりHIV合併自己免疫疾患は増加してくると思われる。

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<症例のポイント>52歳、女性。初診時、脱毛、耳介や鼻部を含む全身の角化性紅斑、赤い平らな舌、掌蹠の角化、爪甲肥厚、爪囲の腫脹と紅斑がみられ、皮膚症状からBazex症候群を疑ったが、内臓悪性腫瘍は見い出せなかった。経過中に緊満性水疱が多発し、水疱性類天疱瘡を併発した。治療はエトレチナートとプレドニゾロン(PSL)の内服併用療法が奏効し、爪甲、毛髪を含む皮膚症状は軽快した。Bazex症候群の特徴的な皮膚症状をみたとき、まず内臓悪性腫瘍の検索を行うべきであるが、水疱が出現したときは、血中抗体価の測定を行って水疱性類天疱瘡(BP)の併発にも注意して経過をみることが肝要である。

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<症例のポイント>肺癌と診断された1年後、抗BP180型粘膜類天疱瘡(mucous membrane pemphigoid、以下MMP)を発症した1例を経験した。抗デスモグレイン(Dsg)1抗体、抗Dsg3抗体とも陽性であったが、蛍光抗体直接法で基底膜のIgG沈着、免疫ブロット法でBP180C末端部位のリコンビナント蛋白に対するIgG抗体を確認したため、抗BP180型MMPと診断した。口腔内粘膜疹がみられ、肺癌の合併もあることから、腫瘍随伴天疱瘡(paraneoplastic pemphigus、以下PNP)との鑑別を要した。プレドニゾロン(PSL)内服(0.5mg/kg/日)でMMPの症状は改善したが、PSL減量中に、肺癌の悪化により死亡した。

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<症例のポイント>粘膜類天疱瘡(mucous membrane pemphigoid、以下、MMP)は、主に口腔・眼粘膜に水疱、びらん性病変を生じ、皮膚病変は認めないか、ごくわずかである。自験例は歯肉びらんが先行し、体幹・四肢の小水疱と爪病変を認めた。MMPには抗BP180型粘膜類天疱瘡と抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡がある。自験例ではBP180のNC16a部位に反応するIgG/IgA抗体に加え、190kDaペリプラキンに反応するIgG/IgA抗体を認めた。

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<症例のポイント>メトホルミン・テネリグリプチン投与後に出現し、休薬により速やかに改善した類天疱瘡型薬疹の1例を経験した。DPP-4阻害薬の承認以来、その投与中におこる、類天疱瘡型を含めた薬疹の報告が散見されるようになった。比較的長期間の内服歴がある報告が多い。DPP-4阻害薬の使用頻度の増加とともに薬疹の症例が増加することも懸念されるため、注意が必要である。

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<症例のポイント>急性の経過で発症し、プレドニゾロン(PSL)内服、ステロイドパルス療法、アザチオプリン(azathioprine;AZP)内服によっても難治であった水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid;BP)の症例に対して二重濾過膜血漿交換療法(double filtration plasmapheresis;DFPP)が奏効した1例を経験した。自験例では入院後26日目という早期よりDFPPを開始し、4回目施行後より水疱の新生は停止し、抗体価は低下傾向となり、9回目の施行で終了となった。難治性BPにおいては血漿交換療法の早期導入が考慮される。血漿交換療法の種類の選択、回数の設定、他の治療との併用に関しては個々の症例に応じた検討が必要である。

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<症例のポイント>結節性類天疱瘡はYungらによって提唱された水疱性類天疱瘡の一亜型である。特徴としては結節性痒疹の像を呈するが、経過中に緊満性水疱が出現、高度のそう痒感を伴う。痒疹様病変が先行するため、結節性痒疹として加療されている例も多くあると考えられる。今回われわれは、C型肝炎、腎障害を有する患者に生じ、他院を含めて約2年間結節性痒疹として加療されていた症例を経験したので報告する。

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<症例のポイント>後天性穿孔性皮膚症の臨床、病理組織学的所見を呈した結節型類天疱瘡の1例を報告した。痒疹結節として初発し、のちに無疹部に水疱形成を呈した。病理組織学的所見・蛍光抗体法・抗BP180抗体陽性にて結節型類天疱瘡の診断に至った。既往に2型糖尿病があり、DPP-4阻害薬の内服歴がある。

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<症例のポイント>アモキシシリン、アセトアミノフェン内服により症状が増悪した線状IgA水疱症の1例を報告した。薬剤誘発性のIgA水疱症の報告はいくつかあるが、増悪例の報告はなく、本症例の特徴と思われた。

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<症例のポイント>線状IgA/IgG水疱症の1例を経験した。1M食塩水剥離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法では、IgGは表皮側と真皮側に反応し、IgAは表皮側に反応した。濃縮HaCaT細胞培養上清を用いた免疫ブロット法で、IgG、IgAともに120kDa LAD-1に反応した。入院後プレドニゾロン、DDS投与、二重濾過血漿交換療法(DFPP)により、皮疹は消褪した。

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<症例のポイント>初回妊娠の後期に発症した妊娠性疱疹を報告した。小型の浮腫性・滲出性紅斑や紅色丘疹が主体で経過を通じて緊満性水疱形成は認められなかった。抗BP180NC16a domain抗体価(以下、抗BP180抗体価)が上昇しており、生検組織の蛍光抗体直接法所見と併せ診断した。副腎皮質ホルモン剤の全身投与を要さず、同薬の外用ならびに抗ヒスタミン剤内服のみで寛解に至った。児の子宮内発育は正常で同症発症はみられなかった。抗BP180抗体価は出産3ヵ月後には陰性化した。また第2子妊娠・出産に際して再発はみられなかった。

英文抄録

editorial

不条理な論理 向井 秀樹

総説

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表皮下水疱症は自己免疫機序による自己免疫性水疱症,あるいは遺伝子異常による先天性表皮水疱症により生じる.今回の特集では,自己免疫性水疱症に属する表皮下水疱症を扱う.自己免疫性水疱症に属する表皮下水疱症としては, 表皮⊖基底膜接着装置であるヘミデスモソームの構成分子に対する自己抗体により生じる水疱性類天疱瘡がプロトタイプである.そのほかにヘミデスモソーム構成分子以外の基底膜部構成分子や,タンパク分解酵素によるそれらの分解産物などに対する自己抗体により生じる亜型もいくつかみられる.(「はじめに」より)

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水疱性類天疱瘡(BP)は,高齢者に好発し,全身に瘙痒の強い紅斑と水疱を生じる自己免疫性水疱症で,表皮真皮接着構造であるヘミデスモソームの構成分子の1つである17型コラーゲン(別名BP180)やBP230に対する自己抗体によって発症する.現在本邦で,一般的に抗BP180抗体として測定されているのは,17型コラーゲンのNC16aドメインに結合する自己抗体である.まれに血清中抗BP180抗体(ELISA法,CLEIA法)陰性のBPを経験するが,蛍光抗体直接法は基底膜にIgGもしくはC3が陽性で1M食塩水剝離皮膚で表皮側に陽性になる症例はBPと診断する.このような症例では,しばしば17型コラーゲンの細胞外領域に結合する自己抗体が検出されるので,ウエスタンブロッティングで確定診断していたが,最近17型コラーゲンの細胞外ドメインに対する自己抗体を検出するELISA法が北海道大学皮膚科で開発された.最近糖尿病治療薬のジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬(グリプチン製剤)内服中に発症したBPの報告が相次いでいる.2011年にPasmatziらが第1例目を報告して以降,2015年までに国内外で20例の文献報告があり,これらの報告に触発され国内皮膚科関連学会でも報告例が急増している.(「はじめに」より)

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水自己免疫性水疱症の発症機序は,1)自己抗原,2)リンパ球,3)水疱形成,の3段階のそれぞれにおいて,病態の解明に向けた研究が続けられてきた.自己抗原の決定によって,記載皮膚科学に基づく水疱症の分類が見事に裏づけられただけではなく,最近では標的自己抗原の探索によってほとんどの疾患が機能的に分類され,より適切な治療提案がなされるまでになった.自己反応性リンパ球の活性化なしには自己抗体の産生はおこらない.天疱瘡の動物モデルでは,発症の十分条件となるCD4陽性Tヘルパーリンパ球クローンの樹立に成功している.しかしながら,なぜ,特定の個人においてのみ,表皮の特定の抗原に対する免疫寛容だけが選択的に破綻するのか,それがどの段階における破綻なのか,なぜ他の免疫応答ではなく抗体産生に向かうのかは,いまだに明らかではない.水疱形成の機序について,永年,一連の動物モデルでの実験結果を根拠に,天疱瘡では補体や顆粒球に依存しない,類天疱瘡では補体や顆粒球に依存する,と理解されてきた.一方で,類天疱瘡でも補体に依存しない水疱形成機序が働く可能性が,培養細胞や実験動物)を用いた実験結果によって示唆されてきた.しかしながら,ヒトでは,表皮基底膜領域の補体の活性化は臨床的にも類天疱瘡の診断の大きな根拠であり,補体の役割を疑う根拠となる情報を欠いていた.われわれは,基底膜領域での補体の活性化を伴わない水疱性類天疱瘡の2例を経験した.その2例のいずれの自己抗体も,補体を活性化する能力の乏しいサブクラスであるIgG4が優位であり,また特徴的な臨床像を示した.本稿では,水疱性類天疱瘡における補体の役割について,天疱瘡との比較において皮膚科学の発展の歴史をたどるとともに,補体の関与の度合いが水疱性天疱瘡の臨床的多様性を生み出す可能性について考えを述べたい.(「はじめに」より)

蝶の博物詩

生態16 西山 茂夫

私の歩んだ道

私の歩んだ道 長谷 哲男

学会ハイライト

皮心伝心

皮疹伝診 林 伸和

診察室の四季

秋の夕焼け 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第136回 浅井 俊弥
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本欄は,浅井皮膚科クリニックのホームページに連載されている「皮膚科のトリビア」を紹介させていただくものです.学会・研究会などで見聞きしたことをその都度まとめ, 連載されています

水痘ワクチンと帯状疱疹 石川 博康

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
38巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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