皮膚病診療 38巻1号 (2016年1月)

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<症例のポイント>蜂窩織炎の治療過程で化膿性腱鞘炎が判明した症例を経験した。穿刺や切開時などに米粒体を認めた際は腱滑膜における炎症を考えるべきである。非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎は自験例のように炎症所見の乏しい皮下膿瘍として発症することがある。

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<症例のポイント>基礎疾患のない高齢女性の左下腿に生じたリンパ管型Mycobacterium chelonae(以下、M.chelonae)皮膚感染症の症例を経験した。クラリスロマイシン、レボフロキサシンの併用投与が有効であった。肝機能障害のために4ヵ月で治療を中止したが、再燃は認めなかった。

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<症例のポイント>ノカルジア属は、主として土壌中に存在する好気性放線菌の一種であり、脳、肺などとともに皮膚にも病変を作る。今回われわれは、臀部に生じたNocardia thailandicaによると考えられる原発性皮膚ノカルジア症(菌腫型)の1例を経験した。皮膚ノカルジア症は、齲歯や外傷、手術を誘因として発症し、部位は頭頸部が60~70%ともっとも多いが、自験例は誘因なく臀部に発症した。自験例は皮下腫瘤を呈し、粉瘤を疑い全摘出し、病理組織学的所見よりノカルジア症と診断した。日本での原発性皮膚ノカルジア症の起因菌としては、N.asteroides、N.brasiliensis、N.otiotidiscaviarumが多く、Nocardia thailandicaによる報告は角膜炎があるのみで極めてまれであった。

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<症例のポイント>初期症状として好酸球増多を伴わない四肢の腫脹を呈し、発症から前施設他科での精査を経て、当科での診断に至るまでに約4ヵ月を要した好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis、以下、EF)の1例を経験した。EFで高値となることが多いガンマグロブリン値、赤沈値が正常であったが、MRI検査で筋膜炎の所見が得られたことが診断に至るうえで有用であった。EFを疑う臨床像をみた際は、早期にMRI検査を行うことが勧められ、診断確定と早期治療開始につながると考えた。PSL治療が奏効し、アルドラーゼ値の正常化とMRI検査上の筋膜炎所見の消失が確認できた。

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<症例のポイント>壊死性筋膜炎は早期診断が極めて重要な疾患であるが、症状の強い蜂窩織炎との鑑別が困難な場合がある。自験例の2例はともにA群β溶連菌による壊死性筋膜炎であったが、入院後の速やかなデブリードマン、ICUによる全身管理によりいずれも患肢を温存して救命しえた。蜂窩織炎との鑑別にはLRINEC scoreが有用とされており、自験例でも診断の一助となった。

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<症例のポイント>G群溶連菌は、高齢者や免疫低下をきたす基礎疾患を有する患者を中心に、重篤な感染症の報告が増加している。自験例では、糖尿病があり、原因不明の手指関節炎に対し長期にわたりプレドニゾロン(PSL)、メトトレキサート(MTX)内服で加療され、免疫抑制状態にあったことが発症の誘因となった可能性がある。A群溶連菌と比べG群溶連菌による壊死性筋膜炎の進行は緩徐といわれているが、症状が進行すると予後不良である。

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<症例のポイント>自験例は、腹膜炎の診断にて抗菌薬加療中に両下腿に多発性皮下結節を呈した。皮膚生検により皮下結節性脂肪壊死症の確定診断を得た。転院直後に、膵炎の増悪にて死亡した。

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<症例のポイント>nodular-cystic fat necrosis(NCFN)はmobile encapsulated lipoma(MEL)やencapsulated fat necrosis(EFN)を含む1つの疾患群と解される傾向にあるが、自験例は病理組織学的に嚢腫構造の内部に脂肪細胞の変性壊死がみられ、NCFNとして典型的と考えられた。問診上虫刺の既往があったが、発症誘因は明らかではなかった。自験例は発症から30年を経過しており、病理組織学的に異栄養性石灰化が顕著であり、NCFNの晩期病変と考えられた。

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<症例のポイント>今回われわれは、経口血糖降下薬の関与が疑われ、蜂窩織炎を契機に発症した横紋筋融解症の1例を経験したので報告する。横紋筋融解症は、外傷、薬剤を初めとして、感染症、電解質異常、代謝性疾患など、さまざまな原因により発症する。全身の脱力感、筋痛を主症状とする。横紋筋が壊死・融解するため、ミオグロビンによる急性腎不全を合併することがあり、全身管理が必要となる。

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<症例のポイント>腹腔鏡下胆嚢摘出術後の落下胆石の経皮排泄のまれな1例を経験した。軟部腫瘍、冷膿瘍、放線菌症などと鑑別を要した。腹腔鏡下胆嚢摘出術での落下胆石は7~30%といわれている。その合併症としては腹腔内膿瘍が最多であり、とくにポート部腹壁と肝臓周囲後腹膜に多く認められる。平均5ヵ月での発症例が多いが、20年たってから発症した例も認められ、時間的、解剖学的に乖離があるため、胆石による膿瘍を疑って診察をしなければ診断はむずかしい。自験例では腹腔鏡下胆嚢摘出術は4年前に施行されており、発症部位がポート挿入部でもなく右側腹部であったため、当初その関連性については考慮されていなかった。胸腔内膿瘍は内科にて冷膿瘍と診断されていたため、胆石が経皮排泄された隙に初めて落下胆石による腹腔胸腔内膿瘍の診断に至った。皮膚科医も、腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した患者の皮下腫瘤を診察した際は、落下胆石による膿瘍を念頭におくべきであると考えた。

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<症例のポイント>深部静脈血栓症を合併した不全型Behcet病を経験した。自験例ではD-dimerの上昇はみられなかったが、臨床所見から深部静脈血栓症を疑い、造影CT検査を施行して発見に至った。眼病変を伴わない点、男性である点は血管Behcet病の特徴として合致した。深部静脈血栓症の治療に抗凝固療法を施行したが、現在血管Behcet病の深部静脈血栓症に対する抗凝固療法の是非が問題となっており、今後症例の蓄積とともに検討が必要である。

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<症例のポイント>額部に発生したintradermal nodular fasciitisの1例を報告した。病理組織像は通常のnodular fasciitisに典型的な所見がみられた。真皮内に発生する例では頭頸部での発生が比較的多く、頭頸部に急速に増大する真皮内の線維性腫瘍、肉腫の鑑別診断として本症も考慮する必要がある。

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<症例のポイント>腱鞘巨細胞腫は滑膜由来の良性腫瘍とされているが、その他の発症機序として外傷による肉芽腫性炎症や脂質代謝異常などがあげられる。整形外科領域では手の皮下腫瘤としてはまれな疾患ではないが、皮膚科でも診察することがあり、血管平滑筋腫や神経鞘腫など、痛みを伴う疾患とともに、四肢末梢の圧痛を伴う腫瘍の鑑別として念頭におく必要がある。

英文抄録

editorial

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化好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis)は,四肢を中心とした皮膚硬化と,さらにはそれに伴う関節拘縮を急性あるいは亜急性にきたす原因不明の疾患である.本症はこれまでさまざまな病名・呼称で報告されてきた.まず,1974年にShulmanが末梢血好酸球増多,四肢の皮膚硬化と関節の屈曲拘縮を示した筋膜炎の2例に対し,diffuse fasciitis with eosinophiliaという疾患名を提唱した.その直後,Rodnanらも同様の皮膚硬化を有する6症例を報告したが,末梢血の好酸球増多に加えて筋膜にも好酸球浸潤を伴っていたことに注目し,eosinophilic fasciitisという病名をはじめて用いた.そして好酸球の存在が特徴の疾患と考えられたため今日までeosinophilic fasciitisという病名が一般的に用いられているが,その後さらに症例が蓄積され,末梢血の好酸球数増多や病理組織像における筋膜の好酸球浸潤が目立たない症例も多いことがわかってきたため,diffuse fasciitis with or without eosinophilia,あるいはShulman症候群という疾患名も使用されることがある.加えて,疾患概念についてもいくつかの意見があり,一般的には独立した疾患概念と考えられているが,限局性強皮症の一亜型とするような考え方も存在する.以上のように,いまだcontroversialなところもある本疾患に関するさまざまな知見について,本稿ではできる限り最新の論文を含めてまとめてみた.(「はじめに」より)

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壊死性筋膜炎の用語は,1952年Wilsonによって提唱され広く使用されるようになった.しかし,各施設により壊死性筋膜炎という用語の使われ方は微妙に異なっているのが実情である.狭義には,筋膜上の疎な結合組織である浅筋膜と呼ばれる層に沿って急速に感染が拡大する病態を指す.また広義には,壊死を伴うさまざまな皮膚・軟部組織感染症を総称して使用される.世界的に広義の意味で使用される場合が多いが,最近では,壊死性軟部組織感染症という用語を用い,壊死性筋膜炎はそのなかの一部とする立場をとる施設も増えてきている.実際に,狭義の壊死性筋膜炎とそれ以外の壊死性軟部組織感染症とは,合併症や起因菌,進行速度や致死率なども異なるため,筆者個人は,壊死性筋膜炎の用語を狭義に使用する立場に賛同している.病態や適切な診断・治療法を検討するためには,用語の定義は重要であり,これは今後の世界的にみた課題であろう.ところで,壊死性筋膜炎の致死率を低下させるために重要なのは,早期診断・早期治療とされている.早期治療を行うためには,まずは早期診断である.ところが早期診断は必ずしも容易でない.早期診断の困難さについて,Wongらはretrospectiveにみた壊死性筋膜炎89例のうち,13例(14.6%)のみが入院時診断が壊死性筋膜炎であったと報告している.また,Haywoodらは,A群溶連菌による壊死性筋膜炎20例のうち,7例は入院時診断が異なり,入院時診断が壊死性筋膜炎であったのは13例(65%)と報告している4).本邦で壊死性筋膜炎の治療を担当する科は,救急科,外科,整形外科,形成外科,皮膚科など,各施設で異なっているが,診断に関して最初に関わるのは皮膚科である場合も多く,皮膚科医としては診断能力を磨いておく必要がある.病態が完成した状態の診断はそれほど困難ではないが,早期例をどれだけ見抜くことができるかが肝である.本稿では実際の症例をみながら,解説を試みたい.(「はじめに」より)

蝶の博物詩

蝶と花1 訪花,吸蜜 西山 茂夫

私の歩んだ道

回想─疾走の日々─ 勝岡 憲生
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皮膚科勤務医の道を歩み始めて退職するまで36年,その間海外留学,国内出向はあったものの,私はその大部分の年月を大学医学部および附属病院に勤務した.学生時代を含めると,これまでの人生の3分の2近くを相模原に建つ北里大学に在籍したことになる.そして今,大学を退職して3年が経過しようとしている.いまだ「私の歩んだ道」を総括できていないのは気にかかるが,私の「道々の思い出」の一端を綴ってみることにした.

学会ハイライト

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平成27年10月17日(土),18日(日),長崎市の長崎ブリックホール・長崎新聞文化ホールにて第67回日本皮膚科学会西部支部学術大会を開催させていただきました.この2日間は晴天に恵まれ,800人を超す参加者が全国からおいでいただき無事盛会裡に終了できました.参加いただいた会員をはじめ各講演,シンポジウム,ワークショップの講師・座長の先生方,日本皮膚科学会西部支部の運営委員の先生方,また運営事務局の皆様,長崎大学および同門会の先生方のご尽力に,会長として厚くお礼申しあげます.

診察室の四季

初詣 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第127回 浅井 俊弥
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本欄は,浅井皮膚科クリニックのホームページに連載されている「皮膚科のトリビア」を紹介させていただくものです.学会・研究会などで見聞きしたことをその都度まとめ, 連載されています

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
38巻1号 (2016年1月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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