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壊死性筋膜炎の用語は,1952年Wilsonによって提唱され広く使用されるようになった.しかし,各施設により壊死性筋膜炎という用語の使われ方は微妙に異なっているのが実情である.狭義には,筋膜上の疎な結合組織である浅筋膜と呼ばれる層に沿って急速に感染が拡大する病態を指す.また広義には,壊死を伴うさまざまな皮膚・軟部組織感染症を総称して使用される.世界的に広義の意味で使用される場合が多いが,最近では,壊死性軟部組織感染症という用語を用い,壊死性筋膜炎はそのなかの一部とする立場をとる施設も増えてきている.実際に,狭義の壊死性筋膜炎とそれ以外の壊死性軟部組織感染症とは,合併症や起因菌,進行速度や致死率なども異なるため,筆者個人は,壊死性筋膜炎の用語を狭義に使用する立場に賛同している.病態や適切な診断・治療法を検討するためには,用語の定義は重要であり,これは今後の世界的にみた課題であろう.ところで,壊死性筋膜炎の致死率を低下させるために重要なのは,早期診断・早期治療とされている.早期治療を行うためには,まずは早期診断である.ところが早期診断は必ずしも容易でない.早期診断の困難さについて,Wongらはretrospectiveにみた壊死性筋膜炎89例のうち,13例(14.6%)のみが入院時診断が壊死性筋膜炎であったと報告している.また,Haywoodらは,A群溶連菌による壊死性筋膜炎20例のうち,7例は入院時診断が異なり,入院時診断が壊死性筋膜炎であったのは13例(65%)と報告している4).本邦で壊死性筋膜炎の治療を担当する科は,救急科,外科,整形外科,形成外科,皮膚科など,各施設で異なっているが,診断に関して最初に関わるのは皮膚科である場合も多く,皮膚科医としては診断能力を磨いておく必要がある.病態が完成した状態の診断はそれほど困難ではないが,早期例をどれだけ見抜くことができるかが肝である.本稿では実際の症例をみながら,解説を試みたい.(「はじめに」より)
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