臨牀透析 31巻12号 (2015年11月)

透析患者の疲労感

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疲労症状は,さまざまな疾病の予測因子と捉えられ,患者の主訴としてももっとも多いものの一つである.現代の日本では,半年以上続く慢性的な疲労を自覚している人の割合が高く,さらに慢性疲労を感じている人の約半数が日常生活において何らかの支障をきたしている.疾病予防の意味で,疲労の早期発見・早期予防・早期対処は医療費削減の観点からも重要であり,疲労を評価する方法の確立が急がれる.われわれは質問票を用いて疲労の定量化を行っているが,今後は疾患特異的な疲労症状の評価も必要と考えられる.近年,疲労によって変化する画像検査での変化,血液・唾液を検体とするバイオマーカーの測定など低侵襲な方法を利用して疲労を測定するさまざまな試みがなされており,今後さまざまな展開が期待できる.

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疲労は広く認められる生命現象であるが,その分子メカニズムは明らかではない.しかし,放置することで,さまざまな疾患の危険因子となりうる.疲労を評価する方法としては,疲労感を評価する質問紙法,生理学的,生化学的手法による方法がある.しかし,疲労の定量方法は完全には確立されておらず,実際に疲労を評価する場合には,それらのなかから,被験者の病態を表す尺度を適切に選択する必要がある.疲労には病的疲労と非病的疲労が存在し,それぞれ原因が異なる.これらを鑑別することは治療的介入が必要か判断するうえで重要である.しかし,現状では疲労への対処・治療は限定的であるため,今後,科学的に実証された抗疲労法の開発が望まれる.

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疲労は慢性透析患者にもっともよく認められる症状の一つで,生活の質低下の大きな要因である.その要因として精神的要因,睡眠障害,貧血,低栄養ならびに炎症性サイトカイン,さらには教育レベル,雇用・婚姻状態など社会的要因との関連も示唆されている.血液透析患者においては透析方法,浸透圧不均衡,拡散,血圧変化などとも関連し,その要因は多岐にわたる.近年,透析患者の高度疲労が生命予後と関連することが報告され,腎臓リハビリテーションなどによる疲労改善効果の検証が進む一方で,慢性腎臓病・透析患者における疲労は実臨床において必ずしも正しく認識されておらず,その評価・検討は十分になされていないのが現状である.

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疲労の出現は,MIA症候群の頻度が高い透析患者では多く認められる自覚症状の一つであり,その頻度は60~97%にのぼる.しかし,日常臨床で疲労を客観的に把握するよい指標が確立されていなかったため,われわれは慢性疲労症候群の診断基準を基に,透析患者の疲労を質問票により定量化し評価を試みた.この方法により得られた"疲労スコア"を基に,日本人血液透析患者の疲労の検討,透析患者での疲労と心血管疾患リスク,生命予後,エリスロポエチン製剤の貧血改善不応性との関連について報告する.

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透析患者にみられる疲労の原因は多彩である.尿毒素の除去が疲労感の改善をもたらすかどうかはこれまでの報告では議論されてきた.また尿毒素,尿毒素の除去による細胞内外の浸透圧差の形成,尿毒症により引き起こされる貧血,カルニチン代謝の異常といったことも透析患者に疲労感をもたらす可能性が示唆されてきた.透析液にはアルカリ化剤として酢酸,乳酸や重炭酸,また種々の電解質やグルコースが含まれており,逆に含まれてはならない物質としてエンドトキシンが挙げられる.酢酸不耐症や,乳酸自体の蓄積も疲労原因とされている.また高カルシウム血症,高マグネシウム血症といった電解質異常や,低血糖や高血糖も疲労感の原因となりうる.エンドトキシンにより惹起されるサイトカインも疲労感と関係があるとする報告がある.

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疲労(fatigue)は透析患者にもっとも高頻度に認められる症状である.しかし,個人差が大きく,客観的な良い指標もない.疲労が重い人の予後は不良である,あるいは心血管事故が起こりやすいという報告が増えてきた.運動療法を含めて,医療者が患者QOLをよりよくするために取り組んでいかなければならない大きな課題である.

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フレイルの表現型の一つである疲労感は,透析患者の身体活動度の低下やエネルギー・たんぱく質の摂取不足と関連する.透析患者における身体活動度は座りがちな生活のレベルまで低下しており,とくに透析日は非透析日よりも活動度が低下しやすい.血液透析患者において,定期的な運動を行うことにより,疲労感は回復しうる.さらに,低栄養のある透析患者に経腸栄養剤を投与すると,身体健康観などのQOLが改善する.地域居住の高齢日本人女性において,定期的な運動と栄養介入を組み合わせることで,疲労感を含むフレイル症状全般が回復すると報告されている.しかし,透析患者の疲労感に対する併用療法の効果は明らかでなく,さらなる検討が必要である.

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疲労回復には質の良い十分な睡眠時間が必要である.透析患者は,睡眠時無呼吸症候群,不眠症,レストレスレッグス症候群,周期性四肢運動障害などの睡眠障害の合併が多く,そのうえ重症例も重複例も多い.不眠症状に安易な睡眠導入薬の投与をしているだけでは背景に隠れた睡眠時無呼吸症候群のような疾患を見落とすだけでなく悪化させる懸念さえある.睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害は患者の自覚が少ないため終夜睡眠ポリグラフ検査を行う以外に見つける方法はない.それらの適正な診断・治療が透析患者の疲労回復に寄与し,予後と透析生活をより良いものにできる.

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透析患者の疲労感に関係するもっとも重要な因子の一つは抑うつ症状である.疲労感はうつ病を発見する手がかりにもなる.透析医療者が透析患者のうつ病発見と診断,初期治療などの方法に慣れていることは重要である.この方法を具体的に述べる.

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透析患者において疲労感の愁訴率は非常に高く,とくに血液透析治療後の疲労感は特徴的である.健康関連QOLは患者自身が主観的な健康状態を報告する患者立脚型アウトカムの一つで,透析患者の重要な予後予測因子であることが近年認識されてきている.血液透析治療後の疲労感からの回復に時間がかかるほど健康関連QOLは低下しており,さらには生命予後の悪化にも関連している.

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新規高リン血症治療剤であるリオナ錠250mg(リオナ錠)の製剤特性を明らかにするため、リオナ錠の有効成分であるクエン酸第二鉄水和物(リオナ錠の原薬)の特性、リオナ錠の各種pH下での溶出挙動、リオナ錠と他の高リン血症治療剤(炭酸カルシウム製剤、炭酸ランタン製剤)および乾燥水酸化アルミニウムゲルを有効成分とした製剤の各有効成分の溶解度を検討した。リオナ錠は食品添加物のクエン酸第二鉄[クエン酸鉄(食添)]より血清リン濃度低下効果が高いと考えられ、リオナ製剤の原薬はクエン酸鉄(食添)と比べて比表面積が極めて大きく、より高い溶解性を示した。また、リオナ錠はpHに依存しない速やかな溶出挙動を有することが示された。胃液を模した日局1液(pH 1.2)に対する溶解度は炭酸カルシウム製剤や炭酸ランタン製剤と変わりなかったが、水に対する溶解度は多剤と比べて極めて高く、pH非依存的であった。以上より、リオナ錠の製剤特性は、高リン血症治療剤として、咀嚼機能低下や胃酸分泌抑制剤の併用のある慢性腎疾患患者に対しても好ましいものと考えられた。

基本情報

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臨牀透析
31巻12号 (2015年11月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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