呼吸器ジャーナル 68巻1号 (2020年2月発行)

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特集　呼吸器疾患の鑑別診断—「基本画像パターン」，「病態」，「経過」

序文飛野　和則 68巻1号 , 2020年2月 , pp.4-5

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　呼吸器疾患の診療において，画像検査は一つの大きな柱である．モダリティの発展と普及により，今や画像診断の知識は呼吸器内科医にとって必要不可欠なものとなっている．なかでも，初学者にとってまず必要となるのは胸部単純X線写真とCTの基礎知識だが，系統だって学ぶ機会は必ずしも多くはない．学生や若手医師への胸部画像検査に関する教育の質と量は地域ごと・施設ごとに大きな差があり，個人の努力に任されている場合も多く見受けられる．結果として読影手順や使用する用語が異なることとなり，コミュニケーションに齟齬が生まれディスカッションが活発にならなくなってしまうように感じている．

Ⅰ．総論

読影に必要な用語について梁川　雅弘 , 秦　明典 , 富山　憲幸 68巻1号 , 2020年2月 , pp.6-12

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Point

・Fleischner Societyの用語集第3版を参考に，読影に必要な解剖用語，所見，サインを中心に解説した．

・各専門用語を理解し，読影時に共通言語として使用すれば，所見や診断についても，誤解なく伝えることができ理解も深まる．

胸部X線写真読影に必要な解剖学的知識藤本　公則 68巻1号 , 2020年2月 , pp.14-32

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Point

・胸壁（骨と軟部組織），肺・胸膜・横隔膜，縦隔構造物のX線解剖について解説した．

・実際に胸部X線写真を参照し，X線解剖を確認することが大切である．

・縦隔の複雑な構造を胸部X線写真で立体的に把握するために，肺・縦隔境界面および接合線の深い理解が必要である．

胸部X線写真の読影手順とポイント藤本　公則 , 近末　智雅 , 角　明子 68巻1号 , 2020年2月 , pp.34-43

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Point

・胸部X線写真読影の初学者は，X線解剖を確認しつつ全体像を把握することが大切である．

・ある程度経験を積んでからは，適確に早く見落としがないように読影する手順を考える必要がある．

・X線像の特性を知り，過去画像との比較，CT画像との比較を行い，数多く経験を積むことが肝要である．

胸部CTに必要な解剖学的知識上甲　剛 68巻1号 , 2020年2月 , pp.44-46

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Point

・肺胞隔壁の幅は10〜30μm程で高分解能CTの空間分解能0.3mm（300μm）以下のため肺胞自体が直接描出されることはない．

・二次小葉は大きさが1〜2cmの構造で小葉の中心には細気管支と細動脈が位置する．慣習的に，小葉中心部は前述の細葉の中心部とされている．

・気管支肺動脈は，自身が支配する二次小葉では小葉中心部に位置するものの，経路にある他の二次小葉からみるとその辺縁を走行することになる．

胸部CTの読影手順とコツ上甲　剛 68巻1号 , 2020年2月 , pp.48-52

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Point

・肺疾患のCT読影に当たって，まず分析するのは頭尾方向の分布である．

・病変の分布を区域性か非区域性かに分けることも重要である．

・微視的な分布の把握に際しては二次小葉の構造と病変との関係の解析が重要である．

疾患経過について喜舎場　朝雄 68巻1号 , 2020年2月 , pp.54-58

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Point

・呼吸器疾患において臨床経過に応じて鑑別疾患を考えることは重要である．

・急性の疾患は診断と治療を並行し，早期の介入が救命につながることが多い．

・慢性の疾患は考えられる疾患を，疫学も駆使して着実なステップで診断することが肝要である．

Ⅱ．各論

線状・網状影へのアプローチ江頭　玲子 68巻1号 , 2020年2月 , pp.60-67

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Point

・線状・網状影を見た場合，線維化が主体なのか，浮腫/肺胞腔内水分増多が主体なのか，細胞浸潤が強いのか，という問いを持つことが重要である．

・線維化病変が主体と考えた場合の鑑別疾患はUIPパターン，NSIPパターンを呈する慢性線維化性間質性肺炎が主体となる．

・局所で生じている病態が類似していれば，疾患名によらず類似した画像所見を呈するため，組織学的背景や病態を推定することが鑑別を進めるヒントとなる．

粒状影宇佐川　佑子 , 小宮　幸作 68巻1号 , 2020年2月 , pp.68-77

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Point

・粒状影とは主に2〜5mm以下の小さな病変を指す．

・粒状影を来す疾患は多数あるが，肺の小葉構造における分布やその性状から病態を推測することができる．

・粒状影の定義，分布のパターンと性状，そしてそこから鑑別される主な疾患について概説する．

結節影・腫瘤影（すりガラス状結節を含む）本多　修 , 谷川　昇 68巻1号 , 2020年2月 , pp.78-88

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Point

・結節・腫瘤の大きさや数，位置，辺縁性状，内部性状，周囲への影響を評価する．

・肺野条件の評価だけでなく，縦隔条件での内部濃度や石灰化，脂肪，造影効果も重要である．

すりガラス状陰影一門　和哉 68巻1号 , 2020年2月 , pp.90-96

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Point

・すりガラス状陰影は，気腔内の含気の部分的な減少を反映し，気腔内病変でも，間質病変でも起こりうるため，すりガラス状陰影を間質影と呼ぶのは適切ではない．

・すりガラス状陰影は胸部X線所見，CT所見でともに，既存の血管影を不鮮明化するような陰影と定義されるが，浸潤影との違いは，血管影が透見できる程度の陰影を示す点である．

・胸部X線とCTでは分解能の違いがあり，すりガラス状陰影と表現される病変は必ずしも同一ではない．

・HRCT所見上，すりガラス状陰影に付随する所見が病変の成り立ちを類推することに有用である．

均等影澄川　裕充 68巻1号 , 2020年2月 , pp.98-104

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Point

・均等影は肺胞性病変に主体でみられるが，他の様々な病変でも認められる．

・均等影以外の所見を合併しているときは，そちらの所見から鑑別を進めることも時に必要である．

・均等影の鑑別点として臨床経過・分布・内部性状が挙げられる．

無気肺負門　克典 68巻1号 , 2020年2月 , pp.106-112

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Point

・無気肺は閉塞性（吸収性）と非閉塞性（受動性，圧迫性，癒着性，瘢痕性）の2つに大きく分けられる．

・閉塞性無気肺は気管支内腫瘍の検出のきっかけとなる所見として重要であり，無気肺に加えて太い気管支内の閉塞性病変や気管支外病変による気管支閉塞が観察されることが多い．

・非閉塞性無気肺はそれ自体が治療対象にはならないが．円形無気肺では肺癌，結節状無気肺では胸膜播種との鑑別が重要である．

囊胞・空洞飛野　和則 68巻1号 , 2020年2月 , pp.114-121

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Point

・囊胞・空洞を生じる病態には先天性疾患や遺伝性疾患も多く，年齢層も幅広い．

・鑑別には，壁の厚さと経過が最も重要である．

透過性亢進山城　恒雄 68巻1号 , 2020年2月 , pp.122-128

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Point

・X線写真や胸部CTでの肺野の透過性亢進は，異常な含気の亢進または肺血流の低下で生じる．

・正常なガス交換が行えない肺領域（病変）は，肺血流の低下が生じ透過性が亢進する．

・透過性亢進を疑う肺病変は，肺血流シンチグラフィと換気シンチグラフィで評価することが望ましい．

縦隔疾患鈴木　一廣 68巻1号 , 2020年2月 , pp.130-138

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Point

・縦隔区分に基づいた病変の局在把握により由来臓器・組織の推測を行うことが最初のステップである．

・縦隔には様々な偽病変や非腫瘍性病変が生じうるため，その成り立ちと画像の特徴を理解することで不必要な検査や手技を回避することができる．

・代表的な疾患の画像・臨床的特徴を理解することで鑑別診断を効率的に行うことができる．

胸膜・胸壁疾患林　秀行 68巻1号 , 2020年2月 , pp.140-148

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Point

・胸水を単純X線写真で指摘すること，CTではその性状に注意すること，胸膜の肥厚，その性状を評価することが重要である．

・アスベスト関連胸膜病変について理解し，鑑別疾患，合併する腫瘍性病変の性状，曝露から発生までの期間を把握しておくことが重要である．

・胸膜・胸壁に生じる腫瘤は多岐にわたるが，骨由来か軟部組織由来かで分けられる．慢性膿胸には悪性リンパ腫，扁平上皮癌，肉腫の合併が知られている．

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目次 68巻1号 , 2020年2月 , pp.2

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奥付 68巻1号 , 2020年2月 , pp.152

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基本情報

呼吸器ジャーナル
68巻1号
(2020年2月発行)

電子版ISSN：2432-3276 印刷版ISSN：2432-3268 医学書院

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