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喘息とCOPDは慢性気道炎症を特徴とする呼吸器疾患のcommon diseaseであり,慢性的な症状の持続や増悪などにより患者の生活の質が大きく損なわれる.本邦の喘息ガイドラインにおいて,喘息は「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義付けられている.一方,本邦のCOPDガイドラインでは,COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり,呼吸機能検査で気流閉塞を示す疾患」と定義付けられている.いずれの疾患も,発症因子や発症年齢,臨床的特徴,炎症病態,併存症の種類,治療反応性などには大きな多様性があり,診断名のみから疾患を単一のものとして捉え,一様な治療管理を行うことには限界があることが指摘されている.
近年,多様性をもった疾患をフェノタイプやエンドタイプというサブグループとして捉え,多様性を病態に即して理解し,治療管理を行うという考え方が広がりつつある.喘息とCOPDの臨床においても,フェノタイプ・エンドタイプを同定することで,患者に合わせて治療管理をより最適化し,きめ細かい医療を提供することが望まれる.喘息においては,近年,臨床に登場した分子標的治療薬やサーモプラスティなどの治療選択においては,これら治療が有効と考えられるフェノタイプ・エンドタイプを同定することが必須となっており,さらに,今後も様々な分子標的薬が登場することが予想されることから,以前にも増して病態の多様性を把握し,治療を最適化する必要性が高まってくると予想される.また,COPD治療管理においても,好酸球性炎症が存在する病態をどのように取り扱うか,フェノタイプごとにどのような治療薬の選択を行っていくべきかなど,治療の最適化への模索がなされている.
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