BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 71巻5号 (2019年5月)

特集 NPSLE

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特集の意図

神経精神症状はSLE患者に高頻度で発症するが,症状が多様で鑑別が難しい。また,SLEでは薬物による有害事象が多いため治療方針の決定も容易ではなく,膠原病内科,脳神経内科,精神科の3つの診療科の連携が重要である。本特集ではそれぞれの診療科の考え方を論じてもらい,さらに病態理解に欠かせない神経病理,稀な合併症だが忘れてはならないPMLとの関連性を取り上げ,NPSLEの診療を行ううえで欠かせない知識をまとめた。

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全身性エリテマトーデス(SLE)は,妊娠可能年齢の女性に好発し,多臓器障害をもたらす代表的な全身性自己免疫疾患である。特に,中枢神経病変は予後を規定する要因である。障害部位は中枢神経,脊髄,末梢神経と幅広く,その症状は器質的なものから精神医学的所見まで非常に多様である。米国リウマチ学会では神経精神SLE(NPSLE)として精神・神経症状を19病型に細分類した。SLEの治療に関しては,寛解導入,臓器障害阻止,QOL改善,寛解維持後の副腎皮質ステロイド中止と目標が高くなってきた。NPSLEなどの重症臓器病変があれば,副腎皮質ステロイド大量と免疫抑制薬の併用療法で開始するが,免疫調整・抑制薬,可溶性BAFFに対する抗体ベリムマブなどと選択肢が増え,治療の有効性や安全性に進歩をもたらしつつある。

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全身性エリテマトーデス(SLE)に伴って見られる神経精神症状(NPSLE)の表現型は多様である。SLEの初発症状としてNPSLEが出現し得るため,SLEと未診断の神経精神症状を呈する患者からSLEを見抜く必要がある。また,SLE患者が経過中に神経精神症状を呈した場合,SLEに起因するprimary NPSLEなのか,治療薬の副作用や他疾患によるものかを正確に判断することも治療方針決定に重要である。

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神経精神症状を伴う全身性エリテマトーデス(NPSLE)の精神障害として,急性錯乱状態,認知機能障害,精神病性障害,気分障害,不安障害が挙げられている。これらのうち,気分障害(うつ病)と軽度の認知機能障害が最も高頻度に合併する。精神症状の出現と,SLEの生物学的側面の関係性はいまだ明らかになっていない。精神症状のマネジメントとしては,SLEに対する免疫抑制療法が基本であるが,対症的に向精神薬治療や精神療法的アプローチも用いられる。

NPSLEの神経病理 髙尾 昌樹
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NPSLEの中枢神経病理所見は,現在までの報告をまとめると,小動脈などの小血管病変(内皮の増殖,線維化,血管壁の硝子化,フィブリノイド壊死,塞栓など)と,それによる循環障害が中心である。虚血性病変だけではなく,脳出血も呈する。血管炎や血管周囲の炎症性細胞の浸潤も報告されている。脊髄では,辺縁白質がびまん性に変性を生じる所見を見ることがある。

SLEとPML 雪竹 基弘
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進行性多巣性白質脳症(PML)の概説と,全身性エリテマトーデス(SLE)におけるPMLの特徴を論じた。PML診療は病態修飾療法(DMT)関連PMLに対応する時代であり,特に多発性硬化症のDMT関連PMLが注目されている。SLEにおけるPMLの発症は非常に稀ではあるが,SLEでも従来の免疫抑制剤などによる日和見感染としての薬剤関連PMLのみでなく,DMT関連PMLの可能性も考慮し診療する必要がある。

対談

異なり記念日 齋藤 陽道 , 酒井 邦嘉
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はじめに

酒井 私は言語脳科学を中心に研究していて,手話の脳研究などをとおし,言語の普遍性が音声と手話に共通することを明らかにしてきました。また,ろう者の方々とさまざまな問題を共有するようになりました。そのような中で,ご著書『異なり記念日』に出会い,陽道さんのとても感度の高い文章や写真の表現に感動して,「とにかくお会いして,お話をしてみたい」と強く思いました。先日,書評1)を書きましたが,このように対談が実現して,とてもうれしく思っています。

齋藤 そう言っていただけて大変うれしいです。ぼくは20歳までは補聴器を付けて生活していました。補聴器を外してからは手話や筆談を使ってコミュニケーションをとっています。そのような生い立ちや,写真家としての生活を送る中で感じたことをまとめたのが,この『異なり記念日』です。

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入浴にはストレス軽減の効果があることが知られている。地獄谷野猿公苑のニホンザルは温泉入浴をする唯一の野生動物だが,この行動による短・長期的影響を理解するためには,ニホンザルの社会,生活史,神経分泌機構などを踏まえた多角的なアプローチが必要である。本論では,ニホンザルの社会動態・繁殖戦略に注目しながら,霊長類における体温調節のための行動学的・生理学的戦略,体と脳における寒冷ストレスの影響を概説する。

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重症筋無力症(MG)は主にアセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体によって神経筋接合部が障害される疾患で,既存治療では長期寛解例が少なく,より有効で安全な治療の開発が求められている。われわれはAChR構造に免疫グロブリンG1のFc部位を結合させた新規融合蛋白であるAChR-Fcを開発した。この融合蛋白は病原性抗体・B細胞に対して選択的な中和活性および細胞傷害活性という2つの作用機序を有し,疾患の克服につながる可能性がある革新的治療である。

連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・2

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はじめに

 血管炎性ニューロパチーは,典型的には多発性単神経障害のパターンを呈し,電気生理学的に軸索障害型の末梢神経障害を示すことが多い1)。確定診断には血管炎の存在を組織学的に証明することが必須である。血管炎性ニューロパチーで血管炎の標的となる小動脈・細動脈は,末梢神経の終動脈であり,閉塞すると側副血行路からの血液供給が期待できないため虚血性末梢神経障害をきたす。急速に進行している末梢神経障害で血管炎性ニューロパチーが疑われる場合には,血液検査,電気生理学的検査,末梢神経生検で迅速に診断し,可能な限りすみやかに治療を開始することが求められる。診断の遅れが重篤な後遺障害に直結する点は脳梗塞と同様である。連載第2回目となる今回は,迅速かつ正確に血管炎性ニューロパチーの病理診断を行うために,キーとなる病理像を解説する。

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 学会を翌月に控えた9月6日,編集室から「10月にアトランタで開催されます『143rd Annual Meeting of the American Neurological Association(ANA 2018)』の印象記につき,ご執筆をお願い」という突然の依頼があり戸惑いましたが,学会参加の経験を思い出しながら書いてみたいと思います。

 10月21・22日(日・月)の2日間,ANA 2018に参加しました。たった2日間の学会参加ですが,福岡空港出発は10月20日(土)7時20分,福岡空港到着は10月24日(水)20時5分ということで,まるまる5日間費やすことになります。やはり日本の地方都市から米国の地方都市への参加は時間がかかりますね。ほぼ満席のエコノミー席に揺られ,帰国翌日の通常業務のしわ寄せを憂いながら,8年ぶりのANA 2018参加となりました。今年が第143回と,国際学会としてはものすごく歴史のある学会ですが,8年前,演題登録は無料だったのに,今回は演題登録だけで参加費とは別に175ドルも払わなくてはならず,やはりどこも財政的に厳しくなってきていることを実感しました。

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はじめに

 2018年11月1〜3日にオーストラリア・シドニーにて開催されたPACTRIMS 2018(The 11th Congress of the Pan-Asian Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis)に参加しました。PACTRIMSは,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)とその類縁脱髄性疾患に対するアジア太平洋地域における研究の促進を目的として,ヨーロッパ地域のECTRIMS(European CTRIMS),北米地域のACTRIMS(Americas CTRIMS),ラテンアメリカ地域のLACTRIMS(Latin America CTRIMS)に次ぎ,2007年にMS forumから発展して設立された学会です。私が所属する九州大学脳神経内科からは毎年数名が出席していますが,私自身は今回が初めての参加でした。そもそも海外で行われる国際学会への参加自体が初めてでしたので,非常に緊張しましたが,有意義な経験となりました。さらに今回,2歳の子供を同伴するという冒険をしましたので,学会報告とともに,この場をお借りして体験記を書いてみようと思います。

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 「血液培養も採らずに,やれリウマチ性多発筋痛症とか,やれ巨細胞性血管炎とか言っている臨床医のなんて多いことか。そんなことをしていると,Huggyに叱られますよ!」そんなセリフが聞こえてきそうである。「リウマチ・膠原病」と聞くと裏口から逃げ出したくなる感情を抱く医師に,笑顔をもたらしてくれる,奥深い読み応えのある書籍が現れた。

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 基礎医学そして臨床医学の急速な進歩にお尻を叩かれる形で,医学教育も進化しつつある。いわゆる領域別・臓器別統合講義と参加型臨床実習の導入がその代表格である。さすがに専門課程の1〜2年目に解剖学・組織学・病理学・生化学・生理学・薬理学などの基礎医学を,3年目以降に領域・臓器ごとの疾患について学ぶという古典的なカリキュラムでよしとする考えは過去のものになっている。しかしながら,教える側の教官も,教わる側の学生も,このような時代の変化に対応した教材探しに苦労しているのが現状でもある。

 このような問題認識に基づき「解剖」「身体診察」「医用画像」という医学の学習の鍵となる3項目を統合する教材として企画されたのが本書“Clinical Anatomy Cases”(邦題:『解剖×画像所見×身体診察マスターブック』)である。

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目次

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次号予告

あとがき 三村 將
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 女子競泳のエース,池江璃花子さんが白血病を公表して治療に専念するというニュースに日本中で衝撃が走ったのは今年2月のことであった。スポーツ選手や芸能人など,著名人がその活躍のただ中で思いがけない病気休養に入ることは稀ではない。

 ティーンアイドルとして活躍し,さらに女優,アーティストとしてスターダムを駆け上がってきたアメリカのセレーナ・ゴメスさんもその1人である。子役時代から絶大な人気を誇り,鮮烈な印象を残してきたセレーナさんは,ジャスティン・ビーバーくんとの交際や破局が報道されるなど,ゴシップやスキャンダルで私生活も賑やかだった。しかし,うつやパニック症に加え,薬物依存やアルコール依存も取り沙汰され,活動休止に至る。2016年8月のことであった。

基本情報

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BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
71巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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