The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 61巻5号 (2024年5月発行)

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巻頭言

超高齢社会におけるがんのリハビリテーション診療の可能性と力—Impairment-Driven Cancer Rehabilitation 辻　哲也 61巻5号 , 2024年5月 , pp.334

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　高齢者は発がん率が高く，がん罹患率は男女とも65歳以上の高齢者で急激に上昇します．また，高齢者は，加齢による生理学的な変化，いわゆる老年症候群を呈し，複数の併存疾患を有することで生活機能が容易に低下します．高齢がん患者は，ベースとなる機能的能力のレベルが多様な集団であり，さらには独居で社会的に孤立している場合や高齢の配偶者との2人暮らしなど社会的問題が内在している場合が多いことから，非高齢がん患者とは治療戦略を分けて考える必要があります．すなわち，高齢がん患者では，がんと診断されたときから原病のがんだけでなく，併存疾患や身体機能および精神心理的，社会的・環境的状況について高齢者機能評価（Geriatric Assessment：GA）を用いたアセスメントを行い，がん治療とともに支持・緩和医療を同時進行で実施し，集学的チームでケアに取り組みます．

　しかしながら，高齢がん患者に適切な医療を提供するためのエビデンスは乏しく，十分に実践されていないのが現状です．高齢がん患者は通常の臨床試験の対象外となることが多かったことが影響しています．私が委員を務めている日本臨床腫瘍研究グループ（JCOG）の高齢者小委員会では，高齢がん患者の機能評価ツールの提案や治療前の段階で成人と同様の標準治療を受けることのできるfitと，そうではないunfitに区分し，適切な治療選択を行うことを提案するなどして，高齢がん患者を対象とする臨床研究のサポートを行っています．がん臨床研究のアウトカムとして，一般的に全生存期間（overall survival：OS）や無病生存期間（disease-free survival：DFS）が用いられますが，近年の高齢がん患者を対象とした研究では，生活機能の評価のためにADLやIADLの評価法が用いられるようになり，潮目が変わりつつあるのを実感しています．

特集　腎臓リハビリテーションUp To Date

扉 61巻5号 , 2024年5月 , pp.335

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　わが国の慢性腎臓病（CKD）の患者頻度は成人の7人に1人，年齢が高くなるほど頻度も高くなり，透析患者も年々高齢化している．腎機能低下や高齢化に伴い，CKD患者の身体機能は低下し，サルコペニアやフレイルの合併も増加している．これらが患者のADLやQOLのみならず，腎および生命予後にも大きく影響することも明らかになり，栄養療法とともにCKD患者への運動療法が近年注目されている．本企画では，読者の腎臓リハビリテーションへの理解を深めていただけるように，腎臓リハビリテーションの最新の知見について各領域の専門家から解説していただいた．

▷ 担当：伊藤　修，企画：国内誌編集委員会

1 腎臓リハビリテーションの現状と課題上月　正博 61巻5号 , 2024年5月 , pp.336-342

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要旨　腎臓リハビリテーションは，腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ，症状を調整し，生命予後を改善し，心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として，運動療法，食事療法と水分管理，薬物療法，教育，精神・心理的サポートなどを行う，長期にわたる包括的なプログラムである．腎臓機能障害患者では，過度の安静によるディコンディショニング，社会復帰の遅延，quality of life（QOL）の低下，運動耐容能の低下と死亡率増加が明らかである．腎臓リハビリテーションには，フレイルの予防・改善，activities of daily living（ADL）・QOLの改善，心血管疾患予防による生命予後改善のみならず，腎機能改善・透析移行防止のための新たな治療としての大きな役割が期待されている．

2 慢性腎臓病患者の身体機能と日常生活活動忽那　俊樹 , 松永　篤彦 61巻5号 , 2024年5月 , pp.343-348

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要旨　慢性腎臓病患者に対する運動療法は，身体機能を改善させる方法として知られている．運動療法を始める前には，身体機能や日常生活活動の状況を評価したうえで介入戦略を立てることが推奨される．近年，慢性腎臓病患者のサルコペニアやフレイルに注目が集まっており，慢性腎臓病の病態の進行とともに身体機能が段階的に低下していくことが多く報告されている．身体機能の低下は日常生活活動能力や生活の質を低下させ，生命予後まで悪化させることが明らかとなっていることから，慢性腎臓病発症後の早期から身体機能や日常生活活動能力を適切に評価・管理していくことが重要と考えられる．

3 保存期CKD患者に対するリハビリテーション治療平木　幸治 61巻5号 , 2024年5月 , pp.349-354

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要旨　保存期CKD患者における運動療法には腎機能低下の抑制効果だけでなく，生命予後の改善効果も期待されている．医師，看護師，管理栄養士など多職種で構成されたCKDチーム医療によって集学的治療を行うと，2年間も腎機能低下の抑制効果が持続することが報告された．このようなエビデンスが本邦より発表されたことから，2024年度の診療報酬改定により慢性腎臓病透析予防指導管理料が新設された．本稿では，保存期CKD患者の腎機能の重症化予防に向けた運動療法とチーム医療による集学的治療の有効性について，さらに運動療法を行う際の原疾患別の注意点について述べる．

4 透析患者に対するリハビリテーション治療松沢　良太 61巻5号 , 2024年5月 , pp.355-361

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要旨　フレイルを日常臨床の中でいかに管理していくのかは今日の透析医療における重要な課題である．フレイル管理において，その中核を担うのがリハビリテーション治療，特に運動療法（指導）である．透析患者に対する運動療法（指導）はうつ症状，運動耐容能，身体機能および筋力を有意に改善することが明らかにされ，近年では長期予後への効果も報告されるようになった．ただ，実臨床においてはエビデンス通りにいかない事例も多く存在することから，対象患者の個々の特性に応じて，運動療法（指導）のタイミングや有酸素運動あるいはレジスタンス運動といった運動様式を選択・修正することが求められる．

5 腎臓機能障害患者に対する栄養療法加藤　明彦 61巻5号 , 2024年5月 , pp.362-370

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要旨　慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD）患者におけるprotein-energy wasting（PEW）の診断基準は煩雑でアジア人向けではないため，PEW診断基準をもとにした日本人血液透析患者向けの栄養スクリーニング法（NRI-JH）が作成されている．さらに，保存期CKD患者には国際的な低栄養診断基準であるGLIM基準が有用である．一方で，CKD患者の多くが高齢者であり，サルコペニア・フレイルのハイリスク群であるため，従来の腎機能区分に応じた一律な食事制限でなく，患者個々の病態に応じて，低栄養にならないことを念頭に置いた個別の栄養療法が求められる．

6 腎機能障害と摂食嚥下障害國枝　顕二郎 , 藤島　一郎 61巻5号 , 2024年5月 , pp.371-377

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要旨　透析患者の主な死因の1つは感染症であり，摂食嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎への対応は重要である．高齢の透析患者の摂食嚥下障害では，サルコペニアや脳卒中が関与している可能性がある．サルコペニアの予防や治療には栄養療法と運動（筋力強化）が重要である．また，腎機能障害患者は胃食道逆流症を合併することが多い．食道が抗重力位となる姿勢（ブリッジ姿勢，腰上げ姿勢）で空嚥下を一定期間行うと，食道機能が改善する可能性がある．腎機能障害と摂食嚥下障害に関する系統だった報告は乏しく，さらなる研究が待たれる．

7 運動の腎保護効果小川　佳子 , 伊藤　修 61巻5号 , 2024年5月 , pp.378-382

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要旨　長期的運動は慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD）において腎機能障害や腎組織病変の進展を抑制する，いわゆる腎保護効果を有することが明らかになっている．長期的運動の腎保護効果の機序は明らかではないが，各種CKDモデルラットを用いた研究では，腎臓内の酸化ストレスやカルボニルストレスの軽減，一酸化窒素系やレニン-アンジオテンシン系の調節，脂肪酸代謝やミトコンドリア機能の改善が長期的運動の腎保護効果に関与している可能性が示されている．このように，長期的運動は多面的な効果を有しており，各種CKDモデルの異なる腎内システム異常に応じて腎保護効果を発揮していると考えられる．

8 腎臓リハビリテーションの診療報酬武居　光雄 61巻5号 , 2024年5月 , pp.383-389

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要旨　包括的腎臓リハビリテーションの普及のためには診療報酬収載が必須であり，2012年から日本腎臓リハビリテーション学会として活動を開始した．

2016年4月改定：糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全患者指導加算（eGFR 30 mL/min/1.73 m²未満，月1回100点を算定可）」収載．

2018年4月改定：「高度腎機能障害患者指導加算」として，eGFR 45 mL/min/1.73 m²未満まで対象を拡大．

2022年4月改定：「透析時運動指導等加算」収載．「等」とは，運動指導，食事指導，疾患指導など総合的・包括的に想定されている．

2024年4月改定：「慢性腎臓病透析予防指導管理料」収載．

今後の最大の要望事項は「加算」ではなく，「疾患別リハビリテーション」のカテゴリーに「腎臓リハビリテーション」を入れていただくことである．

教育講座

重症COVID-19患者に対するリハビリテーション診療—急性期から社会復帰まで酒井　朋子 , 高階　祐輔 , 平尾　昌之 61巻5号 , 2024年5月 , pp.390-397

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はじめに

　2020年12月に報告された新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は，瞬く間に世界中に広がり，2021年3月にはパンデミックに至ったが，約3年の「コロナ禍」の期間を経て2023年5月8日に「5類感染症」に格下げされ，社会は本格的なポストコロナ時代に突入した．この間のCOVID-19の治療においては医療界の英知が結集し，多種多様な治療が確立され^{1, 2)}，リハビリテーション医療の分野でもさまざまな工夫と取り組みがなされ，数多くのアウトカムが得られた^3-13)．

　COVID-19のリハビリテーション治療には重症COVID-19の患者に対する集中治療中に始まり社会復帰に至るまでのリハビリテーション治療^{4, 5)}，中等症COVID-19に対する呼吸器リハビリテーション治療^6-8)，ポストコロナ症候群の呼吸器症状や身体機能低下，神経症状に対するリハビリテーション治療^9-12)など，さまざまな要素が含まれる．

　本稿では，重症COVID-19の患者に対するリハビリテーション治療とその後の機能回復，社会復帰の実際について述べる．

脊髄損傷治療へ向けた再生医療とリハビリテーション医療—さらなる併用療法田代　祥一 61巻5号 , 2024年5月 , pp.398-403

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はじめに

　国内の脊髄損傷の年間発生件数は約6千人，罹患者数は15万人といわれている．その要因は交通事故や転落，スポーツ外傷などで，若年層に比較的好発するものの，近年では高齢者の転倒などの軽微な外傷を契機としたものが増加している¹⁾．不可逆性変化を生じた脊髄神経に対する根本的治療法に確立されたものはなく，実地における治療の主体はリハビリテーションに依らざるを得ない部分がある．

　幹細胞を用いた再生医療は，脊髄損傷後遺症に対する革新的な治療法である．神経幹/前駆細胞（neural stem/progenitor cells：NS/PCs），間葉系幹細胞（mesenchymal stem cell：MSC），嗅神経鞘細胞（olfactory ensheathing cells：OECs）など，さまざまな細胞種を用い，主に急性期・亜急性期において治療効果が報告されている．慢性的脊髄損傷は，瘢痕形成に代表される難治性機序を呈し細胞治療の効果が限定的となること，可塑性が低下するため移植細胞に由来する代替経路が形成されづらくなることから，リハビリテーションや薬物治療との集学的治療が重要である²⁾．

慢性肝疾患患者の運動療法—肝臓リハビリテーション松瀬　博夫 , 橋田　竜騎 , 川口　巧 61巻5号 , 2024年5月 , pp.404-413

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はじめに

　身体活動量の低下は，非アルコール性脂肪性肝障害（non-alcoholic fatty liver disease：NAFLD）発症の主な要因の1つである^{1, 2)}．NAFLDは，アルコール以外の原因で脂肪が肝細胞に蓄積している状態であり，肝細胞の30％以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断される．健診や人間ドックを受ける人の20〜30％にNAFLDを認めることから，推定2,000万人の潜在患者がいると考えられている．NAFLDは，10〜20％が肝硬変になり，年率数％が肝がんを発生するといわれており，近年NAFLDに関連する肝がんは増加する傾向にある．一方で，運動療法はNAFLDの病態を改善し得る³⁾ことから，NAFLD/NASH診療ガイドライン2020^{4, 5)}や米国肝臓学会のNAFLD診療ガイダンス⁶⁾において運動療法が推奨されている．さらに，運動療法は脂肪肝のみならずさまざまな慢性肝疾患患者の基本的治療として，日本肝臓学会が2023年に，「肝臓リハビリテーション指針」を作成している．特に，フレイルやサルコペニアは肝硬変の病期進展や肝発がん発生にも関与し，患者の予後に影響を及ぼすことから，その予防や治療は肝疾患患者の診療において重要である．このように運動療法は肝疾患において重要な治療法の1つである⁷⁾．そこで，本稿では，脂肪肝，肝硬変および肝がん患者に対する運動療法と運動療法を行う際の注意点について論述する．

原著

介護老人保健施設入所者における食堂の座席での反復起立テストと日常歩行，バランス機能，歩行耐久性の関係大村　優慈 , 脇島　克介 , 酒向　正春 , 小笠原　尚和 61巻5号 , 2024年5月 , pp.414-422

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要旨　目的：介護老人保健施設入所者の食堂の座席での反復起立テスト（食席起立テスト）と日常歩行，バランス機能，歩行耐久性の関係を明らかにすることを目的とした．

方法：介護老人保健施設入所者86名を，Functional Independence Measureの歩行で車いす群，介助群，修正自立群，自立群に分けて食席起立テストを比較し，連続する群間に有意差があった場合はカットオフ値を求めた．また，食席起立テストとBerg Balance Scale（BBS），6分間歩行距離（6MD）の相関を求めた．

結果：食席起立テストは車いす群より介助群，介助群より修正自立群で高値であり，カットオフ値はそれぞれ5回と20回であった．また，食席起立テストはBBS，6MDと強い正の相関があった．

結論：介護老人保健施設入所者の食席起立テストはバランス機能，歩行耐久性と関連し，5回が介助歩行，20回が修正自立歩行の目安になる．

症例報告

脊髄病変が推定された熱中症の1例渡邊　亜貴子 , 佐藤　絢 , 本郷　菜苗 , 垰畑　真結子 , 佐藤　武 61巻5号 , 2024年5月 , pp.423-428

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はじめに

　近年，熱中症予防に対する関心が高まっている．熱中症は，発症時の状況から労作性と非労作性に分けられるが，高齢者においては後者，しかも自宅内での発症が多いとされている¹⁾．マスメディアやSNSなどでの注意喚起が広く行われるようになってきてはいるものの，熱中症で救急搬送される患者は2010年以降国内の総計で毎年4万人を超えている²⁾．

　日本救急医学会の熱中症に関する委員会が実施した症例調査（Heatstroke STUDY 2012)³⁾によれば，2012年に国内の103施設で熱中症と診断された2,130例のうち，中枢神経系後遺症を生じたのは20例で0.9％であったという．その中で最も多かったのは高次脳機能障害で60％（12例），嚥下障害15％（3例），小脳失調10％（2例），歩行障害10％（2例）となっていた．海外を含めた他の文献では，中枢神経系の後遺症として記憶障害および精神症状⁴⁾，錐体路症状⁵⁾，錐体外路症状⁶⁾，脊髄障害^{7, 8)}，末梢神経障害^{9, 10)}なども報告されている．

　今回，筆者らは，両下肢の強い弛緩性麻痺を呈し，神経電気生理検査の結果から脊髄病変（脊髄前角細胞の障害あるいは脊髄前根の障害）が疑われた1症例のリハビリテーション治療を経験したので報告する．本人および家族に対し本報告の主旨についての説明を行い，情報公開について書面で承諾を得た．

JARM NEWS【Topics】

男女共同参画委員会・RJN企画シンポジウム「女性アスリート支援のための連携」広報委員会 61巻5号 , 2024年5月 , pp.429-434

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　第60回日本リハビリテーション医学会学術集会において開催された男女共同参画委員会企画シンポジウム「女性アスリート支援のための連携」の座長・シンポジストの先生方に，講演内容とシンポジウムのご感想をおまとめいただきましたので，本欄にて紹介いたします．

JARM NEWS【基幹研修施設インタビュー】

国立病院機構埼玉病院リハビリテーション科村岡　香織 61巻5号 , 2024年5月 , pp.435-436

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地域を守る急性期医療と充実した小児医療提供体制

　埼玉病院は「患者さん，仲間，そして自分が喜べる仕事をしよう」をモットーに，地域に密着した急性期・高度専門医療を提供しています．また，Patient eXperience（PX：患者経験価値）の調査結果に基づいたサービス力の向上や，医師の働き方改革に伴う主治医制からチーム制・当番制への移行など，変化に対応しながら成長し続けています．小児医療への取り組みも積極的で，「小児救急は24時間体制で救急患者さんに対応し，年間約1万人の患者さんを受け入れています．小児救急，新生児集中治療（NICU），幅広い専門外来，在宅医療支援を小児医療の4つの柱としており，リハビリテーション科も積極的に小児のリハビリテーション医療に取り組んでいます」と説明する村岡香織先生．

　東京都と隣接し人口の多い地域の急性期医療を担う病院のため，外傷などの整形外科疾患や脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患を扱うことが多く，患者さんの年齢層は乳幼児から高齢者まで幅広いそうです．研修医時代から急性期のリハビリテーション医療に興味をもっている若手医師も多く，周術期，循環器・呼吸器疾患，神経変性疾患，がん患者，小児患者と多様なバックグラウンドの患者さんのリハビリテーション評価や計画を立てていく過程で，リハビリテーション医療の重要性をより深く理解していくそうです．

JARM NEWS【委員会紹介】

ICF・データマネジメント委員会／研修会等委員会向野　雅彦 , 菊地　尚久 61巻5号 , 2024年5月 , pp.437

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　ICF・データマネジメント委員会は統計の教育，データベースの管理，ICFの普及推進に取り組んでいます．この委員会はもともと，日本リハビリテーション医学会，日本理学療法士協会，日本作業療法士協会，日本言語聴覚士協会が合同で設立した日本リハビリテーション・データベース協議会（JARD）によって構築されたリハビリテーションデータベースの管理に携わり，データベースを使った学会発表や論文の投稿前審査などを行ってきました．リハビリテーションデータベースはすでにデータの提供を終了していますが，提供済みのデータの発表についての確認などの残務に対応しています．現在データベース事業は予定されていませんが，今後どこかでこれまでの委員会の経験を活かす機会があることを期待しています．

　統計の教育についてはCOVID-19流行に伴い一時休止しておりましたが，主に初学者向けの統計セミナーの開催に取り組んできました．今後も統計に関する初学者のサポートとなる活動を実施していく予定です．

JARM NEWS【REPORT】

日本リハビリテーション医学会市民公開講座運動器の機能向上と健康寿命の延伸永野　靖典 61巻5号 , 2024年5月 , pp.438

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　2024年2月17日（土）14：00〜16：30に日本リハビリテーション医学会中国四国地区実行委員会主催の「日本リハビリテーション医学会市民公開講座—運動器の機能向上と健康寿命の延伸—」を開催いたしました．新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行したため，現地聴講の形式としました．ただ，高知県は人口減少が進んでおり，また会場の高知大学医学部附属病院は高知市中心街から車で約30分の南国市にあるため，聴講に来ていただけるかどうか危惧しておりましたが，天候にも恵まれ114名の方が現地に足を運んでくださりました．

　講演は2部で構成しました．第1部では本原稿の執筆者である医療法人野並会高知病院整形外科永野靖典が“ロコモを知って健康寿命をのばそう”とのタイトルで講演を行いました．運動器疾患や運動器障害によるロコモティブシンドロームだけでなく，現在も復興活動が行われている能登半島地震から将来の南海トラフ地震での生活不活発病，疾病や過度の安静に伴う機能障害（廃用症候群）まで幅広く説明し，日常身体活動，運動習慣，リハビリテーション医療の重要性をご理解いただけたと思います．講演後には聴講者から新たな運動習慣を始めたとの声も届いております．

第32回日本パラスポーツ学会in大分／第7回日本安全運転医療学会学術集会鶴川　俊洋 , 武原　格 61巻5号 , 2024年5月 , pp.439

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　本学会は長年日本障害者スポーツ学会の名称でしたが，2022年の第31回大会より日本パラスポーツ学会となりました．パラスポーツに携わる医師，理学療法士，義肢装具士など多職種が参加し，2023年度は11月17日（金）・18日（土）に太陽の家法人部長の服部直充大会長のもと7年ぶりに大分県で開催されました．大会のテーマは学会翌日19日（日）に開催される第42回大分国際車いすマラソンに合わせて「車いすマラソンの魅力と可能性：過去・現在・未来」でした．

　17日は午後より別府市の太陽の家にて車いすマラソンに関するセミナー，大会長講演，太陽ミュージアム見学・ドローンサッカー体験と夕方まで目白押しの内容であり，中村裕先生が築きあげた財産がさまざまな形で伝わってきました．翌18日は大分県庁内ホールに場所を移し，幅広い内容の一般演題（32演題）や，車いすマラソンのレジェンド山本行文氏による特別講演「私の車いすマラソン人生」が開催されました．2日間で93名が参加し，活発な討議が行われました．この2日間は非常に風が強く，翌日の車いすマラソンの天候が心配されましたが，日曜日は穏やかな気候のもと，選手はスタートを切りました．車いすマラソンの聖地で学び，選手の雄姿を拝見し，「障害克服」の重要性をあらためて感じた3日間でした．

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目次 61巻5号 , 2024年5月 , pp.333

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次号予告 61巻5号 , 2024年5月 , pp.440

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基本情報

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
61巻5号
(2024年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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